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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

かめの こうらは、なにで できて いるの?

カメの甲羅は、いったい何でできているのか ── 外せない「家」の正体

カメの甲羅は何でできているか ── 肋骨・鱗板・肩甲骨の位置と、化石・胚の手がかり

分野:生きもの

かめの こうらは、せなかに せおった 家のように 見えます。ところが、あの こうらは ぬげません。こうらの 中心は、かめ じぶんの 肋骨ろっこつが ひろがって できた ほねだと いわれて います。

では、こうらの 上に 見える もようの いたは、なんでしょう。どうして 肩甲骨けんこうこつが こうらの 中に あるのでしょう。かめの こうらの できかたが わかります。

カメの甲羅は、背中に背負った「家」のように見えます。しかし、甲羅は脱ぎ着できません。背中側の甲羅の主要部分は、カメ自身の肋骨が広がり、つながってできた骨だとされています。

では、甲羅の表面に見える模様の板は何なのか。なぜカメだけ、肩甲骨が肋骨の内側にあるのか。甲羅の作られ方と、化石や胚が見せる途中経過が分かります。

カメの背甲(背中側の甲羅)の主要部分は、皮膚の中にできる骨(皮骨)を含まず、内骨格である肋骨が拡張してできる。2013年に理化学研究所のグループが、スッポンの胚の観察などからこれを示した[1]。

ところが、この骨の上には別物の角質の板があり、肩甲骨は多くの動物と逆に肋骨の内側へ入る。この記事では、骨と角質の区別、肩甲骨が内側へ移る発生の過程、肋骨が広がり始めた段階を示す化石との対応が分かる。

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1. こうらは、ぬげる 家じゃ ないの?

1. 甲羅は「脱げる家」ではなく、自分の肋骨だった

1. 背甲の主要部分は、皮骨ではなく肋骨でできる

かめの こうらを、ヤドカリの かいがらのように 「ぬげる 家」だと おもった ことは ありませんか。かめは、こうらから ぬけ出す ことが できません。

せなかの がわの こうらの 中心は、かめの 肋骨ろっこつが よこへ ひろがって、つながった ものです[1]。わたしたちの むねの ほねと おなじ なかまの ほねが、おおきく かたちを かえて いるのです。

ただし、せなかの こうらの ぜんぶが ろっこつ、というわけでは ありません。研究では「主な ぶぶん」が ろっこつに よる、と しめされました。

カメの甲羅を、ヤドカリの貝殻のような「外せる家」だと想像する人は多いでしょう。しかし、カメは甲羅から抜け出せません。甲羅は、カメの体の一部だからです。

理化学研究所の2013年の発表によると、背中側の甲羅(背甲)の主要部分には、皮膚の中でできる骨(皮骨)の成分が含まれていません。体の内側の骨格である肋骨が広がって、形づくられているとされています[1]。人間なら胸を囲む肋骨が、横へ広がってつながった姿を想像すると近いでしょう。

ここで大事なのは「主要部分」という言葉です。背甲の全部が肋骨由来だと言い切った研究ではありません。

脊椎動物の骨は、体の内側の骨格(内骨格)と、皮膚の中の真皮でできる皮骨に大きく分かれる。カメの背甲はどちらなのか。長く議論が続いたが、2013年に理化学研究所のグループが、背甲の主要部分は皮骨要素を含まず、内骨格の肋骨だけに由来することを示した[1][2]。

では、肋骨がどのように甲羅になるのか。スッポンの胚では、肋骨を包む骨膜が外側へ広がり、その内側に板状の骨ができる。この骨は真皮より深い結合組織でつくられ、皮骨とは作られ方が異なる[2]。

ただし、原文の要旨が示すのは「主要部分」である。背甲のすべてを肋骨由来と読むのは言い過ぎだ。

2. こうらの 上の いたは、ほねじゃ ないの?

2. 表面の板は骨ではなく、皮膚が変化した角質

2. 表面の鱗板は角質で、骨の継ぎ目とずれている

こうらを 見ると、六かくや 四かくの もようの いたが ならんで います。これは ほねでは なく、ひふが かわって できた「りんばん」と いう いたです[6][7]。

りんばんは、ケラチンと いう かたい ものでできて いて、ひとの つめや、つのと よく にた ざいりょうです[7]。

ほねの つなぎ目と、りんばんの さかいめは、ずれて いる ことが 多い そうです[7]。ずれて かさなって いる ことが 多い、と いう 話です。なぜ ずれるのかは、まだ はっきり 言えません。

りんばんが ない かめも います。スッポンの なかまや オサガメは、りんばんでは なく ひふで おおわれて います[7]。

甲羅の表面には、六角形や四角形の板が並んでいます。この板は骨ではなく、皮膚が変化した角質の板(鱗板)です。その下に、肋骨が変化した骨の板があります[6][7]。

鱗板の材料はケラチンで、ツノや爪とよく似た組織だと説明されています[7]。つまり甲羅は、下が骨、上が爪のようなものという二重構造です。

面白いのは、多くの種では骨のつなぎ目が鱗板の真ん中あたりに来る点です[7]。骨の板と上の板が、つぎはぎの位置をずらして重なっているのです。ただし、すべての種でずれるわけではありません。なぜずれるのかは、はっきり言えません。

スッポンの仲間やオサガメには、鱗板がありません。表面は皮膚におおわれています[7]。「甲羅の模様=カメの骨」という思いこみは、ここで外れます。

甲羅の表面に見える板は、骨とは別の器官だ。皮膚が角質化した鱗板(角質甲板)で、その下に肋骨が変化した骨板がある[6][7]。鱗板はケラチンでできており、組織としてはツノや爪に近い[7]。

この二層は、境目が一致しない。多くの種では、骨板どうしの縫合線が上の鱗板の中央付近に来る[7]。ただし「ほとんどの種で」という限定つきの記述で、全種に当てはまるとは言えない。

さらに、スッポン類やオサガメは鱗板を持たず、甲羅は皮膚におおわれる[7]。鱗板が甲羅に欠かせない部品ではないことを示す例だ。

3. かたの ほねが、こうらの 中に ある!

3. 肩甲骨が肋骨の内側にあるという、ふしぎな配置

3. 肩甲骨が肋骨の内側に入る ── 体壁の折れ込み

かめの こうらの 中を しらべると、おどろく ことが あります。かたの ほねの 肩甲骨けんこうこつが、肋骨ろっこつの 内がわに あるのです[3]。

わたしたちの 肩甲骨けんこうこつは、せなかの 外がわに あります。ほかの 多くの どうぶつでも おなじです。かめだけが、こうらの 中に かたの ほねを しまって いるのです。

これは はじめから そうでは ありません。たまごの 中の かめは、はじめ ほかの どうぶつと おなじ ならびかたを して います。

そのあと、おなかがわの からだの かべが 内がわへ おれこんで、かたの ほねが ろっこつの 下へ はいって いくと いわれて います[3]。

カメの甲羅のふしぎは、もうひとつあります。肩甲骨の位置です。多くの動物の肩甲骨は、肋骨の外側にあります。ところがカメの肩甲骨は、肋骨の内側、つまり甲羅の内側にあります[3]。

理化学研究所の2009年の研究によると、これは最初からそうなっているのではありません。胚の発生の中ごろまで、カメの肩甲骨はほかの動物と同じように、肋骨の外側の前方にあります。

胚の発生の後期に、お腹側の体壁が内側へ折れこみます。そのため肩甲骨は、あとから肋骨の下へ移動するとされています[3]。

肩甲骨が自分で歩いて入るわけではありません。体壁が折れこむのにともなって、結果として肋骨の下に入りこむのです。

カメの肩甲骨は、羊膜類の中で例外的に、肋骨の内側(甲羅の内側)にある。理化学研究所の2009年の報告によると、発生の中期までは他の動物と同じく、肩甲骨は肋骨の外側前方に位置する。ところが胚発生の後期に、腹側の体壁が内側へ折れこむため、肩甲骨が二次的に肋骨の下へ移る[3]。

ここで注目できるのは、肩甲骨が「内側へ潜る」のではなく、体壁の折れこみに伴って相対的に内側へ入る点だ。移動の仕組みが、骨の位置を変えているのである。

それでは、肋骨そのものは胚でどう広がるのか。次の章でその点を見る。

4. ろっこつは、どうやって ひろがるの?

4. 肋骨を扇のように広げる「縁」の働き

4. 甲稜が肋骨を扇状に広げ、背甲の縁をつくる

かめの たまごの 中では、ろっこつが とくべつな そだちかたを します。

ろっこつが、おうぎの ように ひろがる のです。この ひろがりを ひきおこすのは、のちに こうらの ふちに なる「こうりょう」と いう ぶぶんだと されて います[3]。

スッポンの たまごの 中では、ろっこつを つつむ まくが 外がわへ ひろがり、その 内がわで いたの ような ほねが できて いきます[2]。

こうして できた ほねは、ひふの 中で できる ほねとは、つくられかたが ちがいます。かめの こうらは、ろっこつから ゆっくりと 育つ ほねなのです。

では、肋骨はどのように広がるのでしょうか。カメの胚では、肋骨が扇のように広がっていきます。

この広がりを引き起こすのは、のちに甲羅の縁になる「甲稜」という部分だと報告されています[3]。

スッポンの胚では、肋骨を包む骨膜が外側へ広がり、その内側で板状の骨ができます[2]。皮膚の中で作られる骨(皮骨)とは、できる場所も深さも違います。

つまり甲羅は、骨が新しく生えてきたものではなく、もとからある肋骨が、広がって変形したものです。背負う家を作るために、カメは新しい部品を足したのではなく、すでにある肋骨の使い方を変えたのです。

肋骨の拡張は、何が引き起こすのか。2009年の理化学研究所の報告では、将来の甲羅の縁になる甲稜が、肋骨を扇状に広げる役割を担うとされた[3]。

スッポンの胚では、肋骨を包む骨膜が外側へ広がり、その内側に板状の骨ができる。この骨は、真皮より深い結合組織の中で作られる[2]。皮骨が真皮の中で作られるのに対し、こちらは作られる層が異なる。2013年の報告が背甲の主要部分を皮骨と区別したのは、この作られ方の違いが手がかりになっている[1][2]。

ここでの注意は、観察の対象が主にスッポンの胚である点だ。カメ全体にそのまま当てはまると読む場合は、種による違いを残して考える必要がある。

5. はんぶんだけの こうらが、のこって いた

5. 半分だけの甲羅の化石が、途中経過を語る

5. オドントケリスとエウノトサウルス ── 化石が示す途中段階

いまから 2おく 2000まん ねん ほど まえ、中国の ちほうに、ふしぎな かめの なかまが いました。「オドントケリス」と いいます。おなかがわの こうらは あるのに、せなかの まるい こうらは 見つかって いません[4]。

はにも ありました。ろっこつは ひろがり はじめた すがたで、せなかの こうらの 前の だんかいに 見えます。このため、こうらは おなかがわから できた、と かんがえる 人が います[4]。

この すがたは、いまの かめの たまごの 中ごろの すがたと よく にて います[3]。たまごの 中の ようすが、むかしの かめの すがたと かさなる、と すいそくされて います。

ただし、「せなかの こうらが まだ やわらかかった だけ」と 見る 研究者も いて、けつろんは 出て いません[4]。

約2億2000万年前、中国・貴州省にいた化石の動物に、オドントケリスがいます。お腹側の甲羅(腹甲)は完成しているのに、背中側の丸い甲羅(背甲)はありません。背中の肋骨が広がり始めた状態で、歯もありました。2008年に報告され、甲羅は腹側から先にできたとする見方の根拠になりました[4]。

面白いのは、背甲がなく、肋骨も扇状に広がる前という点が、現生のカメの胚の中ごろとよく似ていることです。理化学研究所は、胚の後期の発生プログラムが変わって甲稜の働きが強まり、背甲ができたのではないかと推測しています[3]。

ただし、これは「胚が進化をくり返す」という意味ではなく、推測されているという程度のことです。背甲が「なかった」のか「まだ柔らかかった」のかも、研究者の間で見方が分かれています[4]。

さらに古い仲間と、別の系統

南アフリカのエウノトサウルスは、約2億6000万年前の化石で、約2億2000万年前のオドントケリスより約4000万年古く、広がった肋骨や、肋骨のあいだの筋肉(肋間筋)がないことなど、カメと共通する特徴を持ちます。カメの系統の最初期の仲間とされ、化石記録の空白を埋めるといわれます[5]。

また、三畳紀の海にいたシノサウロスファルギスは、皮骨の装甲とは別に、その下に肋骨が広がったカメ型の背甲を持っていました[1]。ただし、カメそのものではなく、カメに近縁の海にすむ爬虫類です。

肋骨が広がる過程は、化石からも読める。約2億2000万年前(三畳紀後期)の中国・貴州省のオドントケリスは、腹甲が完成している一方、丸い背甲を欠き、背中の肋骨が広がり始めた状態だった。歯もあった。Li らの2008年の報告は、甲羅が腹側から先にできたとする見方の根拠になった[4]。

この姿は、現生カメの発生中期の胚、つまり肋骨が扇状に広がる前の状態と似る。理化学研究所は、発生後期の変更で甲稜の働きが強まり背甲が生じたと推測した[3]。ただし推測であり、胚が進化をくり返すという一般則ではない。また、背甲がなかったのか未硬化だったのかには別の解釈があり、決着していない[4]。

より古い化石もある。南アフリカのエウノトサウルスは、約2億6000万年前の化石で、約2億2000万年前のオドントケリスより約4000万年古く、広がった肋骨や肋間筋の欠如など、カメと共通する特徴を持つ。カメの系統の最初期の仲間とされ、約3000万〜5500万年あった化石記録の空白を埋めた(2013年)[5]。ただし甲羅の働きが防御か穴掘りかは、この論文では決着していない。

これらと別に、三畳紀の海生爬虫類シノサウロスファルギスは、皮骨の装甲の下に、肋骨が広がったカメ型の背甲を持っていた。カメそのものではなく、カメに近縁の海生爬虫類とされる[1]。肋骨が広がる構造と、皮骨の装甲が別物であることを示す例だ。

では、お腹側の腹甲は何でできるのか。肩の骨の一部(上腹板は他の動物の鎖骨に相当)と、祖先が持っていた腹肋骨が変化したものと考えられている[7]。

6. じぶんの ろっこつに さわって みよう

6. 自分の肋骨に触れて、カメと比べてみる

6. 出口 ── 肋骨の感覚と、資料の読みどころ

おうちで できる ことが あります。まず、せすじを のばして、わきの 下から むねの よこに、りょう手を そっと あてます。

つぎに、ゆっくり いきを すって みましょう。うすい 板の ような ほねが、手の 下で うごくのが わかります。これが 肋骨ろっこつです。いたく なる ほど おさない でください。

この ほねが、よこへ ひろがって、せなかの うえで つながったら どう なるでしょう。かめの こうらを 見る 目が、すこし かわるかも しれません。

どうぶつえんや はくぶつかんに いったら、かめを 見て 「ここも ろっこつ かな」と ふりかえって みて ください。

自分の肋骨に触れてみましょう。背筋を伸ばし、脇の下から胸の横へ、両手をそっと当てます。ゆっくり息を吸うと、薄い板のような骨が手の下で動くのが分かります。強く押さないでください。

この骨が、横へ広がり、背中の上でつながったとしたら。カメの甲羅は、そんな「広がった肋骨」だといえます。

動物園や博物館でカメを見る機会があれば、甲羅の模様の板は骨ではなく角質であること、その下に肋骨由来の骨があることを思い出してください。スッポンやオサガメのように、鱗板の無いカメの写真を探してみるのもよいでしょう。

さらに調べたくなったら、理化学研究所の発表[1][3]が日本語で読めます。化石の発見の話は、2008年の報道[4]が入口になります。

肋骨の感覚を自分で試すなら、背筋を伸ばして脇の下から胸の横に両手を当て、ゆっくり息を吸う。肋骨が動くのが分かる。強く押さない。この骨が横へ広がって背中でつながった姿が、背甲の主要部分にあたる。

資料を読むなら、肋骨の拡張を示した2013年の報告は理化学研究所のプレスリリース[1]とNature Asiaの要旨[2]、肩甲骨の位置と甲稜は2009年の理化学研究所の発表[3]が日本語で読める。化石は報道[4][5]が入口になる。

残る問いも多い。甲羅が防御のために進化したのか、穴掘りに役立ったのかという点は、研究者の間でも見方が分かれる。甲羅の骨の板の数や名称、背骨との癒合の詳細など、博物館の標本や論文で確かめる余地が残っている。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

出典について:理化学研究所の発表、Nature Asia の要旨、報道記事、京都市動物園の回答、百科事典の記述を使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。

  1. 理化学研究所 プレスリリース「カメの甲羅の起源」(2013年7月9日)。https://www.riken.jp/press/2013/20130709_1/ (背甲の主要部分が肋骨由来であることについて)
  2. Nature Asia 日本語要旨(Nature Communications 掲載論文)。https://www.natureasia.com/ja-jp/ncomms/abstracts/46871 (骨膜の広がりと骨の作られ方について)
  3. 理化学研究所 プレスリリース(2009年7月10日)。https://www.riken.jp/press/2009/20090710/index.html (肩甲骨の位置と甲稜について)
  4. Scientific American「New Fossil Origin of the Turtle Discovered」(Li et al. 2008, Nature の報道)。https://www.scientificamerican.com/article/new-fossil-origin-of-the-turtle-discovered (オドントケリスの化石について。報道)
  5. ScienceDaily(Lyson et al. 2013, Current Biology の発表)。https://sciencedaily.com/releases/2013/05/130530132433.htm (エウノトサウルスについて。報道)
  6. 京都市動物園 回答集。https://zoo.city.kyoto.lg.jp/zoo/uploads/image/anone493.pdf (甲羅の表面の角質の板について)
  7. Wikipedia「Turtle shell」。https://en.wikipedia.org/wiki/Turtle_shell (鱗板のケラチンと骨のつなぎ目、腹甲について。二次資料)

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