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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

トイレの べんきには、どうして いつも みずが たまって いるの?

トイレの便器には、流したあとも水が残っているのはなぜか

便器にたまった水(封水)は何のためにあり、なぜ深さが5〜10cmと決まっているのか

分野:技術

トイレの みずを ながすと、よごれが きえて、また きれいな みずが たまります。じつは、この たまった みずは、ながし わすれた ものでは ありません。わざと のこる ように つくって あるのです[1]。

のこした みずは、なんの やくに たつのでしょう。どれくらいの ふかさが ちょうど いいのでしょう。この きじを よむと、トイレの みずの やくめと、ふかさの きまり、みずが へる わけが わかります。

トイレの水を流すと、汚れが消えたあとに、また水がたまります。この水は、流しきれなかった水ではありません。流したあとにも残るように、わざとそう作られています[1]。

残した水は、何の役に立つのでしょうか。水が深ければ深いほどよいわけではないのは、なぜでしょうか。この記事を読むと、水のふたの働き、1775年に時計職人が便器の出口にS字管をつけて特許を取った話、深さの基準が決まった理由、水が減るときの原因が分かります。

便器の底にたまった水は、汚れを流したあとの残りではない。排水管の中の臭気や衛生害虫が室内に入るのを防ぐために、水で管を封じる設計であり、この水は「封水」と呼ばれる[1]。

では、封水はなぜ深さ50mm以上100mm以下とされているのか。浅すぎても深すぎても困るのはなぜか。この記事を読むと、1775年に時計職人カミングが便器の出口にS字管をつけて特許を取った話、深さの基準の根拠、封水が減る原因と、それを減らさない管理が分かる。

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1. べんきの みずは、なんの ために のこして あるの?

1. 便器の水は、流したあとに残してある

1. 封水とは何か ── 管を水で封じる設計

トイレの したには、おおきな はいすいかんが つながって います。そのさきは、げすいの ほうへ のびて います。げすいの かんの なかの においや むしが、もし へやに あがって きたら、こまりますね。

そこで、べんきの そこに みずを のこします。みずが、かんの いりぐちを ふさぐのです。このように みずで ふうじる ことを「すいふう」と いいます[1]。

たとえば、ペットボトルに ふたを して、においを とじこめる ことが ありますね。べんきの みずは、その ふたの かわりです。ただし ほんとうは、かたい ふたでは なく、みずで できた ふたなので、なくなると ふさぎが きかなく なります。

では、この みずの ふたは、いつから かんがえられて いたのでしょう。

便器の下には、排水管がつながっています。排水管の先は下水につながっていて、管の中の臭気や下水ガス、ねずみなどの衛生害虫が室内に上がってくるおそれがあります。

それを止めるのが、トイレなどの排水器具についている「トラップ」です。トラップの内側には水がたまっていて、この水を「封水」と呼びます。排水管からの臭気や衛生害虫が室内に入るのを、液体で封じることを「水封」といいます[1]。

洋式の大便器や小便器は、器具とトラップが一体になった「作り付けトラップ」です[1]。便器の底の水は、洗い流したあとの残りではなく、便器の形そのものが水をためる仕組みになっています。

では、この「水のふた」の考え方は、いつ生まれたのでしょうか。

便器の下には排水管が続き、その先は下水につながる。管の中の臭気や下水ガス、衛生害虫が室内に出てこないようにするため、排水器具には水をためる部分(トラップ)が設けられている。ためられた水が封水であり、液体で封じること自体を水封という。自治体の排水設備設計の手引は、この定義を臭気・下水ガス・ねずみなどの衛生害虫の侵入防止として説明する[1]。

トラップには種類がある。管の一部を曲げて水をためる管トラップは、水を吸い上げるサイホンの働きで封水を失いやすい面があるとされる。一方、大便器・小便器では、器具とトラップが一体の作り付けトラップが使われる[1]。便器の底の水は、便器の形がつくる水封そのものだと言える。

ここで、水で臭いを断つという発想は、いつ、だれが形にしたのかという問いが出てくる。

2. むかしの とけいの しょくにんが、みずの ふたを つくった?

2. 250年あまり前、時計職人は便器の出口に水をためた

2. 1775年のS字管 ── 時計職人の特許は、水で臭気を断つ発想の先がけ

いまから 250ねん いじょう まえの こと。イギリスの スコットランドの とけいの しょくにんが、すいせんの トイレに「Sの かたちの くだ」を つけて、みずを ためる くふうを しました。1775ねんに とっきょを とったと いわれます[2]。

この ひとの なまえは、アレクサンダー・カミングと よばれます。くだが Sの かたちに まがって いると、まがった ところに みずが のこります。そのため、においが あがって きにくく なります。

とっきょの ことばでは、つかう たびに なかの ものが ぜんぶ ながれて、あたらしく なる くふうだった ようです[2]。

3ねん あとには、ジョゼフ・ブラマが べつの かたちを かんがえました。ふたのような べんを つかって、においを ふさぐ くふうです[3]。

では、いまの トイレの みずは、どれくらいの ふかさが いいのでしょう。

水で臭いを止める発想を形にした人物として、スコットランドの時計職人アレクサンダー・カミングの名が伝えられています。1775年、便器の出口に「S字管」をつけて水をためる水洗便所の特許を取った、イギリス初の水洗便所の特許とされます[2]。

S字に曲がった管の底には、水が残ります。この水が、においを通さないふたになります。特許の文面には、トラップの中身が、トイレを使うたびにすっかり空になるよう作られている、という趣旨のことが書かれています[2]。使うたびに水が入れかわる点が、考え方の中心だったようです。

ただし、カミングが水洗便所全体を発明したわけではありません。3年後の1778年には、ジョゼフ・ブラマが、ちょうつがいのついた弁を使う設計の特許を取りました。閉じた弁が中の水を保ち、においをすべて断つ、と特許に書かれています[3]。この設計は、その後およそ100年にわたって主要な設計のひとつになったと説明されています[3]。

水を残してにおいを断つ発想は、250年前の時点で、すでに言葉になっていました。では、いまの基準は、どう決まっているのでしょうか。

水で臭気を断つ考え方は、1775年にさかのぼる。スコットランドの時計職人アレクサンダー・カミング(資料によってはCummings)は、便器の出口に「S字管」をつけた水洗便所で、英国初の特許を得たとされる。特許の文言には、トラップの中身が使うたびに全部入れかわるよう作る、という趣旨が書かれている[2]。

注意したいのは、この特許が「水洗便所の発明」そのものではない点だ。1778年にはジョゼフ・ブラマ(ブラーマとも)が、ちょうつがいつきの弁を加えた設計で特許を取った。閉じた弁が中にたまる水を保ち、臭気を完全に断つ、というのが特許の主張で、以後およそ100年にわたって主要な設計のひとつとなった[3]。

S字管と弁は形が違うが、どちらも「水で臭いが戻りにくくなる」点では共通している。現在の便器の底の水も、この延長にある。英語版百科事典も、トラップの水は下水ガスが排水管から建物へ戻るのを防ぐ空気のふたになると説明する[5]。便器の底に残る水は、250年前と同じく、排水管からの臭気を防ぐ役目を続けている。

水を残す発想は250年前からあった。では、深さについてはどのように決められたのか。

3. みずは、ふかければ ふかい ほど いいの?

3. 封水は深ければよいわけではない ── 5cm以上10cm以下の理由

3. 封水深50〜100mmの根拠 ── 残留25mmの2倍と、自浄作用の限界

おおくの トラップでは、みずの ふかさは 5センチ いじょう 10センチ いかと きまって います[1]。(トラップの なかには、5センチ いじょうだけの ものも あります。)

みずは、じかんが たつと すこしずつ へります。へっても においを とめる ために、さいごに 2.5センチは のこって ほしい、と かんがえます。そして あんぜんの ために、その 2ばいの 5センチを いちばん あさい ふかさに しました[1]。

では、ふかい ほうが あんしんなのに、どうして 10センチまでなのでしょう。みずが ふかすぎると、みずが じぶんで よごれを あらい ながす ちからが よわく なって、よごれが たまりやすく なるからです[1]。

この きまりは トラップ ぜんぶの もので、いえの べんきが ちょうど この ふかさ、というわけでは ありません。べんきの みずの ふかさは、せいひんに よって ちがいます。

では、その みずは、どうして へって しまうのでしょう。

排水設備の設計の手引では、トラップの封水深は、多くのトラップで50mm以上100mm以下とされています。これは5cm以上10cm以下ということです[1]。(阻集器を兼ねるトラップだけは、下限の50mmのみです。)数字には、それぞれ理由があります。

封水は、管の中の圧力の変化や蒸発、毛細管現象などで少しずつ減ります。そこで、減っても封が破れないよう、最小限残ってほしい深さを25mmと考えます。そのうえで、安全のためにその2倍を見込み、下限を50mmとしました[1]。50÷25で、ちょうど2倍です。

では、上限が100mmなのはなぜでしょうか。封水が深すぎると、水が入れかわる勢いが弱まり、トラップの底に汚れがたまりやすくなります。そのため、深さの上限も決められています[1]。浅くても深くてもよくない、という両側からの理由です。

この基準は、トラップ一般についての数字です。実際の洋式便器の封水の深さは、製品によってちがいます。

では、せっかく決めた深さの水は、どんなときに減ってしまうのでしょうか。

封水の深さは、50mm以上100mm以下とされる。ただし阻集器を兼ねるトラップは、下限のみ50mmである[1]。この基準は、単なる経験則ではなく、減り方の見積もりと設計上の考えから決まっている。

下限の理由は次のとおりだ。封水は圧力の変動、蒸発、毛細管現象によって減ることがある。そこで、最悪の場合でも最低限残したい深さを25mmとし、安全を見て、その2倍の50mmを下限とした[1]。ここで注意すべきは、25mmは「減っても残したい最小値」で、50mmは「その2倍の安全率を見込んだ下限」だという点だ。2つの数字は別のものを指している。

上限の理由は逆向きである。封水が深すぎると、自浄作用が弱まり、トラップの封じ込め部分に沈積物ができやすくなる。そのため、最大封水深を100mmとしている[1]。

つまり、浅いと蒸発や圧力で封が破れやすく、深いと汚れがたまりやすい。この2つの条件にはさまれた範囲が50〜100mmだと読み取れる。ただし、これはトラップ一般の基準で、洋式便器そのものの水深を定めた数字ではなく、実際の便器の封水深は製品によって異なる。

では、設計どおりに水がためてあっても、水はどのように減っていくのか。

4. みずが へって しまうのは、どんな ときかな?

4. 水が減ると、水のふたはどうなるのか

4. 封水が失われるとき ── 蒸発・清掃不足・管理の不備

トイレに みずの ふたが あっても、へって しまう ことが あります。とうきょうとの げすいどうきょくは、においの そうだんの こたえに、いくつか げんいんを あげて います[4]。

たとえば、ながい あいだ つかわない と、みずが じょうはつして へります[4]。かみのけなどの よごれを そうじ しないで おいたり、きかいが ふるく なったり、くだの つなぎめが わるかったり、という ことも あげられて います[4]。

りょこうで なんにちも るすに する とき、トイレの みずは すこしずつ へる かもしれません。ときどき ながして、みずを あたらしく する ことが、においを ふせぐ ほうほうの ひとつです。

そこで、じぶんの うちの みずを、すこし みて みましょう。

東京都下水道局は、においの相談に対する回答で、トラップが正常に働かなくなる原因として、5つを挙げています。毛髪などの掃除不足、わんトラップのわんを外すなどの不適切な管理、長時間使わなかったことによる水の蒸発、器具の老朽化、排水管や通気管などの接続不良です[4]。

このうち「蒸発」は、水が少しずつ空気中に逃げていく現象です。ふだん使うたびに新しい水が入るトイレでは目立ちませんが、何日も使わない洗面台や排水口では、水が減りやすくなります。使われない器具のために、水を自動で補う装置(トラップ・プライマー)もあると、百科事典には説明があります[5]。

ほかにも、管の中の圧力が急に変わって、水が引かれるように減ることがあるとも言われます。ただ、この仕組みは資料によって説明の細かさが異なるため、ここでは「減る原因として圧力の変化も考えられる」という程度にとどめます[1]。

水が減る原因は一つではありませんが、どれも、水のふたが少なくなったときに起きる問題です。自分の家の水は、どんな様子でしょうか。

封水は設計どおりに保たれるとは限らない。東京都下水道局は、トラップが正常に機能しない原因として、毛髪などの掃除不足、わんトラップのわんを外すといった不適切な管理、長時間使わなかったことによる水の蒸発、器具の老朽化、排水管や通気管などの接続不良の5つを挙げている[4]。

このうち蒸発は、使用頻度が低い器具ほど影響が大きいと考えられる。使うたびに水が入れかわる便器とは違い、使われない器具の封水は補われないからだ。百科事典の英語版には、使われない器具の封水の蒸発を防ぐため、水を自動で補給する「トラップ・プライマー」という装置があるとの説明がある[5]。ただしこれは二次資料の記述である。

圧力の変動も、封水の損失の要因として設計の手引は挙げる[1]。ここで、管トラップのうちサイホン式のものは、自己サイホンによって封水を失いやすいとされている点は、前の章の内容とつながる[1]。ただし、どの現象がどれだけ封水を減らすかは、設置条件によって変わり、一般論としては言い切れない。

封水を減らさないためには、掃除、正しい部品の取り付け、長期不在時の対策が重なる。何を観察すれば、これを自分の家で確かめられるだろうか。

コップの みずが へる ようすを みて みよう

水の減りを、コップで見てみる

蒸発による水の減りを、自分の目で確かめる

うちで やって みよう

コップに みずを いれ、みずの たかさの ところに テープを はりましょう。そのまま 3にち おいて、みずが どれくらい へったか、テープと くらべて みます。ふたを した コップと しない コップを ならべても おもしろいです。コップは、おとなの いる ところで あつかって ください。

よんで みたい もの

おすまいの ちいきの げすいどうの ホームページに、トイレや かんの せつめいが のって います。「はいすい せつび」と いう ことばで さがして みましょう。

家でできる観察

透明なコップに水を入れ、水面の高さに印をつけます。3日後に水面の位置を見て、減った量を定規で測りましょう。ふたをしたコップと、しないコップを並べて比べると、水の減り方のちがいが分かるかもしれません。

資料の探し方

住んでいる自治体の下水道課の「排水設備」の手引には、トラップの種類や封水深の基準が出ています。東京都下水道局の「お客様の声」にも、においの相談とその回答が載っています。

いつも流していると気にならない便器の水が、じつは長い間考えられてきた工夫だと分かりました。次に使うときは、水面をそっとのぞいてみてください。

観察の手順

透明なコップに水を入れ、水面に印をつける。3日後の水面の位置を比べて減りを測る。ふたをした場合としない場合を並べると、蒸発の影響を比べられる。ただし、これは蒸発の目安を見る実験で、便器やトラップの実際の封水の減り方と同じとは限らない。

原典にあたる

自治体の排水設備設計の手引(白井市)には、水封の定義、封水深50〜100mmの根拠、トラップの種類が書かれている。東京都下水道局の「お客様の声」は、臭気の相談に対する原因の挙げ方を確かめられる。「参考にした情報源」には、カミングとブラマの特許を紹介した資料も挙げてある。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

今回は、水封の定義と深さの基準は白井市の排水設備設計の手引、減る原因は東京都下水道局の回答、S字管と弁の歴史は英国国立公文書館と科学博物館の資料を突き合わせた。トラップ・プライマーの記述は百科事典によるため、補助として使った。

  1. 白井市「排水設備設計の手引」 https://www.city.shiroi.chiba.jp/material/files/group/43/haisuisetubisekkei.pdf (水封の定義・封水深の基準と根拠・トラップの種類)
  2. The National Archives「Toilet design」 https://www.nationalarchives.gov.uk/explore-the-collection/explore-by-topic/business-finance-and-innovation/toilet-design/ (カミングの1775年の特許)
  3. Science Museum Group blog「A flushing story」 https://blog.sciencemuseum.org.uk/a-flushing-story/ (ブラマの1778年の特許)
  4. 東京都下水道局「お客様の声」(臭気の相談への回答) https://www.opendata.metro.tokyo.lg.jp/gesui/koe202104.pdf (トラップが働かなくなる原因)
  5. Wikipedia「Trap (plumbing)」 https://en.wikipedia.org/wiki/Trap_(plumbing) (空気のふた・トラップ・プライマー。補助的な資料)

なおした ところ

更新履歴

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