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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

とんかつは、どうやって いまの かたちに なったの?

とんかつは、どうやって今の形になったのか ── 温野菜とソースの洋食から、箸で食べる厚切りまで

とんかつは、ポークカツレツからどう厚切りの一皿に育ったのか ── 筋切り・衣・加熱の目安に残る理由

分野:歴史・文化

さいしょの カツレツの おさらには、いまの ような せんぎりキャベツは のって いなかったと いわれます。のって いたのは、あたたかい やさいと、デミグラスソースでした[1]。

それが どうして、あつい 肉を たっぷりの 油で あげて、おはしで たべる とんかつに なったのでしょう。肉を あつく する、たくさんの 油で あげる、おはしで たべられる ように きる、という 3つの かわりかたと、そのうらに ある わけが わかります。

銀座の洋食店・煉瓦亭が出した最初のポークカツレツは、千切りキャベツを添えた皿ではなく、温野菜を添えてデミグラスソースをかけて食べる料理だったといわれます[1]。

では、その皿は、どうやって箸で切れる厚切りのとんかつになったのでしょうか。肉を厚くする、たっぷりの油で揚げる、箸で食べられる大きさに切って出す、という三つの変化と、筋切り・衣・加熱の目安にある理由が分かります。

銀座の洋食店・煉瓦亭のポークカツレツは、もとはフランス料理のコートレットをもとにした洋食で、皿には千切りキャベツではなく温野菜が添えられ、デミグラスソースがかけられていたといわれる[1]。

この一皿は、どのような変化を経て、箸で切れる厚切りのとんかつになったのか。変化の方向は、厚く切る、たっぷりの油で揚げる、箸で食べられるよう切り分ける、の三つに整理できる。そのうえで、筋切り・衣・加熱の基準といった工程の理由が、一枚の肉にどう積み重なっているのかが分かる。

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1. さいしょの カツレツの おさらには、なにが のって いたの?

1. 最初のポークカツレツは、温野菜とソースの皿だった

1. 煉瓦亭のポークカツレツ ── 千切りキャベツの前に添えられていたもの

ぎんざの ようしょくやさん「れんがてい」は、1895ねんに はじまったと されて います[1]。ここの 「ポークカツレツ」が、とんかつの ごせんぞと みられて います。ただ、はっしょうの みせが どこかは、いろいろな いけんが あります[3]。

おどろくのは、おさらの うえです。さいしょの カツレツには、あたたかい やさいが そえて あり、デミグラスソースが かかって いました[1]。

せんぎりキャベツを そえる やりかたは、れんがていの しょだいが かんがえたとも いわれます[1]。べつの はなしも あります。みせの 人が たりなく なったとき、ゆでる てまの かからない せんぎりに したら、よろこばれた、という テレビばんぐみの せつめいです。ただし、ほんとうの ことか どうかは、はっきり して いません[2]。

では、この カツレツは、どこが かわって「とんかつ」に なったのでしょう。

銀座の洋食店「煉瓦亭」は1895(明治28)年の創業とされ、看板の「ポークカツレツ」は、フランス料理のコートレットをもとにした料理です[1]。今のとんかつの祖先とみられていますが、ここが発祥と確定しているわけではなく、諸説があります[3]。

意外なのは皿の上です。もともとは、温野菜を添え、デミグラスソースをかけて食べる洋食でした[1]。千切りキャベツは、まだ主役ではありません。

千切りキャベツの由来にも説があります。煉瓦亭の初代が、千切りキャベツを添えてソースをかけるスタイルを考案し、これがとんかつの元祖になったともいわれます[1]。別の説明もあります。店の人手が足りなくなったとき、ゆでる手間のかからない千切りにしたら、ソースとよく合うと好評だった、というテレビ番組での紹介です。ただし、史実として検証されたものではありません[2]。

どちらの話にしても、洋食店の皿から出発した料理だという点は同じです。では、その肉は、何が変わって「とんかつ」になったのでしょうか。

煉瓦亭は1895(明治28)年の創業とされ、看板のポークカツレツは、フランス料理のコートレットをもとにしている[1]。後のとんかつの祖先に当たるが、発祥の店は一つに特定できず、諸説が並ぶ[3]。

注目したいのは、当初の皿の構成だ。温野菜が添えられ、デミグラスソースがかけられていた[1]。つまり、いまの「揚げ物と千切りキャベツとソース」という組み合わせは、最初から決まっていたものではない。

では、千切りキャベツはいつ入ったのか。一つは、煉瓦亭の初代が千切りキャベツを添えてソースをかけるスタイルを考案し、これが元祖になったという説明である[1]。もう一つは、店が人手不足になったとき、ゆでる手間のない千切りにしたところ、ソースとよくなじんで好評だったという、テレビ番組内の説明だ[2]。

この二つは、千切りキャベツを考えた人や理由が食いちがう。いずれにせよ、確かなのは洋食店の皿から出発した料理だという点である。では、肉そのものは何がどう変わったのか。

2. カツレツは、なにが かわって とんかつに なったの?

2. ポークカツレツは、何が変わると「とんかつ」になるのか

2. 深揚げ・厚切り・箸 ── ポークカツレツが「とんかつ」へ向かった三つの方向

さきに こたえを いうと、かわったのは 3つです。肉を あつく きる。たっぷりの 油で あげる。おはしで たべられる ように きって だす。この ほうこうに かわって いったと せつめいされます[3]。

1899ねんの れんがていには、ぶたにくを ひろい 油で あげる つくりかたが 見られると いわれます[3]。いっぽう、いまの ように あつい 肉に なったのは、しょうわの はじめごろです。1929ねん、おかちまちの ようしょくや「ポンチけん」の コックが、2.5〜3センチの あつぎりの 肉に、しっかり ひを とおす つくりかたを かんがえたと いわれます[3]。

うえのでは、しょうわの はじめに ぶあつい とんかつが うられ、ようしょくの ていばんに なりました。1930ねんに はじまった「いせん」は、いまも「おはしで きれる やわらかい とんかつ」を だして います[4]。

たっぷりの 油で あげると、みずけが にげにくく、しっとり やわらかく なると いわれます[3]。

でも、あつい 肉は、ひを とおすと どうなるのでしょう。

答えを先に言うと、変化は三つです。肉を厚く切る。たっぷりの油で揚げる。箸で食べられるよう切り分けて出す。ポークカツレツからとんかつへの変化は、この方向だったと説明されています[3]。

一つ目と二つ目の変化は、少しずつ起こりました。1899(明治32)年、煉瓦亭に、牛肉でなく豚肉を、ソテーでなく天ぷらのようにたっぷりの油で揚げる調理が見られるといわれます。創業の1895年とメニューの1899年は別の出来事で、資料によって年が揺れます[3]。

肉の厚さが決定的に変わったのは昭和に入ってからです。1929(昭和4)年、御徒町の洋食店「ポンチ軒」のコック島田信二郎が、2.5〜3cmの厚切り肉に十分火を通す調理法を考案したといわれ、今の形に近いとされます。「発明者」と呼ばれることもある人ですが、発祥の店は特定が難しく、1921年の新宿「王ろじ」説もあります[3]。

上野では昭和の初めに分厚い肉のとんかつが売り出され、定番の洋食になりました。1930(昭和5)年創業の井泉本店は「お箸できれるやわらかいとんかつ」を出し続け、大正3(1914)年創業の蓬萊屋は、二度揚げを始めた店とされます[4]。

たっぷりの油で揚げるディープ・フライは、水分の蒸発が少なく、しっとり柔らかな食感に仕上がるとされます[3]。では、厚い肉は、加熱するとどうなるのでしょうか。

変化の方向は三つに整理できる。肉を厚く切る。たっぷりの油で揚げる。箸で食べられるよう切り分けて出す。ポークカツレツからとんかつへの変化は、この方向だったと説明されている[3]。

揚げ方の変化は早い。1899(明治32)年の煉瓦亭には、牛肉でなく豚肉を、ソテーでなく天ぷらのようにたっぷりの油で揚げる調理が見られるとされる。名称は「ポークカットレット」などを経て変化し、「豚カツ」の名は1911年頃に生まれたといわれる。ただし、創業の1895年とメニューの1899年は別の出来事であり、資料によって年も揺れる[3]。

これに対して、厚さの変化は昭和に入ってからとされる。1929(昭和4)年、御徒町の洋食店「ポンチ軒」のコック島田信二郎が、2.5〜3cmの厚切り肉に十分火を通す調理法を考案したといわれ、現在のとんかつに近い形になったという。島田は「発明者」と呼ばれることもあるが、発祥店の特定は難しく、1921年の新宿「王ろじ」説も併存する。つまり、一人の発明というより、いくつもの店で似た工夫が重なったと読むほうが無理が少ない[3]。

上野では昭和初年に分厚い肉のとんかつが売り出され、定番の洋食として根づいた。1930(昭和5)年創業の井泉本店は「お箸できれるやわらかいとんかつ」を出し続け、1914(大正3)年創業の蓬萊屋は、二度揚げを始めた店とされる[4]。

深く揚げる理由は、水分に関わる。ディープ・フライは水分の蒸発が少なく、しっとり柔らかな食感に仕上がるとされる[3]。では、厚くなった肉は、加熱の途中でどのような問題を抱えるのか。

3. あつい おにくに、ほうちょうで きれめを いれるのは なぜ?

3. 厚い豚肉に、包丁で切り目を入れるのはなぜか

3. 筋切りと下たたき ── 縮みと火の通り方を整える手間

ぶたにくは、ひを とおすと ちぢんで、そりやすく なります。とんかつを つくる とき、にくの ふちに ほうちょうで ちいさな きれめを いれるのは、そのためです[5]。

あぶらみと あかみの あいだには、かたい すじが あります。ここに きれめを いれる ことを「すじきり」と いいます[5]。

もう ひとつ、にくを たたいて せんいを ほぐす やりかたも あります。あつさが そろって、ひが とおりやすく、やわらかく なると いわれます[5]。

きれめの ふかさや ならべかたは、しりょうに よって ちがいます。ひとつの めやすと して 見て ください。

では、「なかまで ひが とおった」とは、どう きまって いるのでしょう。

豚肉は加熱すると縮んで反りやすい食材です。そこで、とんかつを作るときは、脂身と赤身の間にある固い筋に、包丁で切り目を入れます。これが「筋切り」です[5]。

肉をたたいて繊維をほぐす方法もあります。厚みがそろい、火が通りやすく、柔らかくなるとされます[5]。厚切りは火が通るまでに時間がかかるので、厚みがそろうことは、揚げ上がりのむらを減らす助けになると考えられます。

切り目の深さや間隔は、資料によって数字に差があります。ここでは、一つの目安として読んでください。

こうして肉の形を整えたら、次の疑問が出てきます。揚げ物の「中まで火が通った」は、何を基準にしているのでしょうか。

厚切りにすると、新しい問題が出てくる。豚肉は加熱すると縮んで反りやすい。しかも脂身と赤身の間には固い筋があり、これを放っておくと形が整いにくい。そのため、包丁で切り目を入れる「筋切り」を行う[5]。

肉をたたいて繊維をほぐす方法も紹介されている。この場合、厚みがそろい、火が通りやすく、柔らかくなるという[5]。厚切りは中心まで熱が届くのに時間がかかるため、厚みのむらは揚げ上がりの差になりやすい。そう考えれば、この下ごしらえは、厚さを手に入れた代わりに生まれた手間だといえる。

切り目の深さや間隔は、資料によって数字に幅がある。1cmや3cm間隔といった数字は、一つの目安にすぎない[5]。

形が整っても、肝心の問いが残る。「中まで火が通った」は、何を基準に決まっているのか。

4. 「なかまで ひが とおった」は、なんど ぐらいの こと?

4. 「中まで火が通った」の目安は、どう決められているのか

4. 63℃・30分と75℃・1分 ── 事業者向けの加熱基準を読む

おみせなどが ぶたにくを つかった たべものを りょうりして うる とき、日本では きまりが あります。なかの いちばん ふかい ところを、63℃で 30ぷん いじょう、または 75℃で 1ぷん いじょう あたためる ことです[6]。

2015ねんの 6がつ 12にち からは、ぶたにくを なまで 食べる ように だす ことは きんしに なりました[6]。

これは、おみせなど じぎょうを する 人の ための きまりです。おうちの 人に ぎむが ある という はなしでは ありません。また、おいしさの きじゅんでも ありません。

この 数字は、おみせなどが まもる えいせいの きじゅんです。あげものは あぶらが はねるので、おうちで やる ときは かならず 大人と いっしょに して ください。

では、そとがわの「ころも」は、どうやって つけるのでしょう。

販売者が一般消費者向けに豚肉を使った食品を調理して販売する場合、中心部を63℃で30分間以上、またはこれと同等以上の殺菌効果のある方法(75℃で1分間以上)で加熱することが決まっています。2015(平成27)年6月12日からは、豚肉の生食用としての提供も禁止されました[6]。

数字を見比べると、温度を12℃上げれば、必要な時間が30分から1分に縮まります。厚い肉の中心まで熱を届かせるには、時間をかけるか、温度を上げるか、という選び方になります。

ただし、これは事業者向けの衛生基準です。おいしさの基準でも、家庭の義務でもありません。家で揚げる場合も、中までしっかり火を通すことが大切で、揚げ油は大人と一緒に扱います。

肉の準備ができたところで、外側に目を向けます。衣は、どの順番でつけるのでしょうか。

豚肉の加熱について、事業者向けの基準が定められている。豚肉を使った食品を一般消費者向けに調理して販売する場合、中心部を63℃で30分間以上、またはこれと同等以上の殺菌効果のある方法、たとえば75℃で1分間以上の加熱を行う。また、2015(平成27)年6月12日から、豚肉の生食用としての提供は禁止された[6]。

二つの数字を比べると、温度を12℃上げると時間は30分から1分に縮まる計算になる。ところが、とんかつは厚さが2.5〜3cmに及ぶ。そのため、衣をつけた肉の中心部まで、基準を満たす熱を届けられるかが調理の要になる。

ここで注意したいのは、この基準の性格だ。事業者が提供する場合の衛生上の基準であり、おいしさの基準でも家庭への義務でもない[6]。家庭で揚げる場合も、中までしっかり火を通し、高温の油は大人と一緒に扱う必要がある。

では、中心まで熱を通す間、肉を包んでいる衣は、どのようにつけられているのか。

5. ころもは、どんな じゅんばんで つけるの?

5. 衣は、どんな順番でつけ、パン粉は何がちがうのか

5. 小麦粉・卵・パン粉の順と、生パン粉・乾燥パン粉のちがい

かていの つくりかたでは、にくに こむぎこを つけて、といた たまごに くぐらせ、さいごに パンこを まぶします[3]。あぶらの おんどは、170℃ぐらいが めやすです。

あぶらに いれて、20びょう ほどは さわりません。さわると ころもが はがれやすい からです[3]。じえいたいの きゅうしょくの れいでは、160〜170℃でした。170℃は めやすで、きまった すうじでは ありません。

パンこには、なまパンこと かんそうパンこが あります。なまパンこは かんそうより みずけが おおく、つぶが おおきくて、ボリュームの ある サクサクに むくと いわれます。かんそうパンこは こまかく、カリッと しあがります[9]。ひとつの けんきゅうの れいで、せいひんに よって ちがいます。

では、あげて いる 油の なかでは、なにが おきて いるのでしょう。

家庭のレシピで基準になるのは、小麦粉→溶き卵→パン粉の順につける方法です[3]。揚げ油は170℃前後が目安とされ、入れてから20秒ほどは触らないのがこつです。触ると衣がはがれやすくなります。自衛隊の給食の例では160〜170℃でした。温度の数字は目安で、固定値ではありません[3]。

パン粉には、生パン粉と乾燥パン粉があります。生パン粉は乾燥パン粉より水分が多く、粒が大きく、ボリュームのあるサクサクした食感に向くとされます。乾燥パン粉は細かく、カリッと仕上がります[9]。ただし、この説明は一つの資料の例で、パン粉の水分は製品で異なります。

衣の順番の理由そのものまで書いた資料は、ここでは使っていません。けれども、レシピにこの順が共通して現れるのは、衣が肉をぐるりと包む手順として定着しているからだと見ることができます。

衣を厚く積んだ肉は、油の中でどうなるのでしょうか。

家庭向けレシピの基準は、小麦粉→溶き卵→パン粉の順につける方法である。揚げ油は170℃前後が目安で、入れてから20秒ほどは触らない。触ると衣がはがれやすいからだ。自衛隊給食の例では160〜170℃が使われており、数字には幅がある。170℃を固定値と読まない[3]。

パン粉には、生パン粉と乾燥パン粉がある。生パン粉は乾燥パン粉より水分が多く、粒が大きく、ボリュームのあるサクサクした食感に向くとされる。乾燥パン粉は細かく、カリッと仕上がる[9]。これらは一つの資料で示された傾向であり、パン粉の水分は製品によって異なる。

では、衣はなぜこの順なのか。レシピには順番が示されるだけで、その理由を直接述べた資料は、ここでは使っていない。そのため、順番については「家庭の標準的な手順」とだけ言っておく。

確かなのは、衣が肉の表面を覆い、揚げ油との間に一枚の層を作ることだ。この層は、油の中でどう働くのか。

6. あげて いる あいだ、ころもの なかでは なにが おきて いるの?

6. 揚げ油の中で、衣と水分は何をしているのか

6. 揚げている間の水分と油 ── モデル食品の実験と、衣揚げの利点

こむぎこと みずを まぜた ものを、150℃の 油で あげる じっけんが あります。みずが じょうきに なって でて いく あいだは、その いきおいで 油が はいって きにくい、と けんきゅうした 人は かんがえました[7]。

ただし、これは こむぎこと みずを つかった じっけんで、とんかつの ころもを そのまま しらべた ものでは ありません。

べつの けんきゅうでは、ころもを つけて あげると、すあげより 油が きたなく なりにくいと すいそくされました[8]。ころもに くるまれて いると、にくの せいぶんが 油に でにくい、と かんがえられて います。

ふとい にくの なかでは しっとり、そとでは カリッと。1まいの とんかつには、いくつもの くふうが つまって います。

水分と油の関係を調べた実験があります。小麦粉と水を混ぜた食品を150℃の油でフライしたところ、水分が蒸発している間は、その蒸気の圧力が油の侵入を妨げると、著者らは推察しています。水分80%の試料では、揚げている間は吸油が低く抑えられましたが、冷却中に急に油を吸いました[7]。糊化の部分は、著者自身が推察が多いと述べています。

この実験は小麦粉と水のモデル食品で、とんかつの衣そのものではありません。それでも、水分が出ていく間は油が入りにくいという見方は、「深く揚げると水分の蒸発が少なくしっとりする」という先の説明と、同じ方向を向いています。

衣には、油を守る面もあります。別の研究では、衣揚げは素揚げより、油の着色や油臭さが少なく、衣によって油への成分の溶け出しが抑えられていると推測されました[8]。

一枚の肉には、反りを防ぐ筋切り、厚みを整える下ごしらえ、中まで届く加熱、衣と油の関係が重なっています。さて、この一枚を、自分の目で見るにはどうすればよいでしょうか。

モデル食品を使った実験がある。小麦粉と水の混合物を150℃の油でフライし、水分の初期量を変えて脱水と吸油を調べたものだ。著者らは、水分が蒸発している間は蒸気圧が油の侵入を妨げると推察している。水分80%の試料では、フライ加熱中は吸油が低く抑えられていたが、冷却時に急激に油を吸収する現象が確認された。糊化に関わる部分は、著者自身が推察が多いと述べている[7]。

この実験の限界は、小麦粉と水のモデル食品である点だ。とんかつの衣は、卵とパン粉を重ねた別の構造であり、結果をそのまま当てはめることはできない。それでも、「水分が出ていく間は油が入りにくい」という見方は、深く揚げると水分の蒸発が少なくしっとりするという先の説明と、考え方が重なる。

衣の別の役割も報告されている。フライ油の使用限界を調べた研究では、衣揚げは素揚げより、油の着色度が低く、油臭さや粘度の評価も高かった。研究者は、衣によって油への成分の溶出が抑えられていると推測している[8]。これも推測であり、肉の仕上がりそのものの話ではない。

こうして見ると、一枚のとんかつには、反りを防ぐ筋切り、厚みを整える下ごしらえ、中心部まで届かせる加熱、衣と油の関係が、順番に積み重なっている。それぞれは別の資料に由来する説明であり、全体を一つの理論でつないだ資料があるわけではない。

7. たべる とき、きりくちを 見て みよう

7. 食べるときに、切り口と衣の粒を見てみよう

7. 切り口の厚さを測る/原典に当たる

おみせや おうちで とんかつを 食べる とき、ひとくち めに きりくちを よこから 見て みましょう。ものさしが あれば、あつさを はかります。ポンチけんの 2.5〜3センチと くらべて、どうでしょうか。

ころもの つぶも 見て みましょう。おうちに パンこが あれば、ふくろの 字を 見ます。「なまパンこ」「かんそうパンこ」と 書いて ある ことが あります。ひとつぶ ずつ 見くらべると、おおきさが ちがうかも しれません。

あげものを つくる ときは、あぶらが はねて あぶないので、かならず 大人と いっしょに して ください。

とんかつを食べるときに、切り口を横から見てみましょう。定規があれば、厚さを測ります。島田信二郎が考案したとされる2.5〜3cmと比べて、店の厚さはどうでしょうか。箸で切れるかどうかも、試してみましょう。

家にパン粉があれば、袋の表示を見ます。生パン粉と乾燥パン粉のどちらかが書かれています。一粒ずつ手のひらに出して見比べると、大きさがちがうかもしれません。揚げ物は油が跳ねるので、調理は必ず大人と一緒にしてください。

この記事で使った資料のうち、Wikipediaの「豚カツ」には、岡田哲『とんかつの誕生』などの参考文献が挙がっています。店の歴史や、衣と油の実験の論文は、リンクの先で原文を読めます。発祥の店に諸説あるのは、これからも資料が見つかるかもしれない、ということでもあります。

台所や食卓でできる観察は二つある。一つは、切り口の厚さを定規で測ることだ。ポンチ軒で考案されたとされる2.5〜3cmと比べると、店ごとの厚みの考え方が見える。もう一つは、パン粉の袋の表示を見ることだ。生パン粉と乾燥パン粉のどちらが使われているか、粒の大きさがどう違うかを見る。揚げ物は高温の油を使うため、調理は必ず大人と一緒に行う。

原典に当たるなら、次の読み方がある。Wikipediaの「豚カツ」は、岡田哲『とんかつの誕生』などを出典として挙げており、そこから名称の変遷や諸説の原典に進める。加熱の基準は、自治体が公開している豚肉の生食に関する案内で確かめられる。水分と吸油の実験は日本食品工学会誌、衣揚げと油の劣化は日本調理科学会誌に載っている。

読むときの注意も一つある。発祥の店や千切りキャベツの由来は、複数の説が並んでいる。千切りキャベツの人手不足説は、テレビ番組内の説明で、史実としての検証は行われていない。生パン粉と乾燥パン粉の説明は一つの資料の例であり、水分と吸油の実験はモデル食品を対象にしている。それぞれの確かさの差を意識して読むとよい。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

出典について:飲食店向けの情報サイト、百科事典、自治体の衛生情報、学会誌の論文を使いました。起源や年代には諸説があり、一部は二次資料で補っています。

  1. 飲食店ドットコム ジャーナル「創業100年超えの名店3選」(2019年5月29日)。 https://www.inshokuten.com/foodist/article/5334 (煉瓦亭の創業・ポークカツレツの原型)
  2. テレ東プラス「トンカツの付け合わせは、なぜ千切りキャベツなのか?」(2020年11月12日)。 https://www.tv-tokyo.co.jp/plus/lifestyle/entry/2020/022775.html (千切りキャベツの由来の一説。番組内の説明で未検証)
  3. Wikipedia「豚カツ」。 https://ja.wikipedia.org/wiki/豚カツ (二次資料。名称の変遷・厚切り・揚げ方・衣)
  4. サライ.jp「とんかつの聖地・上野で食べる」(2023年8月26日)。 https://serai.jp/?p=1146563 (上野の厚切りとんかつ・二度揚げ)
  5. 家電Watch「調理の下処理7 豚肉・牛肉の焼き縮み防止」(2017年2月28日)。 https://kaden.watch.impress.co.jp/docs/column/precooking/1162249.html (筋切り・たたく下ごしらえ)
  6. 滋賀県「豚肉の生食について」。 https://www.pref.shiga.lg.jp/ippan/kurashi/syokunoanzen/16518.html (事業者向けの加熱基準・生食用提供の禁止)
  7. 日本食品工学会誌 6巻2号 pp.143-149(2005)「小麦粉・水混合モデル食品のフライ調理における脱水率および油吸収度に及ぼす初期水分含量の影響」。 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsfe2000/6/2/6_2_143/_article/-char/ja/ (モデル食品の実験。とんかつの衣そのものではない)
  8. 日本調理科学会誌 36巻1号 pp.32-38(2003)「フライ油の使用限界に関する研究(IV)」。 https://www.jstage.jst.go.jp/article/cookeryscience1995/36/1/36_32/_article/-char/ja (衣揚げと素揚げの油の変化)
  9. 愛媛県の研究資料(パン粉の水分・粒径について)。 https://www.pref.ehime.jp/uploaded/attachment/51199.pdf (生パン粉と乾燥パン粉のちがい。傾向の説明として使用)

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