1. 画面の 数字は、何の 温度なの?
1. 画面の「59℃」は、何の温度なのか
1. 表示される温度は、水温か、肉の中心か
ていおんちょうりの きかいは、おゆを ずっと 同じ 温度に して、ふくろに 入れた おにくを ゆっくり 温めます。
たとえば 59どに 決めると、画面にも「59ど」と 出ます。でも それは、おゆの 温度です。おにくの 中の 温度では ありません。町田市の しりょうも、きかいの 温度は 水の せっていで、おにくの 中心の 温度では ないと 書いています[2]。
おにくの 中は、おゆより おくれて 温まります。どれくらい おくれるのでしょう。
低温調理器に肉を入れて、設定を59℃にします。しばらくすると、画面にも「59℃」と出ます。
ここで「肉が59℃になった」と思いたくなります。けれど画面の数字は、湯の温度です。町田市の資料は、湯せんする機械に出る温度は水温の設定温度で、肉の中心の温度ではないと説明しています[2]。
肉の中は、湯より遅れる
肉の表面は湯に触れているので、すぐ湯の温度に近づきます。いっぽう中心には、外側から熱が伝わってくるのを待つしかありません。そのため中心は、湯より遅れて温まります。この遅れがどれくらいなのかが、次の問いです。
低温調理器の画面に出る数字は、湯の温度である。町田市の資料は、湯せんを行う機械の温度は水温の設定温度で、肉の中心部の温度ではないと注意している[2]。設定を59℃にして、画面が59℃になった時点でも、肉の中心がその温度に届いたことにはならない。
理由は、熱の伝わり方にある。肉の表面は湯に直接触れて温まるが、中心には外側から熱が伝わるのを待つしかなく、湯の温度との差が大きいほど、まだ温まっていないことになる。この遅れがどのくらいで、何に左右されるのかを、次章で調べる。
2. おにくの 中は、なぜ いちばん あとに 温まるの?
2. 肉の中心が、いちばん最後に温まるのはなぜか
2. 中心の温度が遅れるしくみと、湯の温度を決める意味
温かさは、おゆに ふれた 外がわから、中へ 少しずつ つたわって いきます。だから 中は、いちばん あとに 温まります。
ある 温度計の 会社は、温度が いちばん ゆっくり かわる ばしょを「ねつの 中心」と よび、そこが いちばん ひくい 温度に なると せつめいして います[4]。りょうりで「しんおん」と いえば、この ばしょの 温度の ことです。
もう 一つ、おもしろい ことが あります。中の 温度は、おゆの 温度に ちかく なるほど、ゆっくりしか 上がりません。だから おゆを、ほしい 中の 温度の すぐ 上に して おけば、おにくは おゆの 温度より 上には ならず、やきすぎに なりません[3]。
肉の中で、いちばん最後に温まるのはどこでしょうか。答えは、いちばん外から遠い中心です。
「熱の中心」は、いちばん冷たい場所
温度計メーカーのThermoWorksは、食べ物の中で温度の変わり方がいちばんゆっくりな場所を「熱の中心(サーマルセンター)」と呼び、そこが最も低い温度になると説明しています[4]。料理でいう「芯温」は、この場所の温度を指します。
湯の温度に近づくほど、ゆっくりになる
もう一つ、調理人のDouglas Baldwinのガイドが述べていることがあります。中心の温度は、湯の温度に近づくほど上がり方がゆるやかになります。だから、ほしい中心温度のすぐ上に湯を設定しておけば、肉は湯の温度以上にはならないので、焼きすぎになりません[3]。
低い温度でゆっくり調理する理由の一つが、ここにあります。では、「遅れ」はどれくらいなのでしょう。
肉の中で最後に温まるのは、外から最も遠い中心である。ThermoWorksは、食品の温度が最もゆっくり変化する場所を「熱の中心(thermal center)」と呼び、そこが最低温度の場所になると説明する[4]。調理でいう芯温は、この場所の温度を指すと整理できる。
もう一つの性質は、中心の温度が湯の温度に近づくほど、上がり方が小さくなることだ。Baldwinのガイドは、ほしい最終的な中心温度の「すぐ上」に湯温を決めれば、肉は湯温を超えないので焼きすぎにならない、と述べる[3]。低温調理で湯の温度を低めに設定する意味は、おもに焼き加減を狙った温度に収めることにある。
ここから、湯の温度を決めることと、中心がそこに届くまでの時間を見積もることは別の問題だと分かる。では、その時間は肉の何で決まるのか。
3. あつさが 2ばいだと、時間は どうなる?
3. 肉の厚さが2倍になると、時間はどう変わるのか
3. 厚さと加熱時間の関係 ── 2乗に近い増え方と、その限界
おにくが あつい ほど、中が 温まるまでの 時間は ながく なります。では、あつさが 2ばいなら、時間も 2ばいでしょうか。
ある りょうり人の ガイドには、「あつさが 2ばいの ステーキは、温めるのに 4ばい 時間が かかる」と 書いて あります[3]。あたたかさが 外から 中へ つたわる はやさで 決まるからです。
ガイドの ひょうの れいでは、ふくろに 入れた 板の ような おにくを れいぞうこの 5どから 温める とき、あつさ 25ミリで 1時間15分ぐらい、50ミリで 3時間半ぐらいと されて います[3]。
ただし 4ばいは めやすです。かたちや はじめの 温度で かわります。
3cmの肉と6cmの肉では、中心が温まるまでの時間が、1.5倍の違いでは済みません。
厚さ2倍で、時間は約4倍
Baldwinのガイドは、厚さが2倍のステーキは、温めるのに約4倍の時間がかかると述べています[3]。熱が表面から中心へ伝わる速さで時間が決まるため、時間は厚さのほぼ2乗に比例するという考え方です。
表の数字で確かめる
同じガイドの加熱表(冷蔵庫の5℃から、板状の肉)の例では、厚さ10mmで約19分、25mmで約1時間15分、50mmで約3時間半、65mmで約5時間半とされています[3]。この表の時間は、中心が湯の温度の0.5℃手前に着くまでです。
25mmから50mmへ2倍にすると、75分は210分になり、約2.8倍です。ちょうど4倍ではありません。2乗は目安で、形や最初の温度で変わるからです。それでも、厚さが増えると加熱時間も大きく増えることは、数字から読み取れます。
では、その中心の温度を、どうやって知ればよいのでしょう。
中心が温まる時間は、厚さの増え方よりも速く長くなる。Baldwinのガイドは、厚さが2倍のステーキは加熱に約4倍の時間がかかると述べる[3]。熱が表面から中心へ伝わる速さで決まるため、時間は厚さのほぼ2乗に比例する、という説明である。
同じガイドの加熱表(冷蔵庫の5℃から、板状の肉。中心が湯温の0.5℃手前に着くまで)には、厚さ10mmで約19分、25mmで約1時間15分、50mmで約3時間半、65mmで約5時間半という例が載る[3]。値は取得した要約にもとづく丸めた例である。
この例で検算すると、25mmから50mmは75分から約210分で約2.8倍、10mmから25mm(2.5倍)は19分から75分で約3.9倍になる。2乗の予想(4倍、6.25倍)とは一致しないが、厚さが増えるより速く時間が増える点は共通する。2乗はあくまで目安で、肉の形や最初の温度で変わるという注意がついている。
以上から、肉の厚さが少し違うだけで、同じ設定でも中心に着く時間は大きく違う。そのため、時間の見積もりだけに頼らず、中心の温度を直接測る方法が要る。
4. 中の 温度は、どこを 何で はかるの?
4. 肉の中心の温度は、何で、どこを測るのか
4. 針型の温度計と「最低温度」── 中心を測るときの考え方
中の 温度を しらべる ときは、先が ほそい はりの ような 温度計を、おにくの 中に さして はかります。Baldwinの ガイドは、ひょうを つかわない ときは、はりの かたちの 温度計で 中が 目ざす 温度に なったか たしかめる ことが ひつようだと 書いて います[3]。
食品安全委員会は、中心温度計などで 温度と 時間を はかる ことを よびかけて います[1]。さらに、肉の 3か所を はかって、いちばん ひくい 温度を「ないぶ温度」と よんで います[1]。
いちばん 温まって いない ところで、目ざす 温度に なって いれば、ほかの ところも だいじょうぶ、という 考え方です。
では、中心の温度はどうやって知るのでしょう。
針型の温度計で、中に差す
Baldwinのガイドは、加熱表を使わずに調理するなら、針のような形の温度計で、中心が目標の温度に達したか確かめる必要があると述べています[3]。表面でなく、肉の中を直接測る道具が要るということです。
3か所のうち、いちばん低い温度
食品安全委員会は、低温調理では中心温度計などを使って、温度と時間を管理するよう呼びかけています[1]。ここでいう内部温度は、肉の3か所を測ったうちの、最も低い温度のことです[1]。
肉の中には温まるのが遅い場所と早い場所があるので、3か所で測った値のうち、いちばん低い値を、肉の内部温度として扱います。差し方の細かい作法は、今回の資料には書かれていないので、使う温度計の説明書に従ってください。
中心の温度は、肉の中に針状のプローブを差して測る。Baldwinのガイドは、加熱表を使わずに調理する場合は、針型の温度計で中心が目標温度に達したことを確かめる必要がある、と述べる[3]。表の時間は肉の形や最初の温度で変わるため、表だけでは確認にならないからである。
食品安全委員会は、低温調理では中心温度計などを用いて温度と時間を管理するよう呼びかけ、内部温度を肉の3か所を測った中で最も低い温度(最低温度)と定義している[1]。熱の中心が最も低温になるという説明[4]と合わせて読めば、最低温度を基準にするのは、温まり方にむらがあっても、いちばん温まっていない場所の値を内部温度として扱えるからだと理解できる。
プローブを差す位置の細かい作法(骨や脂との位置関係など)は、今回使った公的資料には書かれていない。使う温度計の説明書に従う。
5. 時間は、いつから 数えるの?
5. 加熱の時間は、いつから数えるのか
5. 中心が目標温度に届いてから ── 温度と時間の組み合わせ
いちばん 大事な ことは、時間を 数えはじめる 合図です。食品安全委員会は、63どで 温めるなら、おにくの 中が 63どに なってから、さらに 30分 たもつ ひつようが あると 書いて います[1]。
おゆが 63どに なった ときでは ありません。中が 63どに なった ときから 数えます。
ほかの 温度では、70どで 3分、75どで 1分です[1]。温度が ひくいほど、長い 時間が ひつようです。
ここに のせた 数字は、家で 買える お肉を 温める ときの きまりです。くわしくは、おうちの 人と、食品安全委員会の ページを 読んで ください。
ここまでの話を、いちばん大事な一点にまとめます。時間は、湯に入れたときからではなく、肉の中心が目標の温度に着いてから数えるのです。
63℃なら、中心が63℃になってから30分
食品安全委員会は、63℃で加熱するなら、肉の内部温度が63℃になってから、さらに30分間保つ必要があると説明しています[1]。温度が高ければ短くなり、70℃で3分、75℃で1分です[1]。温度が低いほど、長い時間が要る関係です。
家庭で買える肉の基準
同じページによると、2024年3月の更新で、家庭で入手できる肉を加熱調理する場合は、中心部の63℃30分、またはこれと同等以上の方法が必要とされました[1]。58℃で28分という条件は、特定加熱食肉製品の規格に合う原料肉が前提で、家庭には当てはまりません[1]。
ここで、今までの話がつながります。湯の温度を見ても、時間は数えられません。厚い肉では、中心が63℃に着くまでに何時間もかかります。その先に、さらに30分があります。だから中心を測るのです。
加熱時間の起点は、湯に入れた時刻ではなく、肉の中心が目標温度に着いた時刻である。食品安全委員会は、63℃で加熱するなら肉の内部温度が63℃になってから、さらに30分間の加熱を維持する必要があるとし、70℃なら3分、75℃なら1分とする[1]。温度が低いほど長い時間が要るという、温度と時間の組み合わせで考える基準である。
家庭向けの基準も、同じページに整理されている。2024年3月の更新で、家庭で入手できる食肉を加熱調理する場合は、中心部の温度を63℃で30分加熱する方法か、同等以上の方法が必要とされた[1]。58℃で28分は、特定加熱食肉製品の規格に合う原料肉が前提で、家庭には当てはまらない[1]。数字だけ別の資料から拾ってくると、条件が違うものを混ぜる危険がある。
ここまでの章をつなげると、必要な操作が見える。厚さの違いで、中心が目標に着くまでの時間は大きく変わる(3章)。ところが時間の起点は中心の温度だ。したがって、湯の設定温度と経過時間だけでは、安全の条件を満たしたかどうかは判断できない。中心の最低温度を測ることが、時間を正しく数える前提になる。
6. 「◯◯ど」の 数字は、何の 温度か 見つけて みよう
6. 台所の「◯◯℃」は、湯の温度か中心の温度かを探してみよう
6. 調理器の表示、レシピの数字、温度計の三つを見比べる
おうちの 人と、ていおんちょうりの きかいや、りょうりの 本を 見て みましょう。「63ど」などの 数字が、おゆの 温度か、おにくの 中の 温度か、さがして みて ください。
見つけたら、どちらの 温度か、おうちの 人に 聞いて みましょう。同じ 数字でも、意味が ちがうと 分かります。
なまの おにくを あつかう ときや、あつい おゆを つかう ときは、かならず 大人と いっしょに して ください。
家に低温調理器や料理の本があれば、「63℃」のような数字が、湯の温度なのか、肉の中心の温度なのかを探してみましょう。レシピの数字は、どちらを指しているかで意味が変わります。
見つけたら、その数字に「中心が着いてから」の時間がついているかも見てみてください。この記事の資料でいえば、時間は中心の温度が目標に着いてから数えるものでした。
生の肉と熱い湯を使うので、実際に調理するときは大人と一緒に、食品安全委員会のページ[1]で基準を確かめてからにしましょう。
手元に低温調理器やレシピがあれば、数字が湯温か中心温度かを確認する。町田市の資料が注意するように、機械の表示は水温の設定温度である[2]。レシピの時間が、中心が目標に着いてからの時間なのか、湯に入れてからの時間なのかも見分ける。
家にある日本語のレシピや調理器の説明書で、肉の厚さ・設定温度・時間がどう書かれているかを見比べてみる。厚い肉ほど時間が長く書かれているか、時間が中心に着いてからなのかも確かめられる。Baldwinのガイドの表[3]は英語で、殺菌時間の計算には使えない点に注意する。
生の肉と熱い湯を扱う実験は、大人と一緒に行う。基準の確認には、食品安全委員会のページ[1]が出発点になる。このページの63℃30分は日本の家庭向けの基準であり、海外の業者向けの時間表とは別物である点にも注意する。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:公的機関(食品安全委員会、町田市)の資料を基準の確認に使い、調理法の解説(Baldwin)と温度計メーカーの解説(ThermoWorks)を、中心の温度の遅れの説明に使った。何に使ったかは、各項目の最後に書いている。
- 食品安全委員会「食肉の低温調理」。https://www.fsc.go.jp/foodsafetyinfo_map/shokuhniku_teionchouri.html (内部温度の定義、63℃30分、家庭向けの基準)
- 町田市「食べ物みみよりNo.43」。https://www.city.machida.tokyo.jp/iryo/hokenjo/syokuhin/oshirase/tabemonomimiyori01.files/mimi43.pdf (機械の表示は水温の設定温度)
- Douglas Baldwin, A Practical Guide to Sous Vide Cooking。https://www.douglasbaldwin.com/sous-vide.html (厚さと時間の関係、加熱表の例、針型温度計)
- ThermoWorks Blog「Core Temp, Internal Temp, and Thermal Center」。https://blog.thermoworks.com/core-temp-vs-internal/ (熱の中心は最も低温になる場所)
なおした ところ
更新履歴
更新履歴(改版の記録)
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