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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

ひふの いちばん そとがわは いきて いない さいぼうなのに、どうやって ばいきんを ふせぐの?

皮膚の外側の死んだ細胞の層は、どうやって水と細菌を防いでいるのか

皮膚の最外層は死んだ細胞なのに、水と細菌をどう防ぐのか:2024年の角層研究から

分野:からだ

ひふの いちばん そとがわは、もう いきて いない さいぼうで できています。ふれるたびに、いのちの ない ぶぶんを さわって いるのです。

いきて いない ものが、どうして 体を まもれるのでしょう。こたえは、水を とおさない かべに なって いる ことと、2024ねんに わかった まん中の すっぱい そうが ばいきんを ふせぐ ことです。この ページでは、あつい ときの 体の しくみや、さわった かんじを とらえる ばしょも わかります。

皮膚の表面にさわるとき、わたしたちが触れているのは、すでに生きていない細胞の層です。いちばん外側の層は、役目を終えた細胞が重なってできています。

では、生きていない層が、どうして水を逃がさず、細菌から体を守れるのでしょうか。答えは、水を通さない層であることに加えて、2024年に分かった三つの層のうち、中層の酸性が細菌の侵入を防いでいたことです。この記事では、暑いときに熱を逃がす方法や、触った感じをとらえる場所も取り上げます。

皮膚の最外層である角層は、角質化した死んだ細胞からなる[2]。生命活動を終えた細胞の層が、水分の蒸散を防ぎ、傷のない状態では大半の細菌やウイルスの侵入も防ぐ[1]。

では、なぜ死んだ層がバリアとして働けるのか。2024年には、角層がpHの異なる三層に分かれ、中層の酸性が黄色ブドウ球菌の侵入を防いでいたと報告された[3]。この記事では、バリア・体温調節・感覚・紫外線防御という皮膚の働きが、どう結びついているかも見る。

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1. ひふの そとがわは、いきて いないの?

1. いちばん外側の層は、生きていない細胞でできている

1. 表皮・真皮・皮下脂肪層のうち、最外層の角層は死んだ細胞の集まり

ひふは、3つの そうで できています。そとから、ひょうひ、しんぴ、ひかしぼうそうと いいます[1]。

いちばん そとの ひょうひの、さらに いちばん そとに ある ところを「かくそう」と いいます。かくそうは、しんだ さいぼうが かさなって できて います[2]。

しんだ さいぼうの そうなのに、これが たいせつな かべに なります。かくそうは、水を ほとんど とおしません[1]。きずの ない ときは、たいていの ばいきんや ウイルスが 体に はいる のも ふせぎます。

かんがえて みると、おふろに はいっても、体の 水が ぜんぶ ぬけて いったりは しません。ひふの そとがわの そうが、水を とじこめて くれて いるのです。

皮膚は、外側から表皮・真皮・皮下脂肪層の三つの層でできています[1]。このうち表皮のいちばん外側にあたる部分が「角層(角質層)」です。

役目を終えた細胞の層

辞典の説明によると、角層は角質化した死んだ細胞でできていて、内部を守りながら、水分がむだに蒸発するのを防ぎます[2]。医学書も、角層は基本的に水を通さず、傷のないときには、大半の細菌やウイルスの侵入を防ぐと説明しています[1]。

お風呂に長く入っても、体の水分が全部ぬけてしまうことはありません。外側の層が、ふたのように水を閉じこめているためと考えられます。

ただ、「死んだ細胞が重なっているだけ」なら、層の中はどこも同じはずです。ところが2024年、この薄い層の中に、思いがけない区切りがあることが分かりました。

皮膚は表皮・真皮・皮下脂肪層の三層からなり、表皮の最も外側が角層(角質層)である[1]。角層は角質化した死んだ細胞からなり、内部を保護して水分の無駄な蒸散を防ぐ[2]。

一般向けの医学書は、角層が基本的に水を通さず、傷のない状態では大半の細菌・ウイルスなどの侵入を防ぐと説明する[1]。辞典と医学書で表現は異なるが、「水の保持」と「侵入の防止」の二つを、死んだ細胞の層が受け持つ点は一致している。

ここで疑問が生じる。生きた細胞のほうが、環境に応じて反応できるはずだ。それでも体の最前線を、役目を終えた細胞の層が担っているのはなぜか。しかも、この層が均一な「ふた」ではなく、内部に構造をもつことが、近年になって測定で示された。

2. ばいきんを ふせぐのは、すっぱい まん中の そう

2. 2024年、角層が酸性度のちがう三つの層に分かれると分かった

2. 理化学研究所などの報告:角層はpH 6.0・5.4・6.7の三層構造

2024ねん、日本の けんきゅう ちーむが、かくそうの 中を くわしく しらべました[3]。かくそうは ぜんぶ おなじ ではなく、三つの そうに わかれて いたのです。

下の そうは、すこしだけ すっぱい そう。まん中の そうは、さんせいが いちばん つよい(いちばん すっぱい)そう。上の そうは、すっぱく ない(ちゅうせい)そうでした。

この まん中の すっぱい そうが、ばいきんの ひとつ、おうしょくブドウきゅうきんが 入って くるのを ふせいで いました[3]。ただし、この けんきゅうには ネズミを つかった じっけんも ふくまれます。ネズミでは、体の どの ぶぶんでも 三つの そうが ありましたが、人の どこでも おなじかは、この けんきゅうからは いえません。

理化学研究所や慶應義塾大学などの研究チームは、2024年5月、角層の内部を測定した結果を発表しました。報告によると、角層の下層は弱い酸性(pH6.0)、中層は酸性(pH5.4)、上層は中性(pH6.7)で、三つの層に分かれていました[3]。

中層の酸性が、細菌の侵入を防いでいた

pHの数字が小さいほど、酸性が強くなります。三つの層のうち、いちばん酸性が強いのは真ん中の層です。この中層の酸性が、黄色ブドウ球菌という細菌の侵入を防いでいたと報告されています[3]。

ただし、この研究にはマウスを使った実験が含まれています。マウスでは体の部位によらず三つの層が確認されましたが、人の各部位でも同じかどうかは、この研究からは言えません。

では、いちばん外側の上層が中性なのは、なぜでしょうか。次の章で、皮膚にすむ細菌との関係を見ます。

理化学研究所・慶應義塾大学などの研究(2024年5月、Nature Communications)は、角層の内部に、pHの異なる三つの層があることを示した。下層は弱酸性(pH 6.0)、中層は酸性(pH 5.4)、上層は中性(pH 6.7)である[3]。

この構造で注目されるのは、中層の酸性である。報告では、中層の酸性環境が黄色ブドウ球菌の侵入を防いでいた。つまり角層は、物理的に水を通さない層であるだけでなく、層ごとに化学的な条件を変えることで、病原性をもちうる細菌への備えにもなっている[3]。

ただし、この結果にはマウスでの実験が含まれる。マウスでは部位によらず三層構造が確認されたが、人の各部位でも同じpH分布かどうかは、この研究からは言えない。層の厚さそのものは、一般向けの数値に出典によるばらつきがあるため、ここでは「薄い層」とだけ扱う。

残る疑問は、上層だけが中性である理由だ。次章で、この中性に常在菌がどう関わるかを見る。

3. ふけや あかは、はがれた ひふ

3. ふけやあかは、はがれて入れかわる皮膚の外側

3. 常在菌が上層を中性にし、酵素の働きが角層の厚みをそろえる

いちばん 上の そうが ちゅうせいなのは、ひふに すんで いる ちいさな せいぶつ(ひふの さいきん)の はたらきの ためです[3]。

この 上の そうでは、かくそうの さいぼうを はがす 「こうそ」が はたらきます。こうそは、上の そうでだけ はたらくので、かくそうの あつさを たもつのに、ちょうど よい しくみだと かんがえられて います[3]。

はがれた ところは、ふけや あかに なります。すると 下の そうから、あたらしい さいぼうが おぎなわれます[2]。

ひふの そとがわは、ずっと おなじ ものでは ありません。すこしずつ はがれ、すこしずつ いれかわって います。

研究では、上層が中性になっているのは、皮膚にすむ細菌の集まり(細菌叢、常在菌ともいいます)のはたらきによると報告されました[3]。皮膚にすむ細菌が、角層の状態にも関わっているという内容です。

はがす酵素は、上層でだけ動く

角層の細胞どうしは、くっついています。その細胞をはがす酵素(カリクレイン)は、上層でだけ働きます。そのため、下の層から細胞が補われても、角層の厚みを一定に保つのに適した構造だと示されました[3]。

はがれた細胞は、ふけやあかになります。辞典にも、表面がはがれ落ち、内側の層から新しい細胞が補われると書かれています[2]。

皮膚の外側は、固定された壁ではありません。少しずつはがれ、少しずつ入れかわることで、いつも同じ状態を保っています。では、体のすべての場所で、この壁は同じ厚さなのでしょうか。

上層が中性である理由について、研究チームは、皮膚の細菌叢(常在菌)による影響を挙げている[3]。細菌を防ぐ層の最外側に、細菌が棲みついていて、その性質が層の条件を決めているという点は、防御を「排除」だけで考えると見落としやすい。

もう一つの特徴は、角質細胞をはがす酵素カリクレインが、上層でのみ活性化することだ。そのため、下層から細胞が補われても、角層の厚みを一定に保つのに適した構造だと示唆された[3]。表面ははがれてふけやあかとなり、内側の層から新しい細胞が補われるという辞典の記述も、この循環と合致する[2]。

角層は、はがれと補充のつり合いで保たれる。バリアとは、静的な壁ではなく、はがれと補充が釣り合うことで維持される状態だと読める。

この「一定の厚み」は、全身で同じ値という意味ではない。場所によって、層の厚みはどう変わるのか。

4. てのひらと あしの うらは、どうして ぶあつい?

4. 手のひらや足の裏では、角層がとくに厚い

4. 部位による厚さのちがい:角層が発達する場所と、皮下脂肪層が薄い場所

ひふの あつさは、場所に よって ちがいます。かくそうは、てのひらや 足の うらで、とくに ぶあつく なります[2]。

てのひらや 足の うらは、ものを にぎったり、じめんを ふんだり する ところです。ここは、すれたり おされたり する ことが おおい ばしょです。

いっぽう、まぶたの ひかしぼうそうは、とても うすい ことが しられて います[1]。おなかなどでは、人に よって 5〜10センチも ある ことが あります。

この 5〜10センチは、ひふの いちばん ふかい ひかしぼうそうの あつさです。ひふ ぜんたいの あつさでは ありません。

皮膚の厚さは、体の場所によってちがいます。角層は、手のひらや足の裏で、とくによく発達して厚くなります[2]。ものを握ったり、地面を踏んだりして、こすれたり押されたりすることの多い場所です。

数字を読むときの注意

医学書には、まぶたの皮下脂肪層はとても薄い一方で、腹部などでは人によって5〜10センチメートルにもなると書かれています[1]。この数字は、皮下脂肪層の厚さです。表皮や皮膚全体が5〜10センチあるという意味ではありません。

厚さの数字は、どの層の話なのかを見分けないと、思わぬ読みちがいが起こります。皮膚の「厚さ」という言葉は、資料によって、表皮だけ、皮膚全体、皮下脂肪層までを含めた長さなど、ちがう範囲を指すことがあります。

では、守りの厚い手のひらや足の裏でも、ものの感触が分かるのは、なぜでしょうか。

角層は、足の裏や手のひらで特に発達し、厚くなる[2]。手のひらや足の裏は、物をつかみ、地面を踏むなど、摩擦や圧力を受けやすい部位だ。

厚さの比較では、層の取りちがえに注意が要る。MSDマニュアルは、まぶたの皮下脂肪層がとても薄い一方、腹部などでは人により5〜10cmに達すると述べる[1]。この数値は皮下脂肪層のものであり、表皮や角層の厚さではない。

「皮膚の厚さ」という言葉は、角層だけ、表皮全体、皮膚全体のどれを指すかで、数字の意味が変わる。出典を読むときは、どの層の厚さかを、まず確かめたい。

では、角層が厚い手のひらでも触感が保たれているのは、なぜか。感覚を受けとる構造は、どの層にあるのか。

5. ひふで さわった かんじを とらえるのは、どこ?

5. 触った感じ・温度・痛みは、真皮の神経がとらえる

5. 皮膚感覚:真皮の神経終末と、辞典ごとにちがう分類

さわった かんじを とらえるのは、ひふの 中の ふかい ところに ある しんぴです。しんぴには、しんけいの はしっこ(しんけいしゅうまつ)が あります[1]。

しんけいの はしっこは、いたみ、さわった かんじ、おされた かんじ、あつさ・つめたさを かんじとります。ゆびさきや つまさきは、さわった かんじに とても びんかんです。

ひふで うける かんじは、「ひふかんかく」と いいます。しょくかく、あっかく、おんかく、れいかく、つうかくなどに わけられます[5]。

わけかたは、じてんに よって すこしずつ ちがいます。かゆみは、べつの うけとりきを もたない と いう せつめいも あります。

医学書によると、真皮にある神経終末が、痛み・触感・圧力・温度を感じとります。指先やつま先は、触感にとても敏感です[1]。同じ皮膚でも、場所によって、触った感じの受けとりやすさがちがいます。

皮膚感覚は、いくつに分けられる?

皮膚や粘膜など、体の表面で受ける感覚を、皮膚感覚といいます。辞典では、触覚・圧覚・温覚・冷覚・痛覚などに分けて説明されています[5]。

分け方は、辞典や事典によって少しずつちがいます。振動の感覚を一つの種類として入れるものもあれば、かゆみには別の受容器がないと説明するものもあります。

感覚の「種類」の数は、決まった一つの答えがあるわけではなく、どう整理するかによって変わります。その感覚は、体の熱の調節ともつながっています。暑い日には、皮膚は何をしているのでしょうか。

真皮に分布する神経終末は、痛み・触感・圧力・温度を感じとる。指先やつま先は触感に極めて敏感である[1]。感覚を受けとる神経終末は、角層ではなく、その下の真皮にある。

体表面で受ける感覚の総称は皮膚感覚で、触覚・圧覚・温覚・冷覚・痛覚などに分けられる[5]。ただし、分類は辞書・事典ごとに異なる。振動覚を独立に立てるもの、かゆみには専用の受容器がないと説明するものなど、整理の仕方が分かれる。

「感覚はいくつあるか」という問いの答えは、何を一つと数えるかで変わる。

温覚・冷覚は、体温調節ともつながる。外が暑いと分かった体は、どのようにして熱を逃がすのか。

6. あつい とき、ひふは なにを して いるの?

6. 暑いとき、汗と血管が体の熱を逃がす

6. 体温調節:視床下部の指令と、汗腺・血管による放熱

あつい ときや、たくさん うごいた ときに、ひふの 汗あせせんから 汗あせが でます[1]。

汗あせが ひふから じょうはつ(水が 水じょうきに なる こと)する とき、体の ねつを うばって いきます。それで、体の 温度が さがります[1]。

ひふの 中の 血管けっかんも はたらきます。あつい ときは、血管けっかんが ひろがって ねつを にがします。さむい ときは、血管けっかんが ちぢんで、体の ねつを にがしにくく します[1]。

体の 温度を 一定に たもつ 「しれいとう」は、のうの しじょうかぶと いう ところに あります[4]。

汗は、熱やストレスに反応して汗腺から出ます。汗が皮膚の表面から蒸発するとき、体の熱をうばって、体温が下がります[1]。体温が上がったとき、体の水分を汗として放つことで、体温を一定に保つ働きがあると説明されています[4]。

血管も、熱の出入りを調節する

汗だけでなく、真皮の血管も関わっています。暑いと血管が広がって熱を逃がし、寒いと血管が縮んで、体の中の熱を逃がしにくくします[1]。

体温を調節する中枢は、脳の視床下部にあります。熱を逃がす器官は、汗腺や血管です[4]。脳が指令を出し、皮膚が実行する、という役割分担になっています。

皮膚は、外からの光にも向き合っています。次は、日ざしに対する皮膚の守りを見ましょう。

体温が上がると、水分を汗として放散して体温を一定に保つ。この調節の中枢は脳の視床下部にあり、熱を逃がす実行器官が汗腺と血管である[4]。体温調節の汗を出すのは、毛のない部分の皮膚に開口するエクリン汗腺である。

汗が皮膚から蒸発すると体温が下がる[1]のは、水が気体になるとき熱を必要とするためで、汗そのものが冷たいわけではない。

真皮の血管も放熱を担う。暑いときは拡張して熱を逃がし、寒いときは収縮して体内の熱を保つ[1]。したがって、皮膚は水の蒸発と血流の二つの経路を使い分けて、熱の収支を調整している。

皮膚が温度を感じ取り、視床下部が判断し、汗腺や血管が熱を逃がす。この連携で体温を調節する。では、日光という外からの負荷に対して、皮膚はどう備えるのか。

7. ひなたで、ひふは どう 体を まもるの?

7. 紫外線をさえぎる色素を、表皮の奥で作っている

7. メラニンによる紫外線の遮断と、ビタミンDの合成

ひふの そとがわの すぐ 下に、「メラニン」と いう いろの もとを つくる さいぼうが あります[1]。

メラニンは、日光に ふくまれる しがいせんを さえぎる はたらきを します。しがいせんは、さいぼうの 中の だいじな ぶぶん(DNA)を きずつける ことが あります[1]。

ひふは、まもる だけの ものでは ありません。ひふは、ビタミンDという えいようの もとを つくる ことにも かかわって います[1]。

ひふの そとがわでは、いきて いない さいぼうが かさなって、水や ばいきんを ふせいで います。ほかにも ひふは、ねつを にがし、さわった かんじを とらえ、日ざしを さえぎります。

表皮の基底層にあるメラノサイトという細胞が、メラニンという色素を作ります。医学書は、メラニンの最も重要な機能は、DNAを傷つける日光の紫外線を遮ることだと説明しています[1]。

守るだけではない

皮膚は、ビタミンDの合成にも関わっています[1]。外からの害を防ぐ一方で、体に必要なものを作る仕事にも、一枚の皮膚が関わっているのです。

ここまでの話をまとめると、皮膚の表面では、生きていない細胞が重なって、水や細菌の侵入を防いでいます。そのほかにも、皮膚は熱を逃がし、触った感じをとらえ、日ざしをさえぎっています。

2024年に分かった三層の構造は、この話の「まだ新しい部分」です。皮膚には、まだ分かっていないことが残っています。

メラニンは、表皮の基底層にあるメラノサイトが作る。MSDマニュアルは、メラニンの最も重要な機能を、DNAを傷つける日光の紫外線の遮断と述べる[1]。したがって、角層による物理的・化学的なバリアの内側に、紫外線という光のバリアが、別の細胞によって重ねられている。

皮膚はまた、ビタミンDの合成に関与する[1]。防御の器官でありながら、体内で必要な物質の産生にも関わるという二面性がある。ただし、今回の資料からは、合成の詳しい経路や必要な日光の量までは述べられない。

ここまでを整理すると、皮膚の働きは、(1)水分の保持と侵入の防止(角層)、(2)体温調節(汗腺・血管)、(3)感覚(真皮の神経終末)、(4)紫外線の遮断(メラニン)に分けて説明できる。その中心にあるのは、皮膚の表面で、生きていない細胞が重なって水や細菌の侵入を防ぐという、意外な構図である。

2024年の三層構造は、この構図に新しい情報を加えた。バリアの層が層ごとにpHの異なる構造をもち、上層の中性には常在菌が関わる。皮膚の防御は、ただの壁ではなく、層ごとに条件を変えた構造だと読める。

8. 手と うでの ちがいを、さがして みよう

8. 手と腕で、皮膚のはたらきを見つけてみる

8. 検証の道すじ:触りくらべと、水の蒸発による冷却

うえの 3つの ことは、じぶんの 体で たしかめられます。

やってみよう その1 てのひらと、うでの うちがわを、ゆびで さわりくらべて みましょう。かたさや、あつみは、おなじでしょうか。おなじ つよさで そっと さわった とき、どんな かんじが するか、くらべて みましょう。

やってみよう その2 てのこうに 水を すこし つけて、そっと 息を ふきかけます。すうっと ひんやり するのは、水が じょうはつして、ねつを うばうからです[1]。

2024ねんに わかった 三つの そうは、人の どこでも おなじかは、まだ はっきり していません。これからの けんきゅうで、わかって くるかも しれません。

ここまで読んだことは、身近な体験で確かめられます。

やってみよう その1 手のひらと腕の内側を、指でなぞって比べます。かたさ、厚み、同じ強さでそっと触れたときの感じに、ちがいがあるでしょうか。

やってみよう その2 手の甲に水を少しつけ、そっと息を吹きかけます。ひんやりするのは、水が蒸発するときに熱をうばうからです。汗が蒸発して体温が下がるしくみと、同じ原理です[1]。

次の問い

2024年の三層構造の結果は、マウスの実験を含んでいます。人の体のどの場所で、どのくらい同じなのか。年齢や体の部位でちがうのか。これは、これからの研究で分かってくることです。原典の理化学研究所のプレスリリースは日本語で読めます[3]。

本稿の記述は、日常の範囲で検証できるものと、研究の範囲でしか言えないものに分けられる。

前者として、手のひらと前腕の内側を触りくらべ、厚さ・かたさ・触れた感覚の差を観察できる。皮膚の部位差(角層の厚さ・感覚の鋭さ)に対応する[2][1]。また、手の甲に水をつけて息を吹きかけると、蒸発による冷却を体感できる。これは汗による体温低下と同じ原理である[1]。

後者として、角層の三層構造がある。この研究ではマウスの部位によらず三層構造が確認されたが、人の各部位でも同じかは、この研究からは言えない[3]。部位・年齢・個人差による分布の違いは、プレスリリースの範囲では示されていない。

一次資料としては、理化学研究所のプレスリリース(2024年5月16日)と、原論文(Nature Communications)がある。プレスリリースは日本語で読め、原論文では、層ごとのpHの結果を詳しく読める。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文で使った資料です。診断や治療の判断に使うものではありません。

  1. MSDマニュアル家庭版「皮膚の構造と機能」 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/17-皮膚の病気/皮膚の生物学/皮膚の構造と機能 (皮膚の3層、角層のバリア、汗・血管、感覚、メラニン、厚さ)
  2. コトバンク「角質層」(デジタル大辞泉/精選版 日本国語大辞典) https://kotobank.jp/word/角質層-47905 (角質層が死んだ細胞からなること、部位による厚さ)
  3. 理化学研究所 プレスリリース(2024年5月16日) https://www.riken.jp/press/2024/20240516_1/index.html (角層の三層構造とpH、常在菌、酵素による厚みの維持)
  4. 健康長寿ネット(長寿科学振興財団)「汗と運動」 https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/undou-shougai/undou-ase.html (汗による体温調節、視床下部)
  5. コトバンク「皮膚感覚」(デジタル大辞泉・心理学事典・ブリタニカ) https://kotobank.jp/word/皮膚感覚 (皮膚感覚の種類と分類のちがい)

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