1. ポテトチップスは、なぜ こんなに かるいの?
1. ポテトチップス1枚は、じゃがいもの何分の1なのか
1. 原料の約30%しか残らない ── ポテトチップスの歩留まり
じゃがいもを 手に のせると、ずっしり おもいです。ところが ポテトチップスの 一まいは、ふうせんの ように かるい。
じゃがいもの 水は、およそ 八わり。それを あぶらで あげて、水を ほとんど とばして しまいます[1]。かわや いたんだ ところも、とりのぞきます。だから、できあがりは、もとの おもさの 三分の一ほどです。
たとえば 百グラムの じゃがいもから できるのは、三十グラムほど。水が ぬけた あとには、小さな あなが たくさん のこります。この あなが、サクサクの もとです。
では、あなを のこしたまま 色よく あげる には、どうすれば いいのでしょう。
じゃがいもを手に取ると、ずっしりと重く感じます。ところがポテトチップスは、袋いっぱいでもびっくりするほど軽い。理由は、じゃがいもの約80%が水分で、揚げる工程でその大部分が飛ぶからです。皮や傷んだ部分も取り除かれるので、製品になるのは原料の重さの約30%が目安とされます(取材記事より)[1]。
たとえば100gのじゃがいもからできるチップスは、30gほどです。この30%は、原料の重さに対する製品の重さの目安です。
水が蒸気になって抜けたあとには、細かい空気の穴が残ります。かんだときにパリッと割れるのは、この薄い壁と穴のおかげです。カルビーは年間約22万トンのじゃがいもを使い、これは国内の生産量274万トンの約8%にあたると紹介されています(22÷274≒0.08。取材時点の数字です)[1]。
では、水を飛ばしながら、焦がさずにきれいな色で仕上げるには、どんな工夫が要るのでしょうか。
ポテトチップス1枚は、じゃがいも何個ぶんなのか。J-Net21の取材記事によれば、原料の重さの約30%が製品になる。じゃがいもは約80%が水分で、揚げる工程で大部分の水分が飛ぶためである[1]。ただし皮や傷んだ部分も取り除かれるので、減った70%がすべて水分というわけではない。30%は、原料重量に対する製品重量の目安であり、袋の中身の水分率でもない。
水が蒸気になって抜けた跡が、スナックの内部に残る細かな空気の穴になる。かんだときにパリッと割れるのは、この薄い壁と穴が壊れるからだと考えられる。
規模を見ると、同社が使うじゃがいもは年間約22万トンで、国内生産量274万トンの約8%にあたる(22÷274≒0.080。記事の取材時点の数字で、現在値とは限らない)[1]。
では、水を飛ばす高温の調理は、色や安全面で何を引き起こすのか。次の章で、焦げ目の問題を扱う。
2. こんがり 色は、どこまで いいの?
2. こんがり色の「こげ目」を、メーカーはどう調整するのか
2. 120℃以上で生じる物質 ── アクリルアミドを減らす工夫
おいしそうな こんがり 色は、あぶらで あげたり やいたり した ときに できる、こげ目です。農林水産省は、こげ目が 多い たべものほど、アクリルアミドという ぶっしつが 多く ふくまれると せつめい して います[2]。
この ぶっしつは、百二十度より 高い 温度で、あげたり やいたり したときに できます。だから ポテトチップスを つくる 人たちは、こげすぎない ように いろいろ くふう して います。
じゃがいもの しゅるいを えらぶ。切ったあと、あらう。あげる 温度を ちょうせつ する。できあがった ものから、こげた ものを 目で さがして のぞく きかいも あります。ぜんぶの メーカーが すべてを して いる わけでは ありませんが、こうして 少なく しようと して います。
水を とばして、色も きれいに。ここまでが ポテトチップスです。ところが、あげない おかしも あるのです。
こんがりとした色は、おいしそうに見えるサインです。ただし、食材を120℃以上の高温で揚げたり焼いたり炒めたりすると、アクリルアミドという物質ができ、焦げ目が多いほど多く含まれると、農林水産省は説明しています[2]。
水を飛ばすには高温が要ります。その高温は、焦げを生む温度でもあります。そこでポテトチップスの作り手は、いくつかの工夫で焦げを抑えています。農林水産省の資料には、原料の保存温度の管理、ポテトチップス向きの品種を使うこと、切ったあとの洗浄、スライスの厚さや揚げ温度の調整、揚げたあとの送風冷却、色で選別する装置で焦げたものを取り除くことなどが挙がっています[2]。すべての会社がすべての工夫をしているわけではありません。
特に、アクリルアミドのもとになる糖(還元糖)が少ないじゃがいもを選ぶことと、揚げる温度と時間を最適にすることは、業界が取り組んでいる主な方法です。農林水産省のQ&Aでは、製品中の濃度は過去の調査より低下していると説明されています[6]。
水を飛ばすことと、焦がしすぎないこと。この両立で、薄切りのチップスができます。では、薄く切ったじゃがいもではなく、生地から作るスナックは、どう水を飛ばしているのでしょうか。
水分を飛ばすために温度を上げると、今度は焦げという別の問題がぶつかってくる。農林水産省によれば、アクリルアミドは、食材を120℃以上の高温で調理(揚げる・焼く・炒める)したときにできる物質で、焦げ目が多いほど多く含まれる[2]。
そこで、ポテトチップスの工程には、原料から仕上げまで段階ごとの対策が重なっている。同省の資料には、原料の保存温度の管理、チップス向きの品種の使用、下ゆでや洗浄、スライス厚と揚げ温度の調整、送風冷却、カラーソータによる焦げの除去などが挙がっている[2]。もとになる還元糖が少ない品種の使用と、最適な揚げ温度・時間の設定は、業界が特に取り組む方法で、製品中の濃度は過去の調査より低下しているという[6]。ただし、全社が全部を採用しているとは限らない。
ここで注目したいのは、水を飛ばす条件と焦げの条件が重なっている点である。スライスを薄くし、温度を調整するのは、水分を抜きつつ焦げを抑えるための綱渡りだと読める(この「綱渡り」という整理は筆者による)。
では、油で揚げない系統はどうか。次の章は、揚げ菓子ではないといわれるかっぱえびせんを取り上げる。
3. かっぱえびせんは、あげて いないの?
3. かっぱえびせんは「揚げた菓子ではない」とは、どういうことか
3. 生の小エビを殻ごと混ぜ、「焙煎」する ── かっぱえびせんの生地
かっぱえびせんを つくった まつおさんは、小さい ころ、お母さんが つくって くれる 川えびの かきあげが 大すきでした[3]。いつか あの あじを おかしに したい。そう おもったと、つたえられて います。
はつばいは 一九六四年。ためした ことは たくさん あります。えびを ゆでる。こなに する。でも さいごは、なまの 小えびを、あたまから しっぽまで 殻ごと ひいて、こむぎこの きじに まぜる やりかたに なりました[3]。
しゅざいきじには、かっぱえびせんは「あげた おかしでは ない」と あります。会社では「焙煎」と よび、いってから、うすく あぶらを ふきつけると いいます[3]。
水を とばして、あなを のこす。でも、やりかたは あげるだけじゃ ないのです。ところで、かたちが ぜんぜん ちがう スナックは、どうやって ふくらむのでしょう。
かっぱえびせんは1964年に発売されました。創業者の松尾孝さんには、子どものころの思い出がありました。川えびを捕るのが上手で、それをお母さんがかき揚げにしてくれたのが大好物だった。その味を菓子にしたい、と考えたと伝えられています[3]。
えびを茹でてみる、粉にしてみる。そんな試行錯誤のすえにたどり着いたのは、生の小エビを頭から尾まで殻ごとミンチにして、小麦粉の生地に均一に混ぜる方法でした。これで、エビの風味を生地の中に閉じこめたと説明されています[3]。表面に見える赤い粒は、エビをまるごと使っているしるしだと、英語の紹介記事にもあります[4]。
面白いのは火の通し方です。2010年のJ-Net21の取材記事には、かっぱえびせんは「揚げた菓子ではない」と書かれています。社内では「焙煎」と呼び、炒ったあとに植物油を吹きつけるそうです。炒ることで生地が適度にふくらみ、きめが細かくサクサクした食感になると説明されています[3]。広島市のブランド紹介は、同じ菓子を「焼き上げた」と表現しており、資料によって言い方が分かれます[5]。現在の工程が当時と同じとは限りません。
薄切りも、生地を炒る方法も、水を飛ばして穴を残す点は同じです。では、機械の出口から出てきたとたんにふくらむスナックは、どういう仕組みなのでしょうか。
かっぱえびせん(1964年発売)の発想は、創業者・松尾孝が幼少期に川エビを捕り、母がそれをかき揚げにしてくれた思い出にさかのぼる、と取材記事は伝える[3]。
製法は試行錯誤の産物だった。エビを茹でる、粉末にするといった方法を経て、最終的には、生の小エビを頭から尾まで殻ごとミンチ状にし、小麦粉の生地に均一に混ぜる方法に落ち着いた。エビの風味を生地に封じこめる狙いだという[3]。エビを殻ごとすりつぶして使い、表面の赤い粒がその証拠になるという説明も、英語の紹介記事にある[4]。
火の通し方も、ポテトチップスとは別系統である。2010年のJ-Net21の取材記事には「揚げた菓子ではない」とあり、社内では「焙煎」と呼ぶ。炒ったあとで植物油を吹きつけ、炒ることで生地が適度にふくらみ、キメが細かくサクサクした食感になるという[3]。一方、広島市の広島ブランド認定品の紹介は、広島の工場で1枚ずつ「焼き上げた」と書く[5]。認定品は特定のシリーズで、通常品と同じ工程とは限らず、取材も2010年の記事である。「揚げない」という点は取材記事の言葉であり、現在の工程の呼び名は資料で分かれる。
水を飛ばして空気の穴を残す、という目的は、薄切りでも生地でも同じである。では、生地を機械に押し通して連続的に作る系統では、何が起きているのか。
4. おしだす きかいで、どうして ふくらむの?
4. 機械の出口で、スナックが一気にふくらむのはなぜか
4. 出口で圧力が急に下がる ── 押し出し機とふくらみの条件
おしだす きかいの 中では、ざいりょうが 高い 温度と 強い 圧力の なかを ぎゅうっと おされて すすみます[7]。でんぷんが ねばねばの じょうたいに かわり、中まで 火が とおります。
出口に くると、いきなり まわりの 圧力が ひくく なります。すると、中の 水が 水蒸気に なって、ぱっと ひろがり、空気を ふくんだ かるい かたちに ふくらみます[7]。
おなべで おゆが ぐつぐつ して、あわが ぱっと でる ことが ありますね。あわが ぱっと でる ようすは すこし にていますが、スナックが ふくらむ しくみとは ちがいます。
では、水が 多いほうが、よく ふくらむのでしょうか。
押し出し機(エクストルーダー)は、粉や生地のもとを、高い温度と圧力のもとで連続的に押し出す機械です。内部ではデンプンが糊化して加熱調理され、ひとかたまりの溶けた状態になります[7]。
決め手は出口です。出口で圧力が急に下がると、中の水分がいっせいに水蒸気になって膨らみ、軽く空気を含んだ形に固まります[7]。揚げなくても、水が飛ぶ力が穴を作るのです。
ふくらみ方は条件で変わります。海外のレビュー論文では、バレルの温度135〜165℃、原料の水分10〜22%といった範囲が検討されており、温度が高いと膨らみが増して密度が下がる傾向が整理されています[7]。ただしこれは研究で試された範囲で、市販品の標準の条件ではありません。
北海道立の研究機関による、魚介入りの押し出しスナックの研究では、原料の水分によってふくらみが最大になる最適な水分があること、加熱温度もふくらみに影響すること、魚介の配合量もふくらみに影響したことが報告されています[8]。水が多ければよい、というわけではないのです。
押し出し機(エクストルーダー)は、原料を高温・高圧・せん断のもとで連続的に押し出す。デンプンが糊化して加熱調理され、溶けた状態の塊になる[7]。ふくらみの決め手は出口(ダイ)にある。出口で圧力が急に下がると、内部の水分が水蒸気になって膨張し、軽く空気を含んだ形に膨化する[7]。揚げ物のように油で水を飛ばすのではなく、内部の水そのものが穴を作る点が、前の2つの系統との大きなちがいである。
条件の幅は研究で示されている。海外のレビュー論文では、バレル温度135〜165℃、原料水分10〜22%といった範囲が検討され、温度が高いとふくらみが増して密度が下がる傾向が整理されている[7]。ただしこれは研究で試された範囲であり、市販品の標準条件ではない。
水分の影響については、北海道立総合研究機構の報告が具体的である。水産物を入れた押し出しスナックの研究で、原料水分によってふくらみ方が変わり、膨張率が最大になる最適な水分があること、加熱温度もふくらみに影響することが報告された。魚介の配合量もふくらみに影響した[8]。
この研究では、水分の量でふくらみが変わり、最大になる条件があった。ここまで3系統を見て、残る問いは、袋の中の1枚から、その作り方を読み取れるのかという点である。
5. ふくろの なかの あなを のぞいて みよう
5. 袋の中の「穴」から、作り方を読んでみる
5. 断面と原材料表示で、3系統を見分ける
スナックを ひとつ、わって みましょう。きった めんを、よく 見て ください。小さな あなが たくさん ありますか。あなの 大きさは そろって いますか。
ポテトチップスと、えびせんと、おしだして つくる ほかの スナックを くらべて、あなの ようすが ちがうか 見て みましょう。
ふくろの うらの げんざいりょうも 見て みましょう。えびせんには、えびが かいて あります。ただし、おしだして つくった スナックかどうかは、ふくろだけでは わかりません。おうちの 人と、「どうやって つくったと おもう?」と はなして みるのも いいですね。
家にあるスナックを、2〜3種類、割ってみてください。割った面をよく見て、穴の大きさや並び方にちがいがあるか比べてみてください。薄切りのチップス、えびせん、そのほかのスナックで、穴の大きさや壁の厚さを見比べます。同じ「サクサク」でも、穴のでき方にちがいが見つかるかもしれません。
袋の裏の原材料表示も手がかりです。順番は多い順に書かれています。じゃがいもが先頭か、小麦粉やとうもろこしが先頭か、えびはどこに出てくるか。見比べると、何を材料にしているかがおよそ分かります。ただし、作り方そのものは書かれていません。
個々の商品が実際にどんな条件で作られているかは、メーカーごとにちがいます。気になった人は、メーカーの公式サイトの製造の紹介や、研究機関の報告を探してみてください。食べ物の工場見学を受けつけているメーカーもあります。
3系統を、本記事の整理として並べると次のようになる。ポテトチップスは薄切りにして揚げ、水分を飛ばす。かっぱえびせんは生地を炒る(または焼く)。押し出しスナックは、高温・高圧の出口で圧力を下げ、一気にふくらませる。この3分類は、[1][3][7]の資料を並べた筆者の整理で、単一の資料の言葉ではない。
確かめる方法は身近にある。家にあるスナックを割り、断面の穴の大きさ・並び方・壁の厚さを比べる。原材料表示は含有量の多い順に書かれているので、先頭がじゃがいもか、穀物の粉か、エビがどこに出るかを見る。ただし、作り方そのものは表示から分からない。
さらに踏みこむなら、一次に近い資料を読むとよい。農林水産省のアクリルアミドのページ[2]、Q&A[6]、北海道立総合研究機構の報告[8]、押し出しのレビュー論文[7]。個別の商品の工程は、メーカーの製造紹介や工場見学の案内を探すのが近道である。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文は次の資料を突き合わせて書きました。工程や数字は、取材や研究が行われた時点のものです。
- J-Net21「カルビーのポテトチップス」取材記事。https://j-net21.smrj.go.jp/special/foods14/12.html (ポテトチップスの歩留まり、じゃがいもの使用量、揚げ条件について)
- 農林水産省「アクリルアミドについて」。https://www.maff.go.jp/j/syouan/syoku_anzen/manabu/r0603/acryl_amide.html (アクリルアミドのできる条件と、ポテトチップスでの低減の工夫について)
- J-Net21「かっぱえびせん」。https://j-net21.smrj.go.jp/special/popularfoods/2010111501.html (発売のきっかけ、生のエビを殻ごと混ぜる製法、焙煎について。2010年の取材記事)
- Hiragana Times「Kappa Ebisen」(英語)。https://hiraganatimes.com/?p=4144 (エビを殻ごと使い、表面の赤い粒が目印になるという紹介)
- 広島市 広島ブランド認定品「かっぱえびせん」。https://www.city.hiroshima.lg.jp/hiroshima-brand/tokusan/1026502/1026507/1035786.html (発売年と、焼き上げたという表現について)
- 農林水産省「アクリルアミド Q&A」。https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/acryl_amide/a_syosai/teigen/qa.html (ポテトスナック業界の取り組みについて)
- 「Effects of extrusion process conditions on the physicochemical properties of extruded snack: A review」(英語、PubMed Central)。https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11606806/ (押し出し機のふくらむ仕組みと、研究で検討された条件について)
- 北海道立総合研究機構「エクストルーダによるタンパク膨化食品の開発」。https://www.hro.or.jp/upload/43448/0704.pdf (水分とふくらみの関係について。英文要旨を確認)
なおした ところ
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