1. 11月15日に した わけは、一つに 決まって いるの?
1. 理由は一つに決まっていない:三つの説が並んでいる
1. 15日の理由は確定していない:三つの説の根拠を比べる
七五三が 11月15日なのは、「この 理由だ」と 決まって いません。むかしから 言われて いる かんがえが、三つ あります。
一つめは、徳松の はなしです。江戸 の 五だいめの 将軍、綱吉の むすこが 徳松でした。徳松の げんきを ねがう おいわいが 大きく 行われ、それが みんなに ひろまった、とも いわれて います[1]。
二つめは、鬼宿日という 日の かんがえです。むかしの 15日が この 日に あたって いた、と いう せつめいも あります(いつも そうとは かぎりません)[3]。この 日は 「おにが 外を 出あるかない」ので、よい 日と されました。ただし、けっこんに かんする ことは さける、と されて います[4]。
三つめは、とりいれと 月の かんがえです。むかしの 11月は、とりいれが おわって 神様に ありがとうを 言う 月でした。15日は 満月の ころなので、ありがとうと、子どもが 大きく なる ことへの ねがいを いっしょに した、と いう はなしです[2]。
どれも 「ほんとうは こうだった」と 言い切れる 話では ありません。三つとも 「かんがえ」として 読んで ください。
先に答えを書くと、七五三が11月15日になった理由は、決まった1つがありません。昔から言われている説が、少なくとも三つ並んでいます。
一つめは徳松の話です。神社本庁は、5代将軍の徳川綱吉が息子の徳松の健康を盛大に祈願したことが庶民に広まった、ともいわれる、と紹介しています[1]。細かい点は資料によって食いちがい、徳松の髪置祝いが行われた日を前例とする、と伝えるものもあります[2]。
二つめは鬼宿日の説です。旧暦の15日がこの鬼宿日にあたっていた、と紹介するものもありますが、鬼宿日がいつも15日になるわけではありません。鬼宿日は、鬼が出歩かず、物事が進みやすいとされる日です[3]。ただし鬼宿日は、結婚に関することだけは避けるとされています[4]。
三つめは、収穫感謝と満月の説です。旧暦の11月は収穫を終えて実りを神に感謝する月で、満月の日の15日に、氏神への感謝と子の成長の祈願を兼ねるようになった、とされます[2]。
どれも「説」で、これが正解だと決める材料は、今回の資料にはありません。
七五三の起源は、3歳の髪置、5歳の袴着、7歳の帯解という古い風習にあるといわれる[1]。ところが、これらの儀式がなぜ11月15日にまとめられたのかについては、決定的な根拠が1つに定まっていない。並んでいるのは、次の三つの説である。
第一は徳松説である。神社本庁は、5代将軍綱吉が長男の徳松の健康を盛大に祈願したことが庶民に広まった、とも「いわれる」と書き、断定を避けている[1]。別の資料は、天和元年(1681)の旧暦11月15日に、館林城主だった徳松の髪置祝いが行われたことを前例とする、とも伝える[2]。ただし、徳松の誕生日だった、祈祷が行われた、といった具合に細部は資料で食いちがうため、史実として固定せず「伝承」の段階にとどめるのが妥当である。
第二は鬼宿日説である。鬼宿は、天文にもとづく暦「二十八宿」の一つで、「宿」は家を意味し、鬼が家にいて外を出歩かないので物事が進みやすい日、と説明される。ただし婚姻に関することは避ける[4]。旧暦15日がこの鬼宿日にあたっていた、とする紹介もあるが[3]、二十八宿は日に連続して割り当てられて年ごとにずれていくため、鬼宿日がいつも旧暦15日になるとは言えない。
第三は収穫感謝と満月の説である。旧暦11月は収穫を終えて実りを神に感謝する月で、満月にあたる15日に、氏神への感謝と子の成長の祈願を兼ねるようになったとされる[2]。ただしこれは寺の法話などにもとづく説明とされ、定説ではない。
三つは互いに排除し合うものではないが、一次史料で裏づけられたものがあるわけではない。そのため、この記事も、どれか一つを正解とはしない。
2. むかしの 11月15日は、いまの カレンダーでは いつごろ?
2. 昔の11月15日は、今のカレンダーでいつごろの日なのか
2. 旧暦11月15日は、新暦のいつ・どんな日に当たるのか
つぎの 気に なる ことは、むかしの 11月15日が、いまの いつかです。
むかしの こよみ(旧暦)には、「冬至の ある 月を 11月にする」と いう きまりが ありました[5]。冬至は、一年で 昼が いちばん みじかい 日で、いまの カレンダーでは 12月22日ごろです。
だから、むかしの 11月15日は、いまの カレンダーでは 12月ごろの 日に あたります。年に よって、少し まえに なったり あとに なったり します。
むかしの こよみは、月の かたちに あわせて 作られて いました。月の はじめは 新月で、15日ごろは 満月の ころです。ただし、ぴったり 満月に なるとは かぎりません。
むかしの 人は、冬の 入り口の、満月の ころに 七五三を して いた のかも しれません。
次に気になるのは、昔の11月15日が、今のカレンダーのいつにあたるかです。
旧暦には、冬至を含む月を11月とする規則がありました。国立天文台の資料にも、冬至を含む月が11月になるように調整する、という仕組みが紹介されています[5]。冬至は新暦の12月22日ごろなので、旧暦11月15日は、新暦ではおよそ12月ごろの日にあたります。ただし旧暦の11月と新暦の12月は年によって前後するため、「12月ごろ」としか言えません。
また、旧暦は月の満ち欠けにもとづく暦です。月の初めが新月で、15日ごろは満月に近くなります。ただし15日がいつもぴったり満月とは限らないので、「満月ごろ」と書くのが正確です。
つまり、昔の人が七五三を行った日は、冬至に近い、冬の入り口の満月ごろの日でした。収穫感謝と満月の説が「15日」と「11月」の両方を一度に説明しようとするのは、こうした暦の事情と合うところがあります。
旧暦11月15日は、新暦ではいつにあたるのか。ここで鍵になるのが、旧暦の月の決め方である。
旧暦(天保暦)には、冬至を含む月を11月、春分を含む月を2月、夏至を含む月を5月、秋分を含む月を8月とする調整規則があった[5]。冬至は新暦の12月22日ごろなので、旧暦11月は、新暦のおよそ11月下旬から12月下旬のあいだに始まる。そのため旧暦11月15日は、おおむね新暦12月ごろに当たる。ただし年により前後するため、「12月ごろ」以上には言えない。
旧暦は太陰暦の要素を持ち、月の満ち欠けを日付に反映する。月の初めは新月で、15日ごろは満月に近いが、毎回ぴったり満月になる保証はない。以上から、昔の七五三の日は、「冬至を含む月の、満月ごろ」と表せる。
ここで第三の説(収穫感謝と満月)を見直すと、「11月」と「満月の15日」が、暦の仕組みの上で一度に説明できる点が目を引く[2]。ただし、これは暦の仕組みと説の整合を比べたもので、説の証拠にはならない。
3. こよみが かわると、七五三の 日は どう かわったの?
3. 暦が新暦に変わったとき、日付だけが残って月と季節がずれた
3. 明治の改暦で日付だけが引き継がれ、月の形と季節との対応が切れた
明治 の 時代に、日本の こよみは 新暦 に かわりました。この とき、旧暦 の 明治5年12月3日が、新暦 の 明治6年1月1日に なりました[2]。
七五三は、「日づけ」だけが 新暦の 11月15日に のこりました[2]。
すると どうなるでしょう。新暦の 11月15日は、月の かたちとは かんけいが ありません。年に よって、満月の 日とは かぎりません。むかしの 七五三は、「冬の 入り口の 満月ごろ」でしたが、いまは 「秋の おわりの、月の かたちが 決まって いない 日」に なって います。
七五三の 日づけは、むかしと いまで、ずいぶん 場しょが かわったのです。
明治になって暦が新暦に変わったとき、旧暦の明治5年12月3日が、新暦の明治6年1月1日になりました[2]。七五三も、この改暦のあと、新暦の11月15日に行われるようになったとされています[2]。
ここで起きたのは、日付だけが引き継がれて、月の形と季節との結びつきが切れたことです。新暦の11月15日は月の形とは関係がなく、年によって満月の日とは限りません。そして旧暦の11月15日がだいたい12月ごろにあたっていたのに対し、今の11月15日は、そのひと月ほど手前の日です。
つまり、昔の「冬の入り口の満月ごろ」は、今では「秋の終わりごろの、月の形が決まっていない日」になっています。七五三の日付は、もとの意味からいくらか離れたところで、今も続いているのです。
改暦は、七五三の日付に何をもたらしたか。明治5年12月3日(旧暦)が明治6年1月1日(新暦)とされた改暦ののち、七五三は新暦の11月15日に行われるようになったとされる[2]。
注意すべきは、「15日」という数字だけが新暦に引き継がれた点にある。旧暦の15日は満月ごろだったが、新暦の15日は月の形と無関係で、年によっては満月から数日ずれる。また、旧暦11月が12月ごろに当たるのに対し、新暦11月15日はそれよりやや早い。結果として、第三の説(収穫感謝と満月)の「満月」という要素は、新暦の日付には保存されなかった。
反対に、徳松説は、日付の由来を特定の出来事に求めるため、暦が変わっても説明の形は影響を受けにくい。ただし、この説が史実かどうかは、前章で見たとおり確定していない。説の強さは、暦が変わったあとの日付を説明できるかどうかとは別に考える必要がある。
4. いまは、かならず 11月15日に しなくても いいの?
4. 今は11月15日にこだわらない家も多いのはなぜか
4. 日付への固定が弱まった現在:10月・週末・家庭の事情
いまは、11月15日に かならず しなくても よい、と 考える 家が 多く なって います[2]。10月から 11月の あいだの 土日や 休みの 日に する 家も あります。
いつ おいわいするかは、すんで いる 地いきや 家に よって ちがいます。
七五三は、子どもが 元気に 大きく なった ことを、氏神様や ご先ぞに ありがとうと つたえる 行事です[6]。何さいで 何を するかも、地方に よって ちがいます。
5. 自分の カレンダーで たしかめて みよう
5. 家のカレンダーで、15日と満月を比べてみる
5. 日付と月の形がずれているかを、手元の暦で調べる
おうちに、月の かたちが のっている カレンダーが あれば、見て みましょう。ない ときは、本で 月の ようすを しらべても かまいません。
まず、11月15日の 月の かたちを 見ます。つぎに、その 月の 満月の 日が いつか さがします。15日と 同じ 日でしたか。ちがう 日でしたか。
夜に 月を 見たい ときは、おうちの 人と いっしょに、家の 近くで 見ましょう。ひとりで 外に 出ては いけません。
むかしは、こよみが 月と つながって いました。いまの 日づけは、月とは つながって いません。この ちがいを 見つけたら、ほかの 行事の 日づけも しらべたく なるかも しれません。
家に月の満ち欠けが書いてあるカレンダーがあれば、11月15日の月の形を見てみましょう。つぎに、その月の満月の日を探します。15日と同じ日でしょうか。何日かずれているでしょうか。
年によって結果は変わるので、来年や再来年の分も見ると、ずれ方が変わることが分かります。夜に月を見たいときは、家の人といっしょに、家の近くで見てください。
また、お住まいの地域で、七五三をいつごろ行う家が多いのかを、神社のお知らせや家族の話で聞いてみるのも、一つの調べ方です。神社本庁のウェブサイトには、七五三の説明が載っています[1]。
同じ行事でも、日付と意味がどう結びついているかは、行事ごとに違います。他の行事の日付も、旧暦なのか新暦なのか、調べてみると新しい発見があるかもしれません。
この問いは、手元の暦で自分でも検証できる。月の満ち欠けの記載があるカレンダーか天文情報で、11月15日の月齢と、その月の満月の日を比べる。年を変えて見れば、新暦15日と満月が一致しない年があることが確かめられる。夜の観察は、家の人と同行し、安全な場所で行うこと。
さらに、神社本庁の解説[1]、国立天文台の暦の解説[5]は、それぞれ立場や目的が異なる。同じ「11月15日」でも、宗教団体と天文機関が何を重視して書いているかを読み比べると、出典の性格のちがいが見えてくる。
ひとつ残る疑問がある。徳松の前例について、神社本庁は「ともいわれる」にとどめ、別の資料は髪置祝い、健康祈願、誕生日と細部が異なる。では、この前例の根拠になった元の記録は何か。そこを追うのは、この記事が示せなかった次の調べ物になる。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文の[数字]は、下の出典の番号に対応します。
- 神社本庁「七五三」 https://jinjahoncho.or.jp/omairi/gyouji/shichigosan (髪置・袴着・帯解、徳松の伝承)
- Wikipedia「七五三」 https://ja.wikipedia.org/wiki/七五三 (徳松説の細部、収穫感謝と満月の説、新暦への移行、今の行い方)
- 雑学ネタ帳「七五三」 https://zatsuneta.com/archives/111151.html (鬼宿日説の紹介)
- オールアバウト ニュース「鬼宿日って?」 https://news.allabout.co.jp/articles/o/62709/ (鬼宿日の一般的な説明)
- 国立天文台 暦のトピックス https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/topics/html/topics2014.html (冬至を含む月を11月とする規則)
- 家電Watch(インプレス)「七五三」 https://kaden.watch.impress.co.jp/docs/column/lifestyle/1161281.html (行事の目的と地方による違い)
なおした ところ
更新履歴
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