1. しおの じかんは、どうして まいにち ずれるの?
1. 潮の時刻は、なぜ毎日ずれていくのか
1. 満潮の時刻が毎日約50分遅れる理由
うみの みずは、1にちに 2かい ぐらい、みちて、ひきます。そして、その じかんは、まいにち 50ぷんぐらい ずつ、おそく なります[1]。
この 50ぷんは、つきの うごきと おなじです。つきが おなじ ばしょの まうえに もどって くる まで、24じかん 50ぷん かかります[2]。しおの じかんは、たいようでは なくて、つきに あわせて うごいて います。
でも、つきが うみを ひっぱる なんて、ほんとうでしょうか。むかしの 学者たちも、なやみました。
堤防で釣りをする人は、昨日と同じ時刻に行くと、水の高さがちがうことに気づくはずです。満潮と干潮は、1日に約2回ずつ来て、その時刻は、毎日約50分ずつ遅れていきます[1]。
満潮から次の満潮までは、約12時間25分です。1日の半分の12時間より、25分長い。だから、1日たつと、約50分ずれます[2]。
この50分は、月の動きと同じです。月が同じ場所の真上に戻ってくるまでには、24時間50分かかります。地球が1回まわるあいだに、月も同じ向きに少し進むので、地球が月に追いつくのに、余分に50分かかるのです[2]。潮の時刻は、太陽ではなく、月に合わせて動いています。
月が、遠くから海の水を引いている。この考えは、すんなりとは受け入れられませんでした。
2. つきが ひいて いると 考えた 人、しりぞけた 人
2. 月が引いていると考えた人と、退けた人
2. ケプラーの月の説と、ガリレオの退け方、ニュートンの説明
ケプラーなどの 学者は、つきが うみの みずを ひいて いる のでは ないか、と 考えました。ところが、ガリレオは、その 考えを しりぞけました。とおくの つきが うみを ひっぱるなんて、まじないの ようだ、と 考えたのです[3]。
ガリレオは、1632ねんの ほんで、しおは、ちきゅうが まわる うごきで おこる、と せつめい しました[3]。
それから 55ねんぐらい あとの 1687ねんに、ニュートンが 本を あらわしました。ものと ものが ひっぱりあう ちからで、しおの みちひも せつめい できる、と いう 考えの もとに なりました[4]。いまの せつめいは、ガリレオが しりぞけた、つきの ほうの 考えです。
でも、まだ ふしぎが あります。つきの ちょうど はんたいがわの うみでも、みずが もりあがるのです。
ケプラーらは、月が海の水を引いているのではないか、と考えました。ところが、ガリレオは、その考えを退けました。遠くの月が海を動かすなど、まじないのようだ、と考えたのです。1632年の『天文対話』で、ガリレオは、潮の満ち引きは、地球の自転と公転を組み合わせて説明できる、とし、月の位置と潮の関係は取り上げませんでした[3]。
それから半世紀あとの1687年、ニュートンの『プリンキピア』が、万有引力の考えで、潮の満ち引きを説明する土台になりました[4]。いまの説明は、ガリレオが退けた、月の引力にもとづく考えです。
ただ、ここに、もう一つ不思議があります。海の水は、月に近い側だけでなく、月の反対側でも、盛り上がるのです。
ケプラーらは、月が海の水を引くのではないか、と考えた。しかし、ガリレオは、この月の説を、まじないのようなものとして退けた。1632年の『天文対話』で、ガリレオは、潮の満ち引きを、地球の自転と公転の組み合わせで説明できる、とし、月の位置と潮の関係を取り上げなかった。彼は、機械的な原因だけを認め、遠くから働く力を、神秘的なものと見ていた、と説明されている[3]。
1687年のニュートンの『プリンキピア』は、万有引力で、潮の満ち引きを説明する土台になった[4]。いまの説明は、ガリレオが退けた側、つまり月の引力にもとづいている。
ただし、月の引力だけでは、説明しにくい事実がある。海の水は、月に近い側だけでなく、月の反対側でも、盛り上がる。
3. つきの はんたいがわでも、どうして みちるの?
3. 月の反対側でも、なぜ満ちるのか
3. 引力の差が海を引きのばす ── 潮汐力の仕組み
ちきゅうを、やわらかい ゴムまりだと 考えて みましょう。つきに ちかい ほうは つよく ひかれ、とおい ほうは よわく ひかれます。すると、ゴムまりは、つきの ほうへ、ほそながく のびます[5]。
うみの みずは、その のびた りょうはしに あつまります。だから、つきに ちかい がわと、はんたいがわの 2か所で、みちしおに なります。ちきゅうは 1にちに 1かい まわるので、おなじ ばしょは、1にちに 2かい、ふくらみの したを とおります[1]。
ただし ほんとうは、ちきゅうは ゴムまりでは ありません。ふくらみが できるのは、ひかれる つよさに「ちがい」が あるからです。おおきく うごくのは、うごきやすい うみの みずです。かたい じめんも、すこしだけ、あがったり さがったり します。まいにち、数十センチも うごきます[6]。
たいようも、うみを ひいて います。つよさは、つきの はんぶんぐらいです[7]。たいようと つきの ちからが かさなる ひは、どう なるのでしょう。
月の引力は、月に近い側ほど強く、遠い側ほど弱くなります。地球の中心に働く引力と比べると、近い側の海は、月のほうへ余分に引かれます。遠い側の海は、地球全体が受ける引力より、月の引力が弱いので、地球から見ると、月から離れる向きの差として現れます[5]。この「引力の差」が、潮汐力(起潮力)です[7]。
地球を、やわらかいゴムまりに置きかえて考えてみましょう。月に近い側は強く、遠い側は弱く引かれるので、ゴムまりは、月の方向に細長く伸びます。海の水は、この細長いふくらみの両端に集まります。月に近い側と、反対側の、二か所の満潮です。地球は1日に1回転するので、同じ場所は、1日に約2回、ふくらみの下を通ります[1]。
ただし本当は、地球はゴムまりではありません。大きく動くのは、動きやすい海の水です。固い地面も、潮汐力で少し引きのばされ、地表は毎日、数十センチ上下しています(海の満ち引きとは別の動きです)[6]。
太陽も、海を引いています。太陽の潮汐力は、月の約半分です[7]。では、大きな潮と小さな潮があるのは、なぜでしょうか。
潮汐力は、天体の各部分に働く重力と、天体の重心に働く重力との差だ。大きさは、引く天体の質量に比例し、その天体との距離の3乗に反比例する[7]。月に面した地表では、地球の中心より月の引力が大きく、反対側の地表では、地球の中心より月の引力が小さく、その差が、地球から見ると月から離れる向きの力として現れる[5]。
地球を、やわらかいゴムまりに置きかえると、月に近い側は強く、遠い側は弱く引かれて、月の方向に細長く伸びる。海の水は、この両端に集まり、月に近い側と反対側の、二か所が満潮になる。地球が1日に1回転するので、同じ場所は、約1日に2回、ふくらみの下を通る[1]。
ただし、地球はゴムまりではない。動きやすい海の水が大きく動き、固い地面も、潮汐力で弾性的に変形して、地表は毎日、数十センチ上下している[6]。
太陽も、潮汐力を出している。その大きさは、月の約半分だ[7]。この二つが重なったり、ずれたりすることで、大きな潮と、小さな潮ができる。
4. おおきな しおと ちいさな しおは、どうして できるの?
4. 大潮と小潮が起きる仕組みと、場所による大きさのちがい
4. 大潮と小潮の仕組みと、海の形による潮の大きさのちがい
しんげつと まんげつの ころは、たいよう、ちきゅう、つきが いっちょくせんに ならびます。ふたつの ちからが かさなって、しおの さが おおきい「おおしお」に なります。はんげつの ころは、ちからが ずれて、さが ちいさい「こしお」です[8]。
つきと たいようの ちからに、うみの かたちが かさなって、ばしょごとに ちがう しおが できます。にほんで いちばん おおきいのは、ありあけかいで、さが 6メートルに なる ことが あります。にほんかいがわは、0.4メートルぐらいです[8]。
しおの さが おおきく なる おおしおの ころ、とくしまけんの なると海きょうの うずしおも おおきく なります[10]。
しおの みちひは、あらかじめ けいさんで きめられるのに、ときどき、そのとおりに ならない ひが あります。
新月と満月のころは、太陽・地球・月がほぼ一直線に並び、二つの潮汐力の向きが重なって、潮の差が大きい大潮になります。上弦と下弦の半月のころは、力の向きがずれて、差が小さい小潮になります[8]。大潮は、新月や満月の当日だけでなく、前後の数日間続きます[5]。
同じ日でも、場所によって、潮の大きさはずいぶんちがいます。日本でいちばん大きいのは有明海で、潮の差が最大約6mになります。日本海側は0.4m程度、太平洋側は2m程度です。世界では、カナダのファンディ湾で約15mになります[8]。月と太陽の力に、大陸や海の形が重なって、場所ごとにちがう潮ができます。大陸が、潮のふくらみの進路をさえぎるので、海ごとに、複雑なパターンになるのです[9]。
潮の差が大きくなる大潮のころ、徳島県の鳴門海峡の渦潮も大きくなり、春と秋の大潮で最大になります。海峡の両側の水位の差は最大約1.5m、流れは時速約20kmにもなります[10]。
月と太陽の動きは、あらかじめ計算できます。それなら、潮も、未来まで予測できるはずです。ところが、予測どおりにならない日があります。
新月と満月のころは、太陽・地球・月がほぼ一直線に並び、二つの潮汐力の向きが重なって、干満の差が大きい大潮になる。上弦と下弦のころは、力の向きがずれて、差が小さい小潮になる[8]。大潮は、新月や満月の当日に限らず、前後の数日間続き、半月周期で、大潮・中潮・小潮・長潮・若潮・中潮の順にくり返す[5]。
場所による差も大きい。有明海は最大約6mで、日本一の潮差だ。日本海側は0.4m程度、太平洋側は2m程度、韓国の仁川は最大10m、カナダのファンディ湾は15mになる[8]。月と太陽の力に、大陸や海の形が重なって、場所ごとにちがう潮ができる。大陸が、潮のふくらみの西向きの進行をさえぎるので、海盆ごとに複雑なパターンができるのだ[9]。
潮の差が大きくなる大潮のころ、鳴門海峡の渦潮も大きくなり、春と秋の大潮で最大になる。海峡の両側の水位の差は最大約1.5m、流れは時速約20kmで、渦は最大で直径約20mだ。見ごろは、満潮・干潮の前後約1時間半とされる[10]。
月と太陽の動きは、ほとんど周期的で、計算できる。それなら、潮は未来まで予測できるはずだが、予測どおりにならない日がある。
5. あしたの しおは、どうやって わかるの?
5. 未来の潮は、どう計算するのか
5. 潮位の予測 ── 分潮の足し算と、ずれる日
つきと たいようの うごきは、きまった リズムで くりかえします。そこで、リズムの ちがう たくさんの なみを たしざん して、しおの たかさを けいさん します。きしょうちょうの しおの ひょうも、その けいさんで つくられて います[11]。
でも、この けいさんには、てんきの ようすは 入って いません。だから、じっさいの しおは、ずれる ことが あります。きあつが 1ヘクトパスカル ひくく なると、うみの たかさは 1センチぐらい あがります[12]。
きしょうちょうの サイトでは、けいさんで だした しおと、じっさいの しおを、ならべて 見る ことが できます[13]。
じぶんでも やって みる
自分でも調べてみたくなったら
自分でも調べてみたくなったら
しおの みちひが、ほんとうに まいにち 50ぷんぐらい ずれるか、たしかめて みましょう。おうちの 人と いっしょに してください。
3にち ぶん、ぬきだして みる
- ちかくの みなとの「しおの ひょう」を ひらいて、3にち ぶんの みちしおの じかんを かきうつす。まいにち、どれくらい おそく なるか、ひきざんして みましょう。
- おなじ ひょうで、まんげつの ひと、はんげつの ひの、しおの さを くらべる。
うみべへ いくときは、おうちの 人と いっしょに、あかるい うちに いって ください。しおが みちて くるのは、おもって いるより はやい ことが あります。
潮の満ち引きの時刻が、本当に毎日約50分ずれるのか。自分のデータで確かめられます。
近くの港の潮位表で
- 気象庁の潮位表で、近くの港の満潮の時刻を、3日ぶん書き写す。毎日どれくらい遅れるか、引き算してみましょう[11]。
- 月齢と見比べて、大潮の日と小潮の日の、潮の差を比べる。
予測と実測を見比べる
気象庁の潮位観測情報で、天文潮位(予測)と実測潮位のグラフを見比べてみましょう。台風や低気圧が近づく日は、ずれが大きくなるか、確かめてみてください[13]。
海辺に行くときは、大人といっしょに、明るいうちに行き、天気と波の情報を確かめましょう。潮は、思っているより早く満ちてくることがあります。鳴門の渦潮を見に行くときは、展望施設や観光船を利用し、見ごろの時刻は徳島県のページで確かめましょう[10]。
ガリレオとケプラーの説明を、読み比べる
スタンフォード哲学百科事典のガリレオの項目は、潮汐についての彼の説明と、月の説を退けた理由を、くわしく論じている[3]。ガリレオの説明と、いまの説明を、読み比べてみましょう。
データで確かめる
- 気象庁の潮位表で、近くの港の満潮の時刻を、1週間ぶん取り出す。毎日約50分ずつ遅れるかを、計算で確かめられます[11]。
- 潮位観測情報で、天文潮位と実測潮位を見比べる。台風や低気圧の接近と、ずれの大きさの関係を、あとで確かめてみましょう[13]。
海辺に行くときは、大人といっしょに、明るいうちに行き、天気と波の情報を確かめましょう。潮は、思っているより早く満ちてくることがあります。鳴門の渦潮を見に行くときは、展望施設や観光船を利用し、見ごろの時刻は徳島県のページで確かめましょう[10]。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
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出典について:気象庁・海上保安庁・徳島県などの公的なページ、国立天文台が編集する解説、日本天文学会の辞典、英語の教育資料と百科事典を使いました。英語の資料は、内容を日本語で説明しています。このメモは、これらの団体のものではなく、個人のまとめです。
- 気象庁「潮汐の仕組み」。 https://www.data.jma.go.jp/kaiyou/db/tide/knowledge/tide/choseki.html (1日に約2回の満潮と干潮、毎日約50分ずつ遅れること)
- NOAA National Ocean Service「Frequency of Tides - The Lunar Day」。 https://oceanservice.noaa.gov/education/tutorial_tides/tides05_lunarday.html (太陰日が24時間50分、満潮の間隔が12時間25分。英語の資料)
- Stanford Encyclopedia of Philosophy「Galileo Galilei」。 https://plato.stanford.edu/entries/galileo/ (『天文対話』の潮汐の説明と、月の説を退けたこと。英語の資料)
- Encyclopedia of the Environment「The tides」。 https://www.encyclopedie-environnement.org/en/water/the-tides-2/ (ニュートンの『プリンキピア』(1687年)と、潮汐の理論。英語の資料)
- 理科年表オフィシャルサイト「暦部「潮汐」をくわしく解説!」。 https://official.rikanenpyo.jp/posts/6106 (月の引力と満潮・干潮、太陽の作用、大潮・小潮のくり返し)
- 気象庁気象研究所 地震津波研究部(広瀬伏之氏のサイト)「地震と潮汐」。 https://www.mri-jma.go.jp/Dep/sei/fhirose/research/TidalStrain.html (固体潮汐。地表が毎日数十cm上下すること)
- 日本天文学会「天文学辞典」の「潮汐」。 https://astro-dic.jp/tide/ (潮汐力の定義、距離の3乗に反比例すること、太陽の潮汐力は月の約半分)
- 海上保安庁「各地の潮汐(潮の満ち引き)」。 https://www1.kaiho.mlit.go.jp/KAN8/sv/teach/kaisyo/tide2.html (大潮・小潮、有明海・日本海側・太平洋側、世界の潮の差)
- NOAA National Ocean Service「Types and Causes of Tidal Cycles」。 https://oceanservice.noaa.gov/education/tutorial_tides/tides07_cycles.html (大陸が潮のふくらみをさえぎり、海ごとに潮の型がちがうこと。英語の資料)
- 徳島県「鳴門の渦潮」。 https://www.pref.tokushima.lg.jp/japanese/tourism/spot/uzushio (渦潮が大きくなる時期、流れの速さ、見ごろ)
- 気象庁「潮位表」の解説。 https://www.data.jma.go.jp/kaiyou/db/tide/suisan/explanation.html (分潮と調和定数、天文潮位と実測潮位のちがい)
- 気象庁「高潮」。 https://www.data.jma.go.jp/kaiyou/db/tide/knowledge/tide/takashio.html (気圧が1ヘクトパスカル下がると潮位が約1cm上がること、吹き寄せ)
- 気象庁「潮位観測情報」の解説。 https://www.data.jma.go.jp/kaiyou/db/tide/explanation.html (昨日・今日・明日の実測潮位と天文潮位を見られる、潮位観測情報の説明)
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