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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

つかった ものは、どうして もとの ばしょに もどすの?

使ったものを片づけるのは、何のためだろう

使ったものは、なぜ片づけるのか ── 決めた場所、目に入るものの多さ、散らかしのよい面

分野:からだ

つくえの うえに ものが たくさん あると、みて いるだけで、のうは すこしずつ つかれる、と いう はなしが あります。

ところが、ちらかった 部屋の ほうが、あたらしい かんがえが 出やすかった、という じっけんも あります。かたづけは、なんの ために するのでしょう。この ページを よむと、かたづけの いみと、2つの じっけんの よみかたが わかります。

机の上にものが多いと、見ているだけで脳が少しずつ疲れる、とプリンストン大学の教授は説明しています。ところが、散らかった部屋のほうが、新しいアイデアの評価が高かったという実験も報告されています。

辞書で調べると、「片づける」の第一の意味は、物を「適当な場所」に入れ納めることです。整頓の条件も、「きれい」より「いつでも使える状態」にあります。この記事を読むと、整頓という言葉の意味と、2つの実験をどう読めばよいかが分かります。

机の上のものが多いほど、脳はそれらをふるい分けるために働き、時間とともに疲れる、とプリンストン大学の教授は説明している[2]。ところが、散らかった部屋の参加者のほうが、新しい使い道を考える課題で創造性の評価が高かった、という実験も報告されている[5]。

では、使ったものを片づける理由は何か。このメモを読むと、整頓の定義、脳の実験が示す範囲と限界、散らかしの実験の条件が分かる。

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1. 「かたづける」って、なにを する こと?

1. 「片づける」は、辞書ではどういう意味か

1. 「片づける」の語釈:入れ納めることと、終わらせること

「しゅくだいを かたづける」とも いうし、「おもちゃを かたづける」とも いいます。どちらも「かたづける」です。

じしょを ひくと、いちばんはじめの いみは、「ものを、ちょうどよい ばしょに、きちんと しまう」と いう ことです[6]。ほかに、しごとを おわらせる、という いみも あります。

では、その「ちょうどよい ばしょ」は、だれが きめるのでしょう。

宿題も、おもちゃも「片づける」

「宿題を片づける」とも言うし、「おもちゃを片づける」とも言います。同じ言葉なのに、やっていることはずいぶん違います。

デジタル大辞泉では、「片づける」の第一の意味は、物を適当な場所にきちんと入れ納めることとされています。そのほかに、仕事を終わらせる、物事をうまく処理する、という意味も載っています[6]。

ここで引っかかるのが「適当な場所」です。誰が、どうやって決めるのでしょうか。

「宿題を片づける」と「おもちゃを片づける」は、同じ動詞でも動作が違う。デジタル大辞泉の語釈(解説記事に引用されたもの)では、第一義は、物を適当な場所にきちんと入れ納めること。ほかに、仕事を終わらせる、物事をうまく処理する、という意味がある[6]。

注目したいのは、第一義に「適当な場所」という条件が入っている点だ。どこに置いてもよいわけではなく、置き場所が前提になっている。ただし、その場所を誰が、何を基準に決めるのかは、辞書の語釈には書かれていない。

置き場所の決め方を、きちんと言葉にしている資料がある。職場の安全を扱う公的機関の定義だ。

2. 「きめた ばしょ」が あると、なにが かわるの?

2. 「整頓」は、きれいにすることではなかった

2. 整頓の定義:決める場所・量・方法と、「いつでも使える」

しごとを する 人の ための 安全の ホームページ(こうせいろうどうしょう)では、「せいとん」を こう せつめい して います[1]。

いる ものを、きめた ばしょに、きめた りょうで、きめた やりかたで しまって、いつでも つかえる ように して おく こと、と いう いみです。

ここに、「きれい」と いう ことばは ありません。だいじなのは、「いつでも つかえる」です。

つぎに つかう とき、まよわずに 手が とどく。かたづけは、つぎに つかう 自分への、よういなのです。

厚生労働省の定義

厚生労働省の「職場のあんぜんサイト」は、整頓を、必要なものを決めた場所に、決めた量で、決めた方法で置き、いつでも取り出して使える状態にしておくこと、という趣旨で説明しています[1]。

似た言葉に「整理」がありますが、こちらは、必要なものと不要なものを分けて、不要なものを処理することです。使わないものを手放すのが整理、使うものの置き場所を決めるのが整頓、と分けて考えられています。

「きれい」は、目的に入っていない

この定義には、「きれい」「見栄えがよい」という言葉がありません。ゴールは「いつでも使える状態」です。次に使う人が、探さずに手を伸ばせるように置いておく、という考え方です。

職場の改善では、整理・整頓・清掃・清潔・躾の5つをあわせて「5S」と呼ぶことがあります。日本の工場の現場で広まったとされています[4]。では、置き場所が決まっていないと、人の頭の中では何が起きているのでしょうか。

厚生労働省の「職場のあんぜんサイト」の用語集は、整頓を、必要なものを決めた場所に、決めた量で、決めた方法で置き、いつでも取り出して使える状態にしておくこと、という趣旨で説明している。対になる「整理」は、必要なものと不要なものを分類し、不要なものを処理することである[1]。整理は「何を持つか」、整頓は「持つものをどこに置くか」の話であり、両者は別の作業だ。

この定義の特徴は、「きれい」が目的に入っていないことだ。条件は、場所・量・方法の3つが決まっていることと、その結果として「いつでも使える」こと。つまり整頓は、次に使う人の探す手間を減らすための取り決めだと読める。

整理・整頓・清掃・清潔・躾を合わせた「5S」は、日本の製造業の現場で使われてきた職場改善の手法とされる[4]。

では、置き場所が決まっていない状態は、使う人の側に何をもたらすのか。この問いに近づく実験が、脳の研究にある。

3. ものが たくさん みえると、のうは どう なるの?

3. 目に入るものが多いと、脳の中で何が起きるのか

3. 視覚野の競合:見えるものが多いほど、脳はふるい分けに働く

アメリカの プリンストン大学の カストナー先生は、20年ほど、人の のうの はたらきを しらべて きました[2]。

めに 入る ものが おおいと、のうは、その ひとつひとつを ふるいに かけて、いらない ものを むしする ために はたらきます。そのため、じかんが たつと、つかれて くる、と 先生は せつめい して います。

ある じっけんでは、まちの けしきの しゃしんを 見せて、「人」か「くるま」の どちらかを 見る ように たのみました。すると、見ている ものの のうの はんのうが つよく なり、まわりは よわく なりました[2]。

ただし、これは がめんの うえの じっけんです。ちらかった 部屋で のうが こわれる、と いう ことでは ありません。

カストナー先生は、つくえの うえを 数分 かたづけるだけでも、しごとが はかどる かもしれない、と はなして います。

見えるものどうしの競い合い

プリンストン大学のカストナー教授は、約20年にわたって脳の働きを研究してきました。教授は、視野の中にものが多いほど、脳はそれをふるい分けるために働く必要があり、時間とともに疲れる、と説明しています[2]。

実験では、街の風景を見せ、「人」か「車」のどちらかに注目してもらいました。脳の活動を測ると、注目しているほうの信号が強く出て、まわりの信号は抑えられました[2]。

別の実験の要旨では、同時に見えている複数のものは、脳の視覚野で互いの活動を抑え合う(競い合う)と報告され、注意を向けるとその競い合いがほどけるとされています[3]。

この実験が言えること、言えないこと

ただし、これらは画面に映した刺激で調べた実験で、散らかった部屋そのものを調べたものではありません。「散らかった部屋にいると脳が壊れる」とまでは言えないのです。

カストナー教授本人は、机を数分片づけるだけで、作業がはかどる可能性があると述べています[2]。では、散らかしには、悪いところしかないのでしょうか。

プリンストン大学のカストナーは約20年の研究にもとづき、視野の中の物が多いほど、脳はそれらをふるい分けるために働く必要があり、時間とともに疲れる、と説明している[2]。根拠の一つは、街の風景を見せ、「人」か「車」のどちらかに注目させて、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)で脳活動を測った実験である。注目した対象の信号が強く出て、周囲の信号は抑えられた[2]。

このしくみは、2011年の論文(McMains & Kastner)の要旨でも報告されている。同時に視野に入った複数の刺激は、視覚野全体でたがいの活動を抑え合って競合し、注意を向けるとその競合がほぐれる[3]。物が多いと脳が疲れるという説明は、この「競合」と「注意による解消」を土台にしていると読める。

ただし、ここには限界がある。これらは画面上の刺激で行われた実験で、散らかった部屋や机そのものを操作した実験ではない。「机が散らかっていると、何割効率が落ちる」といった数字を示す資料ではない。言えるのは、同時に見える物が多いほど脳内で競合が起き、注意で和らげられる、という点までだ。

その一方で、散らかした状態のほうが、よい結果を生んだという実験もある。

4. ちらかった 部屋にも、いい ところが あるの?

4. 散らかった部屋のほうが、新しい考えが出た実験

4. 整った部屋と散らかった部屋:2013年の実験が示す条件つきの差

2013ねんに、ある じっけんが ほうこく されました[5]。きちんと かたづいた 部屋と、ちらかった 部屋で、おとなに いろいろな ことを して もらったのです。

かたづいた 部屋の 人は、からだに よい おやつ(りんご)を えらびやすく、おかねの きふも おおく しました[7]。

いっぽう、ちらかった 部屋の 人は、ピンポンだまの あたらしい つかいみちを かんがえる とき、「めずらしい かんがえだ」と ひょうかされる ことが おおかった、と ほうこく されて います。

ただし、これは おとなが みじかい 時間 うけた じっけんです。「ちらかした ほうが あたまが よく なる」とは いえません。

それなら、じぶんの つくえで、かたづけの ききめを ためして みましょう。

きれいな部屋の人、散らかった部屋の人

2013年、ボース、レッデン、レイネルの3人が、整った部屋と散らかった部屋で参加者に課題を出す実験を発表しました。整った部屋の参加者は、健康によいおやつ(リンゴ)を選ぶ人が多く、寄付も多くなりました[7]。

ピンポン球の使い道

同じ論文には、ピンポン球の新しい使い道を考える課題も出てきます。散らかった部屋の参加者のほうが、創造性の評価が高かったと報告されています。報道記事によれば、出したアイデアの数は同じで、新しい商品を好む傾向もみられました[5]。

どちらが「よい」とも決められない

この実験は、大人の参加者が短い時間で受けたものです。「散らかしたほうが頭がよくなる」とも、「片づけるといい子になる」とも読めません。

むしろ、作業の途中に道具を広げたいときと、次に使う人のために戻しておくときとは、場面が別だ、と考えることもできます。

辞書、職場の定義、2つの実験を並べると、片づけは「きれいにする」「脳の負担を減らす」「次に使う自分のために戻す」のどれか1つでは説明しにくい行為に見えてきます。これを、自分の机で確かめる方法があります。

Vohs、Redden、Rahinelの2013年の論文(Psychological Science)では、整った部屋と散らかった部屋の参加者を比べた。整った部屋の参加者は、より健康的なおやつ(リンゴ)を選び、寄付額も多かった[7]。散らかった部屋の参加者は、ピンポン球の新しい使い道を考える課題で、創造性の評価が高かった。報道記事によれば、出した数は同じで、新しい商品を好む傾向もあった[5]。

この結果を、「整頓はよい行動、散らかしは創造性」と二分して読むのは早い。参加者は大人で、条件は短時間の実験である。この記事は差の大きさを数字では示さないので、「どれだけ違うか」ではなく「どんな条件の実験か」を読みとる材料として扱う。

さらに、前の章の脳の実験は画面上の刺激、この章の実験は部屋の状態と課題の結果であり、測っているものが違う。2つを「脳が疲れるから散らかしは悪い」とも「散らかしは創造的だから良い」とも結びつけられない。整頓の定義が「いつでも使える状態にしておくこと」だったことを考えると、作業中の散らかりと、次に使うための片づけは、別の場面の話として読むほうが、資料の範囲にはおさまる。

辞書、職場の定義、脳の実験、散らかしの実験を並べると、片づけは「きれいにする」「脳の負担を減らす」「次に使う自分のために戻す」のうち、どれか1つでは説明できない行為に見える。これを、自分の机で確かめる方法がある。

5. つくえで、さがす じかんを はかって みよう

5. 机で、「探す時間」を前後で比べてみる

5. 自分の机で検算する:戻す場所を決める前と後

よく つかう ものを 3つ えらびます。えんぴつ、けしゴム、ノートなどが よいでしょう。

その 3つの 「かえる ばしょ」を、きめて、そこに かんたんな しるしを つけて おきます。

きめる まえの 日と、きめた あとの 3日 くらい、その ものを 「さがした 時間」を、とけいで はかって、メモします。

ぜんぜん かわらない 日も あるかも しれません。それも、たいせつな はっけんです。

道具を3つ決めて、戻す場所を決める

鉛筆、消しゴム、ノートなど、よく使うものを3つ選びます。それぞれの戻す場所を決めて、小さな目印をつけましょう。

決める前の日と、決めたあとの3日ほどで、その3つを探した時間を、時計ではかってメモします。探した回数も書いておくと、比べやすくなります。

探す時間が短くなる日もあれば、変わらない日もあるでしょう。1回だけの結果で結論を出さず、数日分を並べて見てください。

原典を読みたくなったら

脳の実験は、プリンストン大学の記事や、2011年の論文の要旨から探せます。整頓の定義は、厚生労働省「職場のあんぜんサイト」の4Sの項目にあります。散らかった部屋の実験は、2013年にPsychological Scienceに載った論文の要旨で読めます。出典欄の資料を手がかりにしてください。

自分の机で、整頓の定義を検算する方法がある。よく使うものを3つ選び、戻す場所を決めて目印をつける。決める前の日と、決めたあとの3日ほどで、その3つを探した時間と回数を記録する。1日だけでは偶然が入るので、数日分を並べて比べる。

厚生労働省の説明では、整頓は、決めた場所・量・方法で置き、いつでも取り出して使える状態にしておくことだった[1]。場所・量・方法のうち、この記録では「場所」だけを変える。探す時間が短くなれば、置き場所が決まっている効果が1つ見えたことになるが、変わらない日があっても失敗ではない。使い方や机の広さなど、ほかの条件の違いが入るからだ。

原典は、プリンストン大学の記事(Princeton Alumni Weekly)、McMains & Kastner(2011, Journal of Neuroscience 31:587-597)、Vohs、Redden、Rahinel(2013, Psychological Science)、厚生労働省「職場のあんぜんサイト」の4Sの項目である。出典欄の資料を手がかりにしてください。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文は、ここにある資料の内容を、自分の言葉で言いかえたものです。研究の結果は、実験の条件の中での報告であり、日常にそのままあてはまるとはかぎりません。

  1. 厚生労働省 職場のあんぜんサイト「4S(整理、整頓、清掃、清潔)」 https://anzeninfo.mhlw.go.jp/yougo/yougo61_1.html (整理と整頓の定義)
  2. Princeton Alumni Weekly, Psychology: Your Attention, Please (2015) https://paw.princeton.edu/article/psychology-your-attention-please (カストナーの研究の紹介、街の風景の実験)
  3. McMains & Kastner, J Neurosci 31:587-597 (2011), PMC https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3072218 (視覚野での競合。要旨の趣旨)
  4. Wikipedia, 5S (methodology) https://en.wikipedia.org/wiki/5S_(methodology) (5Sの来歴。百科事典のため二次資料)
  5. ScienceDaily, 2013年の報道 (散らかった部屋と創造性) https://sciencedaily.com/releases/2013/08/130806091817.htm (ピンポン球の課題)
  6. Oggi.jp「片づける」の解説(デジタル大辞泉の語釈を引用) https://oggi.jp/193909 (辞書の語釈)
  7. Vohs, Redden, Rahinel, Psychological Science (2013) 要旨ページ https://www.psychologicalscience.org/journals/psychological-science/0956797613480186/ (整った部屋と散らかった部屋の比較)

なおした ところ

更新履歴

更新履歴(改版の記録)

  •  初版を公開。
  •  中学生向けの題名を、日常の疑問が先に来る形に見直した。

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