1. 北風は、どっちへ ふく 風?
1. 「北風」は北へ向かう風ではない
1. 風向の定義と、風の正体 ── 空気が気圧の高い方から低い方へ動く
「きたかぜ」と きいたら、きた へ むかって ふく 風だと おもいませんか。じつは ちがいます。きたかぜは、きた から ふいて くる 風です[2]。
風の 正体は、空気が うごく ことです。空気は、きあつが 高い ところから、ひくい ところへ うごきます[1]。きあつとは、空気が おす 力の ことです。
ぎゅうぎゅうの 教室から、すいている ろうかへ 人が ながれて いく ようすに にて います。ただし 空気は 目に 見えないので、ほんとうの ようすは もっと ふくざつです。
では、きあつの ちがいは、だれが つくるのでしょう。
2. きあつの ちがいは、おひさまが つくる
2. 気圧の差は、太陽の温め方のちがいから生まれる
2. 気圧差の成因 ── 加熱の度合いが場所で異なる
きあつに ちがいが できる わけは、場所に よって あたたまり方が ちがう からです[1]。
おひさまの 光が あたって、地面の ちかくの 空気が あたたまった ところでは、空気が ふくらみます。そうして、となりの ところと 空気の おす 力に ちがいが 生まれます[1]。
つまり、風の もとは、おひさまの 温め方の ちがいです。
この しくみは、小さな 風にも、大きな 風にも あてはまります。まずは、うみべで たしかめて みましょう。
気圧の差が生まれる理由は、場所によって加熱の度合い、つまり温まり方がちがうことです。暖かいほうの大気は膨らみ、反対側との間に圧力の差が生じます[1]。つまり、地面近くで温まり方がちがう二つの場所を比べると、膨らんだ側と、そうでない側とで、空気が押す力にちがいができるのです。
地球の大気を温めているのは太陽です。太陽の熱の受け方が場所ごとに異なるため、気圧にも差ができ、風が吹きます。
ただし「暖かい空気はいつも低気圧」という単純な話ではありません。ここで扱っているのは、地面付近の気圧のことです。
この考え方が、いちばん身近な風でどう働くのかを、海辺で見てみましょう。
気圧差の成因は、加熱の度合いの空間的な差である。大気の塊の両端で加熱が異なると、暖かい側が膨張し、他端との間に圧力の差が生じる、と辞典は説明する[1]。熱源は太陽なので、風の根本には「太陽の受熱量が場所で異なる」ことがある。膨張した側と他端とで、地面付近の気圧に差ができ、そこへ気圧傾度力が生じて風が吹く、という順序になる。
ただし、「暖かい空気は低気圧」と一般化はできない。上の説明は、気圧が地面付近でどう配置されるかの話であり、高さによって圧力の分布は変わる。次節の海陸風は、この原理が最も小さな規模で現れる例だ。
3. うみべの 風は、1日で むきが かわる
3. 浜辺では、風の向きが1日で入れかわる
3. 海陸風 ── 陸と海の温まり方の差が、1日周期の風をつくる
うみべに いくと、ひるは 海から 風が ふいて きます。よるは、はんたいに りくから 海へ ふきます[3]。
ひるは、りくの ほうが 海より はやく あたたまります。りくの 上の 空気は ふくらんで、きあつが ひくく なり、海の 上は 高く なります[4]。だから 海から りくへ 風が ふきます。よるは、りくが はやく ひえて、むきが 反対に なります[3]。
この 風は、ふつう 海風(うみかぜ)の ほうが りくかぜより 強いと いわれます。あつい 国の 海では、1びょうで 10メートルを こえる ことも あります[4]。
ある 夏の はれた 日の れいでは、海風は 40キロメートルほど、りくの おくへ ふきこんだそうです[4]。ただし これは 1つの れいで、日本の いつもの きょりでは ありません。
穏やかに晴れた海岸では、昼は海から陸へ、夜は陸から海へ風が吹きます。昼の風を海風、夜の風を陸風といい、まとめて海陸風と呼びます[3]。
なぜ向きが入れかわるのか
昼は、陸のほうが海より早く温まります。陸の上は気温が高く、気圧が低くなり、海の上は気圧が高くなります[4]。空気は海から陸へ流れます。夜は陸のほうが早く冷えるので、向きが逆になります[3]。陸と海の気温差による、約1日周期の風です[3]。
海陸風がはっきり現れるのは、高気圧におおわれて、気圧の傾きがゆるやかな日です[3]。大きな気圧の流れが弱い日ほど、地面の温まり方のちがいが目立つのです。
どのくらい強く、どこまで届くのか
海風は一般に陸風より強く、低緯度では毎秒10メートルを超えることもあります。ある夏の晴れた日の例では、海風は内陸へおよそ40キロメートル入りこみました[4]。ただし40キロメートルは一例で、日本のいつもの値ではありません。
海岸の風は、1つの海岸だけの話でした。では、国ぜんたいを大きく変える風はあるのでしょうか。
海陸風は、陸と海の温まり方の差が1日周期で風向を入れかえる現象だ。昼は陸が海より先に温まり、海から陸へ吹く海風、夜は陸が先に冷えて陸から海へ吹く陸風となる[3]。地面付近では、昼に陸の気温が海より高く、気圧は陸が低く海が高くなる[4]。だから、前節の原理に従い、空気は海から陸へ動く。
この風は、高気圧に覆われて気圧の傾きが緩やかな日にはっきり現れる[3]。これは、広い範囲の気圧配置による風が弱いときほど、陸と海の温度差の効果が、観測される風に占める割合が大きくなるためと読める(この因果は資料の記述からの推論)。
大きさの目安は、海風が一般に陸風より強く、低緯度では毎秒10mを超えることもあるという記述である。夏の晴天時の一例では、海風は内陸へ約40km入りこむ[4]。ただし、これは低緯度・夏の晴天の例で、日本の具体的な数値ではない。
では、海岸ではなく、大陸と海のような大きな規模で、同じことが起こるとどうなるか。
4. 1年で むきが かわる 風も ある
4. 同じ仕組みが大きくなると、季節で向きが入れかわる風になる
4. 季節風 ── 大陸と海洋の温度差が、風向を半年ごとに逆転させる
うみべの 風は 1日で むきが かわります。この かわり方が もっと 大きく なると、1年ごとに かわる 風に なります。
これを きせつふうと いいます。大きな りくと 海の あたたまり方の ちがいが、おもな げんいんです。ふゆは りくから 海へ、なつは 海から りくへ ふきます[5]。
日本では、ふゆに 北西(きたにし)から、なつに 南東(みなみひがし)から ふく 風が 多いと されます[5]。「きたにしの 風」とは、きたにし から ふいて くる 風です。
5. ちきゅうぜんたいの 風は、赤道と 北きょくの ちがい
5. 地球ぜんたいの風は、赤道と極の温度差が元になる
5. 大気大循環と貿易風 ── 自転がまっすぐな流れを曲げる
地球で いちばん あつい ところは 赤道(せきどう)の ちかく、いちばん さむい ところは 北きょくと 南きょくの ちかくです。この 大きな 温度の ちがいから、大きな 空気の ながれが 生まれます[6]。
ただし 空気は、赤道から 北きょくまで まっすぐには すすめません。地球が 1日に 1回、まわっている ため、うごく 空気は 北半球では 右がわへ まがって いきます[6]。その ため ながれは、3つに わかれます。
そのうちの 1つが、ぼうえきふうです。赤道に むかって、1年じゅう ほとんど 同じ むきに ふく 風で、北半球では 北東から ふいて きます[7]。
むかしの ほぶねは、この 風の おかげで、いつも 同じ 海の 道を とれたので、「通り道の 風」と いう 意味で 名前が ついたと いわれます[7]。
日本の季節風や海陸風は、地域ごとの風です。地球ぜんたいを動く風の元は、高温の赤道付近と低温の極付近の温度差です。ここで大きな熱の対流が起こります[6]。
自転が流れを曲げる
流れはまっすぐ赤道から極へ向かいません。地球が自転しているため、動く空気には、進行方向に対して北半球では右向き、南半球では左向きの力が働きます(コリオリの力)[6]。そのため、大気の流れは低緯度・中緯度・高緯度の3つの細胞に分かれます[6]。
帆船が頼った貿易風
低緯度の細胞の地上に吹くのが、貿易風です。緯度30度付近の亜熱帯高気圧帯から赤道へ向かって、ほぼ1年中同じ東寄りの向きに吹きます。自転の影響で、風向は北半球では北東、南半球では南東になります[7]。
名前の元は、帆船時代に、いつも同じ海路を取れるほど一方向から吹く風だったことで、原義は「通り道の風」です[7]。「貿易」という語がなぜ当てられたかは、辞典の説明として読むにとどめます。
では、日本の上空にはどんな風が通っているのでしょうか。
大規模な風の成因は、高温の赤道付近と低温の極付近の間に生じる大規模な熱対流である。ただし、辞典は、地球の自転も関わって、この対流が低緯度・中緯度・高緯度の三つの細胞として示されると説明する[6]。低緯度と高緯度に直接循環、中緯度に間接循環がある3細胞構造として示される[6]。
自転の効果は、動く空気に、進行方向に対して北半球では右向き、南半球では左向きの力(コリオリの力)として現れる[6]。そのため、風は気圧の高い所から低い所へ「まっすぐ」には進まない。ここで扱うのは大規模な風であり、洗面台の渦の向きのような小さな現象には当てはめられない。
貿易風は、緯度30度付近の亜熱帯高気圧帯から赤道に向かって吹く、ほぼ定常的な偏東風である。風向は、自転の影響で北半球では北東、南半球では南東になる[7]。名称は、帆船時代に、常に同じ海路を取れるほど一方向から吹いたことに由来し、原義は「通り道の風」とされる[7]。ただし「貿易」の語源には諸説がありうる。
低緯度の風はこうして決まる。では日本のある中緯度帯は、どうなっているのか。
6. 日本の 空では、天気が 西から かわる
6. 日本の天気が西から変わるのは、偏西風とジェット気流のため
6. 偏西風とジェット気流 ── 天気を運ぶ流れの、最も速い部分
日本の 空には、ふだん 西から 東へ ふく 風が あります。へんせいふうです。
この 風が、天気を 運びます。こうきあつや ていきあつが、へんせいふうに ながされて 東へ すすむため、日本の 天気は 西から かわる ことが 多いのです[8]。ただし、台風の ように ちがう うごきを する ものも あります。
へんせいふうの 中でも、とくに 速い 部分を ジェット気流(きりゅう)と いいます。地上から 10〜12キロメートルほどの 高さです[9]。
ふゆの ジェット気流は 1びょうで 40メートルほど、なつは 15メートルほどです。ときには 100メートルを こえます[9]。日本の ちかくの 風は、せかいでも 強いと いわれます[9]。
日本の天気は、西から変わることが多いと言われます。その理由が偏西風です。おおむね緯度30〜65度の帯で、西から東へ吹く風で、高緯度と低緯度の温度差による気圧差と、地球の回転の影響で生まれます[8]。南北に蛇行しながら、高気圧や低気圧を東へ流します[8]。
ただし「必ず西から」ではありません。台風など、ちがう動きをするものもあります。
空の高い所の、いちばん速い帯
偏西風の中でも特に風速が大きい帯状の領域が、ジェット気流です。中心の軸は高度10〜12キロメートル、緯度30〜40度付近にあります[9]。
風速は冬で毎秒約40メートル、夏で約15メートルが目安で、ときに100メートルを超えます。日本付近のものは世界でも強く、冬は100m/s以上になることがあります[9]。毎秒100メートルは時速360キロメートルです。気象庁が「猛烈な風」とする30m/s以上[2]の3倍以上にあたります。
ただし40メートルは平均的な目安、100メートル超は最大級の値です。
日本の天気が西から変わりやすい理由は、偏西風にある。偏西風はおおむね緯度30〜65度の帯で西から東へ吹き、成因は高緯度と低緯度の温度差による気圧差と、地球回転の影響とされる。南北に蛇行して高気圧や低気圧を東へ流すため、天気が西から変わることが多い[8]。「多い」であって、台風のように例外もある。
ジェット気流は、偏西風の中でも特に風速が大きい帯状の領域だ。中心軸は高度10〜12km、緯度30〜40度付近にある[9]。風速は冬で毎秒約40m、夏で約15mが目安で、ときに100mを超す。日本付近のものは世界でも強く、冬には100m/s以上になると辞典は記す[9]。
100m/sは、100×3600÷1000=360で、時速360kmにあたる。気象庁が「猛烈な風」とするおおむね30m/s以上[2]と比べると、3倍以上である。ただし40m/sは平均的な目安、100m/s超は最大級の値で、いつも吹いているわけではない。また高度10km付近の風であり、地上の風速とは別の話だ。
なお、ジェット気流がなぜ生じるのかという成因は、辞典では説が紹介されている段階で、この記事では断定しない。
7. 風が どこから きたか、さがして みよう
7. 家のまわりで「風の出どころ」を探す
7. 出口 ── 風向を自分で記録する方法と、読んでみたい資料
うすい ティッシュペーパーの はしに、かるい 糸を つけます。それを 手に もって、そとで 風を みて みましょう。
ティッシュが ながれて いく 方向の ぎゃくが、風の きて いる ほうがく です。あさ、ひる、ゆうがたに みて、風の むきが かわるか ためして みましょう。
たいせつな やくそくが あります。道路や 水の ちかくには 行かず、おうちの 人と いっしょに そとに 出て ください。
うみの ちかくに すんで いたら、ひると よるの 風の むきを くらべても、おもしろいかも しれません。
家の庭やベランダで、細い糸を付けた軽いティッシュペーパーを手に持って、風を見てみましょう。ティッシュが流れる方向の反対側が、風の吹いてくる方向、つまり風向です。
朝・昼・夕方に記録すると、風向が変わるかどうかが分かります。海の近くに住んでいるなら、昼と夜の風向を比べると、海風と陸風が見つかるかもしれません。ただし、ほかの気圧の流れが強い日は、はっきりしないことがあります。
安全のため、道路や水辺には近づかず、家の人と一緒にしてください。
もっと詳しく知りたくなったら、気象庁の予報用語(風)[2]や、羽田空港の海陸風の解説[3]を開くと、実際の観測の見方が書かれています。
風向の記録は、家庭でも再現できる。細い糸を付けたティッシュを持って流れる方向を見て、その反対側を風向とし、朝・昼・夕に記録する。海の近くなら、昼と夜の風向を比べると海陸風が見える可能性がある。ただし、広い範囲の気圧配置の風が強い日は、海陸風がはっきり現れないことがある[3]。屋外では、道路・水辺を避け、安全を確保して行うこと。
資料としては、風向・風速の定義は気象庁の予報用語[2]、海陸風の実際の観測は気象庁羽田空港のWEATHER TOPICS[3]が日本語で読める。辞典の項目(気圧傾度力・大気大循環・ジェット気流など)は、成因の説が複数紹介されている箇所が多く、どこまでが定説かを読み比べる材料になる。コリオリの力が各風の向きを実際にどう決めるか(地衡風の釣り合い、地表摩擦の効果)は、この記事では「自転で曲がる」程度にとどめた問いで、さらに調べる価値がある。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:辞典(コトバンク掲載)の項目と、気象庁の資料を使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。辞典は二次資料にあたる。
- 気圧傾度力(最新地学事典・世界大百科事典、コトバンク)。https://kotobank.jp/word/気圧傾度力 (風が吹く原因と、気圧差が生じる理由について。二次資料)
- 気象庁 予報用語「風」。https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/yougo_hp/kaze.html (風向・風速の定義と、強さの区分について)
- 気象庁 羽田空港WEATHER TOPICS 第40号「羽田空港の海陸風について」。https://www.jma-net.go.jp/haneda-airport/weather_topics/wt_21-40.html (海風・陸風の仕組みについて)
- 海陸風(世界大百科事典・日本大百科全書、コトバンク)。https://kotobank.jp/word/海陸風 (海陸風の気圧、強さ、届く距離の例について。二次資料)
- 季節風(日本大百科全書・デジタル大辞泉、コトバンク)。https://kotobank.jp/word/季節風 (季節風の原因と日本付近の風向について。二次資料)
- 大気大循環(デジタル大辞泉・世界大百科事典・ブリタニカ国際大百科事典、コトバンク)。https://kotobank.jp/word/大気大循環-90977 (地球規模の風と、自転で曲がる力について。二次資料)
- 貿易風(デジタル大辞泉・日本国語大辞典、コトバンク)。https://kotobank.jp/word/貿易風 (貿易風の向きと名前の由来について。二次資料)
- 偏西風(日本大百科全書・世界大百科事典、コトバンク)。https://kotobank.jp/word/偏西風 (偏西風と、天気が西から変わる理由について。二次資料)
- ジェット気流(最新地学事典・マイペディア・ブリタニカ国際大百科事典、コトバンク)。https://kotobank.jp/word/ジェット気流 (ジェット気流の高さと風速について。二次資料)
なおした ところ
更新履歴
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