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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

はしるとき、あしの ゆびは なにを して いるの?

走るとき、足の指の付け根は1歩ごとに力を受け止めている

足の指は走りと歩きで何をしているのか:押す力、受け止める役、鍛えたときの効果

分野:からだ

はしる とき、あしの ゆびは 地めんを ぐっと けって いる ように 思えます。ところが、ある けんきゅうでは、ゆびの つけねの 関節かんせつは、力を 出すより、うけとめる ほうが 大きいと いわれて います。

ゆびは けって いるのに、なぜ うけとめるのでしょう。きたえたら はやく なるのでしょうか。この ページを 読むと、ゆびの ふんばる やくめと、きたえた ときの こうかが どこまで わかって いるかが わかります。

走るとき、足の指は地面をけっているように思えます。ところが、ある研究の要旨によると、走るときの指の付け根の関節かんせつは、おもにエネルギーを吸収する側だったそうです[1]。

けっているはずの指が、なぜ受け止めているのでしょうか。足の指を鍛えれば、速く走れるようになるのでしょうか。この記事を読むと、指のふんばる役目と、鍛えた効果についてどこまで分かっているかが分かります。

走りの蹴り出しでは、足の指が地面を押して推進力を生むと考えがちだ。しかし、陸上選手を対象にした研究の要旨では、指の付け根の関節(MP関節)は走行中に主としてエネルギーを吸収していた[1]。力を出すはずの場所が、なぜ受け止める側に回るのか。

この記事を読むと、指の筋力が足を硬い「てこ」にする仕組み、歩く速さによる親指の分担の変化、指を鍛えたときの効果について、分かっていることと決着していないことが分かる。

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1. けって いる はずの ゆびは、じつは なにを して いる?

1. 蹴っているはずの指が、受け止める側にいる

1. 蹴り出しの指は力を生むのか、受け止めるのか

かけっこで スタートを きる ときを 思いだして ください。いちばん さいごに 地めんから はなれるのは、あしの ゆびです。だから ゆびが けりだして いる ように 見えます。

ところが、5人の ランナーと 5人の たんきょりせんしゅを しらべた けんきゅうが あります。ゆびの つけねの 関節かんせつは、ちからを 生む より、エネルギーを 吸収きゅうしゅうする ほうが 大きかったと、この けんきゅうの まとめには 書かれて います。

一ぽで 吸収きゅうしゅうする エネルギーは、はしる とき 平均へいきんで およそ 20.9 ジュール、ぜんそくりょくの ときは およそ 47.8 ジュール でした。1キログラムの ものを 2メートルちょっと もちあげる くらいが 20.9 ジュール、およそ 5メートル もちあげる くらいが 47.8 ジュールです。

この けいさんでは、ゆびの つけねの 関節かんせつで この ぶんの エネルギーが 吸収きゅうしゅうされて いました。吸収きゅうしゅうされた エネルギーは、くつや あしの つくりで ちらばったと ほうこくされて います。

スタートラインから走り出す場面を思い浮かべてください。走って地面をけり出すとき、足の指は最後まで地面に残るように見えます。だから、指が地面を押して体を前に出しているように見えます。

ところが、5人の長距離寄りの走者と5人の短距離走者を調べた研究があります。その要旨には、指の付け根の関節(MP関節)が、走るとき大きなエネルギーを吸収していたと書かれています[1]。1歩あたりの平均は、ふつうに走るときで約20.9ジュール、全力で走る短距離走で約47.8ジュールでした。1キログラムの物を約2メートル持ち上げる仕事が約20ジュール、約5メートルなら約50ジュールです。目安として、このくらいの量のエネルギーが、指の付け根の関節で1歩ごとに吸収されていた計算になります。吸収されたエネルギーは、靴や足の構造で散らばったと報告されています。

この数字は、要旨が載った転載ページから読んだものです。そのため「約」をつけて、研究の一例として受け取ってください。

では、受け止めているだけの指に、足を前へ進める役目はあるのでしょうか。

蹴り出しの指は、地面を押して体を前に出す部位だと考えがちである。ところが、5人の走者と5人の短距離走者を調べたStefanyshynとNiggの研究(要旨の転載ページで確認)では、MP関節は走行中に主としてエネルギーを吸収していた。1歩あたりの平均吸収量は走りで約20.9J、短距離走で約47.8Jであり、短距離走での最大モーメントは平均で112.4 N·mだった[1]。1kgの物体を約2m持ち上げる仕事が約20J、約5m持ち上げる仕事が約50Jに相当するので、関節の力学計算では、この関節で1歩ごとにそれだけの量のエネルギーが吸収されていたことになる。吸収されたエネルギーは靴や足の構造で散逸したと報告されている。

ここで注意したいのは、「吸収が大きい」ことは「指が働いていない」ことを意味しない点である。ただし、吸収量だけからは、どの組織が関節を支えたのかは分からない。別の研究では、足の筋肉がMP関節の硬さに寄与するとされる[2]。また、この数値は転載された要旨経由の値で、原典の表で再確認したものではないため、研究の一例として扱う。

では、この受け止める働きは、足が前へ進むために何の役に立っているのか。

2. ゆびが ふんばると、あしは どう かわるの?

2. 指のふんばりが、足を硬いてこに変える

2. 指の筋肉が付け根の関節を硬くし、足をてことして働かせる

あしは、じめんを けりだす とき、ぐにゃっと まがって しまうと 力が にげて しまいます。かたい ぼうの ように なって いると、からだを まえに おし出しやすく なります。

けりだす おわりごろに、あしの うらの 小さな 筋肉きんにくが はたらくと、ゆびの つけねの 関節かんせつが かたく なり、むだの すくない けりだしに なると 考えられて います。

これを たしかめた じっけんが あります。あしの うらの 小さな 筋肉きんにくに 行く 神経しんけいを、くすりで 一じてき に とめるのです。すると ゆびの つけねを かたく できなく なり、同じ はやさで あるく ために、股関節こかんせつが よぶんに はたらいた と いわれて います。

ゆびが ふんばって いる おかげで、ほかの ところの はたらきが すくなく すんで いるのかも しれません。

足は、地面を蹴るとき、ぐにゃりと曲がってしまうと力が逃げます。かたい棒のようになっているほうが、体を前へ押し出しやすくなります。

足の裏の小さな筋肉が蹴り出しの終わりに働くと、指の付け根の関節が硬くなり、効率のよい蹴り出しになる、と総説は説明しています[2]。この説明を支える実験として、足の裏の小さな筋肉への神経を麻酔で一時的にとめたものがあります。すると、指の付け根を硬くできなくなり、同じ速さを保つために股関節が余分に仕事をしたと報告されています[3]。人数など細かい条件は、ここでは紹介しません。

指は力を出すだけでなく、ふんばって足をてこにする土台でもあるようです。しかも、指の動かし方によっては、足の裏の膜(足底腱膜そくていけんまく)が引っぱられて足が硬くなる「ウィンドラス機構」も知られています。ただし、これだけで足の硬さを説明しきれるのか、足の筋肉も関わるのかは、今も議論が続いています[4]。

では、その筋肉は、どれくらいの力を出せるのでしょうか。

走りの蹴り出しで足が硬い「てこ」として働くには、MP関節が曲がりすぎない必要がある。Tourillonらの総説は、蹴り出しの終わりに足底の小さな筋肉(内在筋)が働くとMP関節が硬くなり、効率のよい蹴り出しになるとまとめている[2]。その根拠として、Wisdishらが引く実験では、内在筋への神経を麻酔でとめると、MP関節を硬くできず、同じ速さを保つために股関節が余分に仕事をした[3]。指の硬さが失われた分を、体の別の部位が肩代わりした、と読める。この実験の人数は本記事の資料では確認していないので、結論は「一例の報告」にとどめる。

なお、足を硬くする仕組みとしては、指を反らすと足底腱膜が中足骨の骨頭に巻きつくように引かれる「ウィンドラス機構」が古くから知られている[4]。しかし、足の筋肉も関わっているのではないかという見方や、この仕組みだけでは足の硬さを説明しきれないという見方があり、決着していない。したがって、「硬くなる」ことは確かでも、「何がどれだけ硬くしているのか」は、まだ整理の途中である。

Wisdishらによれば、歩行で使われる指の角度は、筋肉が力を出しやすい範囲にあたり、蹴り出しの範囲では筋肉の出す力のほうが、腱や靭帯のような動かない組織の出す力より大きい[3]。筋肉が硬さを支える余地は、数字の上でも十分ある、ということになる。では、その筋肉の力はどの程度で、歩く速さによってどう変わるのか。

3. ゆびの 筋肉きんにくは、どれくらい ちからが 出る?

3. 指の筋肉の力は、歩く速さで分担が変わる

3. 指を曲げる筋肉の力と、歩く速さによる親指の分担の変化

2025ねんの けんきゅうでは、9人の おとなに きょうりょくして もらい、ゆびを まげる 筋肉きんにくを 神経しんけいから でんきで しげき しました。足の うらの 小さな 筋肉きんにくと、すねから のびる 筋肉きんにくを いっしょに はたらかせると、親指おやゆびでは およそ 3.05、ほかの 4ほんでは およそ 3.19 の ちからが 出ました。数字の たんいは ニュートンメートルです。足の うらの 小さな 筋肉きんにくだけの ときより、ずっと 大きな 数字でした。

ただし、これは けんきゅうしつで、いちばん つよく しげき した ときの 数字です。あるいている ときの ちからでは ありません。

では、あるくとき、ゆびは どう はたらくのでしょう。べつの けんきゅうでは、はやく あるく ほど、親指おやゆびの ちからの ふえ方が、足の うらの ほかの ところより 大きかったと 書かれて います。はやく あるくほど、親指おやゆびの ぶんたんが 大きく なると 研究者は よんで います。

2025年の研究では、成人9人の協力を得て、指を曲げる筋肉を神経から電気で刺激しました。足の裏の小さな筋肉と、すねから伸びる長い筋肉を同時に働かせたとき、親指側で約3.05ニュートンメートル、ほかの4本の指で約3.19ニュートンメートルのトルクが出ています。足の裏の小さな筋肉だけを働かせた場合より、親指でもほかの指でも大きな値でした[3]。

ただし、これは実験室で最大まで刺激したときの値です。歩いたり走ったりしているときに、この力がそのまま出ているわけではありません。

では、実際に歩くときはどうでしょうか。ある研究では、歩く速さが上がると、親指を曲げる長い筋肉(長母趾屈筋)の活動が増え、蹴り出しのとき親指の下にかかる力の最大値は、足裏のほかの場所より速く増えました。著者らは、速く歩くほど親指の分担が大きくなると読んでいます[5]。

ゆっくり歩くときの足と、速く歩くときの足では、指の役割分担が少しちがうのかもしれません。

こうして指の力と役目が見えてくると、気になるのは「では、鍛えれば速くなるのか」です。

指を曲げる筋肉は、実際にどれほど力を出せるのか。Wisdishらは成人9人で、足底の内在筋と、すねから伸びる外在筋(長母趾屈筋など)を神経電気刺激で同時に働かせ、MP関節まわりの屈曲トルクを測った。最大値は、親指側で3.05 N·m、ほかの4本の指で3.19 N·mだった。いずれも、内在筋だけを刺激した場合の値を大きく上回っていた[3]。ただし、この値は最大刺激での実験室の値であり、歩行や走行中の実際の力ではない。また、「何%大きい」という表記は原文の読み方を確かめる必要があるため、ここでは倍率を計算しない。

では、歩く速さが変わると指の使われ方はどうなるか。Péterらの研究では、歩行速度が上がるにつれて長母趾屈筋の活動が増し、蹴り出しの局面で親指の下にかかる力のピークは、足底のほかの領域よりも速い割合で増加した。著者らは、速度が上がるほど親指の寄与が大きくなると解釈している[5]。つまり、足はいつも同じ分担で働いているのではなく、速さに応じて親指に任される量が変わるらしい。

ここまでで、指には力を出す能力もあり、足を硬くする役目もあることが見えてきた。だとすれば、指を鍛えれば足が速くなるのではないか。その期待を、研究はどこまで支えているのか。

4. ゆびを きたえたら、はやく はしれるように なる?

4. 指を鍛えれば速くなるのか:結果が分かれている

4. 指の筋力と走力の関係:相関の限界と、鍛錬の効果が一致しない理由

だいがくの アメリカンフットボールの 選手せんしゅ 17人を しらべた けんきゅうが あります。ゆびで ゆかを おす ちからが 強い 人ほど、ジグザグに はしって むきを かえる テストの タイムが よい、という かんけいが 見つかりました。

けれど、まっすぐ 走る 10ヤードや 40ヤードの タイムとは、かんけいが ありませんでした。また、ゆびを まげる ちからは、どの テストとも、はっきりした かんけいは 見つかりませんでした。

それに、この かんけいで わかるのは、ぜんたいの 4分の 1 くらいです。ほかの ことも、たくさん かかわって います。

ゆびを きたえる 8しゅうかんの くんれんで、50メートルそうの じこベストが ちぢんだ 男の人 12人の ほうこくも あります。いっぽう、親指おやゆびを ひらく 筋肉きんにくが 大きい ことは、たんきょりそうには むいて いないかも しれない、という ほうこくも あり、けっかは そろって いません。

大学のアメリカンフットボール選手17人を調べた研究があります。指で床を押す力(指を反らした状態の力)が強い選手ほど、プロアジリティという切り返しのテストと、3コーンというテストの成績がよい、という関係が見つかりました。相関係数は、およそマイナス0.5です。タイムは短いほど速いので、マイナスは「力が強いほど、タイムが短い」という意味です。ところが、10ヤード走や40ヤード走の成績とは関係がありませんでした。指を曲げる力(曲げた状態)は、どのテストとも関連しませんでした[4]。

数字の意味を考えてみましょう。相関係数が0.5なら、その2乗の約0.25は、指の力とタイムがいっしょに動く度合いの目安です。指の力がタイムの4分の1を決める、という意味ではありません。しかも、17人の小さな調査で、関連があるのと「鍛えれば速くなる」のとは別の話です。

鍛えた研究はどうでしょう。総説には、指を鍛える8週間の訓練で、50メートル走の自己ベストが縮んだ男性12人の報告(橋本・櫻庭)が載っています。一方で、親指を開く筋肉(母趾外転筋)が大きいことは、短距離の成績に不利かもしれないという報告もあり、結果は一致していません[2]。

では、速さ以外の場面で、指の力は何の役に立つのでしょうか。

指の力と運動能力の関係を、数字はどこまで支えるのか。Yuasaらは大学のアメリカンフットボール選手17人で、指で床を押す力(指を反らした状態)が、プロアジリティ(r=-0.503)と3コーン(r=-0.498)の方向転換テストと有意に関連した一方、10ヤード走・40ヤード走とは関連しなかったと報告した。指を曲げる筋力(曲げた状態)は、どのテストとも有意な関連がなかった[4]。タイムは短いほどよいので、負の相関は「力が強いほど速い」を意味する。

この値は、読み取りに注意が要る。r=-0.5のとき、決定係数r²は約0.25である(0.503²は約0.253、0.498²は約0.248)。つまり、指の押す力が説明するのは方向転換タイムのばらつきの約4分の1にすぎず、残りはほかの要因による。さらに、相関は因果ではなく、鍛えれば速くなる証拠にはならない。n=17という小ささも考慮が必要だ。また、直線走の10ヤード・40ヤードに関連が出なかったことは、指の力の役割が、直進の加速よりも切り返しの局面にあることを示唆しているが、小さな標本でそれを一般化することはできない。

鍛錬の効果についても、結果は一致していない。Tourillonらの総説は、足の指を鍛える8週間の訓練で50m走の自己ベストが縮んだ男性12人の報告(橋本・櫻庭)を載せる。しかし同じ総説には、母趾外転筋が大きいことが短距離の成績に不利かもしれないという報告もある[2]。小規模な報告が総説経由で並んでいる段階で、「鍛えれば速くなる」とは断定できない。

速さには結びつきにくくても、指の力が別の場面で役に立っている可能性はないのか。

5. ゆびの ちからは、ゆっくり あるく ときに やくだつ?

5. 速さより、歩きの安定にかかわる指の力

5. 足把持力(足の指でものをつかむ力)と歩行の安定

ゆびで ものを つかむ ちからが、あるく ことと かかわるか しらべた けんきゅうが あります。高齢者こうれいしゃ 13人を しらべた 日本の けんきゅうでは、この ちからが 強い 人ほど、ゆっくり あるく ときの はばや あるく リズムと かんけいが ありました。一ぽう、いちばん はやく あるく ときは、どの 数字とも かんけいが ありませんでした。

けんきゅうした 人たちは、この ちからが、からだを ぐらつかせない ことに かかわって いるかも しれないと 考えて います。13人の 小さな けんきゅうなので、はっきり 決まった わけでは ありません。

べつの けんきゅうでは、おせわが 必要ひつような 高齢者こうれいしゃ 52人を 3つに わけて、週に 2回、12しゅうかん くんれんしました。ゆびで つかむ ちからを きたえた グループでも、ゆびの ちから、バランス、あるく はやさが 上がり、きたえなかった グループより 高く なりました。ただし、これは お年よりの けんきゅうで、子どもや げんきな 人に そのまま あてはめる ことは できません。

指の力は、速く走る場面より、ゆっくり歩く場面で役に立つのかもしれません。入院中の高齢者13人を調べた日本の研究では、足把持力(足の指でものをつかむ力)が、ゆっくり歩くときの歩幅や歩行率などと関係していました。一方、最速で歩くときは、どの値とも有意な関係がありませんでした。著者らは、足把持力が姿勢の安定に関わる可能性を示唆しています[6]。13人の小さな研究なので、決まった結論ではありません。

鍛える側の研究もあります。要介護の高齢者52人を3つの群に分け、週2回・12週間の介入をしたところ、足把持力のトレーニングだけの群でも、足把持力、バランス、歩行速度が有意に向上し、対照群より高くなりました。フットケアを併用した群では、足部の柔軟性も上がりました[7]。

ただし、対象は要介護の高齢者です。子どもや健康な人にそのまま当てはめることはできません。

指を鍛えることの意味は、「速く走る」よりも、むしろ「安定して歩く」側にあるのかもしれません。

足把持力(足の指でものをつかむ力)は、走力よりも歩行の安定との関係で調べられている。岩瀬らの入院高齢者13人の研究では、足把持力は最大低速歩行時の歩幅や歩行率などと関連し、最速歩行ではどの歩行の値とも有意な関連がなかった。著者らは、足把持力が低速歩行時の姿勢の安定化に関与する可能性を示した[6]。速さが上がると、足把持力よりも別の要素が支配的になる、と読める。ただし、13人の小さな研究である。

鍛えると何が変わるか。安田・村田は、要介護の高齢者52人を3群に分け、週2回・12週間の介入をした。足把持力トレーニングのみの群でも、足把持力、バランス(FRT)、歩行速度が有意に向上し、対照群より高かった。フットケアを併用した群では、足部の柔軟性も上がった[7]。

ここで、4章のアメリカンフットボール選手と、本章の高齢者を並べると、指の力が必要になる場面が異なることが見える。選手では切り返しの局面と関連し、高齢者では低速歩行の安定と関連した。どちらも、足を地面に「止める」「安定させる」局面であり、直進の加速とは別の局面だ。ただし、対象の年齢も、測定の方法も異なるため、同じ原理が働いていると言うことはできない。

最後に、自分の体で確かめる道すじを見ておこう。

6. じぶんの ゆびで ためして みよう

6. 自分の足の指を、座ったままと歩きながら観察する

6. 足の指の働きを自分の体で確かめ、原典に当たる

すわって できる

いすに すわって、はだしで ゆかに タオルを ひろげます。ゆびだけで、タオルを たぐりよせて みましょう。あしの うらの 小さな 筋肉きんにくが ぴくぴく うごくのが わかるかも しれません。つかれたら すぐ やめます。

あるきながら

ひろい ところで、ゆっくり あるいて みます。まわりに ぶつからない ように、まえを 見て ください。どの ゆびが さいごに 地めんから はなれるか、気にして みましょう。はやあしの ときは どうなるでしょう。

座ったまま、足の指でつかむ

いすに座り、床の上にタオルを広げます。はだしで、足の指だけを使ってタオルを手前にたぐり寄せてみましょう。足の裏と、すねの内側のあたりが働くのが感じられるはずです。疲れたら、すぐにやめます。

歩きながら、最後に離れる指を感じる

広くて安全な場所で、ゆっくり歩いてみます。前を見て、周りに人や物がないことを確かめてください。足が地面から離れるとき、どの指が最後まで残るか。早歩きにすると、親指の感じは変わるでしょうか。第3章の「速く歩くほど親指の分担が増える」という研究と、自分の感覚を比べてみましょう。

資料を読むなら

足把持力の研究[6][7]は日本語で読めます。指のトルクの論文[3]と、方向転換との関連を調べた論文[4]は英語ですが、図と表が多く、数字の出どころを見ることができます。

体で確かめる

いすに座って、床に広げたタオルを足の指だけでたぐり寄せる。足裏とすねの内側の筋肉の働きを感じる。無理をせず、疲れたらやめること。次に、広くて安全な場所でゆっくり歩き、足が地面を離れるときに最後まで残る指を探す。早歩きにしたときに親指の感じが変わるかを、第3章の研究と照らして考えてみる。

資料を読むなら

走りでの指のエネルギー吸収は[1]、足を硬くする指の筋肉の総説は[2]、指のトルクと筋肉の力は[3]、方向転換との関連とウィンドラス機構は[4]、歩く速さと親指の分担は[5]、足把持力と歩行は日本語の[6][7]にある。指は「蹴る」と「受け止める」と「安定させる」の三つの働きをするらしい、その配分は走る速さや年齢で変わるかもしれない、という点を、各資料でどう扱っているか読み比べると面白い。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文で使った資料です。

  1. Stefanyshyn, D. J. & Nigg, B. M. Mechanical energy contribution of the metatarsophalangeal joint to running and sprinting. J Biomech (1997). https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S002192909700081X (指の付け根でのエネルギー吸収)
  2. Tourillon, R. et al. Frontiers in Sports and Active Living (2019)(総説). https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fspor.2019.00046/full (足の裏の小さな筋肉と硬さ/鍛錬の報告)
  3. Wisdish, A. et al. J Exp Biol (2025). https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11744321/ (指を曲げる筋肉のトルクと歩行の角度)
  4. Yuasa, Y. et al. J Hum Kinet 64:47-55 (2018). https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6231329 (指の押す力と方向転換/ウィンドラス機構)
  5. Péter, A. et al. J Biomech 48(12) (2015). https://jyx.jyu.fi/jyx/Record/jyx_123456789_50179 (歩く速さと親指の分担)
  6. 岩瀬ほか ヘルスプロモーション理学療法研究 2(4) (2013). https://www.jstage.jst.go.jp/article/hppt/2/4/2_163/_article/-char/ja (足把持力とゆっくり歩く動作)
  7. 安田・村田 ヘルスプロモーション理学療法研究 4(2) (2014). https://www.jstage.jst.go.jp/article/hppt/4/2/4_55/_article/-char/ja/ (足把持力の訓練)

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