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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

せかいの みんぞく いしょうには、くらしに あわせた どんな くふうが あるの?

世界の民族衣装には、暮らしに合わせたどんな工夫があるのか ── 砂漠の黒いローブから北極の毛皮服まで

民族衣装は暮らしにどう答えてきたのか ── 砂漠の黒いローブ、北極の毛皮服から国際会議の正装まで

分野:歴史・文化

黒い ローブは、白い ローブより 日ざしの ねつを 2.5ばいも すいこみます。ところが、さばくで ためした 人は、白い ローブの 人より あつく ならなかった、と むかしの じっけんで ほうこくされました。

どうして でしょう。この ふしぎを 入口に、さむい 北の 毛皮の ふくや、布ぬのを まく ふくまで 見て いくと、ふくの かたちは、その 土地の くらしへの こたえに なって いる ことが わかります。

1980年、砂漠で暮らす人たちの黒いローブを調べた実験が、科学雑誌「ネイチャー」に載りました。黒いローブは、白いローブより太陽の熱を約2.5倍も吸いこむのに、着ていた人は、白を着た人より暑くならなかった、という報告です[1]。

黒は熱を吸うはずなのに、どうして暑くならなかったのでしょう。この問いを入口に、北極の毛皮服、馬に乗る人のデール、1枚の布を巻くサリー、国連の会議で着られる民族衣装までを見ると、服の形が暮らしへの答えになっていることが分かります。

1980年、アミラム・シュコルニクらは、砂漠の黒いローブは白いものより太陽の放射熱を約2.5倍吸収するのに、着ている人は白を着た人より暑くなかった、と科学誌「ネイチャー」で報告した[1]。ただし、これは1人が協力した約30分の実験であり、黒のほうが涼しいという結果ではない。

では、吸った熱はどこへ消えたのか。この問いから、極寒の地の毛皮服、馬上の暮らしのデール、1枚の布を巻くサリー、インドネシアのバティック、さらに国連の会議で着られる民族衣装まで、複数の資料を読み比べると、民族衣装が気候と暮らしへの具体的な答えであり、いまは「正装」としても使われていることが分かる。

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1. 黒い ふくなのに、なぜ あつく ならないの?

1. 黒いローブは熱を吸うのに、なぜ暑くならなかったのか

1. 吸った熱はどこへ逃げたのか ── 黒いローブのゆったりした作り

黒い ふくは、日なたで ねつを たくさん すいます。黒い ふくを きた ことが ある 人は、むねが あつく なった ことが あるかも しれません。

ところが さばくで くらす 人の 黒い ローブを しらべたら、白い ローブの 人より あつく ならなかった、と ほうこくされました。ただし、きょうりょくした 人は 1人で、かかった 時間も 30分ほどの じっけんです。

せつめいの 1つは、ローブが ゆったり して いる こと。ふくと 体の あいだに 空気が ながれて、ねつが にげるのでは、という せつめいの 1つです。まだ「きっと そう」と 言えるほどでは ありません。

砂漠の暑さと聞くと、白い服のほうが涼しそうに思えます。ところが1980年の実験では、黒いローブは白いローブより太陽の熱を約2.5倍吸収したのに、黒を着た人は白を着た人より暑くならなかった、と報告されました[1]。ただし、協力したのは1人で、時間は約30分でした。

報告をした研究者たちが考えた説明は、ローブが体にぴったりしていないことです。ゆったりした服の中を空気が通り抜けるので、黒い布が吸った熱が、肌に届く前に外へ逃げるのではないか、という考えです[1]。これは提案された説明で、確定した答えではありません。

湾岸地域の男性の装いも、足首まで届く長いトーブに、頭にかぶる布、それを押さえる黒い輪という組み合わせで紹介されています[2]。どれも体にぴったりではなく、ゆとりのある装いです。色よりも、布と体のあいだの空きかたが大事なのかもしれません。

常識的には、白は日射を反射し、黒は吸収するので、砂漠では白が有利だと考えやすい。ところがシュコルニクらの報告によると、黒いローブは白より太陽の放射を約2.5倍吸収したが、黒を着た人の暑さは白を着た人より大きくならなかった[1]。ここでいえるのは「黒でも暑くならなかった」までで、「黒のほうが涼しい」ではない。また、この実験は1人の協力者による約30分のもので、一般化できる範囲は限られる。

著者らが提案した説明は、ゆったりしたローブの中の空気の動きである。ローブと肌のあいだの空気があたためられて上に抜ける「ふいご作用」や「煙突効果」のような流れが起これば、黒い布が余分に吸った熱は肌に届く前に外へ運ばれる、という考えだ[1]。これも説明の提案であり、確定ではない。

この説明が正しければ、効いているのは色より「布と肌のあいだに空気の通り道があること」になる。湾岸地域の男性の装いについて、大学や商業の解説資料は、足首まである長袖のトーブ、頭に巻く布(ゴトラ)、それを留める黒い輪(イカール)という構成を紹介している[2]。これは装いの構成の紹介であり、空気の通りを実験で確かめた話ではない。

では、熱を逃がすのではなく、逆に熱をためたい土地では、服はどう変わるのか。次は北極に行ってみる。

2. こおる ほど さむい 北では、どんな ふくを きるの?

2. 氷点下20度の室内で、イヌイットの毛皮服を試した研究

2. 氷点下約22℃で比べた、カリブー皮の服と市販の極寒用の服

こんどは 反対に、すごく さむい 北の くにです。北きょくの イヌイットの 人たちは、トナカイの なかまの カリブーの 毛皮で、ふゆの ふくを 作って きました。

ふくは 2まい かさねで、中がわの 毛は 体の ほうに、外がわの 毛は 外に むけます。そうして、体と ふくの あいだに あたたかい 空気を ためる、と しょうかいされて います。

2020年の 研究では、この ふくは、今の さむい 場所むけの ふくと 同じくらい あたたかく、ぐんたいの ふゆの ふくより よい けっかでした。ただし、へやの 中の じっけんで、人は ふくごとに 2人です。

黒いローブが熱を逃がす工夫だとすれば、北極の毛皮服は、熱を逃がさない工夫です。イヌイットの冬の毛皮服は、内側は毛を体のほうに、外側は毛を外に向けた2枚重ねで、体と服のあいだに暖かい空気をためる、と紹介されています[3]。ただし、狩りや旅など、場面によって形はちがいます。

20世紀初めの、中央北極のイグルーリクの人たちのカリブー皮の上着は、動物の腱を糸にして手で縫い、かぶって着る形でした。後ろの裾が前より長く作られていて、狩りや罠の仕事をするときの暖かさのためと紹介されています[5]。

2020年には、イヌイットが縫ったカリブー皮の服を、氷点下約21〜23度の、風のない(静止空気の)室内で調べた研究が出ました。結果は、現代の極寒用の市販の服と同じくらいの保温で、軍の冬用の服より良い成績でした。かぶって着る形なので、前を開けるファスナーの部分から熱が逃げないことも理由の1つとされています[4]。ただし、各服で協力したのは2人で、実際の極地での優劣までは言えません。

砂漠のローブが、余分な熱を空気の流れで逃がす服だとすれば、北極の服は、熱を逃がさない服である。イヌイットの冬の毛皮服は、内側は毛を体側に、外側は毛を外側に向けた2枚重ねとされ、体と服のあいだに暖かい空気をためる構造だと紹介される[3]。ただしこの二重の構造は、すべての地域・時代に共通するとは言えず、狩りや旅の場面で形は変わる。

20世紀初めの中央北極のイグルーリク・イヌイットのカリブー皮の上着は、腱を糸にして手縫いされ、かぶって着る形で、後ろが前より長く作られていた[5]。後ろが長い理由として、狩りや罠の作業中の保温が挙げられている。

この服が実際にどれだけ暖かいかを調べたのが、2020年の研究(Hill ほか)だ。氷点下約21〜23℃の静止空気の室内で、イヌイットが縫ったカリブー皮の服は、現代の極寒用の市販服(表面温度の測定値は約マイナス22.1〜22.7℃)と同程度に保温し、軍の冬用の服(約マイナス18.9〜20.0℃)より良い結果が出た。かぶって着るのでファスナー部分から熱が逃げないことも、理由として挙げられている[4]。ただし被験者は各服2人で、室内実験にすぎない。極地での実際の優劣を言い切る根拠にはならない。

気温から選ばれる服の形があるなら、「どう暮らすか」から選ばれる形もあるはずだ。次は、馬の背の上で暮らす人々の服を見る。

3. 馬に 乗る 人の ふくは、どんな 形?

3. 馬に乗る暮らしから生まれたモンゴルのデール

3. 馬上の暮らしが形を決めたデール ── モンゴル帝国の時代の記述から

モンゴルの 人の ふくは、デールと いいます。ながい 上着で、むねの 左がわで かさねて、ボタンや ひもを 右の わきの 下で とめます。

むかしの モンゴルの 人は、よく 馬に 乗って 動きました。それで、ふくは 動きを じゃませない 作りでした。ひろい 皮の おびには、ものを 入れる ふくろも ぶらさげました。

そうして 見ると、さばくの ローブも、北の 毛皮の ふくも、デールも、どれも「その 土地の くらしで こまらない 形」に なって います。

気候だけでなく、「どう動くか」も服の形を決めます。モンゴルのデールは、1枚つづきの長い上着を胸の左で重ね、ボタンか紐を右脇の下で留める形です[6]。

資料によると、モンゴル帝国の時代の人々は、馬に乗って移動することが多く、服は動きを妨げない作りである必要がありました。広い革の帯を腰に巻き、そこに物を入れる小さな袋を下げることもありました[6]。これは帝国の時代の記述で、今のデールの説明にそのまま当てはめてよいかは分かりません。

砂漠の暑さ、北極の寒さ、馬上の生活。ちがう暮らしのどれにも、服の形がきちんと答えているように見えます。では、形のちがいとは別に、布そのものの使い方にはどんな工夫があるのでしょうか。

気候の次は、行動が服の形を決める例である。モンゴルのデールは、1枚つづきの長い上着で、胸の左側で打ち合わせ、ボタンか紐を右脇の下で留める[6]。モンゴル帝国の時代の人々は馬に乗って移動することが多く、服は動きを妨げない作りが求められた。幅の広い革の帯には、物を入れる小袋を下げることもあった[6]。

ただしこれはモンゴル帝国の時代についての記述であり、現代のデールの特徴として同じように言えるかは、この資料だけでは判断できない。

ここまでの3例では、色、毛の向き、打ち合わせの位置と、服の形が気候や行動に合わせて決まっていた。では形ではなく、布の使い方に注目すると、どんな工夫が見えるか。インドのサリーと日本の着物を、布の寸法から比べる。

4. サリーと 着物は、布ぬのを どう 使うの?

4. サリーと着物を、布の大きさで比べると

4. サリーと着物の布は、面積で比べるとどう違う?

インドの サリーは、ながい 1まいの 布ぬのを、からだに まいて きる ふくです。ながさは 5メートルから 8メートルくらいと いわれます。

日本の 着物は、はばが 36センチ、ながさが 12メートルほどの 反物(たんもの)を、まっすぐ たちきって、ぬい合わせて 作ります。

ながさだけ 見ると、着物の 反物の ほうが ながい ですね。でも はばが ほそいので、ひろさに すると、サリーの ほうが 大きく なる、と 計算できます。

インドのサリーは、長さ5〜8mほどの1枚の布を、短いブラウスとペチコートの上から、腰と肩に巻いて着ます[7]。布の幅や長さは、地域や種類で変わります。

オーストラリアの美術館が所蔵する3枚のサリーを実際に測った記録では、幅は110〜121cm、長さは501〜602cmでした[8]。一方、日本の着物の反物は、標準で幅約36cm、長さ約12mです。1反で着物1枚ぶんで、布を直線に裁って仕立てます[9]。

長さだけを見ると、12mの反物のほうが長いのですが、幅がとても細いのです。かけ算してみると、サリーの実測3枚は、おおよそ5.5〜7.3平方メートル。反物の標準は約4.3平方メートルです。サリーは1枚のまま巻くので、広い布を使います。着物は細い布を裁って縫い合わせて形にします。同じ「1枚の布」でも、使い方がちがいます。

サリーはインドで、国を象徴する服にもなっています。展覧会の紹介記事によると、初の女性首相が日常的に着ていたそうです。選挙では、政党名の入ったサリーを支持者が着ることもあります[10]。

長さは反物のほうが長いのに、布の面積はサリーのほうが大きい。これを寸法から確かめる。サリーは、長さ5〜8m程度の1枚の布を、ペチコートと短いブラウスの上から腰と肩に巻いて着る巻衣(まきい)で、幅と長さは地域や種類によって異なる[7]。オーストラリアのビクトリア国立美術館が所蔵する3枚の実測値は、幅110.0〜121.0cm、長さ501.0〜602.0cmだった[8]。

一方、着物の反物(たんもの)は、標準で幅約36cm、長さ約12mとされ、1反で着物1枚ぶんになる。布は直線に裁って縫い合わせる[9]。ここで面積を計算すると、反物は0.36m×12mで約4.3平方メートル。サリーの実測3枚は、最小がおおよそ1.10m×5.01mで約5.5平方メートル、最大が1.21m×6.02mで約7.3平方メートルとなる。つまり3枚の実測と標準の反物を比べる限り、反物のほうが長くても、幅が約3分の1しかないので、布の量はサリーのほうが多い。これは、手元の資料から割り出した目安であり、サリーも反物も寸法には幅がある。

同じ「1枚の布」という言い方でも、使い方は逆に近い。サリーは広い布を1枚のまま体に巻いて形を作る。着物は細長い布を直線に裁って縫い合わせ、体を包む形にする。展覧会の紹介でも、一枚の布を巻き付けて衣服の形になる「巻衣」として、サリーは風呂敷などとともに扱われている[7]。

サリーは、インドで国を象徴する服にもなっている。民博の展覧会の紹介記事によると、初の女性首相が日常的に着ており、選挙では政党名入りのサリーを支持者が着る[10]。服が気候や暮らしだけでなく、人の集まりの目印にもなることが分かる。

布の使い方に加えて、布に「柄をつける技法」が受けつがれてきた例もある。

5. バティックの ふくは、いつ きるの?

5. 熱いろうで柄を描くバティックは、毎日の服でもある

5. バティック ── 2009年にユネスコが記載した、日常でも着られる技法

インドネシアの バティックは、あつい ろうで 布ぬのに 点や 線を かいて、そめわける ぎじゅつです。そめたい ところに ろうを ぬると、そこだけ そまらないのです。

2009年に、ユネスコの 「むけいぶんかいさん」に のりました。ふだんの ふくの がらは、しごとや がっこうでも きられます。とくべつな がらは、けっこんしきなどで きます。

インドネシアのバティックは、熱いろうで布に点や線を描き、植物などの染料で染め分ける技法です。ろうを置いた部分は染料をはじくので、そこだけ染まらずに模様として残ります[11]。

2009年に、ユネスコの無形文化遺産(代表一覧表)に記載されました。ユネスコの資料によると、日常用の柄の服は仕事や学校の場でも着られ、特別な柄は結婚式などの場面で着られます[11]。同じ技法の服が、毎日の服にも、特別な日の服にもなっているのです。

では、そうして暮らしの中で着られてきた服が、国どうしが集まる会議の場に出ると、どうなるのでしょうか。

バティックは、熱いろうで布に点や線で模様を描き、ろうが染料をはじく性質を使って染め分ける技法である。植物性などの染料で染める[11]。日本の着物のような、形に特徴がある服とちがい、バティックは「布の柄をどう作るか」に特徴がある。

2009年に、ユネスコの無形文化遺産の代表一覧表に記載された。ユネスコの資料によると、日常用の柄の服は仕事や学校でも着られ、特別な柄は結婚式などで着られる[11]。同じ技法の服が、毎日の服にも、特別な日の服にもなる。

こうした暮らしの服は、国際会議のような場で着られると、どんな意味をもつのか。次は、国連での2つの例を見る。

6. こくれんの かいぎで、みんぞくいしょうを きるの?

6. 国連の会議場で民族衣装を着るとき

6. 国連の会議で着られる民族衣装 ── 安全保障理事会と人権理事会の例

2019年5月、こくれんの かいぎで、インドネシアが ぎちょうの 月を むかえた とき、多くの 代ひょうが バティックを きた、と つたえられて います。

ジュネーブの こくれん人けんりじかいでは、3月の かいぎの ときに、まい年「みんぞくいしょうの 日」が あります。かいぎのあとは、むかしからの 食べものや のみものを みんなで わけあいます。2024年には、日本の 代ひょうも 着物で かいぎに 出ました。

民族衣装が、国際会議で着られることもあります。2019年5月、国連の安全保障理事会の会議で、インドネシアが議長国を務める月を祝って、多くの代表団がバティックを着た、と報じられました。事務総長は、インドネシアの織物(テヌン)を着たそうです[12]。

スイスのジュネーブにある国連人権理事会では、3月の会期中に毎年「民族衣装の日」があります。代表団が民族衣装で会議に出て、夕方は伝統の食べ物や飲み物を分け合うそうです。2024年3月8日には、日本政府代表部の報告によると、日本の代表団が着物で本会議などに出ました[13]。

砂漠のローブ、北極の毛皮服、デール、サリー、バティック、着物。気候や暮らしに答えてきた服が、国どうしの会議で、その土地を示す服として着られることもあります。

気候や暮らしに合わせてできた服は、国際会議の場では、その国や地域を示す服として着られる。2019年5月、国連安全保障理事会でインドネシアが議長国を務める月を祝う会議があり、多くの代表団がバティックを着て出席したと報じられた。事務総長は、インドネシアの織物(テヌン)を着たという[12]。

ジュネーブの国連人権理事会では、3月の会期中に毎年「民族衣装の日」が設けられ、代表団が民族衣装で会議に出て、夜に伝統的な食べ物と飲み物を分け合う。在ジュネーブ日本政府代表部の報告では、2024年3月8日に日本代表団が着物で本会議などに出席した[13]。

ただし、バティックと民族衣装の日の2例だけで、各国の正装の全体を言うことはできない。それでも、砂漠のローブから着物まで、暮らしの条件に合わせた服が、いまは国どうしの顔合わせの場で自分の国を示す服になっている、という筋は、2つの例からうかがえる。

7. 日なたで ぬのを さわって みよう

7. 黒と白の布を日なたに置いて、手でさわってみる

7. 黒い布と白い布を日なたに置いて、実験の問いを自分で考える

日の あたる 場しょに、黒い 布ぬのと 白い 布ぬのを 10分 おいて みよう。そのあと、手の こうで そっと さわって、どちらが あたたかいか くらべて みよう。

やけどしないように、つよい 日ざしの 中に 長く おかない こと。そして、大人の 人に 声を かけて から やって みよう。

もし 黒い ほうが あたたかく ても、さばくの じっけんの 人が あつく ならなかったのは ふしぎです。ふくの 形も、きっと 大事なのでしょう。

家に黒い布と白い布があれば、日なたに10分ほど置いて、手の甲でそっと触ってみてください。たぶん黒のほうが、布の表面は暖かく感じるはずです。強い日ざしの中に長く置かないこと、やけどに気をつけることを守って、大人に声をかけてからやりましょう。

布の表面は黒のほうが熱くなっても、砂漠の実験では、着ていた人が暑くならなかったと報告されました。そこで考えたいのは、服の中の空気の通り道です。ゆったりした服と、体にぴったりの服では、同じ黒い布でもどんな差が出るでしょうか。実験はしなくてよいので、予想してみてください。

自分の町の祭りの服や、おじいさん・おばあさんの持つ服が、どんな暮らしに合わせた形なのかを聞いてみるのもよさそうです。国連の「民族衣装の日」の話は、在ジュネーブ日本政府代表部のウェブサイトで、2024年の報告を読むことができます[13]。

家に黒い布と白い布があれば、日なたに10分ほど置いて、手の甲で触れて温度を比べてみる。表面の温度は黒のほうが高くなりやすいが、これは「布の表面」の話であり、着た人の暑さとは別の問いである。強い日ざしの下に長く置かないこと、やけどを避けることを守り、大人に声をかけてから行う。

シュコルニクらの実験でも、黒いローブの吸収は白の約2.5倍でありながら、着た人の暑さは増えなかった[1]。この差を埋めるのが、ゆったりした服の中の空気の動きという説明の提案だった。体にぴったりした服と、ゆったりした服では、何が違いを生むのか。用意しなくてよいので、自分で予想してみるとよい。人の体で試すことはせず、確かめるなら布の表面の比較にとどめる。

国連の「民族衣装の日」は、在ジュネーブ日本政府代表部の2024年の報告が公開されている[13]。自分の住む地域の祭りの服や制服が、どんな暮らしや気候に合わせた形なのかを、家族に聞くことから調べを始められる。

しらべた ところ

参考にした情報源

参考にした情報源

出典について:学術誌(Nature、Arctic)、国立民族学博物館や国立の美術館、ユネスコ、日本政府の在外公館、大学・歴史事典・報道などの解説を使いました。数字や年号は、各資料が示したものです。

  1. Shkolnik, A. ほか, Nature 283:373(1980)(ベドウィンの黒いローブの研究)。https://www.nature.com/articles/283373a0 (黒いローブの熱の吸収と、着た人の暑さ。要旨で確認)
  2. イリノイ大学 CSAMES の中東の服装の解説資料。https://csames.illinois.edu/document/28 (湾岸地域の男性の装いの紹介)
  3. Smarthistory「Arctic clothing」。https://smarthistory.org/arctic-clothing (イヌイットの2枚重ねの毛皮服)
  4. Hill ほか, Arctic 73(1)(2020)。https://journalhosting.ucalgary.ca/index.php/arctic/article/view/69909 (カリブー皮の服の保温の実験)
  5. Canada's History「Caribou Comfort」。https://canadashistory.ca/explore/first-nations-inuit-metis/caribou-comfort (20世紀初めのイグルーリクの上着の作り)
  6. World History Encyclopedia「Clothing in the Mongol Empire」。https://www.worldhistory.org/article/1455/ (モンゴル帝国の時代の服)
  7. 民博アートコモンズ「一枚の布―まとう・つつむ―」展の紹介。https://www.nact.jp/artcommons/user/detail/9016 (サリーの大きさと巻衣)
  8. NGV「Stories of Saris」。https://www.ngv.vic.gov.au/essay/stories-of-saris/ (サリー3枚の実測値)
  9. 東京学芸大学 辞典項目「反物」。https://www.tkgje.jp/entries/24500/24596_tanmono.html (反物の標準の寸法)
  10. 神戸新聞「躍動するインド世界の布」展の記事(2021)。https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/202112/0014920034.shtml (インドでのサリーの位置づけ)
  11. UNESCO「Indonesian Batik」。https://ich.unesco.org/en/RL/batik-of-indonesia-a-living-tradition-00170 (バティックの技法と2009年の記載)
  12. Tempo「UN delegations wear batik at UNSC session」。https://en.tempo.co/amp/1203540/united-nations-delegations-wear-batik-at-unsc-session (2019年の安全保障理事会での報道)
  13. 在ジュネーブ日本政府代表部「National Dress Day」(2024)。https://www.geneve-mission.emb-japan.go.jp/itprtop_en/event_20240308.html (国連人権理事会の民族衣装の日)

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