1. なつは つめたく、ふゆは あたたかく かんじるのは どうして?
1. 真夏に冷たく、真冬に温かく感じるのは、水が変わるからなのか
1. 夏は冷たく冬は温かい湧き水は、水そのものが変化しているのか
なつに わきみずが つめたく かんじるのは、まわりの 空気より 水の おんどが ひくいからです。ふゆに あたたかく かんじるのは、まわりの 空気が もっと ひえて いるからです。
多くの わきみずは、なつと ふゆで おんどが 大きく かわりません。かわるのは、水より 空気の ほうです。ふゆの 空気は 水よりも つめたいので、手を 入れた とき、水が あたたかく 思えるのです。
では、どうして 水の おんどは あまり かわらないのでしょう。ヒントは、水が 地面の 下から 出て くる ことです。
湧き水の温度は、一年を通じて大きく変わらないことが知られています。夏に冷たく感じるのは、気温が高く、水との差が大きいからです。冬に温かく感じるのは、気温が下がって、水のほうが高くなるからです。
環境省の資料では、四季のある日本は、夏と冬に地上と地中の間で10〜15℃の温度差ができると説明しています[1]。地中は、夏は気温より低く、冬は気温より高い。湧き水が冬に温かく感じられる理由も、ここから説明できます。
水そのものの温度が変わらないのなら、次の疑問が生まれます。地面の下では、季節の暑さや寒さはどうなってしまうのでしょうか。
真夏に冷たく、真冬に温かく感じられる湧き水の水温が実際には年間を通じてあまり変わらないなら、感覚の差は、水温ではなく気温の変動から生じていることになる。夏は気温が水温を大きく上回るので冷たく、冬は気温が水温を下回るので相対的に温かく感じる。
環境省の資料は、四季のある日本では、夏と冬に地上と地中の間で10〜15℃もの温度差が生じると述べ、温度が一定である地中は夏は冷たく冬は温かいと説明する[1]。この差が、手で触れたときの印象を作る。
ここで、問いが一段深くなる。地中の温度が一定なのは、季節の変化が地中に届かないからなのか、届いても弱まるからなのか。
2. 地面の 下では、夏の あつさと ふゆの さむさは どう なるの?
2. 夏の暑さと冬の寒さは、地面の下でどこまで届くのか
2. 地表の温度変化は、深さとともにどのように弱まるのか
地面の 下では、夏の あつさも ふゆの さむさも、ふかく なるほど よわく なります。そして、とどくまでに 時間が かかります。
あつい ふとんの 中を 思いうかべて ください。外が とても さむくなっても、中の あたたかさは、すぐには きえません。地面も それに にて います。地面の 上の 空気が かわっても、土の 下は ゆっくり ゆっくり しか かわらないのです。
ただし 本当は、ふとんと 土は 同じでは ありません。土や 水の ふくみぐあいで、とどく ふかさは かわります。
土の しゅるいや 水の ふくみぐあいで ちがいますが、10メートルくらい ふかく なると、一年の うちで ほとんど かわらなく なります。そこの おんどは、その 土地の 一年の きおんの 平均と、ほぼ 同じです。
たとえば 北海道では 10度、東京や 大阪では 17度、四国や 九州の 南の ほうでは 20度くらいです。
地表の温度は、昼と夜、夏と冬でくり返し上下します。この波が地中に伝わるとき、深いところほど波の高さ(振幅)が小さくなり、時間も遅れます。東京大学地震研究所の実習資料は、深くなると温度変化が小さくなり、タイミングが遅れることを、地温の基本として扱っています[2]。
年変化が届く深さは、土の種類や水の含み方で変わります。目安は10mほどです。埼玉県の資料は、およそ10mより深い地下の温度はその場所の年平均気温とほぼ等しく、季節による変化も少ないと説明しています[3]。10mで変化がゼロになるわけではなく、ほとんど目立たなくなる深さ、と考えるのがよさそうです。
環境省の資料は、その温度の目安を挙げています。北海道で約10℃、東京・大阪で約17℃、四国や九州の南部で約20℃です[1]。北に行くほど低い。つまり、地面の下の温度は、その土地の「一年の平均的な暑さ」を表しているのです。
地表面の温度は、日変化・年変化として周期的に上下する。この変化が地中に伝わると、深さとともに振幅が小さくなり、位相も遅れる。東京大学地震研究所の熱学実習の資料も、この二つの性質を扱っている[2]。熱は土や岩の中をゆっくり移るため、地表の暑さ寒さが深部に届くまでに弱まり、時間がかかる。
年変化が届く深さは、土質や含水率によって異なるが、目安は10m前後である。埼玉県環境科学国際センターの解説は、およそ10mより深い地下の温度は、その場所の年平均気温とほぼ等しく、季節変化も少ないという[3]。季節の波が小さくなる深さは土質や含水率で変わり、10m前後はその目安である。
そのため、地下の温度は土地の気候を映す。環境省の資料では、深さ10m前後の地温の目安は、北海道で約10℃、東京・大阪で約17℃、四国・九州の南部で約20℃である[1]。したがって、日本の中でも湧き水の温度は一律ではなく、土地ごとに決まる値の近くに落ち着くと考えられる。
次の問いは、地面の温度と湧き水の温度が、どのようにつながるのかである。
3. 地下の 水は、どうして 地面の おんどに なるの?
3. 地下水は、なぜ地面と同じような温度になるのか
3. ゆっくり流れる地下水は、なぜ周囲の地中温度に近づくのか
わきみずの もとは、雨や ゆきどけの 水が 地面に しみこんで できた 地下水です。地下水は、土や すなの すきまを、ゆっくり ゆっくり 流れます。
ゆっくり 流れる 間に、水は まわりの 土と 同じ おんどに なって いきます。水が 地面の 下に いる 時間が 長いほど、土の おんどに ちかづくと 考えられています。
むかしの 北海道大学の 研究にも、地下の 水の 流れは おそいので、水の おんどは、その ふかさの 地面の おんどに だいたい 同じに なると 書かれて います。
だから、ふかい ところから 出る わきみずは、なつも ふゆも、あまり かわりません。
湧き水の元は、地面にしみこんだ雨や雪どけ水です。それが土や砂れきの層(帯水層)のすきまを、時間をかけて流れます。北海道大学に残る古い論文は、帯水層の中の水の動きは遅いので、水温はその層の深さの地中温度におおむね等しいと考えてよい、と述べています[4]。
水がまわりの土とふれあいながらゆっくり進むうちに、その深さの地中温度に近づいていくと考えられます。流れの遅い帯水層から出る湧き水が季節の波を受けにくい理由は、ここにありそうです。なお同じ論文は、100m以下の浅い帯水層から出る湧泉も多いとしています。
埼玉県の湧水調査報告は、台地から湧き出る水の特徴として、水質が澄んでいて、年間を通じて温度がほぼ一定であることを挙げ、平成25年度の新河岸川下流域の調査では水温が14.2〜17.3℃だったと報告しています[5]。この数字は埼玉のその調査の例で、全国共通ではありません。ほかの地方なら、地面の温度が変わるので、湧き水の温度もちがってきます。
湧き水は、雨水や雪どけ水が地中に浸透し、帯水層を経て地表に現れたものである。このとき、帯水層内の水の流れは遅く、水は周囲の土や岩と長い時間接する。北海道大学の古い論文は、帯水層の中の水の流動が遅いので、水温はその層の深さの地中温度にだいたい等しいと考えて差し支えないとしている[4]。同じ論文は、浅い地下水の温度が、その土地の年平均気温より数度高い程度だとも述べる。
水温が地中温度に近づく筋道は、次のようになる。地中温度は、深さ10m前後より下で季節による変化が小さい[3]。水が速く流れれば、周囲の温度になじむ時間が足りない。流れの遅い帯水層なら、水温はその深さの地中温度に近いと考えられる。なお同じ論文は、100m以下の浅い帯水層から出る湧泉も多いとしており、湧き水がすべて深い所から来るわけではない。
地域の例もある。埼玉県の湧水調査報告は、台地から湧き出る水は水質が清澄で、年間を通じて水温がほぼ一定であることが大きな特徴だとし、平成25年度の新河岸川下流域の調査で水温を14.2〜17.3℃と報告している[5]。この数値は同県のその調査の結果であり、全国に当てはめられるわけではない。環境省の資料では、地温の目安が北海道で約10℃、東京・大阪で約17℃、九州南部で約20℃と地域で異なるので[1]、湧き水の水温も地域によって異なるはずである。
ただし、どの湧き水も安定しているとは限らない。次の章では、季節で変わる例を見る。
4. 一年中 かわらない わきみずばかり なの?
4. 季節で水温が変わる湧き水もあるのか
4. 浅い場所の湧き水は、なぜ例外になりうるのか
ぜんぶの わきみずが かわらないわけでは ありません。東京の ある 場所では、高校生が わきみずと、近くの ふかい 井戸の 水の おんどを くらべました。
井戸の 水は、一年中 18.9度 くらいで、ほとんど かわりませんでした。でも わきみずの ほうは、おおよそ 10度から 22度の はんいで かわったそうです。
これは 一つの れいです。ただ、地面の 下で 長く 流れて きた 水と、地面に ちかい ところを 通って きた 水では、おんどの かわり方が ちがう かもしれない、と 考えられます。
東京都立戸山高校の研究報告に、おもしろい比較があります。近くのボーリング井戸の地下水は、年間を通じて18.9℃前後を保っていました。ところが「おとめ山」の湧き水は、おおむね10〜22℃の範囲で変化したと報告されています[6]。
同じ地域でも、深い井戸の水は安定し、湧き水のほうが季節で上下した。この結果だけを一般化することはできませんが、湧き水ならいつも一定、とは言えないことは分かります。
地表の温度の波は、浅いところには届きやすいのでした。浅いところを通ってきた水が湧くなら、季節の影響を受けやすくなる可能性があります。ただし、この湧き水がどの深さから来ているかは、報告の要旨だけでは分からないので、これは推測にとどまります。
湧き水が常に一定とは限らない。東京都立戸山高校の研究報告では、近くのボーリング井戸の地下水が年間を通じて18.9℃前後を保ったのに対し、おとめ山の湧き水はおおむね10〜22℃の範囲で変化した[6]。同じ地域の水でも、深い井戸と湧き水で季節変化の大きさが異なったことになる。
この結果を、地中温度の深さによる減衰と結びつけると、一つの仮説が立つ。年変化が届く深さは10m前後が目安であり[3]、それより浅い場所を通る水は、季節の波の影響を受けやすい。もしおとめ山の湧き水が比較的浅い経路をたどっているなら、水温が大きく変わることは説明できる。ただし、この報告は降雨時の表面流出水の影響も考察しており、浅さが主因かどうかは仮説にとどまる。経路の深さは報告から分からず、高校の調査の一例でもあるので、一般化はできない。
つまり、深い地下を長く流れてきた水は温度が安定しやすい。湧き水の中には、季節で水温が変わるものもある。この違いに気づくと、湧き水の水温は、水がどこを、どれくらいの時間かけて通ってきたかを読み取る手がかりになる。
5. 自分の 町の わきみずを しらべるには?
5. 自分の町の湧き水を、土地の気温と並べて見る
5. 湧き水の水温と、土地の年平均気温を並べて確かめる
わきみずが あれば、おとなと いっしょに 行って、水の おんどを はかって みましょう。水に ちかづくときは、ころばないように 気を つけて ください。とても あぶない ばしょや、のんでいいか わからない 水は、さわるだけに して ください。
おんど計が あれば、水の おんどと、そばの 空気の おんどを 書きます。なつと ふゆに、同じ ばしょで 同じように はかると、空気ほど 水は かわらない ことが わかります。
もう一つ。自分の 町の 一年の きおんの 平均を しらべて、わきみずの おんどと 見くらべて みましょう。ちかければ、地面の 下の おんどが 水に つたわって いるのかも しれません。ちがえば、どうして ちがうのか、また 気に なって きますね。
近くに湧き水があるなら、大人といっしょに水温を測ってみましょう。水辺は足もとがすべりやすいので、近づきすぎないこと。飲んでよいかどうかが分からない水は、触れるだけにしてください。
温度計で水温と気温を、夏と冬の同じ場所で測ります。気温は大きく変わるのに、水温の変わり方は小さければ、この記事の説明と合っています。反対に水温も大きく変わるなら、浅いところの水が混ざっている例かもしれません。
もう一つ、自分の町の年平均気温を、気象庁の統計などで調べ、湧き水の温度と並べてみます。近い値なら、地面の下の温度と水温がつながっている手がかりです。ずれる例をいくつか集めて、土地の条件(まわりの地形や、水の出る場所の深さなど)と見くらべると、また別の問いが見えてきます。地下水の温度が土地の年平均気温より数度高めになるとする論文[4]もあります。
近くの湧き水で自分で確かめる場合は、安全を第一にする。水辺では必ず大人と行動し、飲用の可否が分からない水は触れるだけにとどめる。
確かめ方は二つある。一つは、夏と冬の同じ場所で、水温と気温を温度計で測ることである。気温の変動に比べて水温の変動が小さければ、地中温度の安定性が反映されている可能性が高い。もう一つは、気象庁の統計から、自分の町の年平均気温を調べ、湧き水の水温と比べることである。環境省の資料では、深さ10m前後の地温は年平均気温にほぼ等しい[1]。したがって、両者が近ければ、地中温度が水温に反映されている手がかりになる。水温が年平均気温から大きくずれるなら、別の要因があると考えられる。経路の深さを言うには、ほかの情報も要る。
残る問いは、年平均気温よりやや高めの水温が観察される場合の理由である。北海道大学の論文[4]は、浅い地下水の温度が年平均気温より数度高い程度だと述べるが、その原因はまだ示されていない。水温がずれる例をいくつか集め、土地の条件と見くらべると、別の問いが見えてくる。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文の数字は、次の資料で確かめたものです。水温の数字は調査地の一例で、全国共通ではありません。
- 環境省「地中熱とは?」 https://www.env.go.jp/water/jiban/post_117.html (深さ10m前後の地温の目安・夏冬の地上と地中の温度差)
- 東京大学地震研究所 熱学実習資料 https://www.eri.u-tokyo.ac.jp/jisyuu/H25/report/netsu2013.pdf (深さによる温度変化の減衰と遅れ)
- 埼玉県環境科学国際センター 埼玉新聞連載「持続可能な社会目指して」その16 https://www.pref.saitama.lg.jp/cess/torikumi/911-20091224-1424/rensai-03/cess-saitamashinbun-rensai316.html (10mより深い地下の温度)
- 北海道大学 学術成果コレクション 古い論文 https://eprints.lib.hokudai.ac.jp/repo/huscap/all/13791/2_p17-22.pdf (地下水の流れの遅さと水温)
- 埼玉県 湧水調査報告 https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/63140/h25kohyou106.pdf (台地の湧水の水温の例)
- 東京都立戸山高校 研究報告 https://www.metro.ed.jp/toyama-h/assets/filelink/filelink-pdffile-32547.pdf (湧き水と井戸水の水温の比較・一例)
なおした ところ
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