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くつの においは、あせの においなの?

靴の中のにおいは、汗そのもののにおいなのか

靴の中のにおいは何でできているのか:足の裏の菌、汗の成分、靴の中の空気

分野:からだ

おなじ 足なのに、足の うらでは においの もとが 見つかり、足の こうでは 見つからなかった という けんきゅうが あります。くつを ぬいだ ときの においは、あせの においでは ないのでしょうか。

この ページを 読むと、においの おもな もとと、足の うらと くつの 中が においやすい わけが わかります。

同じ足なのに、足の裏ではにおいの物質が検出され、足の甲では検出されなかった。2015年に、イギリスの研究チームがそんな結果を報告しています[3]。靴を脱いだときのあのにおいは、汗そのもののにおいなのでしょうか。

この記事を読むと、においの主な正体と、足の裏と靴の中がにおいやすい理由が分かります。

2015年のイギリスの研究では、同じ足でも、足の裏ではイソ吉草酸が検出され、足の甲では検出されなかった[3]。汗が出る場所はどちらも同じはずなのに、なぜ差が出るのか。靴の中のにおいは、汗そのものなのか。

この記事を読むと、においの主因と考えられている物質と菌、足の裏が不利な理由、靴の種類で変わる湿度と換気の影響、そしてこの分野の研究が小規模であることの意味が分かる。

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1. くつの においの もとは、あせ? きん?

1. においのもとは、汗なのか、菌なのか

1. においの主役は汗ではなく、汗を作りかえる菌と考えられている

くつを ぬぐと、つんと する においが します。「あせの においだ」と 思いますよね。

ところが、2006ねんの けんきゅうでは、においの おもな もとは、足の うらの ひふに すむ きんが つくる ものだと 考えられて います。あせの 中には、アミノさんと いう ざいりょうが ふくまれて います。その ひとつが、ロイシンです。ひふに すむ きんの なかまが、この ロイシンを こわして つくりかえると、イソ吉草酸いそきっそうさんという においの ある ものが できます。

つまり、あせは きんの ごはんのような もの。においを 出して いるのは、きんの しごとの ほうです。

ただし、きんは 1しゅるいでは ありません。この けんきゅうでは、においが つよい 人の 足の うらから、べつの きんも 見つかりました。くわしくは、まだ 研究が つづいて います。

靴を脱ぐと、つんとしたにおいが立ちのぼります。多くの人は「汗のにおいだ」と考えるでしょう。

2006年の研究は、足のにおいの主な原因を、汗そのものではなく、皮膚にすむ菌の仕事だとしました。汗にはアミノ酸が含まれていて、その一つがロイシンです。皮膚の常在菌である表皮ブドウ球菌ひょうひぶどうきゅうきんが、このロイシンを分解すると、イソ吉草酸いそきっそうさんという酸ができます。これが足のにおいの主役とされました[1]。

この流れは、汗が「材料」で、菌がそれを作りかえる、という関係です。ただし、原因が表皮ブドウ球菌だけとは書かれていません。同じ研究では、においの強い人の足の裏から枯草菌も見つかり、においの強さと関連したと報告されています[1]。ほかの菌も関わる可能性があり、「主な1つ」と考えるのが安全です。

では、同じ足の中で、においの出る場所と出ない場所があるのはなぜでしょうか。

靴の中のにおいを、汗のにおいと単純に考えてよいのか。2006年の研究(Ara ら)は、足のにおいの主因を、皮膚の常在菌である表皮ブドウ球菌ひょうひぶどうきゅうきんが、汗に含まれるアミノ酸のロイシンを分解してつくるイソ吉草酸いそきっそうさんだと報告した[1]。汗は材料であって、においそのものを直接つくるのは菌の代謝という構図になる。

ただし、この図式は一つの菌と一つの物質に絞りすぎてもいけない。同じ研究では、においの強い人の足の裏から枯草菌こそうきんが見つかり、においの強さと関連したとも報告されている[1]。表皮ブドウ球菌は「主な1つ」であり、唯一の犯人とは言えない。

では、なぜ同じ足でも、におう場所とにおわない場所があるのか。次の章では、足の裏と甲の比較を見る。

2. どうして 足の うらだけ、においやすいの?

2. 足の裏だけにおいの物質が見つかったのはなぜか

2. 足の裏と甲の比較:菌の量と汗腺の数

2015ねんに、イギリスの けんきゅうチームが、足の うらと 足の こうを くらべました。どちらにも 同じような きんが すんで いました。ブドウきゅうきんの なかまです。

ちがいは、きんの 数でした。足の うらは、こうよりも、きんの 数が ずっと 多かったのです。イソ吉草酸いそきっそうさんが 見つかったのも、足の うらだけでした。けんきゅうした 人たちは、足の うらに ブドウきゅうきんが 多い ことが、においの ちがいの わけだろうと 考えて います。

足の うらには、あせを 出す あなも たくさん あります。1平方センチメートルあたりで、足の うらは 366こ、足の こうは 149こと 書かれた 本が あります。366÷149で、足の うらは こうの およそ 2.5ばいです。

あせが 多くて、きんの ごはんも 多い。だから 足の うらは においやすいと 考えられます。ただし、あなの 数は、しらべた 人や やりかたで 400から 600こなど、はばが あります。

2015年、イギリスのStevensらの研究チームは、足の裏と甲を比べました。足のどの場所からも、ほとんどブドウ球菌が見つかり、菌の大部分を占めていました。ちがいは量です。足の裏は、甲よりも菌の量がはるかに多かったのです。イソ吉草酸が検出されたのも足の裏だけで、甲では検出されませんでした[3]。研究者たちは、足の裏のブドウ球菌の多さが、この差の理由だろうとしています。

汗の出やすさも関係しそうです。2021年の論文は、足の裏のエクリン汗腺(汗を出すところ)の数を1平方センチメートルあたり366個、足の甲を149個と紹介しています[4]。366÷149は約2.5なので、足の裏は甲の約2.5倍です。汗が多ければ、菌の材料も、湿り気も増えます。ただし、この数値は別の研究の測定の引用で、資料によって400〜600個という値もあるため、「数百個で、甲よりずっと多い」と考えるのが無難です。

足の裏で菌が増えやすいことは分かりました。それに靴が加わると、何が起こるのでしょうか。

2015年のStevensらの研究は、足の部位ごとに菌の組成と揮発成分を調べた。足の各部位の細菌は、ほぼブドウ球菌(Staphylococcus属)が占め、足の裏は甲よりはるかに菌の量が多かった。イソ吉草酸は、足の裏では検出され、甲では検出されなかった。著者らは、この空間分布の差が、足の裏のブドウ球菌の多さによると推察している[3]。

では、なぜ足の裏は菌が多いのか。一つの背景は汗の量である。2021年のMiaoらの論文は、エクリン汗腺の密度を、足の裏で366個/cm²、甲で149個/cm²と紹介している[4]。比は366÷149で約2.5。汗が多い場所は、菌が使える水分とアミノ酸も多く、湿度も高くなる。ただし、この数値は別の測定の引用であり、資料によっては400〜600個/cm²と幅がある。数値の絶対値より、足の裏が甲より数倍規模で汗腺が多い、という傾向を読み取るのが妥当だろう。

足の裏は、もともと菌に有利な場所だった。そこに靴という「容器」が加わると、状況はどう変わるのか。

3. くつの 中の あつさと むしあつさは、きんに 合うの?

3. 靴の種類で、中の温度と湿度はどう変わるか

3. 靴の中の微気候:温度・湿度・換気と菌の増え方

2021ねんの けんきゅうでは、げんきな 男の人 3人が てつだって、3しゅるいの くつの 中を はかりました。ふつうの くつ、はしる ための くつ、あなの あいた くつです。

ふつうの くつは、中が いちばん あたたかく、しめって いました。足の こうの あたりで、ふつうの くつの 中は 30.6ど。へやの 温度は 23.4どだったので、7どほど たかい ことに なります。

あなの あいた くつは、空気が よく 入れかわりました。しめりぐあいも ひくく、同じ 場所で ふつうの くつの 中より、水が 少なく 18.7。ふつうの くつは 27.2でした。27.2÷18.7で、ふつうの くつは およそ 1.5ばいも 水を ふくんで いた ことに なります。

足の うらの きんの ふえかたを くらべると、あたたかさ、しめりぐあいが 大きいほど、きんは ふえました。いちばん あてに なったのは、空気の 入れかわりやすさでした。

ただし、はかったのは 3人だけです。「どの くつでも こうなる」とは いえません。

2021年のMiaoらの研究では、健康な男性3人が、カジュアルシューズ、ランニングシューズ、穴あきシューズをはき、靴の中の温度・湿度・換気(空気の入れかわり)を測りました[4]。

いちばん暖かく湿っぽかったのは、カジュアルシューズです。足の甲のあたりの温度は30.6℃で、事務室の23.4℃より約7℃高い値でした。湿度は、空気1立方メートルに含まれる水の重さ(絶対湿度)で表され、カジュアルシューズは27.2g、穴あきシューズは18.7gでした[4]。27.2÷18.7は約1.45なので、カジュアルシューズの中は、穴あきシューズの約1.5倍近い水を空気中に含んでいたことになります。換気は、穴あき、ランニング、カジュアルの順によく、湿度の順とちょうど逆です。

足の指側の足の裏の菌の増え方は、温度と湿度が高いほど増え、換気が多いほど減る関係でした。研究者たちは、換気量がいちばん信頼できる目安だったと述べています[4]。

ただし、これは3人の限られた条件での測定です。「この靴なら必ずこうなる」という数値ではありません。それでも、風通しが菌の増え方と関係しそうだという手がかりにはなります。

ところで、においの成分は、イソ吉草酸だけなのでしょうか。

靴の中の環境が菌の増え方にどう影響するか。2021年のMiaoらの研究は、健康な男性3人を被験者とし、カジュアルシューズ、ランニングシューズ、穴あきシューズの中の温度・湿度・換気を測り、足底の菌の増え方と比べた[4]。

足の甲側の測定では、カジュアルシューズ内は30.6±0.5℃、絶対湿度は27.2±1.2g/m³で、穴あきシューズでは絶対湿度が18.7±2.0g/m³だった。事務室は23.4℃、相対湿度79.3%である[4]。27.2÷18.7は約1.45で、同じ位置の空気中の水蒸気量が、条件の違いだけで約4割以上ちがったことになる。換気は穴あき>ランニング>カジュアルの順だった。

足指側の足底の菌の増え方は、温度・絶対湿度とは正の相関、換気量とは負の相関を示した。著者らは、換気量が最も信頼できる指標だったと述べる[4]。温度や湿度は、換気に左右される結果でもあるため、因果の向きは分けて考える必要がある。

限界も明確である。被験者はわずか3人で、靴の種類も3つ、測った条件は特定の環境に限られる。値は靴一般の性質ではなく、「換気が菌と関係しそうだ」という方向を示す一例だ。

では、においの正体はイソ吉草酸だけなのか。別の分野の研究も見てみる。

4. 足の においは、ほかの ものも まじって いるの?

4. 靴下のにおいから見つかった、ほかの成分

4. イソ吉草酸だけでは説明しきれない:靴下のにおい成分と、香料の抑制実験

日本でも、においを しらべた 研究が あります。2009ねんに、日本の 大学の ひとたちが、くつ下の においを しらべました。てつだったのは、げんきな 女の人 3人です。

けっかは、すっぱくて つんと する においや、なまぐさい においが、くつ下の においの もとと 考えられました。においの もとの ものとして、オクタナール、ノナナール、デカナールという ものが、どの くつ下からも 見つかりました。研究した 人たちは、あせや ひふの あぶらなどと、きんが ふえる ことが、くさい においの わけだろうと 考えて います。

ただし、3人を 2日間 しらべた ものです。「足の においは この 3つ」と いう ことでは ありません。

もうひとつ。2006ねんの 研究では、シトラール、シトロネラール、ゲラニオールと いう、いい においの もとが、ほんの 少しでも、きんが イソ吉草酸いそきっそうさんを つくる ことを おさえた と つたえられて います。

日本家政学会の2009年の発表では、文化女子大学の研究チームが、靴下のにおいを調べました。協力したのは健康な女性3名です[2]。

この実験では、酸味のある刺激臭や生臭さが、靴下のにおいの原因だと示唆されました。においの成分として、オクタナール、ノナナール、デカナールが、どの靴下からも共通して検出されています。研究チームは、靴の中の不快なにおいの要因を、汗や皮脂などの老廃物と、細菌の増殖だと推察しています[2]。

ここで注意したいのは、検出された物質と、においの正体とは別の話だということです。3名を2日間調べた実験なので、「足のにおいはこの3つ」とは言えません。イソ吉草酸も含めて、いくつもの物質が重なって、あのにおいになっていると考える方が自然です。

においを抑える手がかりもあります。2006年の研究では、香料の成分のシトラール、シトロネラール、ゲラニオールが、低い濃度でイソ吉草酸の産生を抑えたと報告されました[1]。ただし、これは菌を使った実験の結果で、靴にふりかければにおいが消える、という意味ではありません。

ここまで分かったことを、自分の靴で確かめるには、どうすればよいでしょうか。

2009年の日本家政学会第61回大会の要旨(大川ら)は、靴下のにおいを調べている。健康な女性3名が協力し、2日間の着用で採取した。酸味のある刺激臭と生臭さが靴下臭の原因と示唆され、オクタナール、ノナナール、デカナールが共通して検出された。著者らは、靴内の不快臭の要因を、汗・皮脂などの老廃物と細菌の増殖と推察している[2]。

イソ吉草酸の説と、この結果は、対立するものではない。イソ吉草酸は酸のにおい、アルデヒド類は別の系統の物質である。ただし、「検出された」ことは「においの主因である」ことと同じではなく、3名・2日間の規模では、足臭一般の成分表にはならない。複数の物質が重なっている可能性を示す、と読むのが妥当である。

2006年の研究は、枯草菌と並んで、香料成分のシトラール、シトロネラール、ゲラニオールが、低濃度でイソ吉草酸の産生を抑えたと報告している[1]。実験室での菌の産生の抑制であり、靴や足の消臭効果を直接示したわけではない。

ここまでを材料に、自分の靴で確かめられることは何か。

5. じぶんの くつで たしかめて みよう

5. 自分の靴で、風通しの差を感じてみる

5. 小さな実験を追試する発想と、資料の読み方

きょう できる こと

学校から 帰って、くつを ぬいだら、すぐに 中に 手を 入れて みましょう。あたたかさや、しめり気を、手で 感じます。つぎの 日は、ちがう くつで 同じように します。どちらが あたたかく、しめって いるか、ノートに 書いて くらべます。

ぬいだ 後は、くつを 立てたり、口を 広げたり して、風が 通る ように します。しばらく して、また 手を 入れて、かわき方を くらべて みましょう。

ただし、これは 3つの くつを はかった けんきゅうを まねした だけで、きちんとした 研究では ありません。「風が 通ると、きんが へるか」は、手では 分かりません。

手で温度としめりを比べる

学校から帰って靴を脱いだら、すぐに靴の中に手を入れ、温かさと湿り気を感じてみましょう。別の日に、種類のちがう靴(通気性のあるものとないもの)で同じことをして、感じたちがいをノートに書きます。

風を通して、かわき方を見る

脱いだあと、靴の口を広げたり、立てかけたりして風を通し、しばらくして再び手を入れ、かわき方をくらべます。

これは、3人の実験の考え方をまねしただけの観察で、菌の数やにおいの成分は測れません。それでも、「風通しが菌の増え方と関係しそう」という研究の話を、手の感覚で確かめる入口になります。

資料を読むなら

Miaoらの論文[4]は英語ですが、靴の種類ごとの温度と湿度が図や表で示されています。日本語なら、日本家政学会の要旨[2]が短く読めます。

手で確かめる

靴を脱いだ直後に、靴の中に手を入れ、温かさと湿り気を感じる。別の日に、通気性の異なる靴で同じことをして記録する。脱いだ後に風を通し、乾き方を比べる。ただし、これは第3章の考え方を体感するためのもので、菌の数やにおい成分は測れない。結果は一人の経験にすぎず、一般化できない。

資料を読むなら

部位ごとの分布は2015年の研究[3]、靴の種類と換気は2021年の論文[4]、靴下のにおい成分は日本家政学会の要旨[2]にある。どの資料も被験者は少人数で、同じ結論が大きな集団で成り立つかは、今後の研究を待つ問題である。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文で使った資料です。

  1. Ara, K. et al. Foot odor due to microbial metabolism and its control. Canadian Journal of Microbiology (2006). Europe PMC (イソ吉草酸、表皮ブドウ球菌、枯草菌、香料成分)
  2. 大川ら. 靴内における細菌増殖と不快臭の発生. 日本家政学会第61回大会要旨 (2009). https://www.jstage.jst.go.jp/article/kasei/61/0/61_0_295/_article/-char/ja/ (靴下のにおい成分)
  3. Stevens, D. et al. FEMS Microbiology Ecology 91(1) (2015). https://eprints.ncl.ac.uk/238947 (足の裏と甲の菌の量とイソ吉草酸)
  4. Miao, Y. et al. Footwear microclimate and its effects on the microbial community of the plantar skin. Scientific Reports (2021). https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8514438/ (靴の中の温度・湿度・換気、汗腺の数)

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