このサイトは、ほんの入り口です

ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

くびを ふっても、もじが よめるのは どうして?

首を振っても文字が読めるのは、目がどんな反射で動いているからでしょうか

頭を振っても視界がぶれないのはなぜか:前庭動眼反射と、眼鏡で書きかわる反射の調整

分野:からだ

左と右が ぎゃくに 見える メガネを、27日間 つけた 人が います。その 人の 目の はんしゃは、ふつうと ほとんど ぎゃくむきに なったと 報告ほうこくされて います[4]。

ふだん、頭を ふっても まわりが ぶれないのは、目が 頭と ぎゃくに うごいて いるからです。その はんしゃは、どんな しくみで、どれくらい はやく はたらくのでしょう。この ページを 読むと、しくみと、メガネで はんしゃが かわる ようすが わかります。

左右が反転して見えるプリズムのメガネを27日間つけ続けた人では、目の反射の向きが、ふつうとほぼ逆になったと報告されています[4]。生まれつきの反射のように見える動きも、状況に合わせて調整し直されることがあるわけです。

そもそも、首を振っても文字が読めるのは、目がどんな反射で動いているからでしょうか。この記事を読むと、前庭動眼反射の働き方と速さ、反射を調べる検査、メガネによる変化と、その調整に小脳が関わるという考えが分かります。

頭を振っても視界がぶれないのは、前庭動眼反射が眼球を頭と逆向きにほぼ同じ速さで回しているからだが、この反射の強さは固定されていない。左右が反転して見えるプリズム眼鏡を27日間着けた成人では、反射の向きがほぼ逆になったと、1976年の論文は報告している[4]。

内耳が頭の回転を感じてから目が動くまでが約8ミリ秒と短いのはなぜか、反射の働きはどう検査するのか、眼鏡を外すと元に戻るのになぜ2〜3週間かかるのか。この記事を読むと、反射の回路と速さ、検査の方法、眼鏡による適応と小脳の関わりが分かる。

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1. くびを ふっても、どうして もじが ぶれないの?

1. 首を振っても文字がぶれないとき、目はどう動いているのでしょうか

1. 頭が回ると目は逆向きに動く:目と頭の速さの比はほぼ1

くびを ひだりみぎに ふりながら、この もじを 見て ください。もじは ぶれずに 読めます。

この とき、目は 頭と ぎゃくむきに うごいて います。頭が 右へ まわると、目は 左へ。うごく はやさも、ほとんど おなじです[1]。だから 目は、見て いる ものの ほうを むいた ままに なります。

頭が まわった ことを かんじるのは、耳の おくの 内耳ないじです。そこに ある 半規管はんきかんが、まわる うごきを かんじとって、目に しらせます[3]。この しくみを、前庭動眼反射ぜんていどうがんはんしゃと いいます。

頭の はやさと 目の はやさを くらべた 数を、ゲインと よびます。げんきな 人では、ゲインは 1に ちかい 数です[1]。1に ちかいほど、目が 頭と おなじ はやさで うごいて いる、という ことです。

では、この はんしゃは、どれくらい はやく はたらくのでしょう。

首を左右に振りながら、この文字を見てください。文字はぶれずに読めます。頭が動いているのに視界が安定しているのは、目が頭とは別の動きをしているからです。

頭の回転を感じ取るのは、内耳の半規管です。そこにある有毛細胞が回転の刺激を受け取り、その情報が脳に届いて、目が頭の回転と逆向き、ほぼ同じ速さで動きます[1][3]。頭が右へ回れば目は左へ回り、視線は見ているものに向いたままになります。この反応が前庭動眼反射です。

「ほぼ同じ速さ」を数にしたものがゲインです。目の速さを頭の速さで割った値で、健康な人ではほぼ1に近くなります[1]。たとえば頭が右へ毎秒100度の速さで回れば、目は左へ毎秒100度前後で回る、という見当です(数字は説明用の例です)。ぴったり1とは限りません。

頭の動きのうち、回転は半規管が、前後や上下のような直線の加速度は耳石器が受け持つ、と分けて説明されます[3]。この記事で主に扱うのは、回転に対する反射です。

では、この反射は、頭が動いてからどれくらいで始まるのでしょうか。

首を左右に振りながら本の文字を見ても、文字は読める。頭は大きく動いているのに視界が安定するのは、頭の動きを打ち消す向きに眼球が動いて、視線が一点に保たれるからである。この反射が前庭動眼反射である。

頭の回転を検出するのは内耳の半規管で、その中の有毛細胞が回転の加速度によって刺激される[3]。この信号が脳幹に伝わり、眼球は頭の回転と逆向きに、頭とほぼ等しい速さで回る[1]。入力(頭の速さ)に対する出力(眼の速さ)の比がゲインで、正常な前庭動眼反射のゲインは1に近い[1]。1に近いのであって、ぴったり1とは限らない。ゲインが1より小さければ、頭が動いたぶんだけ目が追いきれず、網膜上で像がずれる。

頭の動きは回転だけではない。回転は半規管が、直線方向の加速度は耳石器が担当し、器官が分かれている[3]。半規管は左右の耳に3つずつ、計6つあり、後に述べる検査では、その6つを1本ずつ調べられる[1]。この記事で扱うのは、主に回転に対する反射である。

ゲインがほぼ1の反射が、実際には頭が動いてからどれだけの遅れで始まるのか。像のずれを防ぐには、遅れが小さいほどよいはずである。

2. この はんしゃは、どれくらい はやいの?

2. 頭が動いてから目が動くまで、どれくらいかかるのでしょうか

2. 頭が動いてから目が動くまでは約8ミリ秒:基本の回路は3つの神経細胞を通る

頭が うごきはじめてから、目が うごきはじめるまで、約やく8ミリ秒びょうです[1]。1秒びょうを 1000こに わけた うちの、8こぶんの みじかさです。

しらべかたや 生きものに よって、7〜15ミリ秒びょうぐらいの はばが あり、サルでは 約やく14ミリ秒びょうと いう 報告ほうこくも あります[3]。目で 見て たしかめてから うごかす うごきより、ずっと はやい のが とくちょうです。

はやい わけは、道が みじかい ことです。耳の おくの しらせは、3つの 神経しんけいの 細胞さいぼうを わたって、目を うごかす 神経しんけいに とどきます[2]。とちゅうの 乗りかえが 少ないほど、はやく とどきます。

では、この はんしゃが ちゃんと はたらいて いるかは、どうやって しらべるのでしょう。

頭が回り始めてから目が動き始めるまでの時間(潜時)は、約8ミリ秒とされます[1]。8ミリ秒は0.008秒です。資料によって7〜15ミリ秒と幅があり、サルでは約14ミリ秒という報告もあるので、「10ミリ秒前後のごく短い時間」くらいに考えるのが無難です[3]。目で見て確かめてから動かす反応と比べると、桁違いに速いとされます。

この速さのわけは、回路の短さにあります。基本の回路は、前庭神経、前庭核、眼球を動かす動眼神経核の3つの神経細胞でできた反射弓です[2]。途中の段階が少ないぶん、信号が速く届きます。

視界を保つ仕事は、頭が動くたびに何度も必要になります。そのつど遅れずに目を動かすには、短い回路で自動的に動くほうが向いています。

では、この反射がきちんと働いているかどうかは、どうやって調べるのでしょうか。

像のずれを防ぐには遅れが小さいほどよいが、実際の潜時は、頭の回転刺激の開始から眼球運動の開始まで約8ミリ秒と報告されている[1]。資料により7〜15ミリ秒と幅があり、サルでは約14ミリ秒という値もある[3]。測り方や動物種で変わるため、1つの値に決めず、10ミリ秒前後のごく短い時間と見るのが妥当である。目で見て確かめてから動かす反応と比べて桁違いに速い。

この速さは、回路の単純さから説明される。前庭動眼反射の基本は、前庭神経、前庭核、眼球を動かす動眼神経核という3つの神経細胞からなる反射弓である[2]。経由する細胞が少なければ、信号が通過する段階も少ない。そのため、頭の動きに対して遅れの小さい補正が成り立つ。

ただし、速さと引きかえに、この回路は柔軟さを欠くように見える。頭と眼がどれだけの比で動くかが回路の中で決まっているなら、眼鏡をかけて視界の見え方が変わったとき、反射は誤った動きを続けることになる。その点は後の章で扱う。まずは、反射の強さ、つまりゲインを実際にどう測るのかを見ておく。

3. 目の はんしゃは、どうやって しらべるの?

3. 目の反射の働きは、どうやって調べるのでしょうか

3. ゲインを測る:頭部インパルスと温度刺激という二つの検査

病院には、耳の おくの はたらきを しらべる 検査けんさが あります。

ひとつは、頭を すばやく うごかして、目が ついて いくかを ビデオで はかる 検査けんさです。1988ねんに はじまり、2009ねんと 2013ねんに、ビデオで 6つの 半規管はんきかんを 1つずつ しらべられる ように なりました[1]。はやく でき、体の ふたんが 小さく、なんども くりかえせると 書かれて います。

もうひとつは、耳の あなに つめたい 水や あたたかい 水(または 空気)を 入れる 検査けんさです。半規管はんきかんが しげきされて 目が ゆれる うごきが おこり、左右の 耳を べつべつに しらべられます[8]。

どちらも 病院で おいしゃさんが おこなう 検査けんさです。おうちでは ためさないで ください。

では、もし メガネで 見える ものが かわったら、はんしゃは そのままで いられるのでしょうか。

耳の奥の働きは外から見えないので、反射の動きを手がかりに調べます。一つは頭部インパルス検査で、頭をすばやく動かし、そのとき目がどれだけ追うかを測ります。1988年にこの方法が導入され、2009年と2013年にビデオ方式が加わって、6つの半規管を1本ずつ調べられるようになりました[1]。ビデオ方式は速く、体への負担が小さく、繰り返し測れると紹介されています。

もう一つは温度刺激検査です。外耳道に冷水や温水(または空気)を入れて外側半規管を刺激し、起こる眼振(目の揺れ動き)から、左右の前庭の働きを別々に調べます[8]。日本では20℃の水刺激が一般的で、16℃の空気刺激がほぼ同等という報告があります。

これらは医療機関で医師が行う検査で、家庭で試すものではありません。ここで大切なのは、ゲインという数で反射の強さを測れるという点です。ゲインが測れるなら、ゲインが変わることも確かめられます。

もし目に見える景色のほうが変わったら、反射の強さはそのままなのでしょうか。

反射の強さを測るために、頭の回転と眼球の回転を同時に記録し、その比をゲインとして求める。1988年に、強膜サーチコイルで眼球運動を測る頭部インパルス検査が導入され、2009年と2013年にビデオ方式(vHIT)が加わって、6つの半規管を1本ずつ調べられるようになった[1]。サーチコイルより扱いが簡単で、速く、体への負担が小さく、繰り返せる点が利点とされる[1]。

もう一つの温度刺激(カロリック)検査は、方法が違う。外耳道に冷水・温水(または空気)を入れて外側半規管を刺激し、誘発される眼振から左右の前庭の働きを別々に評価する[8]。日本では20℃の水刺激が一般的で、16℃の空気刺激がほぼ同等という報告がある。頭を実際に振らず、片耳ずつ刺激できるのが特徴である。

どちらも医療機関で医師が行う検査で、家庭で試すものではない。重要なのは、ゲインが数として測れるなら、その変化も確かめられるという点である。ゲインが1に近い値に保たれているのは、生まれつきの設定が変わらないからなのか、それとも日々調整されているからなのか。この問いを実験で調べた人たちがいる。

4. 左右が ぎゃくに 見える メガネを つけると、どうなるの?

4. 左右が反転して見えるメガネをつけると、反射はどうなるのでしょうか

4. 反転眼鏡の実験:ゲインは約25%まで下がり、向きまで変わった

1976ねんに 報告ほうこくされた 実験じっけんが あります[4]。4人が きょうりょくして、プリズムという ガラスで 左右が ひっくり返って 見える メガネを、2日から 27日 つけました。

すると、目の はんしゃの ゲインは、はじめの 2日で 大きく さがりました。1週間ほどで、ふだんの 約やく4ぶんの 1まで ちいさく なりました。

27日 つけた 人では、2週目に、はんしゃの むきが ふつうと ほとんど ぎゃくに なりました。

べつの みじかい 実験じっけんでは、1日 約やく16分、ぎゃくに 見える ものを 目で おう れんしゅうを 3日 つづけました[5]。それだけで、ゲインは もとの 大きさから 約やく4ぶんの 1 だけ さがりました。頭を まわす だけでは、はっきりした 変化へんかは 出ませんでした。見える ものと 目の うごきの くいちがいが、きっかけに なると 考えられて います。

4人の 実験じっけんなので、すべての 人が 同じとは 言えません。それでも、はんしゃも 学び直せる ことが 分かります。

1976年に報告された実験では、4人の成人が協力して、プリズムで左右が反転して見えるメガネを2日から27日つけました[4]。目の反射のゲインは、最初の2日で大きく下がり、1週間ほどで、通常の約25%という低い水準に達しました。27日つけた人では、2週目に反射の向きの関係が大きく変わり、反射がほぼ逆向きになりました。

メガネで景色の動きが逆になると、いつもの反射では目の動きと見える景色が食い違います。同じ著者らの短い実験では、1日約16分、反転した像を目で追う課題を3日続けただけで、ゲインが約25%下がりました[5]。ここで注意したいのは、「通常の約25%まで下がる」と「約25%下がる」が別の数だということです。前者は4分の1に、後者は4分の3に残ったことになります。また、頭を回すだけの条件では一貫した変化がなく、見えるものと目の動きの食い違いが学習のきっかけと考えられています。

対象は4人なので、すべての人が同じ経過をたどるとは言えません。それでも、反射は固定された配線ではなく、使われ方に合わせて強さや向きが変わると分かります。

メガネを外すと、反射はどう戻るのでしょうか。

ゲインが固定か調整されているかを調べた実験がある。Gonshor と Melvill Jones の1976年の論文では、4人の成人が、左右が反転して見えるドーブプリズム式の眼鏡を2〜27日着けた[4]。眼鏡で景色が反転すると、従来の反射の動きと見える景色が食い違うため、ゲインは最初の2日で大きく下がり、1週間ほどで通常の約25%という低い水準に達した。27日着けた人では、2週目に位相が大きく変わり、反射はほぼ逆向きになった。

同じ著者らの短期実験では、1日約16分、反転した像を目で追う課題を3日続けると、ゲインが約25%下がった[5]。この「約25%下がる」は3日後の低下で、先の「通常の約25%まで下がる」は1週間後の水準であり、別の数である。前者は75%が残り、後者は4分の1しか残らない。同じ25%でも期間と条件が違う。また、頭の回転だけを与えても一貫した変化はなく、見えるものと目の動きの食い違いが学習の引き金になると読める。

ただし被験者は4人で、年齢や個人差は検討できない。「人は必ずこうなる」とは言えず、この実験が示すのは、反射の強さと向きが経験によって変わりうるということである。では、眼鏡を外すと、変わった反射はどのように戻るのか。

5. メガネを はずすと、はんしゃは どう もどるの?

5. メガネを外すと、反射はどう戻り、だれが調整するのでしょうか

5. 向きは2時間、強さは2〜3週間:小脳による反射の調整

メガネを はずすと、はんしゃの むきは、約やく2時間で ほとんど もどりました。でも、ゲインが もどるには、そこから 2〜3週間 かかりました[4]。

この ちょうせいに かかわるのは、小脳しょうのうだと 考えられて います。小脳しょうのうの ある 場所の 細胞さいぼうが かぎだ、という 有力な 考えが あります[6]。ただ、小脳しょうのうの ほかの 場所でも 変化へんかが おきるのでは、という 話し合いが つづいて います。

目と 耳の しらせが くいちがうと、小脳しょうのうが はんしゃの 強さを かえる。そうして、からだは まわりの 見え方に あわせて いきます。

この しくみは、地球の 上だけの はなしでしょうか。

メガネを外すと、反射の向きの関係は約2時間でほぼ元に戻りました。ところがゲインが戻るには、さらに2〜3週間かかりました[4]。向きはすぐ戻るのに強さはゆっくり戻るので、この二つは別の仕組みで調整されている可能性があります。

調整の中心として注目されているのが小脳です。小脳の片葉にあるプルキンエ細胞の働きが長く弱まることで反射が調整される、という「片葉仮説」が有力な説で、小脳が運動学習の主役を演じるとされています[6]。ただし、小脳以外の場所でも変化が起きるのではないかという議論が続いていて、決まった答えではありません。

目と耳の知らせが食い違うたびに、小脳が反射の強さを少しずつ書きかえる。そうやって、目の反射は、見える景色の変化に合わせて調整されることがあります。

この調整は、地球の重力の中だけで起きる話でしょうか。

眼鏡を外したときの経過も、向きと強さで違った。位相は約2時間でほぼ正常に戻ったが、ゲインの回復にはさらに2〜3週間かかった[4]。眼鏡をかけたときにゲインが1週間かけて下がったのと同じく、ゲインの変更は時間のかかる過程である。位相は速く、ゲインは遅く動くため、この二つは別の調整機構が関わる可能性がある。ただし、実験からそう断定はできない。

調整の中心として研究が集まるのが小脳である。小脳片葉のプルキンエ細胞の長期抑圧が反射の調整に関わるという「片葉仮説」があり、小脳が運動学習の主役とされる[6]。これは有力な説であって確定ではなく、小脳以外でも可塑性が起きるという議論が続いている。

視覚と前庭の入力が食い違い続けると、小脳が反射の強さを書きかえる。この学習は成人の4人でも数日〜数週間の単位で観察された。では、前庭の入力そのものが変わる環境、たとえば重力のない宇宙では、何が起きるのか。

6. 重力の ない 宇宙うちゅうでは、耳の センサーは どうなるの?

6. 重力のない宇宙では、耳の奥のセンサーはどうなるのでしょうか

6. 無重力で耳石器の入力が変わるとき:脳の「重力の内部モデル」

宇宙うちゅうの 無重力むじゅうりょくでは、耳の おくで 重さの むきを かんじる ところが、重力の しげきを うけなくなります[7]。

どうぶつの 実験じっけんでは、そこの 神経しんけいは しばらくは かんじやすく なって、約やく5日で もとの 強さに もどった という ほうこくが あります。脳のうは、小脳しょうのうに ある 「重力の モデル」を 書きかえて、耳いがいの しらせも つかう ように なると 考えられて います。

ただし これは、目の はんしゃそのものを はかった 話では ありません。耳の おくの センサー ぜんたいの 話です。

では、目の はんしゃと にた 考え方は、人の からだの ほかにも あるでしょうか。

無重力では、耳石器が重力の刺激を受けなくなります[7]。ある総説によると、哺乳類ではない動物の実験で、耳石器の神経の感度は一時的に上がり、約5日で元の水準に戻ったそうです。脳は小脳にある「重力の内部モデル」を更新し、前庭以外の情報の重みづけを変えると考えられています。

この論文が扱っているのは耳石器と前庭全般で、前庭動眼反射そのものの宇宙での変化を直接測った研究ではありません。ただ、入力が変わると脳が使い方を組み替えるという点は、反転メガネの実験とよく似ています。

反射のこの考え方は、生き物の体の外でも使われています。

無重力では耳石器が重力の刺激を受けなくなる[7]。Frontiers in Neural Circuits の総説は、哺乳類以外の動物の実験では耳石器の神経の感度が一時上がり約5日で元の水準に戻ったこと(哺乳類の飛行初期の変化は不明)、脳が小脳にある「重力の内部モデル」を更新し、前庭以外の情報の重みづけを変えると考えられていることを紹介している。

注意したいのは、この総説が前庭動眼反射そのものの宇宙適応を直接測っているわけではなく、耳石器と前庭系全般を扱っている点である。眼鏡の実験と共通するのは、入力と予測が食い違うと脳側の変換が書きかわるという構図であり、宇宙での反射のゲインの経過までは、ここから読み取れない。

入力が変わると反射が書きかわる。この発想は、機械の設計にも使われている。

7. カメラの てぶれ ほせいは、目の はんしゃに にているの?

7. カメラの手ぶれ補正は、目の反射と同じ考え方なのでしょうか

7. ジンバルと前庭動眼反射:揺れを感じて逆向きに打ち消す

ジンバルという、カメラを ささえる 道具が あります。ゆれを センサーで かんじて、モーターを ぎゃくむきに まわし、ゆれを うちけします[9]。目の はんしゃと、考え方が にて います。

ただし 本当は、目の はんしゃは 生きている 体の しくみで、機械きかいとは つくりが ちがいます。

撮影用のジンバルは、ジャイロセンサーが揺れを検出し、内蔵のモーターが逆向きに回って揺れを打ち消します[9]。センサーで頭の動きを感じ、逆向きに動いて視線を保つ前庭動眼反射と、考え方が共通しています。

ただし体の反射と機械では、素材も回路もまったく別物です。

撮影用ジンバルは、ジャイロセンサーで揺れを検出し、モーターを逆向きに回して打ち消す[9]。入力の検出、逆向きの出力、視線(画角)の保持という構図は前庭動眼反射と共通する。

ただし体の反射と機械では、センサーも回路も素材も別物であり、機械には反射のように新しい経験でゲインを書きかえる仕組みが標準で備わっているとは限らない。比較は考え方の類似にとどまる。

8. くびと 本を、おなじ ように うごかして くらべて みよう

8. 首を振るときと、本を動かすときで、文字の見え方を比べる

8. 自分の目で確かめる:首を振る場合と紙を動かす場合

すわって、まわりに ぶつかる ものが ない ことを たしかめます。

まず、くびを ゆっくり ひだりみぎに ふりながら、この もじを 読みます。つぎに、くびは とめて、本や 紙を 同じ くらいの はやさで ひだりみぎに うごかして 読みます。

どちらが 読みやすいか、くらべて みましょう。くびを うごかす ときは 内耳ないじが うごきを かんじますが、紙が うごく ときは 内耳ないじは かんじません。その ちがいが 見え方に でるか、ためして みます。めが まわって きたら、すぐに やめて ください。

座って、周りに物がないことを確かめてから行います。まず首をゆっくり左右に振りながら、画面や本の文字を読みます。次に首を止めて、本や紙を同じくらいの速さで左右に動かしながら読みます。

どちらが読みやすいかを比べます。首を振るときは内耳が頭の動きを感じ、紙を動かすときは内耳は何も感じません。その違いが見え方に出るかどうか、自分の目で確かめられます。めまいがしたらすぐにやめてください。

日本語で調べるなら、脳科学辞典の「前庭動眼反射」の項目が手がかりになります[2]。

座って周囲に物がないことを確かめ、首をゆっくり左右に振りながら文字を読む。次に首を止めて、紙を同じくらいの速さで左右に動かして読む。首を振るときは、内耳が頭の回転を検出して反射が働く。紙を動かすときは、頭は動いていないので、内耳は紙の動きを検出しない。この違いが見え方に表れるかを、自分の目で比べられる。めまいがしたらすぐにやめること。

より詳しく知りたい場合の原典として、日本語の脳科学辞典の「前庭動眼反射」の項目[2]と、反転眼鏡の実験を報告した Gonshor と Melvill Jones の1976年の論文[4][5](どちらも全文が公開されている英語の論文)がある。眼鏡の実験が4人だけである点や、潜時の値が資料で7〜15ミリ秒と幅がある点など、数字の条件を本文と見比べながら読むと、何が確かで何がまだ議論中かが分かる。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文の参照番号に対応する資料です。反射の研究は進んでおり、数値は研究や条件で幅があります。

  1. Halmagyi GM ほか「The Video Head Impulse Test」Frontiers in Neurology (2017) https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5465266/ (ゲイン・潜時・検査の歴史)
  2. 脳科学辞典「前庭動眼反射」 https://bsd.neuroinf.jp/wiki/前庭動眼反射 (3つの神経細胞の反射弓)
  3. StatPearls「Vestibulo-Ocular Reflex」 https://statpearls.com/articlelibrary/viewarticle/26134 (半規管と耳石器・潜時の幅)
  4. Gonshor A, Melvill Jones G「Extreme vestibulo-ocular adaptation induced by prolonged optical reversal of vision」J Physiol (1976) https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC1309313 (反転眼鏡の長期実験)
  5. Gonshor A, Melvill Jones G「Short-term adaptive changes in the vestibulo-ocular reflex arc and their transfer」J Physiol (1976) https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC1309312 (1日約16分の短期実験)
  6. 永雄総一「小脳による眼球運動の適応」 https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.11477/mf.1431901186 (小脳と片葉仮説)
  7. 「Challenges to the Vestibular System in Space」Frontiers in Neural Circuits (2021) https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8595211/ (無重力での前庭系の適応)
  8. Equilibrium Research 74(1)(温度刺激検査に関する報告) https://www.jstage.jst.go.jp/article/jser/74/1/74_15/_article/-char/ja (温度刺激検査)
  9. DJI「ジンバルとは」 https://www.dji.com/media-center/insights/what-is-gimbal (手ぶれ補正とジンバルの原理)

なおした ところ

更新履歴

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