このサイトは、ほんの入り口です

ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

ナマケモノの 2つの なかまは そっくりなのに しんせきじゃ ない?

そっくりなナマケモノの2属は、近い親戚ではなかった ── 指・首・食事のちがい

フタユビとミユビは、なぜ似ているのか ── 指・首の骨・代謝を比べる

分野:生きもの

ナマケモノには、フタユビの なかまと ミユビの なかまが います。ぱっと 見ると そっくりですが、じつは 近い しんせきでは ない ようです。

では、どこが ちがい、どうして にて いるのでしょう。ゆびや くびの ほねを くらべると、ちがいが 見えて きます。

木にぶら下がるフタユビナマケモノとミユビナマケモノは、見た目がそっくりです。ところが古代のDNAの研究では、この2つのグループ(属)は近い親戚ではなく、別々の系統から木の上の暮らしにたどり着いたと考えられています。

では、2つのグループはどこがちがい、なぜこんなに似てしまったのでしょうか。指の数、首の骨、食事、動き方を比べると分かります。

現生のフタユビナマケモノ属(Choloepus)とミユビナマケモノ属(Bradypus)は、外見こそ似ているが、古代DNAの解析では近縁ではなく、木の上の生活を独立に獲得した別の系統とされる[8]。

では、2属は体のつくり・食性・活動量でどこまで異なり、なぜ似た姿に行きついたのか。前足の指、頸椎の数、野外での代謝率、系統の順に比べると分かる。

読み方を切り替えられます。画面の上にある「よみかた」のボタンで、小学校低学年むけ・小学校高学年むけ・中学生むけの3つの書き方に切り替わります。むずかしいと思ったら、いつでもやさしい方に戻ってください。選んだ読み方はブラウザが覚えているので、次に別の記事を開いたときも同じ読み方で始まります。

1. ゆびの かずを かぞえて みよう

1. 「2本指」と「3本指」の数え方に落とし穴がある

1. 指の数 ── 前肢2本と3本、後肢はどちらも3本

フタユビは「ゆびが 2ほん」、ミユビは「ゆびが 3ぼん」という 名前です。では、あしの ゆびは ぜんぶ ちがうのでしょうか。

かぞえて みると、うしろあしは どちらも 3ぼんです[1][2]。ちがうのは まえあしだけで、フタユビは 2ほん、ミユビは 3ぼんです。

どちらの 手にも、大きく まがった かぎづめが あります。木の えだに ひっかけるのに、ぴったりです。

体は、フタユビの ほうが すこし 大きい ようです[4]。

名前だけ見ると、フタユビは「指が2本」、ミユビは「指が3本」の動物に思えます。ところが数えてみると、後ろ足の指はどちらも3本です[1][2]。

ちがうのは前足です。フタユビの前足の指は2本、ミユビは前足も後ろ足も3本です。日本語の事典にも、フタユビは前足に2本・後ろ足に3本の指があると書かれています[2]。

指の先には、どちらも大きく曲がった鉤づめがあり、木の枝にひっかける道具になっています[2]。大きさはフタユビのほうがやや大きく、体重は4〜8kg、ミユビの一種のノドチャミユビナマケモノは3.5〜5kgほどとされます[1][4]。

指の数のほかにも、2つのグループのちがいはあるのでしょうか。体の中をのぞくと、首の骨にも差が見つかります。

名称から「指が2本/3本」と誤解しやすいが、Choloepus は前肢2指・後肢3指、Bradypus は前後肢とも3指である[1][2]。すなわち後肢は共通で、差は前肢にある。いずれの指にも湾曲した大きな鉤爪があり、枝にかけて体を支えるのに使われる[2]。

体の大きさは、Choloepus が体長58〜70cm・体重4〜8kg、ノドチャミユビ(Bradypus variegatus)が体長約60cm・体重3.5〜5kg前後で、Choloepus がやや大きい[1][4]。ただし本稿のミユビの記述は、ノドチャミユビ中心の資料による。外見の差が前足の指に限られるなら、内部の構造にも差があるのかを、次に頸椎で確かめる。

2. くびの ほねの かずも ちがう

2. 首の骨の数は、2つのグループでちがう

2. 頸椎の数 ── Choloepus は5〜7個、Bradypus は8〜10個

くびの ほねは、ほとんどの ほにゅうるいで 7こです。人も、キリンも 7こです。

ところが ナマケモノは ちがいます。フタユビは 5〜7こ、ミユビは 8〜10こです。しゅるいに よって かずが ちがいます[3]。

ミユビの ふえた ぶんの ほねは、くびが のびたと いうより、むねの ほねが くびの ほうに 入って きたもの、という せつめいが あります[3]。

首の骨(頸椎)の数は、人もキリンも、ほとんどの哺乳類で7個です。ナマケモノはこの決まりから外れていて、しかも2つのグループで数がちがいます。

2010年の論文によると、フタユビはホフマンフタユビが5〜6個、リンネフタユビが7個です。ミユビは8〜10個で、種によって数がちがいます[3]。

ミユビの余分な首の骨は、肋骨を持たず、発生の途中の様子が他の哺乳類の胸の一番前の骨に似ているといいます。首が長く伸びたというより、胸の骨が首の側に入りこんだのではないか、という解釈です[3]。

体のつくりだけでなく、食べ物にもちがいがあります。

哺乳類の頸椎は通常7個だが、ナマケモノでは例外的である。Hautier ら(2010)によれば、Choloepus は5〜6個(C. hoffmanni)または7個(C. didactylus)、Bradypus は8〜10個と、種によって数が異なる[3]。資料によってはミユビを8〜9個とする表記もある。

ミユビの余分な尾側の頸椎は、従来は頸椎とされてきたが、発生上は他の哺乳類の最前部の胸椎と似た特徴を示す。そのため、首が伸びたのではなく胸椎が首側に取りこまれたと解釈される[3]。こうした体のつくりの差が、食性や活動量の差とどう関わるのかは、この資料からは分からない。次に、食べるものと活動量の差をみる。

3. なにを たべて いるの?

3. フタユビは小動物まで食べ、ミユビは植物を食べる

3. 食性 ── 小動物まで食べる Choloepus と、植物食の Bradypus

フタユビは、おもに 夜に うごきます。木の 葉の ほか、き の み、わかい め、ときには 小さな どうぶつまで たべるようです[1][5]。

ミユビは、しょくぶつを たべます。おもに 葉ですが、花や くだものも たべます。ノドチャミユビは、セクロピアという 木を おもに たべると いわれます[4]。

フタユビは 夜に 木に ぶらさがって、1日に 15〜18じかんも ねる そうです[5]。

フタユビは、夜に活動することが多く、木の葉を中心に、果実や新芽、木の実、樹皮、小さな脊椎動物まで食べるとされます[1]。動物園の資料でも、食べ物は木の葉や木の実、新芽などと説明され、1日のうち15〜18時間ほどは木にぶら下がって眠ります[5]。

これに対してミユビは植物を食べ、葉を中心に花や果実も食べます。ノドチャミユビナマケモノでは、主にセクロピアという木を食べると記されています[4]。ただし、これはミユビ5種のうち1種の記述で、ほかの種にそのままあてはまるかは分かりません。

小さな動物まで食べるといわれるフタユビと、植物を食べるミユビ。この差は、体の動かし方のちがいにもつながっているようです。

Choloepus は夜行性で、葉を主としつつ、新芽・果実・堅果・樹皮・一部の花、さらに小型の脊椎動物まで食べるとされる[1]。飼育下の資料でも、木の葉・木の実・新芽などが挙げられ、1日15〜18時間ほどは樹上にぶら下がって眠る[5]。

これに対し Bradypus variegatus は植物を食べ、葉を中心に花や果実も食べる。主にセクロピア属の樹木を食べる[4]。ただしこの記述はミユビ5種のうち1種のもので、属全体には一般化できない。食べ物のちがう2属では、活動量にも差が出るのではないか。次の研究がそれを数字で示している。

4. ミユビは もっと のんびり?

4. 野生で測ると、ミユビのほうがさらに省エネだった

4. 野外代謝率 ── ミユビはフタユビより31%低い

コスタリカの 森で、ナマケモノを しらべた けんきゅうが あります。ミユビ 10とう、フタユビ 12とうが ふくまれて います[6]。

その けっか、ミユビが つかう エネルギーは、フタユビより 31パーセント 少ない、と ほうこく されました[6]。ほかの どうぶつと くらべても、とても 少ない ほうだと いいます。

フタユビは よく うごき、ミユビは 木の 上で 食べて ねる ことが 多いと いわれます[6]。

コスタリカの野生のナマケモノを調べた研究が、ミユビとフタユビの暮らしぶりの差を数字で示しています。ミユビ10頭とフタユビ12頭を測ったところ、野外でのエネルギー消費(野外代謝率)は、ミユビのほうが31%低いと報告されました。冬眠中の動物を除くと、哺乳類で記録された最低の値だと伝えられています[6]。

ミユビは、1日わずか460キロジュール(およそ110キロカロリー)ほどしか使わない、と研究者は述べています[7]。

動き方もちがいます。ミユビは林冠で食べて眠ることが多く、ほとんど動きません。フタユビは、ずっとよく動き回ります[6]。研究者は、木の上で暮らす動物は環境に特化するほど、1日のエネルギー消費が小さくなると説明しています[7]。

では、これほどちがう2つのグループが、なぜ見た目はそっくりなのでしょうか。

Pauli ら(2016)の報告を伝えた記事によると、コスタリカの野生個体を対象に、Bradypus variegatus(10頭)の野外代謝率は Choloepus hoffmanni(12頭)より31%低く、冬眠していない哺乳類で記録された最低値とされる[6]。論文原文は確認しておらず、ここでは報道を通した数字として扱う。別の資料は、Bradypus の1日のエネルギー消費を約460kJ(約110kcal。460÷4.184≒110)と伝える[7]。

行動にも差があり、Bradypus は林冠で摂食と休息を繰り返してほとんど動かず、Choloepus はよく動き回る[6]。研究者は、樹上性の動物は特殊化が進むほど1日のエネルギー消費が小さいと述べ、Bradypus は Choloepus より環境に特化していると位置づける[7]。これだけちがう2属が、なぜ似た外見を持つのか。系統をさかのぼると、意外な答えがある。

5. そっくりなのは なぜ?

5. 別々に木の上で暮らすようになったのに、そっくり

5. 系統 ── 木の上の生活は独立に進化した

むかしの ナマケモノには、じめんで くらす なかまも いました。いまは いない、ミロドンの なかまなどです[8]。

古い ほねから とった DNAを しらべると、フタユビは ミロドンの なかまに 近く、ミユビは べつの グループの 中に 入る ことが 分かりました[8]。

つまり、木の 上の くらしは、べつべつの グループが、べつべつに 見つけた らしいのです。ただし、くわしい ところは まだ 研究の とちゅうです。

現在のナマケモノは2つの属だけですが、昔はもっと多くの仲間がいました。絶滅した地上性のナマケモノには、ミロドンの仲間などがいます[8]。

古代DNAの解析では、フタユビは絶滅した地上性のミロドン類に近く、ミユビは別の絶滅グループ(メガテリウム類を含む系統)の中に入ることが示されました。2つのグループは、地上で暮らしていた別々の祖先から、それぞれ木の上の暮らしを進化させたと考えられています[8]。

ナマケモノの主要な8つの科は、約3600万〜2800万年前に分かれたとされます[8]。

別々の道をたどったのに、似た姿になった。生きものの進化の面白さが、2つを並べて見るとよく分かります。

Delsuc ら(2019)の古代DNA解析の要旨によると、現生ナマケモノは2つの別系統で、それぞれ地上性の祖先から独立に樹上性を進化させた。フタユビは絶滅したミロドン類と群をなし、ミユビは別の絶滅系統(メガテリウム類を含む)の中に入る[8]。つまり Choloepus と Bradypus の共通点は、共通の樹上性の祖先に由来するのではなく、収斂的に得られた形質だと読める。

主要8科の分岐は3600万〜2800万年前とされる[8]。系統の細部は要旨と解説に基づくため、断定は避ける。本稿が扱えなかったのは、フタユビ2種・ミユビ5種それぞれの細かな差である。

6. どうぶつえんで くらべて みよう

6. 見かけたら、指・動き・首を見比べる

6. 出口 ── 観察の視点と資料の読みどころ

写真や ずかんで ナマケモノを 見る とき、まず まえあしの ゆびを かぞえて みましょう。つぎに、うしろあしも かぞえます。どちらも 3ぼんの はずです。

どうぶつえんに いる ときは、よく うごくか、じっと して いるかも 見て みましょう。ナマケモノを 見られる どうぶつえんは かぎられます。行く まえに、どうぶつえんの ホームページで たしかめて ください。

家でできるのは、写真や図鑑で前足の指を数えることです。そのあと後ろ足も数えて、「2本指」「3本指」という名前との差を確かめてみてください。

動物園で見られるときは、前足の指や動き方を見比べます。食事を見られたら、何を食べているかも観察します。ナマケモノを飼育している動物園は限られるので、事前に園のホームページで確認してください。

もっと読みたくなったら、古代DNAの解説[8]と、首の骨の論文[3]を開いてみてください。

観察では、前肢と後肢の指の数を別々に数え、動きの量を見比べる。ナマケモノを展示している動物園は限られるため、事前に園の情報を確認するとよい。

資料を読むなら、頸椎は Hautier ら(2010, PNAS)[3]、系統は McMaster 大学の古代DNA解説[8]、代謝率は報道[6]と大学広報[7]から原論文にたどれる。ミユビ5種・フタユビ2種の種ごとの差は、ここでは扱っていない。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

出典について:事典・動物園の資料・大学の広報・論文の解説を使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。海外の資料は英語のままのものがある。

  1. Wikipedia「Two-toed sloth」。https://en.wikipedia.org/wiki/Two-toed_sloth (指の数、食べ物、体の大きさについて。二次資料)
  2. コトバンク「ナマケモノ」。https://kotobank.jp/word/ナマケモノ (指の数と鉤づめについて)
  3. Hautier et al. 2010, PNAS(PMC)。https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2973901 (首の骨の数と、余分な骨の解釈について)
  4. Animal Diversity Web「Bradypus variegatus」。https://animaldiversity.org/accounts/Bradypus_variegatus/ (ノドチャミユビの食べ物と体の大きさについて)
  5. アドベンチャーワールド プレスリリース(2017)。https://kyodonewsprwire.jp/release/201710317416 (フタユビの食べ物と睡眠について)
  6. Science News「Three-toed sloths are even more slothful than two-toed sloths」。https://www.sciencenews.org/blog/wild-things/three-toed-sloths-are-even-more-slothful-two-toed-sloths (野外代謝率と動き方について。報道)
  7. UW-Madison News。https://news.wisc.edu/?p=28803 (1日のエネルギー消費と特殊化について)
  8. McMaster大学 古代DNAセンター「Ancient DNA suggests drastically different evolutionary history for modern and extinct sloths」。https://adna.mcmaster.ca/news/ancient-dna-suggests-drastically-different-evolutionary-history-for-modern-and-extinct-sloths (系統と、木の上の暮らしの独立した進化について)

なおした ところ

更新履歴

更新履歴(改版の記録)

このサイトでは、公開した記事の本文は原則として書き直しません。誤りが見つかったときや、内容が古くなったときだけ手を入れ、その理由をこの欄に残します。