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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

おとなに なってからでも、あたらしい ことは おぼえられるの?

大人になってから新しいことを学ぶのは、もう手遅れなのか

学習の臨界期を過ぎた大人の脳は、どこまで変わるのか:言語・視覚・高齢者の研究から

分野:からだ

55さい いじょうの 人たちが、子どもの ように、いろいろな ことを いっしょに まなび、はげまされながら つづけました。すると 1ねんほどで、大学生と おなじ テストを した とき、いくつかの 点数が 大学生に ちかく なった、と 大学が 発表した ことが あります。

え、おとなの 脳のうは もう かわらないんじゃ ないの? そう 思う 人も いるでしょう。この ページを 読むと、「ここまで」と いわれる じきの ほんとうの いみと、おとなの 脳のうが かわった れいが わかります。

55歳以上の人たちが、子どもの学び方をまねて、複数のことを同時に、励まされる環境で学んだところ、1年後、大学生が受けたのと同じテストのいくつかの得点が、大学生に近づいた。アメリカの大学がそう発表したことがあります[8]。

「学習には臨界期があって、過ぎたら手遅れ」という話を聞いたことがある人は多いはずです。それなら、この結果はどういうことでしょうか。この記事を読むと、臨界期が「扉が閉まる」境目ではない理由と、大人の脳が実際に変わった例が分かります。

55歳以上の高齢者が、子どもの学習環境にならって複数の課題を同時に、励まされる条件で学んだところ、1年後、同じテストを受けた大学生に近い水準までいくつかの認知課題の得点が上がったと、カリフォルニア大学リバーサイド校が発表している[8]。一方で、外国語の文法を母語話者並みに身につけるには10歳ごろまでに始める必要があるという研究もある[1]。二つはどう両立するのか。

この記事を読むと、臨界期と敏感期の区別、臨界期を始める神経細胞と止める側の知見、成人の脳が実際に変化した事例から、臨界期をめぐる確かなことと残された問いが分かる。

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1. えいごは 何さいから はじめると、いいの?

1. 外国語の文法は、何歳から始めると身につきやすいのか

1. 文法の習得に年齢の壁はあるか:約67万人のデータが示す10歳と17〜18歳

「ことばは、小さい うちに はじめる ほうが いい」と、よく いわれます。ほんとうでしょうか。

アメリカの 大学の けんきゅうチームは、およそ 67万人の データを しらべました。えいごの ぶんぽうを まなぶ 力が いつまで たかいかを みる ものです。

わかった ことは 2つ あります。1つめ。えいごの ぶんぽうを、えいごを はなす 人と おなじ くらい 身につけたいなら、10さい ごろまでに はじめる のが いい。2つめ。ただし ぶんぽうを まなぶ 力そのものは、思って いたより ずっと 長く、17〜18さいごろまで たかいままだった、と いう ことです。

つまり、10さいを すぎたら ダメ、と いう わけでは ありません。力が 少しずつ かわって いく ようすが 見えて きたのです。

外国語は小さいうちに始めたほうがよい、とよく言われます。これを大規模なデータで調べた研究があります。アメリカのMITなどの研究チームは、約67万人のデータから、文法を学ぶ力がいつまで高いままなのかを調べました[1]。

結論は二つです。英語の文法を母語話者のようなレベルまで身につけたいなら、10歳ごろまでに学び始めるのがよい。そして、文法を学ぶ力そのものは、予想よりずっと長く、17〜18歳ごろまで高いままです[1]。

つまり「10歳まで」は「母語話者並み」という高いゴールに届くための目安で、そこを過ぎたら学べなくなる、という意味ではありません。年齢の影響はありますが、10歳でぴたりと止まる話ではありません。

なぜ17〜18歳ごろなのか、体の変化なのか暮らし方の変化なのかは、はっきり分かっていません。そもそも、この「期間」はどんな性質のものなのでしょうか。

外国語は幼いうちに始めるほど有利だとよく言われるが、その「いつまで」を実データで確かめた研究がある。MITなどの研究チームは、約67万人のデータから、文法の学習能力が年齢とともにどう変わるかを調べた[1]。

結論は二つある。母語話者に近い英語の文法知識を得るには10歳ごろまでに学習を始める必要があり、一方で、新しい言語の文法を学ぶ力そのものは、予想よりずっと長く、17〜18歳ごろまで高いまま続く[1]。前者は「母語話者並み」という到達点の高さ、後者は「学ぶ力」の持続を問題にしているので、矛盾しない。10歳は高い到達点のための目安であり、学べなくなる境目ではない。

ただし、17〜18歳ごろに力が下がり始める理由は、生物学的な変化なのか社会的な要因なのかが決まっていない。年齢と能力の関係は見えていても、原因までは分かっていない。そこで次の問いが出てくる。この「ある時期に学びやすさが変わる」現象は、脳の中でどう扱われているのか。

2. 「ここまで」の じきは、とびらが しまる ことなの?

2. 臨界期は、扉が閉まる時期なのか

2. 臨界期と敏感期:不可逆の線か、なだらかな変化か

「りんかいき」と いう ことばを 聞いた ことが あるでしょうか。ある ことを まなぶ 力が、とくに つよく はたらく じきの ことです。

たとえば 人の 目の 「みる 力」は、8さいごろまでが その じきだと 考えられて います。この じきに、ものを 見る しくみが、できあがって いくのです。

では、その じきを すぎたら、とびらが ガチャンと しまって、もう まなべないの? そう おもいがちですが、けんきゅうしゃの せつめいは ちがいます。

「りんかいき」は、せまい 期間に、あとから もとに もどせない ような へんかが おきる ことを いいます。一方で 「びんかんき」と いう 言い方も あって、これは まなびやすさが、すこしずつ かわって いく じきです。「びんかんき」の あとも、まなぶ ことは できると、せつめい されて います。きく ちからでも、おなじ ことが いわれて います。

とびらが しまる というより、ゆるやかな さかみちに 近い、と 考えると わかりやすいです。

臨界期という言葉は、「ある時期を過ぎると学べなくなる」という意味で使われがちです。しかし研究者の使い方は、もう少し細かく分かれています。

ヒトの視覚の臨界期は、8歳前後までと考えられています[2]。この時期は、目から入る情報をもとに、ものを見る回路が整っていく時期です。

学術論文では、「臨界期」と「敏感期」が区別されます。臨界期は、短く区切られた時期のあいだに、あとから元へ戻せないような変化が起きる場合を指します。敏感期は、環境からの刺激に対する感受性が、徐々に変わっていく時期です[5]。そして、聴覚の学習や可塑性は、敏感期のあいだだけでなく、その後にも起こりうるとされています[5]。

つまり、世間で言う「臨界期」の多くは、実は「敏感期」に近い、扉が閉まるのではなく坂のように変わる時期だと考えられます。ただし、この区別は研究者の整理の仕方で、日常では「臨界期」の一語で呼ばれることも多いので、言葉に出会ったら中身を確かめるのが大切です。

では、その坂は脳の中で、だれがつくっているのでしょうか。

「臨界期を過ぎると学べない」という通俗的な理解は、用語の使い分けを見ると修正が要る。ヒトの視覚の臨界期は8歳前後までと考えられている[2]が、神経科学の論文では、臨界期と敏感期が区別される。臨界期は、短く区切られた期間に不可逆な変化が起こる場合を指し、敏感期は、環境入力に対する感受性が徐々に変化する場合を指す[5]。

この区別が重要なのは、敏感期の外でも学習が可能とされるからである。同じ論文は、聴覚の学習と可塑性は、敏感期の最中にも、その後にも起こりうると述べている[5]。ならば、前章の17〜18歳ごろの変化も、ある日突然閉じる扉というより、感受性が徐々に変わる過程に近いと読める。ただし、言語の習得がどちらに当てはまるのかは、この資料だけでは決められない。

「期間」の性質が分かったところで、次の問いに進む。そもそも、この期間はどのような仕組みで始まり、なぜ終わるのか。

3. りんかいきは、のうの 中の 何が はじめて、何が とめるの?

3. 臨界期を始めるのは、脳の中のどんな神経細胞か

3. 臨界期のスイッチ:抑制性ニューロンの成熟と、可塑性が残る細胞

いきものの 脳のうには、神経しんけいの 細かい はたらきが たくさん あります。日本の けんきゅうしゃが つたえる ところでは、りんかいきを はじめる スイッチは、「よくせいせいニューロン」と よばれる 細ぼうの はたらきだと わかりました。

マウスでは、生まれてから 19日め〜32日めが、目の りんかいきです。この じきを すぎると、「こうふんせい」と いう ほうの 細ぼうでは、かわる 力が ほとんど なくなって しまいました。

ただし、りんかいきを すぎても、一部の 細ぼうは かわりつづけると わかりました。おとなの 脳のうが かわる ひみつは、そこに あるのかも しれません。

臨界期を始めるきっかけは、脳の中の「抑制性ニューロン」の成熟だと分かってきました。東京大学の研究者は、臨界期をスタートさせているのは抑制性ニューロンだと説明しています[3]。

では、いつ終わるのか。理化学研究所の研究では、マウスの視覚の臨界期は生後19日から32日までとされ、その後、興奮性神経細胞の可塑性(変化する力)はほぼなくなりました[4]。ところが同じ研究は、臨界期が終わったあとでも変化する神経細胞の群れを、発見したと報告しています[4]。

理化学研究所の別の解説は、臨界期の始まりをもう一つの角度から説明しています。臨界期の前は、脳の内部の情報をもとに神経回路をつくる時期。臨界期は、脳の外の情報(見たもの、聞いたもの)をもとにつくる時期だろう、という考え方です[2]。つまり、世界から入る情報が、脳の形づくりに本格的に使われ始める時期が、臨界期だというのです。

これらはマウスなどの実験にもとづく説明で、ヒトの言語の臨界期にそのまま当てはまるかは、まだ決まっていません。でも、臨界期のあとも変わり続ける仕組みが脳に残っていることは、確かなようです。では、実際に大人の脳が変わった例はあるのでしょうか。

臨界期は何によって始まるのか。東京大学の解説は、臨界期をスタートさせているのは抑制性ニューロンだと述べる[3]。つまり、臨界期は脳全体が一斉に切り替わるのではなく、特定の細胞の成熟が引き金になる。

では終わりはどうか。理化学研究所の報告では、マウスの視覚の臨界期は生後19日から32日で、興奮性神経細胞の可塑性は、従来の報告どおり臨界期の終了後にほぼ消失した。ところが同じ研究は、臨界期が終わったあとでも変化する神経細胞の群れを発見したと報告している[4]。「ほぼ消失」と「変わり続ける細胞」が同居している点が、大人の脳を考えるうえで重要である。

この始まりの意味づけには、数理モデルによる仮説もある。理化学研究所脳神経科学研究センターの解説は、臨界期以前を「脳の内部の情報を元に神経回路を構築する時期」、臨界期を「脳の外部の情報を元に神経回路を構築する時期」と捉える考えを示す[2]。学習の基準が内側から外側へ切り替わる時期、と読める。ただしこれは仮説で、ヒトの言語の臨界期にそのまま当てはまると確定した話ではない。

以上はマウスなどを使った知見の紹介にとどまる。ヒトの成人で、実際に脳の構造が変わった例はあるのか。次の章で見る。

4. おとなの 脳のうが かわった れいは あるの?

4. 大人の脳が実際に変わった例:タクシー運転手と弱視の治療

4. 成人の脳の変化を示す事例:ロンドンのタクシー運転手と成人の弱視治療

1つめは、ロンドンの タクシーの うんてんしゅです。ロンドンには 道が とても たくさん あります。タクシーの うんてんしゅは、2万5000くらいの 道の つくりを おぼえます。

これを おぼえた 人たちを しらべると、脳のうの 中で 「きおくに かかわる ところ」の 後ろの ほうが、大きく なって いたと ほうこくされて います。

2つめは、目の おはなしです。小さい ころに ものを はっきり 見る 力が そだたない 「弱視じゃくし」が あります。アメリカの 南カリフォルニア大学の けんきゅうしゃは、この ちりょうが 20さいの 人にも きいたと つたえて います。

けんきゅうしゃは、「見る しくみは、りんかいきの 考えが しめす より、ずっと かわりやすい」とも 言いました。ただし、一部の はたらきでは、りんかいきは まだ のこって いるとも 言って います。

ロンドンのタクシー運転手は、約2万5000もの道路のつくりを覚えます。ロンドン大学の研究チームは、これを学び終えた人たちを調べました。その結果、記憶に関わる海馬の後ろの部分で、灰白質の体積が増えていたと報告しています[6]。何かを大量に学ぶという経験が、脳の構造の変化と結びついていたわけです。

もう一つは、目の例です。南カリフォルニア大学の研究者は、弱視の治療が20歳の被験者にも効いたと報告しました[7]。視覚の臨界期は8歳前後までとされてきたので、この結果は大人の視覚が思っていたより変わりやすいことを示します。

ただし、この研究者も「視覚系は臨界期の考え方が示すよりずっと可塑的だ」と述べる一方で、一部の機能には臨界期がなお存在するとも述べています[7]。何でも自由に変わる、という話ではありません。

タクシー運転手の研究は「学ぶと変わる」ことを示し、弱視の研究は「臨界期のあとでも治療が効く場合がある」ことを示します。では、年を重ねた人が学ぶとき、何がカギになるのでしょうか。

ヒトの成人でも脳が構造的に変化することを示す事例として、ロンドンのタクシー運転手の研究がある。運転手は約2万5000の道路構造を学ぶが、ロンドン大学の Woollett と Maguire は、この学習の獲得に伴って、海馬後部の灰白質体積が選択的に増加したと報告している[6]。学習量の大きな課題が、特定の脳領域の構造変化と結びついていた。

視覚についても例がある。南カリフォルニア大学の研究者は、弱視の治療が20歳の被験者にも効果的だったと報告した[7]。視覚の臨界期が8歳前後とされてきたことと比べると、成人期に入ってからの視覚の可塑性を示す結果である。

ただし、この研究者の主張は慎重である。視覚系は臨界期の考え方が示すよりずっと可塑的だと述べる一方で、一部の機能には臨界期がなお存在し、従来考えられていたより限定的かもしれない、とも述べる[7]。したがって、「臨界期は存在しない」とも「臨界期は絶対」とも言えない。機能ごとに、変わりやすさは異なるのである。

これらは、被験者の条件や課題が限定された個別の研究であり、結果をそのまま一般化はできない。変化の「有無」に加えて、どのような条件なら変わりやすいのかが問われる。

5. おとなが まなぶ とき、何が たいせつ?

5. 年齢を重ねた人が学ぶとき、何がカギになるのか

5. 高齢者の学習を支える条件:複数課題・励ます環境・睡眠

さいしょの おはなしに もどります。55さい いじょうの 人たちが、1ねんで 大学生に ちかい 点数に なった わけを、けんきゅうしゃは こう 考えて います。たいせつなのは、いろいろな ことを いっしょに まなぶ ことと、はげまされる ばしょで まなぶ こと。まるで 子どもの ころの まなびかたと にて いる、と いうのです。

もうひとつ、ねる ことも たいせつです。おとなの 人を しらべた けんきゅうでは、よく ねた 人は、ねないで すごした 人より、おぼえた ことが のこりやすく、つぎの 日の まなびも うまく いった、と ほうこくされて います。

ただし、どちらも 1つの けんきゅうの 話です。すべての 人に あてはまる とは かぎりません。

冒頭の研究に戻ります。カリフォルニア大学リバーサイド校の研究者は、高齢者のテストの得点が大学生に近づいた鍵は、複数の課題を同時に、励まされる環境で学ぶことだろうと推測しています[8]。これは子どもが経験する学び方に似ています。研究者はそこに注目したわけです。

ただし、これは研究者の推測です。なぜその学び方が効くのか、どの要素がどのくらい効いたのかは、この発表だけでは分かりません。

もう一つ、脳の学習を支えるのが睡眠です。成人を対象にした研究では、睡眠をとった場合は、睡眠を奪われた場合より、記憶の定着と翌日の学習がよく支えられました[9]。学んだあとにきちんとねることが、記憶と次の日の学習を支えているのかもしれません。

これらは、特定の条件で行われた個別の研究です。「大人なら誰でも大学生に近い得点になる」わけではありません。それでも「年をとったらもう変わらない」という考えとは、はっきり食いちがう結果です。

冒頭の研究に戻る。カリフォルニア大学リバーサイド校の研究者は、高齢者がいくつかの認知課題で大学生に近い得点になった鍵は、複数の課題を同時に、励まされる環境で学ぶことにあると推測している。子どもが経験する学習環境に似た条件である[8]。これは研究者の推測であって、どの要素が効いたのかを分離した結果ではない。

睡眠は、覚えたことを保ち、翌日の学習を支える。成人を対象にした研究では、睡眠をとった場合は、睡眠を奪われた場合より、記憶の定着と翌日の学習がよく支えられた[9]。つまり、大人の学習は「何を学ぶか」だけでなく、「どう学ぶか」と「学んだあとにどう休むか」にも左右される。

ここまでの知見を並べると、臨界期をめぐる見取り図が描ける。言語では、母語話者並みの到達には10歳ごろまでの開始が目安になるが、学ぶ力は17〜18歳ごろまで高い[1]。臨界期は、特定の抑制性ニューロンの成熟で始まり[3]、終わったあとにも変化する神経細胞が残る[4]。成人でも、学習に伴う構造変化[6]や、視覚の改善例[7]が報告されている。一方で、17〜18歳で何が変わるのか、大人の可塑性を再現して学習を促進する方法が確立しているのかは、いずれも未解決である。

6. じぶんで ためして みよう

6. 自分の学び方を試して、記録してみる

6. 自分の学習で確かめる:一人でできる小さな比較

みちを あたまに えがく

あるいて いく 道を、見ないで 紙に かいて みましょう。そのあと、じっさいに あるいて、まちがって いた ところを なおします。ロンドンの うんてんしゅほど たくさんでは なくても、道を おぼえる ときの 頭の はたらきを、すこし 感じられるかも しれません。

ねる まえと あさ

ねる まえに、すきな 歌や ことばを 5つ おぼえます。つぎの 朝に 思い出せた 数を かいて、よく ねられなかった 日と くらべて みましょう。ねむい ときは むりを せず、ふとんに 入ります。

道順を頭に描く

通学路や、よく行く場所までの道を、地図を見ずに紙に描いてみてください。あとで実際に歩いて答え合わせをすると、どこを覚えていて、どこがあいまいだったかが分かります。ロンドンのタクシー運転手が覚える量には遠く及びませんが、道を頭の中で組み立てる感覚を、少し体験できます。

睡眠と暗記を比べる

覚える内容(たとえば短い詩や単語を5つ)を決めて、寝る前に覚え、翌朝に思い出せた数を記録します。睡眠が十分だった日と、そうでなかった日で比べてください。1人分の記録で結論は出せませんが、研究が言う「睡眠が学習を支える」という話を、自分のこととして考える材料になります。夜ふかしをしてまで試す必要はありません。

資料を読むなら

MITの発表[1]は英語ですが、「10歳」と「17〜18歳」がどう違う話なのかが書かれています。日本語では、理化学研究所の解説[2]と東京大学の記事[3]が読めます。

道順と睡眠を自分で比べる

道順は、紙に描いてから実際に歩いて答え合わせをする。睡眠は、覚える内容を決めて寝る前に覚え、翌朝の再生数を記録し、睡眠が十分な日と不十分な日で比べる。どちらも1人の記録では結論にならないが、第5章の睡眠の知見[9]を、自分の経験として検討する材料になる。夜ふかしをしてまで試す必要はない。

資料を読むなら

言語の臨界期は MIT の発表[1]、感受性と可塑性の区別は論文[5]が詳しい。後者は英語だが、臨界期と敏感期の定義、聴覚や言語、音楽訓練への含意を整理している。神経細胞の話は、日本語で読める理化学研究所[2][4]と東京大学[3]が入口になる。タクシー運転手の研究[6]、弱視の研究[7]、高齢者の研究[8]は、どれも条件が限定された個別の報告である。読むときは、対象の人数・年齢・条件に注意すると、結果の言える範囲が見えてくる。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文で使った資料です。

  1. MIT News. Cognitive scientists define critical period for learning language (2018). https://news.mit.edu/2018/cognitive-scientists-define-critical-period-learning-language-0501
    原論文: Hartshorne, J. K., Tenenbaum, J. B., & Pinker, S. (2018). A critical period for second language acquisition: Evidence from 2/3 million English speakers. Cognition, 177, 263–277. (10歳と17〜18歳/約67万人のデータ)
  2. 理化学研究所 脳神経科学研究センター. 数理モデルでつなげる脳の仕組み vol.1. https://cbs.riken.jp/jp/public/tsunagaru/toyoizumi/01/ (視覚の臨界期/内部情報と外部情報の仮説)
  3. 東京大学. 脳の臨界期の引き金とブレーキを解明。 https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/features/voices085.html (抑制性ニューロンが臨界期を始める)
  4. 理化学研究所. 脳発達の「臨界期」が終了した後でも変化する神経細胞群を発見 (2010). https://www.riken.jp/press/2010/20100127/index.html (マウスの臨界期/終了後も変化する細胞)
  5. Learning, neural plasticity and sensitive periods: implications for language acquisition, music training and transfer across the lifespan. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3834520/ (臨界期と敏感期の区別/敏感期のあとの可塑性)
  6. Woollett, K. & Maguire, E. A. Acquiring "the Knowledge" of London's Layout Drives Structural Brain Changes. Current Biology (2011). https://www.fil.ion.ucl.ac.uk/archive/wp-content/uploads/2019/11/WoollettMaguireCBDec2011.pdf (海馬後部の灰白質体積の増加)
  7. USC News. Lazy eye treatment shows promise in adults. https://today.usc.edu/lazy-eye-treatment-shows-promise-in-adults/ (20歳の弱視治療/臨界期が残る機能)
  8. UC Riverside News. Older adults may achieve same cognition as undergrads (2023). https://news.ucr.edu/articles/2023/04/18/older-adults-may-achieve-same-cognition-undergrads (高齢者の学習/複数課題と励ます環境)
  9. Sleep loss disrupts the neural signature of successful learning. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9977378/ (睡眠と記憶の定着・翌日の学習)

なおした ところ

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