1. 台風は、じぶんで すすんで いるの?
1. 台風は自分で動いているのか、流されているのか
1. 台風の動きは、渦の回転と、渦全体の移動に分けて考える
おふろの おゆに ういた おもちゃが、ながれに のって うごく ところを 思いうかべて ください。台風も にています。
台風は、うえから 見ると、とけいと はんたいまわりに かぜが ふきこむ 大きな うずです[3]。この うずの 中の かぜとは べつに、台風ぜんたいを はこぶ まわりの かぜが あります。うずは、その かぜに ながされて すすみます。
この 二つの かぜが かさなる ところが あります。すすむ むきの みぎがわです。ここでは、うずの かぜと、はこぶ かぜが おなじ むきに なって、かぜが つよく なります[4]。
ただし、おもちゃの たとえは、はこばれる ところだけの はなしです。台風は、中で かぜが ぐるぐる まわって いる ところが、おもちゃとは ちがいます。
お風呂のお湯に浮かべた小さなおもちゃが、水の流れに乗って動くところを想像してください。台風の動きも、これに似ています。
台風は巨大な空気の渦で、地上付近では、上から見て反時計回りに強い風が吹き込んでいます[3]。この渦の中の風とは別に、台風全体を運ぶまわりの風があり、台風はそれに流されて動きます。気象庁の解説にも、この二つが区別して書かれています[3]。
この区別は、台風の右側の風が強い理由にもつながります。進行方向の右側では、中心へ向かって反時計回りに吹き込む風と、台風を動かしている風が同じ向きになって合わさるため、風が強くなります[4]。ただし、おもちゃのたとえは運ばれる部分だけを表しています。台風は中で風が回り続けている点が、おもちゃとはちがいます。
では、台風を運ぶ風は、場所によってどう変わるのでしょうか。
2. みなみの うみでは、どうして にしへ すすむの?
2. 南の海で、台風が西へ進む理由
2. 低緯度では、東風と高気圧のまわりの流れが西へ運ぶ
あたたかい みなみの うみ(緯度の ひくい ところ)では、ふだんから ひがしから にしへ かぜが ふいて います。台風は、この かぜに ながされて にしへ すすみます[1]。
もう 一つ、太平洋高気圧の はたらきも あります。ひがしから にしに ながく のびる 高気圧の おびの みなみがわを、台風は にしへ すすみます。きたの ほうに ある 高気圧の まわりを まわるように、そのあと きたへ のぼって いきます[1][5]。
それと、地球が まわって いる ことも えいきょうします。台風には、きたから きたにしへ むかう せいしつが あると いわれます[1]。
日本の南の海は、緯度が低く、ふだんから東風が吹いています。台風はこの風に流されて、西へ進みます[1]。
もう一つ、高気圧の働きがあります。熱帯の北側には、東西に長く伸びる高気圧の帯(亜熱帯高圧帯)があり、台風はその南側を西へ進みます[5]。日本付近では、太平洋高気圧のまわりを回るように、西へ進んだあと北へ上がっていきます[1]。
さらに、地球の自転も関わります。気象庁は、台風が地球の自転の影響で北〜北西へ向かう性質を持つと説明しています[1]。アメリカ海洋大気庁の研究所の解説では、台風が北へ進むほど自転の影響が強まり、渦の北東側と南西側で風のかたよりが生まれる、と述べられています[6]。この北寄りの傾向は、西風に出会う前から、台風を少しずつ北へ押し上げます。
こうして、南の海では西へ、少しずつ北へ進みます。では、北へ上がった台風は、どこで東へ曲がるのでしょうか。
低緯度では、東風が常に吹いているため、台風は西へ運ばれる[1]。NOAA(アメリカ海洋大気庁)の解説によれば、熱帯では、台風は通常西へ進む。その北に東西に伸びる亜熱帯高圧帯があり、台風はその南側の東風を受けて進む[5]。日本付近では、太平洋高気圧のまわりを北上する経路になる[1]。
ここに、もう一つの成分が加わる。気象庁は、台風が地球の自転の影響で北〜北西へ向かう性質を持つと述べる[1]。NOAAの解説は、台風が北へ進むにつれて自転の効果が強まり、渦の北東側に高気圧性、南西側に低気圧性の風の非対称が生まれると説明している[6]。この北寄りの傾向は、渦の周りの風のかたよりが生む動きとして説明されている。
したがって西進は、東風、高気圧の南側の流れ、自転による北西寄りの傾向が重なった結果である。では、この西進が終わり、向きが変わるのはどの条件を満たしたときなのか。
3. きたへ のぼると、どうして ひがしへ まがるの?
3. 北で西風に出会うと、向きが変わる
3. 偏西風の領域に入ると、西進が北東進に変わる
これが、この ページの いちばん 知りたい ところです。
台風が きたへ のぼって いくと、こんどは うえの ほうの 強い にしかぜに ぶつかります。これを偏西風と いいます。高気圧の おびの きたがわでは、にしかぜが ふいて いて、台風を ひがしへ はこぶ はたらきを します[5]。
すると、台風は きたひがしへ、はやい 足どりで すすみます[1]。気象庁は、この ように むきが かわる ことを「てんこう」と よんで います[2]。
はじめは にしへ、さいごは きたひがしへ。まるで、かわの ながれが かわる ところで、ボートの むきが かわる ようです。ただし、これは たとえで、台風の ほんとうの うごきは もっと ふくざつです。
北へ上がった台風は、やがて上空の強い西風に出会います。これが偏西風です。高気圧の帯の北側では西風が吹いているため、台風は東向きに運ばれる傾向があります[5]。
こうして台風は、北東へ速い速度で進みます[1]。気象庁の用語集では、台風の進路が偏西風の影響下に入り、西向きから北または東向きに変わることを「転向」と呼んでいます[2]。
ここまでが、題名の問いへの答えの要点です。台風は、南の海の東風と高気圧のまわりの流れで西へ、北へ上がって偏西風に入ると、北東へ運ばれる。川の流れが変わる場所で、浮かべたボートの向きが変わるイメージです。ただし、実際の台風は渦で、ボートより複雑に動きます。
とはいえ、同じ北の海でも、台風が曲がる場所は年によって、季節によって大きくちがいます。それはなぜでしょうか。
台風が北上して亜熱帯高圧帯の北側に出ると、そこでは西風が卓越しており、台風は東向きに運ばれる[5]。気象庁は、中・高緯度では上空の強い偏西風によって台風が速い速度で北東へ進むと述べる[1]。用語集は、台風の進路が偏西風の影響下に入り、西向きから北または東向きに変わることを「転向」と定義している[2]。
題名の問いへの答えは、次のようにまとめられる。西進は低緯度の東風と高気圧の南側の流れが、北東進は中緯度の偏西風が運んだ結果である。台風が自分で舵を切るのではなく、運ぶ風が入れかわるために向きが変わる。この記述は、ここで使った3つの資料に共通している。
ただし、この一般論は、曲がる場所の緯度までは決めない。偏西風の帯は季節で南北に動き、高気圧の勢力も年ごとに変わるからである。次に、その変動を見る。
4. あきに 日本へ ちかづきやすい のは、なぜ?
4. 季節で曲がる場所が変わり、秋は日本へ近づきやすい
4. 偏西風の南下と高気圧の勢力が、季節ごとの経路を変える
おなじ 台風でも、なつと あきでは すすみ方が ちがいます。
8がつは、太平洋高気圧が 強くて、うえの 偏西風が よわい ため、台風は ゆっくり きたへ のぼり、どこへ いくか きまりにくい ことが 多いと いわれます[7]。
あきに なると、偏西風が 日本の ちかくまで みなみへ おりて きます。そのため 台風は きたひがしに むきを かえて、日本の ちかくを とおりやすく なります[7]。9がつ いこうは、みなみの うみから、ものを なげた ときの ような まがった 道を えがいて 日本の ちかくを とおる ことが 多く なります[8]。
ある ニュースの せつめいでは、高気圧が にしへ つよく はりだすと 台風は にしよりの コースを、あまり つよく ならないと ひがしよりの コースを とると されて います[9]。
同じ台風でも、夏と秋では進み方がちがいます。
8月は、太平洋高気圧が強く、台風を動かす上空の偏西風が弱いため、台風はゆっくり北上し、進路が定まらないことが多くなります[7]。
秋になると、偏西風が日本付近まで南下してきます。台風は偏西風によって北東に向きを変え、日本付近を通りやすくなります[7]。9月以降は、南の海から放物線を描くように日本付近を通る経路が多くなります[8]。曲がる場所が、南へ下がってくるからです。
民間の気象会社の解説では、太平洋高気圧が西に強く張り出すと台風は西寄りのコースを、勢力が強まらなければ東寄りのコースをとる、と説明されています[9](これは民間の解説で、気象庁の資料ではありません)。
数字も、日本との関わりの深さを示します。1991〜2020年の平均では、台風は年に約25個発生し、そのうち約12個が日本から300km以内に近づきます[8]。約25個のうち約12個ですから、およそ半分です(12÷25=0.48)。
季節で見ると、8月は太平洋高気圧が強く、台風を動かす上空の偏西風が弱いため、台風はゆっくり北上し、進路が定まらないことが多い[7]。一方、秋は偏西風が日本付近へ南下し、台風は北東へ向きを変えて日本に近づきやすくなる[7]。9月以降は、南海上から放物線を描くように日本付近を通る経路が多くなる[8]。
つまり、曲がる場所は固定ではない。偏西風の位置が南へ下がれば、台風はより低い緯度で北東へ運ばれる。この説明は、台風が曲がる原因を風の入れかわりに置く第3章と矛盾しない。
高気圧の勢力も、経路を左右する。民間の気象会社の解説は、太平洋高気圧が西に強く張り出すと西寄りのコース、勢力が強まらなければ東寄りのコースになると述べる[9]。これは気象庁の資料ではなく、二次資料である。台風ごとの曲がる位置は、偏西風と高気圧の位置関係で説明する、という方向を示すにとどまる。
統計では、1991〜2020年の平均で年約25個の台風が発生し、約12個が日本から300km以内に接近する[8]。接近数を発生数で割ると12÷25=0.48で、およそ半分である。ここでの「接近」は日本から300km以内に入ったものを指す。
こうして経路の大枠は説明できるが、進路を事前にぴたりと当てるのは別の問題である。予報はどう示されているのか。
5. 予報円の まるは、なにを あらわして いるの?
5. 予報円は何を表し、これからの研究で何が変わるのか
5. 予報円の読み方と、転向後の予報の課題
天気よほうで 見る 台風の 白い まるは、予報円と いいます。よほうした 時こくに、台風の 中心が その まるの 中に はいる かくりつが 70%だと、気象庁は せつめい して います[10]。
この まるは、台風が 大きく なる ことを あらわす ものでは ありません。まるが 大きい ほど、すすむ みちの よほうの はばが 大きい ことを あらわして います[10]。
これから、台風の 研究は すすんで いきます。地球が あたたかく なると、日本の ある ところを とおる 台風の すすむ はやさが、この せいきの おわりには 10%ぐらい、おそく なると よそう されて います[11]。まがる 場所が どう かわるかは、わかって いません。
天気予報で見る台風の白い円は、予報円と呼ばれます。予報した時刻に台風の中心が円の中に入る確率が70%であることを表しており、台風の大きさの変化ではなく、進路予報の不確実性を表します[10]。円が大きいほど、予報の幅が大きいということです。
転向のあと、予報には誤差の出やすい点があります。気象庁気象研究所の研究紹介には、数値予報モデルに「台風が転向したあとで移動速度が遅くなる」という誤差の傾向があり、AIを使った気象モデルでその傾向が和らいでいる、という内容があります[12]。ただし、強度や極端な進路の誤差には課題が残っています。
将来については、地球温暖化が進むと、今世紀末には、日本が位置する中緯度を通る台風の移動速度が約10%遅くなると予測されています[11]。進路が曲がる場所そのものがどう変わるかは、この資料では示されていません。
台風は、まわりの風に運ばれて動きます。ですから、転向のあたりの風をどれだけ正しく計算できるかが、進路予報の腕の見せどころの一つです。
予報円は、予報した時刻に台風の中心が円内に入る確率が70%であることを示す。台風の大きさの変化ではなく、進路予報の不確実性を表し、円が大きいほど予報の幅が大きい[10]。
転向後には、予報に誤差の傾向が見られる。気象庁気象研究所の発表資料では、数値予報モデルに「台風転向後に移動速度が遅くなる」という誤差傾向があり、AI気象モデルでは緩和されているとされる[12]。同じ資料で、強度予測や極端な進路の誤差には課題が残っている。AIモデルが従来のモデルを置きかえるのではなく、誤差の傾向をどう補うかが論点である。
長期の変化では、気象研究所などの共同発表が、地球温暖化により今世紀末に中緯度を通過する台風の移動速度が約10%遅くなると予測した[11]。進路が曲がる場所や緯度の変化は、この資料の結論に含まれない。「曲がる場所が北へ動く」「南へ動く」といった言い方は、資料の範囲を超える。
台風が風に運ばれる渦なら、自分でも風の向きから進路を考えられる。その手がかりは、すでに公開されている。
6. 台風の とおった みちを、じぶんで しらべて みよう
6. 過去の台風の経路図を、自分で見て確かめる
6. 過去の経路図で、季節と転向の位置を確かめる
きょう できる こと
きしょうちょうの ホームページには、むかしの 台風の とおった みちを まとめた ずが あります。おとなの ひとと いっしょに ひらいて、なつの 台風と あきの 台風の ずを 見くらべて みましょう。
どの つきの 台風が、どこで きたひがしに まがって いるか。すこし みなみに さがって いないか、さがして みます。見つけた ことを、かみに かいて おくと いいです。
気象庁の経路図を見る
気象庁のサイトには、過去の台風の経路図が公開されています[8]。台風ごとの経路を見比べて、北東へ曲がる場所が、夏の台風と秋の台風でどうちがうか調べてみましょう。大人と一緒に見ながら、曲がり角の緯度に印をつけるのも一つの方法です。
天気図と合わせる
台風の近くの天気図には、高気圧の位置が描かれています。曲がった台風が高気圧のまわりを回っているかを見ると、第2章の説明を自分の目で確かめられます。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文で使った資料です。
- 気象庁「台風とは」. https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/typhoon/1-1.html (台風を動かす風/自転の影響)
- 気象庁「気圧配置 気団・前線・気圧配置・天気図・気圧系の発達、移動に関する用語」. https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/yougo_hp/haichi3.html (転向の定義)
- 気象庁「台風の風の吹き方」. https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/typhoon/2-1.html (渦の回転と台風全体の移動)
- 気象庁 気象庁キッズ「台風の右側はなぜ風が強いの?」. https://www.jma.go.jp/jma/kids/kids/faq/a4_06.html (右側の風が強い理由)
- NOAA AOML「TCFAQ G5) What determines the movement of tropical cyclones?」. https://www.aoml.noaa.gov/hrd/tcfaq/G5.html?print=yes (亜熱帯高圧帯と西風)
- NOAA AOML「Our Mission Storm Motion」. https://www.aoml.noaa.gov/hrd/hrd_sub/motion.html (自転と渦の非対称)
- 気象庁 気象データ「コラム(台風)」. https://www.data.jma.go.jp/cpd/j_climate/kinki/column.html (夏と秋の進み方)
- 気象庁「台風の発生、接近、上陸、経路」. https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/typhoon/1-4.html (9月以降の経路/発生・接近数)
- ウェザーニュース「台風7号 進路の決め手は高気圧の勢力 関東上陸の可能性は」. https://weathernews.jp/news/202408/130295/ (高気圧の張り出しとコース/民間の解説)
- 気象庁「台風情報の種類と表現方法」. https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/typhoon/7-1.html (予報円の意味)
- 気象研究所ほか 共同プレスリリース「地球温暖化によって台風の移動速度が遅くなる」. https://www.mri-jma.go.jp/Topics/R01/020108/press_020108.html (今世紀末の移動速度の予測)
- 気象研究所「台風進路・強度予測の高精度化を目指した最近の研究紹介」. https://www.mri-jma.go.jp/Topics/R06/061217/pdf/presentation_07.pdf (転向後の誤差傾向とAI)
なおした ところ
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