1. 「かなめ」という 字は、こしの 字だった?
1. 「要」の字は、もとは腰を表していた
1. 「重要」の「要」は、体のどこを指していたのか
「かなめ」という ことばを きいた ことが ありますか。ものごとの いちばん 大事な ところの ことです。この ことばを あらわす 漢字は、もとは こしを あらわして いたと、辞典は せつめい します[1]。
字の かたちは、おんなの 人の こしの ほねだ、という せつめいと、りょう手を こしに あてた 人だ、という せつめいが あります[1][2]。かたちは ちがっても、もとは こしの 字、という ところは おなじです。
こしが 体で いちばん 大事な ところと かんがえられたから、「かなめ」の いみに ひろがった、と 辞典は いいます[1]。では、こしの 大事な しごとって、なんでしょう。
ひとつは、体を 前に まげたり まわしたり、うごかす こと。もうひとつは、立ったり あるいたり ものを もち上げたり する ときに、体を ささえる ことです[3]。うごかしやすい ことと、じょうぶな ことは、ふつう いっしょに しにくい ものです。こしは、その りょうほうを まかされて います。
「重要」「要点」と書くときの「要」が、もとは体の一部を表す字だったと聞くと、少し意外です。漢字の辞典『字通』は、この字を女性の腰骨の形からできた「腰」の最も古い形の字とし、腰は人体でもっとも大事な部分なので「重要」の意味になり、「要約」の意味にも広がったと説明しています[1]。
ただ、字の形の説明は一つに決まっていません。ウィクショナリーは、両手を腰に当てた人の形をかたどった字だとし、「こし」を表していた字を、同じ音の「かなめ」を表す言葉にのちに借りて使うようになった、と書いています[2]。形の見方は違っても、「もとは腰の字」という点は、この二つの説明で同じです。
辞典がそれほど大事だと説明する腰は、実際に何をしているのでしょうか。答えを先に言うと、腰の仕事は「動かす」と「支える」を一緒にこなすことです。MSDマニュアルは、腰の骨が体を回す・ねじる・前に曲げるといった柔軟な動きを可能にしながら、立つ・歩く・物を持ち上げるときの強さも支えている、と説明しています[3]。動きやすさと丈夫さは、ふつう両立しにくいものです。この二つを、腰はどんな部品の組み合わせで両立させているのでしょうか。
『字通』は、「要」を女性の腰骨の形からできた「腰」の初文(最も古い形の字)とする。人体でもっとも重要な部分であるため「重要」の意となり、さらに「要約」の意にも広がった、という説明である[1]。
ただし字形の説明は割れている。ウィクショナリーは、目を強調して両手を腰に当てた人の形をかたどり、「こし」を意味する語を表した字が、のちに同音の「かなめ」を意味する語に仮借(音だけ借りて当てること)された、と記す[2]。腰骨の形か、両手を当てた人か。辞典によって形の見方は異なるが、「もとは腰の字だった」という点では二つの資料が一致する。そのため、ここでは形を断定せず、一致する部分だけを根拠にする。
では、辞典が「最も重要」と説明する腰は、実際には何をしているのか。結論を先に言えば、腰の役割は「動かす」と「支える」の両立である。MSDマニュアルは、腰椎が体を回す・ねじる・前に曲げるといった柔軟な動きを可能にしつつ、立つ・歩く・物を持ち上げる際の強度も支えていると述べる[3]。動きやすさを高めれば安定は落ち、安定を優先すれば動きは制限されるのが一般的で、両方を要求される場所は多くない。この両立がどんな構造で成り立つのかが、次の問いになる。
2. ほねが かさなって、あいだに クッションが ある
2. 重なった5個の骨と、そのあいだのクッション
2. 腰椎5個と椎間板 ── 動く関節であり、衝撃を受けとめる部品でもある
せぼねは、ちいさな ほねが たくさん かさなって できて います。こしの ところには、ふつう 5こ の ほねが あります[4]。ひとつの ながい ぼうでは なく、つみ木のように かさなって いるから、体を まげられます。ただし つみ木と ちがって、ほねどうしは つながって いて、ばらばらには なりません。
ほねと ほねの あいだには、椎間板という クッションが はさまって います[3]。そとがわは じょうぶで、なかみは ゼリーのように やわらかい つくりで、衝撃を やわらげます[3]。
この クッションは、1日のうちに ちぢみます。32人の 男の 人が きょうりょくした ちょうさでは、こしの 5つの クッションを あわせた たかさが、おきてから 8~9じかん あとに、立った しせいで およそ 8ミリ ひくく なりました[9]。よる ねている あいだに もどります。
では、この ほねたちは、どっちへでも じゆうに うごくのでしょうか。
背骨は、椎骨という小さな骨が積み重なってできています。腰のところの椎骨は「腰椎」といい、ふつうは5個です。腰椎は胸のあたりの背骨の下にあり、その下には骨盤につながる骨が続きます[4]。人によっては数に例外があるので、5個はふつうの場合の数と考えてください。
骨と骨のあいだには、椎間板というクッションがはさまっています。外側は丈夫な層で、中はゼリー状の髄核という軟らかい部分でできていて、衝撃を吸収します[3]。積み重なった骨が、クッションを挟んでつながっているから、背骨は曲がります。
このクッションは、1日のうちにも縮みます。健康な男性32人の協力でMRIを撮った研究(学会抄録)では、起きてから8〜9時間後に、腰の5つの椎間板の高さの合計が、立った姿勢で7.70〜8.09mm低くなっていました[9]。夜に横になると回復するとされます。
骨とクッションを重ねただけなら、背骨はどの向きにも動けそうに見えます。ところが、測ってみると意外なことが分かります。
背骨は椎骨が積み重なった構造で、首から順に頸椎7個、胸椎12個、腰椎5個、その下に骨盤にある仙骨と尾骨が続く、と解剖用語の解説は説明する[4]。腰椎は胸椎の下、骨盤の上にある骨で、ふつうは5個である。ただし人によって数に例外(移行椎)があるため、5個はふつうの場合の数にとどまる。
骨と骨のあいだには椎間板があり、MSDマニュアルによれば、線維軟骨でできた丈夫な外層と、髄核という軟らかいゼリー状の中身からなる[3]。硬い層が形を保ち、柔らかい中身が衝撃を吸収するので、骨どうしがぶつからずに、少しずつ動ける。
クッションは固定された部品ではない。健康な男性32人のMRI調査(学会抄録)では、起床後と8〜9時間後で、腰椎の5つの椎間板の高さの合計が、立った姿勢で7.70〜8.09mm低くなっていた[9]。日内の変化で、夜に回復すると説明されるが、抄録であり、被験者は男性32人に限られる。身長の朝夕差は別の記事で詳しく扱っているので、ここでは腰の部品が1日のうちに縮むという点にとどめる。
つまり腰椎は、積み重なった5個の骨と、衝撃を受けとめるクッションの組み合わせである。ではこの構造は、どの向きにも同じように動けるのか。測定値を見ると、予想とずれる。
3. こしは、ひねるのが にがてなの?
3. 腰だけでは、体をあまりねじれない
3. 腰椎の回旋は左右約7度 ── 「腰をひねる」の実際
うしろから よばれて ふりむく とき、「こしを ひねった」と おもいがちです。でも、ある ちょうさでは、ちがう すがたが 見えて きます。
しょうじょうの ない おとなの 405人の こしを はかった けんきゅうが あります。こしだけで ひねれる はばは、右にも 左にも およそ 7どでした[5]。直角(90ど)の、13ぶんの 1ほどです。年れいが ちがう 人を くらべても、へりかたは 見られませんでした[5]。
ただし、はかりかたで すうじは かわります。「かならず 7ど」と いう わけでは ありません。
からだを ひねる うごきの 多くは、むねの あたりの せぼねが うけもつと いわれます。こしは、ひねる ぶんを すくなめに して、まげる ことと ささえる ことに、はたらきを むけて いるようです。
では、前に まげる ときは、どうでしょう。
後ろから名前を呼ばれて振り向くとき、「腰をひねった」と言いたくなります。ところが測定すると、腰だけでひねれる角度は、思ったより小さいのです。
無症状の成人405人を測った研究では、腰全体の回旋(ねじる動き)は、左右それぞれ約7度で、合計でも約14度でした[5]。直角が90度なので、片側7度は、その13分の1ほどです。年齢が上の人たちで低くなるという傾向も見られませんでした[5]。
先ほどの説明では、腰の骨が「ねじる」動きも可能にするとありました[3]。矛盾するようですが、「可能にする」のと「たくさん動く」のは別です。腰の骨は、ねじる動きを大きく動かす部品ではなく、小さく動く部品なのです。
測り方で値は変わるので、「腰は7度しかねじれない」と決めつけるのは避けます。腰を「ひねる」ためには、腰だけでなく、もっと上の背骨を使っているということです。
ねじるのが少ないなら、前に曲げる動きは、腰が主役なのでしょうか。
「腰をひねる」という言い方は日常的だが、測定値はそのイメージと合わない。無症状の成人405人を対象にした腰椎の可動域の研究では、軸回旋(ねじり)は左右それぞれ約7度、合計約14度で、年齢による低下も見られなかった[5]。直角(90度)に対し片側7度は約13分の1にあたる。
前章で、腰椎は体を回す・ねじる動きを可能にするとMSDマニュアルを引いた[3]。これと7度という値は矛盾しない。可能にすることと、大きく動くことは別だからだ。腰椎の測定では、ねじる動きはこれだけ小さかった。
測定値は、計測方法や被験者によって変わる。「腰は7度しかねじれない」と固定値で言うのではなく、「405人の測定ではそうだった」という範囲にとどめる。この点が、腰の構造の理由にもなりうる。腰椎は回旋を小さく抑えているからこそ、重さを受ける支柱として働きやすいのではないか。ただしこれは、資料に書かれていない推測である。
ねじりが小さいなら、前に曲げる動きは、腰が一人で引き受けているのか。
4. おじぎを する とき、どこが まがって いるの?
4. 前に曲げるとき、腰と足の付け根が分担している
4. 前屈の分担 ── 腰椎と股関節が動く順番
立った まま 前に たおす とき、まがって いるのは こしだけでは ない、という ほうこくが あります[6]。
こしの せぼねと、あしの つけねの 股関節が、いっしょに うごきます。ある けんきゅうでは、まげはじめは こしの せぼねの うごきが 大きく、おわりに 近づくと 骨盤(あしの つけねの ほう)の うごきが 大きく なる、と ほうこく されて います[6]。
ふともも の うらの 筋肉が のびにくい 人は、あしの つけねで まがる わりあいが へって、こしで まがる わりあいが ふえる かたむきが あるそうです[6]。これは すくない 人数の けんきゅうで、立って 前に たおす うごきだけの はなしです。みんなに あてはまる わけでは ありません。からだが かたい ことが、わるい という ことでも ありません。
うごく ぶんを わけあうなら、ささえる ぶんは だれが うけもつのでしょう。
おじぎをするとき、曲がっているのは腰だけではありません。立ったまま体を前に倒す動きを調べた報告では、腰の背骨(腰椎)と骨盤が同時に動き、前半は腰の動きが大きく、後半は骨盤の動きが大きくなるとされています[6]。
この分担は、人によって割合が変わるようです。太ももの裏の筋肉が伸びにくいと、足の付け根で曲がる割合が減り、そのぶん腰で曲がる割合が増える傾向があると報告されています[6]。
ただし、少人数の研究で、立って前に倒す動きだけを調べたものです。全員、すべての動作に当てはまるとは限りません。また、体が硬いかやわらかいかは、優劣ではなく、動きの分担が少し違うということです。
動かす仕事を腰の骨と足の付け根で分けているとすると、支える仕事は誰が受け持っているのでしょうか。
前屈では、腰椎と骨盤が同時に動く(骨盤の動きは股関節で曲がることと結びつく)。立位前屈の報告では、運動の前半は腰椎部の動きが大きく、後半は骨盤部の動きが大きくなるとされ、これは「腰椎骨盤リズム」と呼ばれる[6]。腰椎だけが曲がるのでも、骨盤だけが動くのでもなく、二つが順番に役割を分ける。
分担の割合は固定ではない。太ももの裏が硬い場合、股関節で曲がる割合が減り、そのぶん腰椎で曲がる割合が増える傾向があるという[6]。ここから、腰の負担を決めるのは腰そのものだけではなく、骨盤や太ももの筋肉の状態でもある、という見方ができる。ただしこれは報告から読みとれる見方で、因果が確かめられたわけではない。
注意すべきは、この報告が少人数の立位前屈のデータだという点である。座った姿勢や物を持ち上げる動作に、そのまま当てはまるとは限らない。体の硬さを優劣として読むこともできない。
骨と関節が動きを分け合うなら、動かないよう固定する側の話が欠かせない。支えは、誰がしているのか。
5. たおれない ように ささえて いるのは だれ?
5. 骨だけでは立てない ── 靭帯と筋肉が背骨を支える
5. 靭帯と筋肉による安定 ── コアマッスルと深層筋の仮説
せぼねは、ほねだけで 立って いる わけでは ありません。ほねを つなぐ 靭帯という ひもの ような ものと、筋肉が、せぼねを あんていさせて います[3]。
おなかや おしりの 筋肉も、せぼねを ささえる てつだいを します。からだの まん中を まもる 筋肉なので、「コアマッスル」と よばれます[3]。
おなかの おくの ほうにも、こしの ほねを ささえる 筋肉が あります。この 筋肉たちが うまく いっしょに はたらかない ことが、こしの いたみと かんけいが あるのでは、という かんがえが、ずっと あります[7]。ただし これは まだ かせつで、いたみの げんいんだと きまった わけでは ありません。
これほど はたらく こしですが、いたくなる 人は 多いのです。
背骨は、骨だけで立っているわけではありません。背骨の小さな関節と背骨は、靭帯と筋肉で安定していて、お腹やおしりの筋肉を含む「コアマッスル」も、背骨の安定を助けています[3]。
お腹の深いところには、腹横筋と多裂筋という筋肉があります。この二つがうまく協調して働かないことが、腰痛の背景にあるのではないか、という仮説が長く立てられてきました。お腹をへこませる動作(ドローイン)は、この二つを選んで働かせる動作とされます[7]。
ただし、これは仮説です。調べる方法にも限界があると指摘されており、腰痛の原因はこれだと決めることはできません[7]。
こうして骨とクッションと筋肉が分担しても、腰が痛くなる人は少なくありません。どれくらいいるのでしょうか。
MSDマニュアルによれば、椎間関節と脊椎は靭帯と筋肉によって安定しており、腹筋や殿部の筋肉を含むコアマッスルも脊椎の安定を助ける[3]。骨と椎間板だけでは立った体を支えきれず、周りの組織が補っているということだ。
さらに深い層には、腹横筋と多裂筋がある。この二つの協調がうまくいかないことが腰痛の背景だ、という仮説が長く扱われてきた。お腹をへこませるドローインは、この二つを選んで働かせる動作とされる[7]。
ここで注意が要る。理学療法の解説は、これを仮説として紹介し、評価法の有効性に限界があるとも指摘する[7]。「深い筋肉が衰えると腰が痛くなる」と原因を決めつけることはできない。また、腹圧が腰椎をどう支えるのかという仕組みについては、取得した資料に詳しい説明がなく、「筋肉が腰を支える」という範囲にとどめる。
骨・椎間板・靭帯・筋肉・隣り合う関節。これほど多くの部品が役割を分けていても、腰の痛みは多くの人が経験する。どれほど多いのか。
6. こしが いたい 人は、どれくらい いるの?
6. 腰痛は、日本でいちばん多い自覚症状
6. 国民生活基礎調査の腰痛 ── 男91.6・女111.9(人口千人あたり)と、その読み方
厚生労働省の 2022年の 調査で、びょうきや けがで 体の ぐあいが わるい ところを 聞くと、男の 人も 女の 人も、いちばん 多かった のは 「こしの いたみ」でした[8]。
人口 千人に ついて、男の 人は 91.6人、女の 人は 111.9人です[8]。男の 人は 11人に 1人、女の 人は 9人に 1人ぐらいの わりあいです。にゅういん している 人は、はいって いません[8]。つぎに 多いのは、かたこりでした[8]。
なぜ 多いのかは、この 調査には かいて ありません。
お医者さんが 書いた 医学の かいせつでは、こしの いたみは、はっきりした げんいんが わからない ことが 多いと あります。そして、80~90%は 6週間いないに なくなります[3]。ベッドで じっと して いるより、かるく うごき つづける ほうが いいと、多くの 専門の 医者が すすめる そうです[3]。とても いたい とき、しびれが ある とき、おしっこの ぐあいが おかしい ときは、おうちの 人に 言って、医者に みて もらいましょう。
厚生労働省の令和4年(2022年)国民生活基礎調査では、病気やけがなどで自覚症状がある人(入院している人は含まない)の割合を、人口千人あたりで調べています。症状別にみると、男女とも「腰痛」がいちばん多く、次が「肩こり」でした[8]。
腰痛の数は、男性が91.6、女性が111.9です(複数回答)。千を91.6で割ると約10.9、111.9で割ると約8.9なので、男性は約11人に1人、女性は約9人に1人が腰痛を感じていることになります[8]。百人に1人ではなく、もっとずっと身近な割合です。
なぜこんなに多いのか、この調査は理由までは調べていません。ただ、腰痛の多くは時間とともに良くなります。MSDマニュアルによると、腰痛の原因は具体的に特定できないことが多く、80〜90%は治療法にかかわらず6週間以内に消えます。ベッドで安静にしても痛みの解消は早まらず、ほとんどの専門医は軽い運動を続けるよう勧めているそうです[3]。
ただし、強い痛みやしびれ、排尿の異常があるときは、自分で判断せず、医療機関に相談する必要があります。
厚生労働省の令和4年(2022年)国民生活基礎調査では、自覚症状のある人(有訴者、入院者を含まない)の割合を人口千人あたりで示している。症状別では男女とも「腰痛」「肩こり」の順に多く、腰痛は男91.6、女111.9である(複数回答)[8]。
この数字は千人あたりなので、百人に1人ではない。1000÷91.6≒10.9、1000÷111.9≒8.9であり、男性は約11人に1人、女性は約9人に1人にあたる。入院者を含まない点、自分で感じた症状の回答である点は、読むときに押さえておく。
腰痛が多い理由は、この調査には書かれていない。腰が「動かす」と「支える」を両方担うことと結びつけたくなるが、資料にそうした因果の記述はなく、本文では推測にとどめる。
痛みの経過については、MSDマニュアル(最終更新2025年7月)が、腰痛の原因は脊椎まわりの関節・筋肉・靭帯・神経根・椎間板の病気が多いが、具体的な原因が特定できない場合が多いと述べる。症状の80〜90%は、治療法にかかわらず6週間以内に消失し、ベッドでの安静は痛みの解消を早めないため、多くの専門医は軽い運動の継続を勧める[3]。ただし、痛みが強いときやしびれ、排尿の異常があるときは、受診が前提になる。これは一般向けの解説であり、個々の症状への判断は医師に委ねる。
7. まえに たおして、どこが うごくか 見て みよう
7. 前に倒しながら、動いている場所を手で探してみよう
7. 前屈を観察する ── 腰と足の付け根の分担を、自分の体で見る
ひろい ところで、ためして みましょう。足を かたはばに ひらいて 立ち、りょう手を せなかの 下の ほうに あてます。
おへそを 見ながら、ゆっくり 前へ たおします。ひざは すこし ゆるめて かまいません。ゆびが ゆかに とどかなくても いいのです。いたい と おもったら、そこで やめます。
手に ふれる せなかの かんじは、たおし はじめと おわりで、どう かわるでしょう。人に よって ちがう かもしれません。だれかと くらべる ひつようは ありません。
もうひとつ。りょう手を こしに あてて 立って みましょう。この かたちは、「かなめ」を あらわす 漢字の かたちの ひとつに ちかい かもしれません[2]。どちらの せつめいが しっくり くるか、考えて みると おもしろいですよ。
広い場所で、足を肩幅に開いて立ち、両手を背中の下のほうに当てます。おへそを見ながら、ゆっくり前に倒します。ひざは少しゆるめて構いません。指が床に届かなくてもよく、痛みを感じたらそこでやめます。
倒し始めと終わりで、手に伝わる背中の感じがどう変わるかを見てみます。前半は腰の背骨、後半は骨盤の動きが大きくなるという報告があります[6]。ただ、自分の体で感じ分けられるかどうかは人によって違うので、「分かった」と決めずに観察するだけにします。
ウィクショナリーが書く「要」の字の形は、両手を腰に当てた人です[2]。実際に両手を腰に当てて立ってみると、字の形と体の感覚がつながります。『字通』は別の形の説明をしているので、どちらの説明が自分にはしっくりくるか、比べるのも面白いはずです[1]。
厚生労働省の調査[8]の腰痛の数字は、図でも見られます。男女で値がどれくらい違うか、肩こりとどちらが多いかを、自分で見比べられます。
観察の方法は単純である。足を肩幅に開いて立ち、両手を背中の下部に当て、おへそを見ながらゆっくり前に倒す。ひざは少し緩めてよい。指が床に届く必要はなく、痛みがあればそこで止める。
倒し始めと終わりで、手に伝わる背中の動きがどう変わるかを見る。前半は腰椎、後半は骨盤の動きが大きいという報告[6]が自分の体でも感じられるかは、被験者が少ない研究である以上、人により異なるだろう。感じ分けられなくても、結論は変わらない。比較や記録を取る必要はない。
資料の読みどころは三つある。①『字通』とウィクショナリーで「要」の字形の説明が異なること[1][2]。両手を腰に当てて立てば、ウィクショナリーが言う字形を体で再現できる。②国民生活基礎調査[8]の腰痛は、男女別に千人あたりの数字が示されており、肩こりとの順位も一緒に見られる。③回旋7度の研究[5]は英語の論文だが、角度の測り方と対象者の年齢別の結果が書かれている。
腰の「動かす」と「支える」は、どちらも日常の動作に入り込んでいる。立つ、座る、物を持つ、といった動作のうち、腰が主役になるのはどれか。それを調べる問いは、この記事の外にも広がっている。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:漢字の辞典、医学の解説、学会抄録、論文の要約、厚生労働省の統計を使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。
- 平凡社『普及版 字通』「要」(コトバンク掲載)。https://kotobank.jp/word/%E8%A6%81-2026772 (「要」がもとは「腰」の字だったことについて)
- ウィクショナリー日本語版「要」。https://ja.wiktionary.org/wiki/%E8%A6%81 (字形の別の説明と、「かなめ」に借りて使われたことについて)
- MSDマニュアル家庭版「腰痛」。https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/ (腰椎の動きと強さ、椎間板、靭帯と筋肉、腰痛の経過について。医学の解説)
- メディカルノート 脊椎の解説ページ。https://medicalnote.jp/contents/150722-000014-TZYKTG (背骨を作る骨の数について。解説記事)
- Troke ら(2001)腰椎の可動域に関する研究。https://research.brighton.ac.uk/en/publications/a-new-comprehensive-normative-database-of-lumbar-spine-ranges-of-/ (腰のねじる角度について。論文の要約)
- 群馬大学リポジトリ 前屈時の腰椎と骨盤の動きに関する報告。https://gunma-u.repo.nii.ac.jp/record/2707/files/h-k0135-2.pdf (前に曲げるときの腰と骨盤の分担について)
- Physiotutors「腰椎局所安定筋の評価」。https://www.physiotutors.com/ja/wiki/lumbar-local-stabilizers-assessment/ (腹横筋と多裂筋の仮説について。理学療法の解説)
- 厚生労働省「令和4年国民生活基礎調査の概況」。https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa22/dl/04.pdf (腰痛の自覚症状の割合について)
- RSNA 2003 年会 抄録(椎間板の高さの変化)。https://archive.rsna.org/2003/3103199.html (1日のうちに椎間板が縮むことについて。学会抄録)
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