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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

宇宙うちゅうへ いった ふたごの にいさんと、ちきゅうに いた おとうとを くらべて、なにが わかったの?

宇宙に340日いた兄と地上の弟、双子を比べると何が分かるのか

NASA双子研究(2019)と、ゴルトンの手紙調査(1875)── 同じ遺伝子をもつ二人を比べて、何が分かり、何は分からないのか

分野:からだ

ある ふたごの にいさんは、宇宙うちゅうに 340日 いました。おとうとは、ずっと ちきゅうに います。かえって きた にいさんの からだには、あとで もとに もどる ふしぎな へんかが ありました[2]。

どうして ふたごだと、くらべる ことが できるのでしょう。ふたごの けんきゅうが どんな ふうに はじまり、なにが わかったのかが わかります。

宇宙に340日滞在した宇宙飛行士の体では、染色体の端にあるテロメアが、予想に反して長くなりました。地球に帰ると、半年ほどで平均の長さはほぼ飛行前に戻ったと報告されています[2]。

なぜこんな変化が「宇宙のせい」と言えるのでしょうか。それは、同じ遺伝子をもつ一卵性の双子の弟が、地上で同じ測定を受けていたからです。双子が比べるものさしになってきた道すじと、この研究で分かったこと、分からないことが分かります。

2019年にScience誌で報告されたNASAの双子研究では、宇宙に340日滞在した兄スコット・ケリーの白血球で、テロメアの平均の長さが予想外に伸び、帰還後に短くなって約6か月で飛行前に近い値に戻った[2]。理由は解明されていない。

この変化を「宇宙の影響」と読めるのは、遺伝子がほぼ同じ一卵性の双子の弟が地上で比較の基準になったからだ。この比べ方が141年前の手紙の調査から続いてきた経緯と、1組だけの研究で何が言え、何が言えないかが分かる。

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1. ちきゅうに のこった おとうとは、なにを して いたの?

1. 地上に残った弟マークを、比較の基準にした

1. 地上に残った弟マークは、比較の基準(コントロール)だった

アメリカの 宇宙飛行士うちゅうひこうし、スコットさんは、国際宇宙こくさいうちゅうステーションに 340日 いました。ほぼ 1ねんです。

スコットさんには、一卵性いちらんせいの ふたごの 弟、マークさんが います。マークさんは ちきゅうに のこり、おなじ けんさを うけました。うちゅうに いった にいさんと、ちきゅうの おとうとを くらべる ためです[1]。

けんさは、とぶ まえ、とんで いる あいだ、かえって から。ぜんぶで 25かげつ つづきました。でも、なぜ ふたごだと くらべやすいのでしょう。

国際宇宙ステーションに340日いたのは、宇宙飛行士のスコット・ケリーさんです。ちょうど1年ではなく、約11か月です。

地上には、一卵性の双子の兄弟マークさんが残りました。マークさんも、同じ項目の検査を受けました。飛行前、飛行中、飛行後を合わせて25か月、10の分野にわたる測定が行われています[1]。

宇宙で体に何かが起きたとき、それが宇宙のせいなのか、もともとの体質なのかは、一人だけを測っても決められません。そこで、遺伝子がほとんど同じ弟が、地上での基準になりました。では、双子だとなぜ「ほとんど同じ」と言えるのでしょうか。

NASAの双子研究は、宇宙飛行士スコット・ケリーが国際宇宙ステーションに340日滞在した期間を中心に組まれた。ここでいう「1年」は約340日で、365日ではない。比較の相手には、一卵性の双子の兄弟マークが選ばれ、地上で同じ測定を受けた。飛行前・飛行中・飛行後の計25か月、10分野にわたる測定が行われている[1]。

宇宙で何か変化が見つかっても、一人だけの測定では、宇宙環境の影響か、もともとの体質か、年齢による自然な変化かを区別できない。遺伝子がほぼ同じ人が地上にいれば、遺伝子の違いを小さくした比較ができる。この発想の前提が、一卵性の双子の成り立ちである。では、その前提はどこまで成り立つのか。

2. ふたごの なかでも、いちらんせいって なに?

2. 一卵性と二卵性で、遺伝子の共有はどれくらい違うのか

2. 一卵性と二卵性 ── 遺伝子の共有率の差が「ものさし」になる

ふたごには、2しゅるい あります。

ひとつは 一卵性いちらんせいです。ひとつの たまごが ふたつに わかれて、ふたりに なります[3]。遺伝子いでんしは、ほとんど おなじです。

もうひとつは 二卵性にらんせいです。ふたつの たまごが べつべつに できて、ふたりに なります。遺伝子いでんしが にて いるのは、ふつうの きょうだいと おなじくらいで、はんぶんほど です[3]。

一卵性いちらんせいの ふたごは、うまれる 1000人に 4人くらい と いわれます[4]。ふたりの ちがいを みれば、「うまれつき」と「そだち」の どちらが きいたのか、ヒントに なります。

一卵性の双子は、1つの受精卵が分かれて育つので、遺伝子はほぼ100%共通です。二卵性の双子は、2つの卵子がそれぞれ受精して生まれるため、共有する遺伝子は平均で約50%、ふつうのきょうだいと同じくらいとされます[3]。

一卵性の双子が生まれる頻度は、出生1000人あたり約4人と報告されています[4]。

この差が研究の道具になります。ある性質が一卵性のほうで二卵性より似ていれば、その性質には遺伝子の影響がありそうだと考えられます。育った家庭は同じでも、遺伝子の共有が違うからです。では、この考え方を最初に試したのは誰でしょうか。

一卵性双生児は同一の受精卵から、二卵性双生児は別々に受精した二つの卵子から生まれる。遺伝子の共有は、一卵性がほぼ100%、二卵性は平均約50%で、ふつうのきょうだいと同程度とされる[3]。一卵性の出現頻度は、妊娠1000件あたり約3.5件、出生1000あたり約4とされ、これは0.4%前後にあたる。100組に4組ではなく、1000組に約4組である[4]。

この違いを利用すると、遺伝と環境の影響を分けて考えられる。二人が同じ家庭で育つなら、家庭環境は両タイプでほぼ共通だが、遺伝子の共有率だけが違う。したがって、ある性質が一卵性のほうで強く似ていれば、遺伝の寄与を疑える。ただしこの推論は、環境の共有が両タイプで同程度という仮定の上に立つ。この考え方の出発点は、遺伝子という言葉も一卵性・二卵性の区別もなかった時代にある。

3. むかし、てがみで ふたごに しつもんした ひと

3. 1875年、双子の家族に手紙で質問したゴルトン

3. 1875年のゴルトン ── 手紙の質問票から始まった双子の比較と、その限界

いまから 150ねんほど まえ、イギリスの ゴルトンさんは、ふたごに きょうみを もちました。ふたごの かぞくに 手紙を おくって、ふたりが どれくらい にて いるかを たずねたのです[5]。

80くみの ふたごから へんじが とどきました。ゴルトンさんは、うまれつきと そだちの ちからを みわけようと しました[5]。

でも、そのころは、いちらんせいと にらんせいの ちがいも しられて いませんでした。かぞくの 話に たよる ちょうさで、くらべる ものさしも あいまいでした[5]。それでも、ふたごを くらべて かんがえる やり方を、しめした ひとでした。

1875年、イギリスのフランシス・ゴルトンは「双子の歴史」という文章を雑誌に発表しました。双子の親族に13の質問群をもつ質問票を送り、80組の双子から返事を得て、情報が詳しい35例を中心に比べています[5]。

ゴルトンは、生まれつき(nature)と育ち(nurture)の力を見分けようとしました。ただ、この調査には弱いところがありました。家族の主観的な記述に頼り、似方を分ける基準も示されず、数も小さく、一卵性と二卵性の区別という理解もまだありませんでした[5]。今の遺伝率の数字と結びつけて読むことはできません。

それでも、「同じ時に生まれた二人を比べれば、生まれと育ちのヒントが得られる」という見通しを示しました。では、遺伝子がほぼ同じなら、二人はいつまでも同じなのでしょうか。

1875年、フランシス・ゴルトンは雑誌Fraser's Magazineに「双子の歴史」を発表した。双子の親族に質問票を送り、80組から回答を得て、情報の詳しい35例を中心に比べ、生まれつきと育ちの相対的な力を見分けようとした[5]。

この調査には、今から見ると限界が多い。家族の主観的な記述に頼り、似方の分類基準が示されず、標本も小さかった。何より、当時は一卵性と二卵性を区別する理解がなかった[5]。そのため、結論を現代の遺伝率の議論に直接つなげるのは適切でない。なお、以上は二次資料(Embryo Project Encyclopedia)による紹介であり、原文を読むときは、紹介と照らし合わせたい。

それでも、双子を比較の相手にする方法は、この調査で示された。生まれと育ちを分けようとする問いは、後の双子研究とも共通している。では、遺伝子の共有がほぼ100%でも、二人に差が出るのはなぜか。宇宙研究の結果を読む前に、この点を押さえる必要がある。

4. おなじ いでんしの ふたりでも、ちがうところが でるのは どうして?

4. 遺伝子が同じでも、双子の間に違いが出る理由

4. 一卵性でも差が出る ── 「育ちの違い」だけでは説明できない

いちらんせいの ふたごでも、せの たかさや びょうきの かかりやすさが、すこし ちがう ことが あります。

けんきゅうでは、おなかの なかの かんきょう、うまれてからの へんかの かさなり、ぐうぜん、遺伝子いでんしの はたらきの ちがいなどが、りゆうの ひとつに あげられて います[4]。「そだちの ちがい」だけでは、かんたんすぎるのです。

だから、うちゅうで ふたりに ちがいが でても、すぐに「うちゅうの せい」とは きめられません。いくつもの ことを、ていねいに みる ひつようが あります。

一卵性の双子の間に違いが出る理由は、長く「生まれてからの環境が違うから」と考えられてきました。けれども2012年の総説は、この説明は単純すぎると述べています。子宮の中の環境、生まれた後に細胞で起きる遺伝子の変化、細胞の割り振りの偶然、遺伝子の使われ方(エピジェネティクス)の違いなど、いくつもの要因が挙げられています[4]。

2005年の報告では、幼い双子の遺伝子の「印」(DNAメチル化など)の差は小さく、年齢が上の双子ほど差が大きくなっていました[6]。

つまり、双子の差は「環境だけ」でも「遺伝子だけ」でもありません。だから宇宙研究では、飛行前の記録も重ねて測る設計が大事になりました。

一卵性双生児の差は、伝統的には共有されない環境要因で説明されてきたが、2012年の総説は、その説明は単純すぎるとする。子宮内の環境、生後に起きる体細胞の突然変異(モザイク)、細胞の割り振りなどの偶然、エピジェネティックな違いといった複数の要因が挙げられている[4]。

エピジェネティックな違いについては、2005年の研究が、3〜74歳の一卵性双生児40組でDNAメチル化とヒストンのアセチル化を比べた。幼い双子ではほぼ同じで、年上ほど差が大きく、40組のうち35%(14組)で有意な差があった[6]。年齢とともに差が広がるという一例である。

この前提に立つと、弟が地上にいることの価値も、限界もはっきりする。弟は「遺伝子の違い」を大きく減らすが、体の状態の違いまでは同じにしない。だからNASAは、飛行前の測定を含めて、飛行中・飛行後を二人の間で比べる形にした。では、この比べ方で、宇宙のスコットさんの体に何が見つかったのか。

5. うちゅうで、にいさんの からだに なにが おきたの?

5. 宇宙で伸びたテロメア ── 帰還後に戻り、理由は分かっていない

5. テロメアの伸長と遺伝子発現の変化 ── 帰還後に戻ったものと、残ったもの

にいさんの からだで、いちばん ふしぎだったのは「テロメア」です。テロメアは、染色体せんしょくたいの はしっこの ぶぶんです。この けんきゅうでは、白血球はっけっきゅうの テロメアを はかりました。

うちゅうに いる あいだ、この テロメアが、おもって いたより ながく なりました。ちきゅうに かえると みじかく なって、6かげつごには、へいきんの ながさが ほぼ もとに もどりました[2]。おとうとの ほうは、ずっと おなじ ぐあいでした。

どうして そう なるのかは、まだ わかって いません。「わかがえった」とも いえません。ほかにも、からだの おもさや 目の かたちの へんかが ありました[7]。

宇宙飛行中、スコットさんの白血球のテロメア(染色体の端の部分)は、予想に反して長くなりました。帰還後は短くなり、約6か月で平均の長さはほぼ飛行前に戻りました。ただし、短いテロメアの数は増えたままでした。マークさんの値は安定していました[2]。理由は、出典でも解明されていません。「宇宙で若返った」と言える結果でもありません。

遺伝子の働きにも変化がありました。変化した遺伝子の働きのうち約91%は、帰還後に基準へ戻りました。約9%は変化が残り、免疫やDNAの修復に関わる遺伝子が含まれます[8]。

体の別の面でも、体重の減少、頸動脈の変化、目の構造の変化、腸内細菌の変化がありました。帰還後には、認知テストの成績がわずかに下がりました。宇宙で打ったインフルエンザワクチンは、地上と同じように働いたと報告されています[7]。

宇宙滞在中にいくつもの変化が見つかり、帰還後に戻ったものも、残ったものもありました。では、この結果はどこまで広く言えるのでしょうか。

テロメア(染色体の端)の変化が、最も注目された結果である。スコットの白血球では、宇宙滞在中に予想外に長くなり、帰還後に短くなった。平均の長さは約6か月以内にほぼ飛行前の水準に戻ったが、短いテロメアの数は増えたままだった。マークの値は安定していた。この伸長の理由は解明されておらず、「若返り」とは解釈できない[2]。

遺伝子発現でも似た傾向が見られた。飛行中に変化した遺伝子の働きのうち、91.3%は帰還後に基準へ戻り、8.7%で変化が残った。解説によっては「8〜9%」と書かれている。残ったものには、免疫やDNA修復に関わるものが含まれる。なお、NASAの一般向け資料には「約7%」とする数字があり、論文系の報道の8.7%とずれがある。ここでは約1割弱と読んでおく[8]。

体重の減少、頸動脈の変化、眼の構造の変化、腸内細菌の変化、帰還後の認知テストでのわずかな低下も観察された。一方、飛行中に接種したインフルエンザワクチンは地上と同様に機能した[7]。変化の多くは戻ったが、全部が戻ったわけではない。では、これを「宇宙飛行士全員に起こること」と読んでよいのか。

6. この けんきゅうで、わかる ことと、わからない こと

6. 1組だけの研究で、言えることと言えないこと

6. 宇宙に行った人が1人という限界 ── 結果をどこまで一般化できるか

この けんきゅうで、うちゅうに いったのは ひとりだけです。ですから、「うちゅうに いくと、みんな こう なる」とは いえません。

けんきゅうした ひとたち じしんが、こんどは もっと たくさんの ひとで しらべる ひつようが ある、と いって います[2]。

でも、この ふたごの けんきゅうでは、宇宙うちゅうに いた にいさんの からだに、いくつもの へんかが みつかりました。つぎに しらべる ひとの ための、おおきな ヒントです。

この研究で宇宙に行ったのは、1人だけです。しかも研究は一つの人口集団に限られていて、結果をすべての宇宙飛行士や女性に当てはめることはできません。研究者自身も、今後は複数の人での調査が必要だと述べています[2]。

それでも、1組の双子が残した記録には価値があります。宇宙で体が多方面に変わること、多くは地球で戻ること、一部は残ることを、遺伝子がほぼ同じ二人の比較で示せたからです。これは、次の研究が何を測ればいいかの手がかりになります。

ゴルトンの手紙から140年あまり、双子の比較は、数と精密さを増して続いてきました。この研究から分かるのは、スコットさんに起きた変化であり、宇宙飛行士全員に同じ変化が起きるかどうかは分かりません。

研究者自身が述べるとおり、この研究の対象は宇宙に行った1人で、特定の属性の人に限られる。結果を全宇宙飛行士や女性に当てはめることはできず、複数の人での調査が必要とされる[2]。

比較の相手が一人いても、因果の証明にはならない。遺伝子がほぼ同じでも、体の状態、生活、測定のタイミングの違いは残る。したがって、ここで見えた変化は「宇宙で起こりうること」の記録であり、「宇宙で必ず起こること」ではない。ゴルトンの調査が標本の小ささと主観に限界があったように、1組の研究にも限界がある。限界を示す方法は、140年前よりずっと精密になったが、限界そのものは消えていない。

一方、その1組が残した多方面の記録は、次の研究が何を測るかを決める土台になる。では、こうした研究を支えているのは誰か。日本にも、双子の研究に協力している人たちがいる。

7. ふたごの けんきゅうに きょうりょくする ひとたち

7. 日本で双子の研究に協力している人たち

7. 日本の双子研究 ── 大阪大学と慶應義塾の取り組みを読む

にほんにも、ふたごの けんきゅうを して いる ところが あります。

大阪大学おおさかだいがくの ツインリサーチセンターは、ふたごの ボランティアを つのって、びょうきの よぼうなどを しらべて います[9]。

慶應義塾けいおうぎじゅくでは、ようじから おとなに なるまで、ふたごの こころや ふるまいの そだちを、ながく おいかけて います[10]。チンパンジーの ふたごの ようすも みて います。

ふたごの ひとたちが きょうりょく して くれた おかげで、わたしたちは、うまれつきと そだちの ことを、すこしずつ しれます。したの「しらべた もとの じょうほう」の ページを ひらいて、けんきゅうに きょうりょくした ひとたちが どんな ことを しらべたのか、よんで みよう。

日本にも、双子の研究を続ける場所があります。

大阪大学大学院医学系研究科のツインリサーチセンターは、双子のボランティア登録を募り、予防医学などの研究を進めています[9]。慶應義塾の双生児研究は、幼児期から成人期まで、遺伝と環境が心理や行動の発達にどう関わるかを、双子の大きな集団で長期に追うものです。チンパンジーの双子の社会性の発達も観察の対象にしています[10]。

こうした研究は、双子の人たちが協力してくれることで成り立っています。NASAの1組と、日本の多くの組。同じ「双子を比べる」でも、1組を深く測る研究と、多くの組を長く追う研究とでは、見えるものが違います。気になった人は、参考にした情報源のページを開いて、双子の人たちがどんな研究に協力しているか読んでみよう。

日本でも、双子を対象にした研究が続いている。大阪大学大学院医学系研究科のツインリサーチセンターは、双子のボランティア登録を募り、予防医学などの研究を進めている[9]。慶應義塾の双生児研究は、幼児期から成人期まで、遺伝と環境の相互作用が心理・行動の発達に及ぼす影響を、双子の大きな標本で縦断的に追う。チンパンジーの双子の社会性の発達も対象になっている[10]。

NASAの研究が「1組を深く測る」設計だったのに対し、これらは「多くの組を長く追う」設計である。前者は個別の変化を細かく描け、後者は結果の一般化に向く。ゴルトンの調査から続く問いを、今は両方の方向で進めている。登録者数などの規模は、ここで使った資料には書かれていない。

原典を読むなら、Science誌の2019年の論文(Garrett-Bakelman et al.)が出発点になる。出典欄の解説は、その内容を紹介する二次資料であり、図や方法の詳細は論文で確かめられる。双子の成り立ちの定義は、日本遺伝学会系の用語集にある。気になる数字があれば、出典欄から原典に当たって、自分の目で読み比べてほしい。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文で使った資料です。数字や説明は、リンク先で確かめられます。

  1. Garrett-Bakelman et al. "The NASA Twins Study", Science 364(6436), 2019 の紹介記事(Neuroscience News) https://neurosciencenews.com/kelly-space-twin-study-11080/ (研究の設計。340日、計25か月、10分野)
  2. Weill Cornell Medicine 研究解説 https://research.weill.cornell.edu/node/6245 (テロメアの変化、1人だけの研究という限界)
  3. 遺伝学用語・双生児(日本遺伝学会系) https://www.tkgje.jp/entries/28000/28185_souseiji.html (一卵性・二卵性の定義、遺伝子の共有)
  4. Genetic, environmental and stochastic factors in monozygotic twin discordance, BMC Medicine, 2012 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3566971/ (一卵性の頻度、差が出る理由)
  5. Embryo Project Encyclopedia (ASU) "The History of Twins, as a Criterion of the Relative Powers of Nature and Nurture (1875)" https://embryo.asu.edu/pages/history-twins-criterion-relative-powers-nature-and-nurture-1875-francis-galton (ゴルトンの調査と限界)
  6. Fraga et al. "Epigenetic differences arise during the lifetime of monozygotic twins", PNAS, 2005 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC1174919/ (年齢と遺伝子の印の差)
  7. Neuroscience News による研究の紹介 https://neurosciencenews.com/kelly-space-twin-study-11080/ (体重・目・腸内細菌・ワクチンなどの観察)
  8. Science 2019 の論文PDF(UTHSCSA 掲載) https://lsom.uthscsa.edu/nephrology/wp-content/uploads/sites/38/2019/04/NASA-twin-study_Science.pdf (遺伝子の働きの変化と、残った割合)
  9. 大阪大学 ツインリサーチセンター https://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/twin/en/ (双子のボランティア登録と研究)
  10. 慶應義塾 KGRI 双生児研究センター https://www.keio.ac.jp/ja/org/kgri/research-centers/past-centers/center-20-2/ (双子の長期追跡研究)

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