1. 木の ざいりょうは、水より 重いの?
1. 浮いている木の材料は、水に沈む重さだった
1. 細胞壁の真比重1.5 ── 材料だけなら木は沈む
木を ぎゅっと つぶして、すきまを ぜんぶ なくした と します。のこった 木の 「ざいりょう」は、同じ 大きさの 水の 1.5ばいほど 重いと されて います[1]。
水の 1.5ばい。つまり、そのまま 水に 入れたら しずむ はずです。それでも 木が うくのは、木の 中が すきまだらけだからです。
すきまには 空気が 入って います。空気は とても 軽いので、木ぜんたいで 見ると、水より 軽く なります。
では、すきまは どれくらい あるのでしょうか。
木をつくっている材料(細胞のかべ)だけを取り出すと、その重さは、同じ体積の水の約1.5倍だと一般にいわれます[1]。針葉樹か広葉樹かは、あまり関係がないそうです[1]。水に入れれば沈む重さです。
それでも木が浮くのは、木の中にすきまが多いからです。すきまには空気が入っていて、材料と空気をまとめた全体の重さが、水より軽くなります。
水に浮かぶかどうかは、浮力の仕組みから考えられます。浮力は、水に沈んだ部分と同じ体積の水の重さ分だけ、物を押し上げる力です[3]。木全体の重さが、押しのけた水の重さより小さければ、浮きます。では、そのすきまは、どれくらいあるのでしょうか。
空隙を除いた木材の真比重は、針葉樹・広葉樹を問わず一般に1.5とされる[1]。ただし、これは「一般的な値」である。1939年に長澤武雄は、空気の吸着を防ぐ真空法で37樹種の木材粉を測り、平均1.60と報告した。従来値より3〜14%大きい値である[5]。そのため、本稿は「約1.5〜1.6」の範囲で読む。いずれにせよ水より5〜6割重い。
では、そのような材料でできた木が、なぜ浮くのか。浮力は、水に沈んだ部分と同体積の水の重さ分だけ働く[3]。木が浮くのは、木全体の見かけの比重が1を下回るからで、材料の比重ではなく、材料に空気(空隙)がどれだけ混ざっているかで決まる。次章で、空隙の割合を数字にする。
2. すきまは、木の どれくらい?
2. スギは約4分の3、バルサは約9割が空気
2. 空隙率の目安=1−気乾密度÷1.5 ── スギ・キリ・バルサで概算する
計算で たしかめて みます。スギの 木は、水を 1と すると、重さが 0.38 くらいです[2]。木の ざいりょうは 1.5 なので、ざいりょうが しめるのは 0.38÷1.5 で、4ぶんの 1ほどです。
のこりの 4ぶんの 3ほどが、空気の すきまです。
とても 軽い バルサは、重さが 0.16 です[2]。ざいりょうは 10ぶんの 1ほどで、10ぶんの 9ほどが 空気に なります。
たとえば、水を すう まえの スポンジです。スポンジは、ぷくぷくした すきまが 大部分で、手に もつと ふわっと 軽いですね。木の 中も、スポンジに 少し にて います。ただし 木の すきまは、あなの 形が 細い くだの ように ならんで いるので、まったく 同じでは ありません。
密度から、空気の割合を計算する
木の重さは、水を1としたときの値(気乾密度)で表せます。気乾密度は、木が水分を約15%含んだ状態の値です[1]。北海道の資料に載っている値は、スギ0.38、キリ0.30、バルサ0.16です[2]。
材料の重さを1.5として、材料が体積に占める割合は「密度÷1.5」で出せます。1からそれを引けば、空気のすきまの割合です。これは材料を1.5と置いた計算で、目安の値です。
スギは、1−0.38÷1.5で約0.75。体積の約75%が空気です。キリは約80%、バルサは約89%になります。
軽さの正体は、すきまの多さ
この表にある気乾状態の木の重さの違いは、材料の違いよりも、すきまの割合の違いからきています。バルサが軽いのは、材料が軽いからではなく、中身のほとんどがすきまだからです。一方で、同じ体積なら、どの木の材料も水の約1.5倍重いのです。
体積の4分の3が空気だと聞くと、木が水に浮くのも納得できます。では、材料の割合が増えていくと、木はどうなるのでしょうか。
木の浮き方を数字にするには、空隙率を使う。気乾密度をρ、細胞壁の比重を1.5とすると、空隙率の概算は1−ρ÷1.5で求められる。ただしこれは、水分を約15%含む気乾密度を使い、細胞壁の比重を1.5と置いた目安であり、実際の空気の体積割合そのものではない。1.6を使えば値は少し小さくなる。気乾密度は水分約15%の状態の値で、完全に乾かした値ではない[1]。
北海道の資料の値(スギ0.38、キリ0.30、バルサ0.16)[2]から計算すると、スギは1−0.38÷1.5≒0.75(約75%)、キリは1−0.30÷1.5=0.80(約80%)、バルサは1−0.16÷1.5≒0.89(約89%)になる。
なお、解説サイトにはバルサの空隙を「9割以上」とするものがある。これは、バルサの密度を0.10程度とした場合の値に近い。使う値によって空隙率が変わるので、記事は1つの表(北海道の資料)の値にそろえて計算した。
ここで比べた木の軽さの違いは、主に空隙の割合から生まれる。ここまでで、木が浮く理由は説明できた。では逆に、空隙が少なければ木は沈むのか。
3. 水に しずむ 木も あるの?
3. 水に沈む木はあるのか ── 空気が3割あっても沈む
3. 気乾密度が1を超える樹種 ── ウバメガシ・リグナムバイタ
あります。ウバメガシと いう 木は、重さが 1.07 で、水より 少し 重いのです[2]。水に 入れると しずむ 木です。
もっと 重い 木も あります。リグナムバイタ(1.24)や、アフリカンブラックウッド(1.21)です[2]。
ウバメガシを 計算して みると、ざいりょうが 7わりほどで、空気は 3わりほど あります。空気が 3わりも 入って いても、水より 重くて しずむ のです。
ふだん 見る スギや ヒノキの 木は、しずみません。木が 水に うくか しずむかは、空気の わりあいが ある 数を こえるか どうかで 決まります。
北海道の資料にある、重い木
同じ北海道の資料には、水より重い木も載っています。ウバメガシは1.07、リグナムバイタは1.24、アフリカンブラックウッドは1.21、キングウッドは1.20です[2]。1を超えているので、水に沈む側です。
ケヤキは0.69、イスノキは0.90で、この値なら水に浮く側にとどまります[2]。この資料に載る樹種では、1を超える木は一部です。
空気が3割あっても沈む
ウバメガシで、先の計算をしてみます。材料の割合は1.07÷1.5で約71%、すきまは約29%。体積の3割近くが空気でも、残りの材料が重いために、全体が水より重くなるのです。リグナムバイタは材料が約83%で、すきまは約17%です。
木が浮くかどうかは、全体の重さが水より軽いかどうか、つまり、すきまの割合が約33%(1−1÷1.5)を超えるかどうかで決まる、といえます。
気乾密度が1を超える樹種は、北海道の資料で、ウバメガシ(1.07)、リグナムバイタ(1.24)、アフリカンブラックウッド(1.21)、キングウッド(1.20)が確認できる[2]。一方、ケヤキは0.69、イスノキは0.90で浮く側にある。この表の掲載例では、気乾密度が1を超える国産材としてウバメガシがある(アラカシ0.96のように、1に近い例もある)。
空隙率で考えると、ウバメガシは1−1.07÷1.5≒0.29(約29%)、リグナムバイタは1−1.24÷1.5≒0.17(約17%)になる。空隙が3割近くあっても、残る細胞壁が重いため見かけの比重は1を超える。
この関係を一般化すると、細胞壁の比重を1.5としたとき、気乾状態で浮くか沈むかの境目は、空隙率が1−1÷1.5≒33%の付近となる。ただし、これは細胞壁の比重を1.5とした試算で、1.6とみなせば境目は約38%に動く。また、気乾密度は水分約15%を含む値なので、水を吸えば見かけの比重は変わる。次章は、この「水を吸う」ことについて考える。
なお出典によって数字は少し異なる。たとえば学研の資料ではスギ0.40、ヒノキ0.49、マツ0.52、マホガニーの一部は1.06である[3]。北海道の資料のスギ0.38とは0.02ちがう。本稿は、数字の食いちがいを避けるため、計算には北海道の資料の値を使っている。
4. 水を すったら、木は どうなるの?
4. 空気のすきまが水で満ちたら、どの木も沈む
4. 最大含水率の試算 ── 空隙が自由水で満ちると見かけの比重はどうなるか
うく 木の すきまに、水が 入って いったら どうでしょう。スポンジが 水を すうと、おもくなって しずむ のと にて います。
すきまの 空気が ぜんぶ 水に 入れかわったと して 計算して みます。スギ(0.38)は 1.2 ほど、バルサ(0.16)は 1.1 ほどに なります。どちらも 1を こえるので、しずむ はずです。
ただし、これは 「すきまが ぜんぶ 水に なったら」の 計算です。ふつうの 木は、そこまで 水を すいません。だから、ふだんは 長い あいだ、うかんで いるのです。
水を すう 時間は、木の しゅるいや 大きさで 大きく ちがいます。どれくらいで しずむかは、数字では かけません。
すきまがすべて水になったら
木のすきまに、空気の代わりに水が入っていく場面を考えます。すきまがすべて水で満ちると、木は材料(約1.5)と水(1.0)だけからできていることになります。全体の重さは水より重くなり、どの樹種でも沈む計算です。
北海道立総合研究機構の資料の式で、すきまが水で満ちた状態の最大の水分量を出せます。スギ(0.38)では、乾いた木の重さの約224%、つまり木の2.2倍ほどの水が入り、全体で約1.23になります。バルサ(0.16)は約586%で、全体は約1.10です[1]。どちらも1を超えます。これは出典の式から私たちが計算した試算で、実際の木がここまで水を吸うとは限りません。
切りたての木は、すでに水を含んでいる
切ったばかりの木(生材)にも、水が入っています。水分の割合(含水率)は、乾いた木の重さに対する水の重さの割合です。スギは、外側の辺材で159%、内側の心材で55%、ヒノキは辺材153%、心材34%などと報告されています[1]。辺材と心材で大きく違うので、1つの数字では言えません。
水をたくさん含んだ木は重くなります。ただ、水に浮かべた木が実際に沈むまでにかかる時間は、樹種や大きさで大きく違います。この資料には、日数や年数の数字はありません。
水を吸った木が沈むかどうかは、最大含水率で試算できる。林産試験場の資料では、最大含水率=(1.5−全乾比重)÷(1.5×全乾比重)×100+28(%)と表される[1]。後ろの「+28」は、細胞壁に結合する水の分と考えられる。含水率は乾燥重量に対する水の割合なので、100%を超えることもある。
この式にスギ(全乾比重を0.38とする)を入れると、(1.5−0.38)÷(1.5×0.38)=1.965から約196.5%、これに28を足して約224%になる。このとき見かけの比重は0.38×(1+2.24)≒1.23である。バルサ(0.16)は約586%で、同様に約1.10になる。どちらも1を超えるので、理論上は空隙が水で満ちた木はどの樹種でも沈む。これは出典の式からの計算で、実際の木がここまで水を吸うとは限らず、「必ず沈む」とは言えない。
では、切りたての木はどうなのか。生材含水率の表では、スギは辺材159%・心材55%、ヒノキは辺材153%・心材34%、トドマツ(造林木)は辺材219%・心材82%と、辺材と心材の差が大きい[1]。辺材の値は、スギで最大含水率の試算(約224%)に近い。切りたての辺材は、水がかなり入った状態といえる。一方、心材は水の量が少なく、同じ木でも部位によって浮きやすさが違うと考えられる。
沈むまでの時間(日数・年数)を示す一次資料は、ここでは得られなかった。この章の数字は、あくまで水が満ちた場合の上限的な試算である。
5. 長く 水に つかった 流木は、どうして しずむの?
5. 長く水につかった流木は、なぜ川底や湖底に沈むのか
5. 長く水につかった流木はなぜ沈むのか ── 沈木の研究と、水中の木が腐りにくい理由
じっさいに、川や 湖で 長いあいだ 水に つかった 流木は、水を すって 重くなり、そこに しずむ ことが あります[4]。京都大学の ぼうさい の けんきゅうでは、これを 「ちんぼく」と よんで います。
しずんだ 木は、大きな あめで また ながされる ことが あるので、ダムの ためにも しらべられて います。
水の 中の 木は、くさりにくい とも いわれます。水の 中は 空気の 中より、さんそが 少ないからです[1]。むかしは、わざと 丸太を 水に ひたして おく ほうほうも ありました。
水を吸って沈んだ木は「沈木」と呼ばれる
川や湖に落ちた流木のうち、長い間水を吸って比重が増したものは、川底や湖底に沈みます。京都大学防災研究所の研究では、こうした木を「沈木」と呼び、再び洪水で流されてダムのゲートなどをふさぐ可能性があるため、動き方が研究されています[4]。
これまで見てきたことが、この研究の前提にあります。木は浮くはずの重さでも、すきまに水が入り続ければ、いつか沈む場合があるのです。ただ、この研究では、沈むまでの具体的な時間は扱われていません。
水の中は、木が腐りにくい
水にすっかり浸かった木は、腐りにくい状態になります。水中の酸素の量は、空気中の約20分の1(0℃のとき)と少ないためです[1]。丸太を水中に貯める「水中貯木」は、この性質を使った保管法です[1]。
京都大学防災研究所の研究発表(2022年)は、長時間水を吸って比重が増加した流木が川底や湖底に沈むと述べ、これを「沈木」と呼ぶ。沈木は再び洪水で掃流され、ダムゲートや暗渠の閉塞を起こすおそれがあるとされ、その掃流特性が基礎研究されている[4]。前章の試算は、空隙が水で満ちた場合の理論上の値である。沈木の研究は、長時間水を吸った流木が沈む現象を扱っている。
ただし、この研究には沈むまでの時間は書かれていない。吸水の速さは、樹種・大きさ・水の温度で大きく変わると考えられる。
水中の木が腐りにくいのは、水中の酸素量が空気中の約20分の1(0℃)しかないためである。水中貯木のように水に完全に浸かった状態は腐りにくいとされる[1]。
6. 木ぎれを 水に うかべて みよう
6. 家の木ぎれを水に浮かべて、浮き方を見くらべる
6. 浮き方を観察する ── 家の木片と、資料の読み方
おうちに ある 木で、たしかめて みましょう。わりばし、木の つみ木、えんぴつ など、ちがう 木を 2〜3 こ えらびます。
水を 入れた ボウルに ならべて うかべます。水の 上に 出て いる ぶぶんが 大きいのは どれでしょう。木の しゅるいで ちがうかも しれません。
わりばしを 水に 入れて、ひとばん おいて みるのも おもしろい です。つぎの 日に ようすを 見て みましょう。水を すった 木は、すこし ちがう かもしれません。
水を つかう ときは、ゆかが ぬれないように、おうちの 人と いっしょに して ください。
家にある木で見くらべる
家にある割りばしや木の積み木など、種類の違う木を2〜3個選び、水を入れたボウルに浮かべて見比べます。水の上に出ている部分が大きいほど、軽い(すきまが多い)木だと考えられます。
割りばしを水に入れて、一晩置いてみるのも一つの方法です。翌日、浮き方や色、手ざわりが変わっているでしょうか。キッチンのはかりがあれば、水につける前と、表面の水をふいた後で重さを比べることもできます。
水を使うので、床がぬれないよう、家の人と一緒にしてください。木を水につけるだけの実験なので、短い時間で沈むとは限りません。
資料を読むなら
この記事の数字のもとは、北海道立総合研究機構・林産試験場の「林産試だより」と、北海道の樹種別気乾密度の表です。式と表を見比べると、空隙率の計算が自分でもできるようになります。出典欄のリンクから読めます。
家にある割りばしや積み木など、種類の異なる木片を水に浮かべ、水面上に出る部分を比べる観察ができる。浮力の考え方では、水面下の体積が大きいほど、見かけの比重が大きいことを意味する[3]。割りばしを一晩水に入れて、表面の水をふいた後に重さを比べれば、吸水の影響を数字で見ることもできる。数日間つけても沈むとは限らない点には注意する。水を使うので、床がぬれないよう、家の人と一緒にする。
資料は、林産試験場の「林産試だより2012年12月号」(空隙率・最大含水率の式)[1]、北海道の樹種別気乾密度の表[2]、長澤(1939)の真比重の測定[5]、京都大学防災研究所の沈木の研究[4]が出発点になる。自分で表の密度を1−ρ÷1.5に入れると、この記事の空隙率を再現できる。次の問いは、水を吸った後に、細胞壁の中の水と空隙の水がそれぞれ何割ずつかを、式から分けて考えることである。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
数字や用語は次の資料で確かめました。空隙率や最大含水率の計算は、これらの数字をもとに、この記事で計算した試算です。
- 北海道立総合研究機構 林産試験場「林産試だより2012年12月号 木材と水の関係」 https://www.hro.or.jp/upload/7887/1212-2.pdf (細胞壁の比重・最大含水率・生材含水率・水中貯木)
- 北海道「樹種別の気乾密度の値の例」(木材工業ハンドブック改訂4版・森林総合研究所監修より) https://www.pref.hokkaido.lg.jp/fs/6/5/1/9/5/1/3/_/%E6%A8%B9%E7%A8%AE%E5%88%A5%E3%81%AE%E6%B0%97%E4%B9%BE%E5%AF%86%E5%BA%A6%E3%81%AE%E5%80%A4%E3%81%AE%E4%BE%8B.pdf (樹種ごとの気乾密度)
- 学研教育情報資料センター「なぜなに学習相談 木材はなぜほとんど水に浮くの」 https://kids.gakken.co.jp/box/nazenani/pdf/11_buturi/X1120020.pdf (浮力の考え方・別の出典の数字)
- 京都大学防災研究所 研究発表講演会 C201「部分埋没した沈木の掃流特性に関する基礎研究」(2022) https://www.dpri.kyoto-u.ac.jp/hapyo/22/pdf/C201.pdf (沈木)
- 長澤武雄「木材粉の眞比重に就て」九州帝国大学農学部学芸雑誌8(4) https://catalog.lib.kyushu-u.ac.jp/opac_download_md/20933/p321.pdf (真空法による真比重の測定)
なおした ところ
更新履歴
更新履歴(改版の記録)
- 初版を公開。
- 中学生向けの題名を、日常の疑問が先に来る形に見直した。
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