1. おもさでは なくて、なにと くらべるの?
1. 沈むか浮くかは、同じ体積の水の重さと比べて決まる
1. 浮き沈みの境目は、同じ体積の水との重さの比較にある
コップの 水に たまごを 入れると、すとんと しずみます。ふねの ほうが たまごより ずっと おもいのに、ふねは うきます。
この ふしぎを とく かぎは、水の「おしのける 力」です。ものを 水に 入れると、その ものが おしのけた 水と おなじ おもさの 力で、上に おし上げられます。この 力を 浮力と いいます[1]。
ものの おもさが、おしのけた 水の おもさより 大きければ しずみ、小さければ うきます。たまごは、おなじ 大きさの 水より、すこしだけ おもいのです。水を 1と すると、たまごは やく 1.08 くらい(たまごに よって すこし ちがいます)です[7]。だから しずみます。
この かんがえを 書いた のは、アルキメデスと いう むかしの ギリシャの 人です。おうかんの はなしで ゆうめいですが、おふろで ひらめいた という はなしを 書いたのは、200ねん ぐらい あとの ローマの 人だと いわれます[8]。
では、おもい 鉄で できた ふねは、どうして うくのでしょう。
水に入れたものは、押しのけた水と同じ重さの力で、上に押し上げられます。この力が浮力で、「アルキメデスの原理」として知られています[1]。
ものの重さが、押しのけた水の重さより大きければ沈み、小さければ浮き上がります。ここで大切なのは、比べる相手が「同じ体積の水」だという点です。1立方センチメートルあたりの重さを密度と呼びます。真水を1とすると、卵はおよそ1.08(卵によって少しちがう目安です)で、水より少し大きいので沈みます[7]。
アルキメデスと言えば、王冠の話が有名です。王冠は形が複雑で体積を測りにくく、てんびんごと水に沈めて金の純度を調べた、と伝えられます。お風呂の湯があふれて思いついた場面を最初に書いたのは、約200年後のローマの建築家だとされます[8]。
密度の考え方で卵は説明できました。ところが、鉄の船はどうでしょうか。
船と卵の逆転を説明するには、2つの量を分けて考える必要がある。1つは浮力で、流体中の物体は、押しのけた流体の重さに等しい上向きの力を受ける。これがアルキメデスの原理である[1]。もう1つは密度、つまり単位体積あたりの重さである。
物体の重さが浮力より大きければ沈み、小さければ浮き上がる[1]。物体全体が水に沈んだ状態で比べれば、これは「物体の密度が水より大きいか」を見ることと同じになる。真水の密度をおよそ1.00 g/cm³とすると、卵はおよそ1.08 g/cm³で、水より大きいから沈む[7]。ただし卵の密度は大きさや鮮度で変わり、この値は目安である。
この原理を書いたアルキメデスは、王冠の逸話で知られる。王冠は直方体のような測りやすい形ではなく、体積を正確に測るのが難しかった。そこで、王冠と同じ重さの純金をてんびんでつり合わせ、そのまま水中へ移す方法が伝わる[8]。浴槽の湯があふれる場面を記録したのは約2世紀後のローマの建築家ウィトルウィウスで、アルキメデス本人の記述ではない[8]。
密度が水より大きいものは沈む、という見方なら卵は説明できる。では、密度が水の約8倍もある鉄でできた船が浮くのは、この見方とどう両立するのか。
2. 鉄で できた ふねが、うかぶ わけ
2. 鉄の船が浮くのは、鉄が軽くなったからではない
2. 鉄の塊は沈むのに、船は浮く ── 船全体の密度で考える
鉄は、おなじ 大きさの 水の やく 8ばい おもい ものです。かたまりの ままだと、水に しずみます[3]。
ところが、鉄を うすく のばして、水が はいらない 大きな うつわの かたちに すると どうでしょう。うつわが 水に しずむ ぶぶんが ふえて、おしのける 水が ふえ、浮力も 大きく なります[3]。
鉄が かるく なった わけでは ありません。ふねの なかは ほとんどが くうき です。ふね ぜんたいで 見ると、おなじ 大きさの 水より かるい のです。
うかんだ ふねは、自分の おもさと おなじ おもさの 水を おしのける ところまで しずんで、とまります[1]。ふねが おしのける 水の りょうを「はいすいりょう」と いいます[2]。
そうなると、水の ほうを おもく したら、どうなるのでしょう。
鉄の比重は約8で、塊のままなら水に沈みます。薄く延ばして水が入らない器の形にして、水に沈む体積を増やすと、浮力が増えて重い鉄でも浮かべられます[3]。
ここで注意したいのは、鉄そのものが軽くなるわけではないことです。船の中は大部分が空気です。船全体の重さを、水に沈んだ体積で割ってみると、同じ体積の水より軽くなっています。船全体で見る、というのが考え方の中心です。
浮かんだ船は、自分と同じ重さの水を押しのけるところまで沈んで止まります[1]。船が押しのける水の量は排水量と呼ばれ、船の重さに等しくなります。船の水面下の深さ(喫水)は、水面下の体積を知るものさしにもなります[2]。
水の側を変えると、浮き沈みはどう変わるのでしょうか。
鉄の比重は約8で、塊のままでは沈む。しかし、鉄を薄く延ばして水が入らない器にし、没水体積を増やせば浮力が増え、重い鉄でも浮かべることができる[3]。
ここには誤解しやすい点がある。船が浮くのは、鉄が軽くなったからではない。船体の内部は大部分が空気で満たされており、「鉄+空気」を一体として見ると、船全体の平均密度は水より小さくなる。物体を1つの塊として扱い、船全体で比べるという視点が必要になる。
たとえば、鉄1トンの塊の体積は、比重8から水の約8分の1にあたる。水1トン分の体積を押しのけられないから、浮力が重さに届かず沈む。しかし同じ鉄1トンを、水に1トン分の体積まで沈められる器の形にすれば、浮力は重さと等しくなる。実際の船は、荷物や機械も積むので、さらに大きな体積を水に沈める。
浮かんだ船は、押しのけた水の重さが自分の重さに等しくなるところまで沈む[1]。この押しのけた水の量が排水量で、船の重さに等しい。喫水は船の水面下の深さであり、水面下の容積を示すものさしにもなる[2]。荷を積めば重さが増え、その分だけ沈んで押しのける水が増える。
この比較で動かせるのは物体の側だけではない。水の側の密度を変えたら、浮き沈みはどう変わるか。
3. おなじ たまごが、しおみずで うくのは なぜ?
3. 同じ卵が、塩水では浮く ── 水のほうを重くする
3. 卵を浮かせる条件 ── 水の密度が卵の密度を超える瞬間
たまごの ほうを かえなくても、水の ほうを おもく すれば、たまごは うきます。
水に しおを とかすと、水は すこしずつ おもく なります。しおみずの おもさが、たまごの おもさを こえた とたん、たまごは うき上がります[7]。
水500ミリリットルなら、食塩は 大さじ 4〜5はい くらいが めやすと いわれます。ただし、たまごの 大きさや あたらしさで かわります[7]。
海の 水にも しおが とけて いて、ふつうの 水より おもく なって います[4]。それでも ふつうの 海の 水では、たまごは まだ しずむと いわれます。
では、もっと しおが とけた 水では、どうなるでしょう。
4. 死海では、人も うくって ほんとう?
4. 死海では、泳ぐより「浮く」と言われる
4. 死海の密度と、人の体の密度 ── 脂肪と肺の空気が浮きやすさを変える
イスラエルや ヨルダンの あいだに ある 死海と いう みずうみは、しおが とても こく とけて います。しおの りょうは 海の やく 10ばい。水1に たいして、やく 1.24 です[5]。
ここでは 泳ぐと いうより、うく かんじに なると いいます[5]。たまごの 1.08 より おもい 水なので、たまごも すぐ うきそうです。
人の 体には、水より かるい あぶらも、水より すこし おもい ぶぶんも あります[6]。これは うきやすさを 考える ための おおまかな 見方で、人の 体は 一人ひとり ちがいます。
さらに、はいの なかの くうきも、体を うかせる 力に なります。あぶらが 多い ほど、はいの くうきが 多い ほど、うきやすいと いわれます[6]。体の おもさは 人や いきの すい方で かわるので、だれでも おなじ とは かぎりません。
さて、水そのものにも へんな ところが あります。
死海の塩分は約3割で、海の約10倍といわれます。密度は水の約1.24倍です。塩分には出典によって幅があり、31.5%や34.2%という記述があります[5]。
水の密度が卵の約1.08を大きく上回るので、卵はもちろん、人の体も浮きやすくなります。死海では、泳ぐというより浮く感じになる、と説明されています[5]。
人の体の浮きやすさも、密度で説明できます。体を脂肪(約0.90 kg/L)と、脂肪以外の組織(約1.10 kg/L)の混合と考えるモデルがあります。これは水中体重法で使われる仮定値で、個人差があります[6]。
さらに、肺に残る空気が体全体の浮力を増やします。脂肪が多いほど、肺に空気が多いほど浮きやすいといえます[6]。息を吸っているときと吐いたときで、浮きやすさが変わるのも同じ理由です。
ここまでは、水の側の密度が変わる話でした。水そのものには、もう1つ変わった性質があります。
死海の塩分は約31.5%で、2011年に34.2%とする記述もあり、出典で差がある。そのため「約3割」とみるのが無難である。密度は約1.24 kg/L、すなわち水の約1.24倍で、海の約10倍の塩分を含む。この水では、泳ぐより浮く感じになるという[5]。
密度が卵の約1.08より大きいので、卵は浮く。人の体にも同じ見方が使える。水中体重法では、体を脂肪(約0.90 kg/L)と除脂肪組織(約1.10 kg/L)の2成分モデルで扱う[6]。この2つの値は仮定値で、個人差があり、体全体の平均密度を1つに決めることはできない。
そのうえで、浮きやすさを左右する因子が2つある。1つは脂肪の割合で、多いほど体全体の密度は下がる。もう1つは肺に残る空気で、これが浮力を増やす。水中体重法の測定では、この残気量を補正しなければならない[6]。つまり、同じ人でも息の状態で浮き方が変わりうる。
密度の高い水の側の話はここまでとして、水の密度そのものが温度で変わるという、もう1つの要素がある。それが氷に表れる。
5. 氷が 水に うくのは、ふしぎな こと?
5. 氷は水に浮く ── 水は固まると軽くなる
5. 4℃でいちばん重くなる水 ── 凍った水が浮く理由
コップの 水に 氷を うかべると、ぷかっと うきます。これは あたりまえに 見えて、じつは めずらしい ことです。
水は、4℃の ときに いちばん おもく なります。0℃の 水は、4℃の ときより ほんの すこし かるく なります[4]。
氷に なると、水より やく 9パーセント かるく なります。だから 氷は うきます。うかんだ 氷は、ぜんぶの やく 10分の1 だけ 水の 上に 出ます[4]。
コップの 水に 入れた 氷を よく 見ると、水面の 上に 出て いるのは、ほんの すこしだけです。
多くの物質は、固体になると液体より重くなります。ところが水は逆です。水の密度は約4℃で最大になり(1.00000 g/cm³)、0℃では0.99987 g/cm³とわずかに小さくなります[4]。
氷は液体の水より密度が小さく、約9%軽くなります。だからコップの氷は浮き、体積の約1割が水面の上に出ます[4]。
計算でも確かめられます。氷の密度が水の約91%なら、水に浮かぶとき、沈んでいる体積の割合も約91%になります。残りの約9%、およそ1割が水面上にあることになります。海に浮かぶ氷山も、同じ割合だと資料にあります[4]。
この考え方は、ふだんの暮らしで試せます。次の章では、卵と氷を使った実験を紹介します。
水は特異な物質である。密度は約4℃で最大(1.00000 g/cm³)となり、0℃では0.99987 g/cm³とわずかに小さい。さらに氷になると、液体の水より約9%軽い[4]。多くの物質が固体になると体積が小さく、密度が大きくなるのとは逆の動きである。
氷が水に浮くのは、船と同じ原理で説明できる。氷の密度は水の約91%とみられ、浮かぶ氷が押しのける水の重さは、氷の全体の重さと等しい(浮体の原理)[1]。したがって、氷は自分の体積の約91%ぶんを水に沈め、残りの約9%、およそ1割が水面上に出る[4]。
ここで、数値の扱いに注意が要る。資料に載っているのは「約9%軽い」という割合であり、氷の密度そのものの数値(0.917など)は今回の資料では使っていない。だから、水面上に出る割合は「約1割」という概数で語るのが正確である。
この数字は、家で氷を浮かべて確かめられる。そこで最後の章では、卵と氷を使った確かめ方を紹介する。
6. たまごが うく しゅんかんを、さがして みよう
6. 塩を少しずつ足して、卵が浮き上がる瞬間を探す
6. 卵と氷で、密度の境目を自分の目で確かめる
すきとおった コップに 水を 入れ、たまごを そっと 入れます。たまごは そこに しずみます。
つぎに、しおを スプーンで 1はいずつ 入れて、よく まぜます。まぜながら、たまごを 見て いてください。しずんだ ままだった たまごが、ある とき、ふわっと うき上がります。
うき上がった しゅんかんの しおの かずを おぼえて おきましょう。おとなの ひとと いっしょに、べつの たまごで やる ときは、また 水だけから はじめて、しおを すこしずつ たして みましょう。
しおみずは のまないで ください。おわったら、おとなの ひとに すてて もらい、手を あらいます。
コップに 氷を うかべて、水面の 上に 出て いる ぶぶんを 見るのも いいです。1わり ぐらいに 見えるでしょうか。
透明なコップに水を入れ、卵をそっと入れて、沈むことを確かめます。次に、食塩をスプーン1杯ずつ入れて、よくかき混ぜます。混ぜながら、卵の様子を見てください。ある量を超えると、卵がふわっと浮き上がります。
浮き上がったときの塩の杯数を記録しておくと、違う卵や、新しい卵と古い卵で比べられます。卵ごとに真水から始めて、塩を少しずつ足します(同じ塩水を使い回すと公平に比べられません)。目安は水500mLで大さじ4〜5杯ですが、卵によって変わるはずです[7]。塩水は飲まず、終わったら大人に捨ててもらい、手を洗います。
氷も試せます。コップの水に氷を浮かべ、水面の上に出ている部分を観察します。体積の約1割が出ていると言われますが、実際はどう見えるでしょうか[4]。
さらに調べてみたいなら、博物館や大学の理科の資料で「アルキメデスの原理」や「密度」を探してみると、船や潜水艦への使われ方が出てきます。
家庭で再現できる確かめ方として、卵と食塩を使う方法がある。透明なコップに水を入れて卵を沈め、食塩を少しずつ足してかき混ぜ、卵が浮き上がるときの量を記録する。水500mLで大さじ4〜5杯が目安だが、卵の大きさや鮮度で変わる[7]。これは、卵の密度(約1.08)を水の密度が超えた境目を、実際に見ていることになる。
この実験には限界がある。塩を足すと水の体積も変わり、溶け残りがあれば密度は均一でない。そのため、この方法で卵の密度を厳密に求めることはできず、浮き上がる量が卵ごとに違うことを観察する程度にとどまる。それでも、同じ卵の浮き沈みが水の側の条件で変わることは、はっきり見える。
氷については、水を入れたコップに氷を浮かべ、水面上に出る部分を観察する。約1割という値は、氷の密度が水の約91%であることから導かれる概数である[4]。塩水に氷を浮かべると、水面上に出る部分が増えるか。これは、水の密度が大きくなれば浮力が増す、という予想を確かめる問いになる。塩水は飲まず、後始末は大人に頼むこと。
資料を読むなら、日本語で「アルキメデスの原理」を解説した資料[1]や、水の密度を扱ったUSGS Water Science Schoolのページ[4]が出発点になる。後者は水の密度と温度の関係を扱う一次資料に近い。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:公的機関の資料、事典、博物館や教材のページを使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。
- Wikipedia「Archimedes' principle」。https://en.wikipedia.org/wiki/Archimedes%27_principle (浮力と浮体の原理について。百科事典の記事)
- コトバンク「排水量」(デジタル大辞泉/世界大百科事典)。https://kotobank.jp/word/%E6%8E%92%E6%B0%B4%E9%87%8F-598896 (排水量と喫水の意味について。事典)
- 現代ビジネス(ブルーバックス)「船は飛行機より…」。https://gendai.media/articles/-/112598 (鉄の比重と、器の形にして浮かべる考え方について。解説記事)
- USGS Water Science School「Water density」。https://www.usgs.gov/water-science-school/science/water-density (水の密度、氷が浮くこと、海水が真水より重いことについて。公的機関の資料)
- Wikipedia「Dead Sea」。https://en.wikipedia.org/wiki/Dead_Sea (死海の塩分と密度について。百科事典の記事)
- Measurement Toolkit「Hydrostatic underwater weighing」。https://measurement-toolkit.org/anthropometry/objective-methods/hydrostatic-underwater-weighing (体の脂肪と肺の空気の密度への影響について。測定法の解説)
- えれすくーる「たまごが浮く塩水の実験」。https://eleschool-compass.com/taiken/jiyukenkyu/shio-tamago.html (卵の密度と塩水の目安について。自由研究の教材ページ)
- 同志社中学校 数学博物館 vol.36(アルキメデス)。https://jhs.js.doshisha.ac.jp/museum/vol36/ (王冠の逸話とてんびんの方法について。博物館の解説)
なおした ところ
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