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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

ミツバチにも ゼロが わかるの?

脳が小さなミツバチは、なぜ「何もない白いカード」を最も少ない数に選べたのか ── 動物の数の感覚をだまされずに確かめる

動物は「数」をどこまで扱えるか ── ミツバチのゼロの順序づけと、魚・ヒヨコ・ハシボソガラスの実験(賢馬ハンス以来の対照実験をふまえて)

分野:生きもの

ミツバチの 脳のうには、ニューロンという ちいさな つぶが 100万こ ほどしか ありません。人の 10万ぶんの 1ほどです[1]。

それなのに、なにも かいて いない 白い カードを「いちばん 少ない」と えらべた、という 実験じっけんが あります。ことばを つかえない 生きものは、どこまで 数が わかるのでしょう。ミツバチ、魚、ヒヨコ、カラスの 実験じっけんから わかります。

ミツバチの脳にあるニューロン(神経細胞)は100万個ほどで、ヒトの約10万分の1とされています[1]。それなのに、何も描かれていない白いカードを「いちばん少ない数」として選べた、と2018年にScience誌で報告されました[1]。

ことばをもたない小さな生きものは、どこまで数を扱えるのでしょうか。ミツバチ、魚、ヒヨコ、カラスの実験から、動物が数の違いをどうつかんでいるのか、そして「分かっている」とどう確かめてきたのかが分かります。

ミツバチの脳のニューロンは約100万個で、ヒトの約10万分の1にあたる。そのミツバチが、何も描かれていない白いカードを「最も少ない数」として選べた、という研究が2018年6月8日付のScience誌に載った[1]。ただし、これは「ゼロの計算ができる」という意味ではない。

言語をもたない動物が数をどこまで扱えるのか。人の合図にだまされない実験とはどういうものか。ミツバチ、魚、ヒヨコ、ハシボソガラスの研究から、断定できる範囲と仮説にとどまる範囲が分かる。

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1. 白い カードを えらんだ ミツバチ

1. 「何もない」を最も少ない数と選んだミツバチ

1. ゼロを最小の数として順序づけたミツバチ(2018年)

この 実験じっけんでは、ミツバチに「少ない ほうを えらぶと、えさが もらえる」と おしえました。カードには、まるや しかくが 1つから 6つ ならんで います。

そのあと、なにも かいて いない 白い カードを みせました。すると ミツバチは、白い カードを「いちばん 少ない」ものとして あつかいました[1]。にほんごの 記事では、白い カードに 長く とどまったと つたえられて います[2]。

ただし、ミツバチが ゼロの 計算を したわけでは ありません。「ゼロは 1より 少ない」と ならべられた、という ところまでです。

では、ほんとうに 数を わかって いるのか、どうやって たしかめるのでしょう。

実験では、まず1匹ずつのミツバチに「少ないほうを選ぶ」ことを覚えさせました。カードには図形が1〜6個ずつ描かれていて、少ないほうを選ぶと報酬がもらえます。そのあとで、図形が1つもない白いカードを見せたのです。ミツバチは、白いカードを最も少ないものとして扱いました[1]。研究には、オーストラリアのRMIT大学と、フランスのトゥールーズ大学のCNRS動物認知研究センターなどが加わっています[1]。

日本語の解説によると、ゼロを表すカードを初めて見せたとき、ミツバチは白いカードに60〜70%長く滞在しました。数の差が大きいほど(6と0など)正確だったとも紹介されています[2]。この60〜70%は滞在時間の割合で、正解率ではありません。

CNRSは、この「ゼロの順序づけ」は、アフリカングレーオウムやサル、就学前の子どもの理解に並ぶと述べます[1]。ただし、できたのは「ゼロを最小の数として並べる」ことで、ゼロを使った計算ではありません。

とはいえ、ミツバチがわざわざ数を理解した、と信じる前に、確かめるべきことがあります。動物は、人が思いもしない手がかりを使っていることがあるからです。

この研究では、個々のミツバチに「大なり・小なり」の概念を訓練した。刺激は1〜6個の図形で、「少ないほう」を選ぶと報酬が得られる。その後、図形が1つもない白いカード(0個)を提示すると、ミツバチはこれを最も少ないものとして順序づけた[1]。研究にはRMIT大学とトゥールーズ大学のCNRS動物認知研究センターなどが関わる[1]。訓練に使った範囲(1〜6個)の外にある0を、同じ「少ない」の延長として扱えたという点が、報告の核心である。

日本語の解説は、ゼロのカードを初めて見たミツバチが白いカードに60〜70%長く滞在し、数の差が大きいほど(6と0など)正確だったと紹介している[2]。ただしこの数値は日本語の解説での紹介である。また「長く滞在した割合」であって、正解率ではない。

CNRSによれば、ミツバチの脳のニューロンは約100万個で、ヒトの約10万分の1である(逆算すればヒトは約1000億個になる)。それでも両者ともゼロを理解できる、とCNRSは述べる[1]。論文要旨は、この能力が、アフリカングレーオウムやサルなどヒト以外の脊椎動物、就学前の子どもの理解に並ぶとしている[1]。ここで言えるのは「ゼロを最小の数として順序づけた」までで、ゼロの計算や、ゼロの概念全体の理解ではない。

では、動物が「分かっている」と判断してよい条件とは何か。この問いには、100年以上前の失敗談がある。

2. うまは ほんとうに 計算して いたのか

2. 計算する馬は、人の顔を見ていた ── 賢馬ハンスの教訓

2. 賢馬ハンスと対照実験 ── 動物の「数」の研究が背負う条件

むかし、ひづめで 地面を たたいて 計算の こたえを おしえる 馬が いました。名前は ハンスです。みんなは「かしこい 馬だ」と おどろきました。

しんりがくしゃの フングストが しらべると、ふしぎな ことが わかりました。馬に もんだいを だす 人の しせいや かおが、こたえに ちかづくと、すこし かわります。ハンスは それを みて、たたくのを やめて いたのです[3]。

この 話から、人の むいしきの あいずを なくす 実験じっけんが ひつように なりました。ミツバチの 実験じっけんも、そこを きを つけて います。

20世紀のはじめ、「賢馬ハンス」と呼ばれた馬が話題になりました。足で地面を叩いて、計算の答えを教えるというのです。見ていた人たちは、馬が計算していると考えました。

ところが心理学者のフングストが調べると、馬は問いかける人の姿勢や表情の変化を見ていました。叩く回数が正解に近づくと、問いかける人の姿勢や表情が変わります。馬はそれを「やめる合図」として使っていたのです[3]。

この出来事のあと、動物の数の研究では、人の無意識の合図を消す対照実験が欠かせなくなりました。次の章のミツバチの実験にも、同じ心がけが見えます。目印の間隔や種類を変えたり、見たことのない物を使ったりして、数以外の手がかりでは答えられないようにしているのです[4]。

では、そうして確かめられた「数えている」は、実際にはどんな数えかたなのでしょうか。

20世紀初めの「賢馬ハンス」は、足で地面を叩いて計算問題に答えるとされた馬である。心理学者フングストは、問いかける人の姿勢や表情が、叩く回数が正解に近づくにつれて変わり、その変化がハンスにとって「叩くのをやめる」合図になっていたと示した[3]。馬が算数を理解していたわけではない。

この出来事から、動物の数の認知研究には対照実験が必要になった。人の無意識の合図を消すこと、そして数以外の手がかり(大きさ、距離、見た目など)を統制することである。この条件は、あとの章で見る研究のつくりにそのまま表れている。例えばミツバチの研究では、目印の間隔や種類を変え、さらに見たことのない物でも成り立つかを調べている[4]。

では、手がかりをこれだけ統制しても残る「数える」力とは、どこまでのものなのか。

3. 目じるしを いくつまで かぞえられる?

3. 食べ物までに通った目印を、4つまで数えたミツバチ

3. 目印を順に数える課題 ── 4つまでという上限と、物体に依存しない計数

ミツバチは、えさの ある 場所まで とんで いきます。とちゅうに 目じるしが ならんで いたら、いくつ とおったかで 場所を おぼえて いたのです。ミツバチが かぞえられたのは、4つまででした[4]。

目じるしの あいだを かえても、見た ことの ない ものに かえても、だいじょうぶでした[4]。「あそこの 木の 右」のような 場所の 手がかりでは なかった、ということです。

ただし 4つは、「目じるしを じゅんばんに とおる」実験じっけんでの いちばん 上です。ミツバチの 数の ちからの いちばん 上では ありません。

2008年、ダッケ(Dacke)とスリニバサン(Srinivasan)が、ミツバチは飛行中に順に出会う物の数を、4つまで数えられると報告しました。ミツバチは、食べ物までに通り過ぎる目印の数を使って、場所を覚えていたのです[4]。

目印の間隔や種類を変えても、結果は変わりませんでした。見たことのない物でも数えられたため、研究者は「物の種類に頼らない数え方」だと述べます[4]。この種の課題は、距離を変えて「道のり」だけで答えられないようにした実験でも成り立っています[5]。

ミツバチが目印を数えられるかという問いは、すでに1995年に、ヒッツカとガイガー(Chittka & Geiger)が『ミツバチは目印を数えられるか』という論文で扱っています[5]。この論文の結果の細かい数字は、ここでは書きません。

4つというのは、目印を順に通る課題での上限であって、ミツバチ全般の数の限界ではありません。この目印の課題では、ミツバチは4つまで数えられたようです。では、小さな数の区別は生まれつきのものなのでしょうか。

ダッケとスリニバサンの2008年の研究では、ミツバチは、飛行中に順に出会う目印の数を、4つまで数えて食べ物の場所を覚えた[4]。要旨によれば、目印の間隔や種類を変えても成り立ち、見たことのない物でも数えられた。研究者はこれを「物体に依存しない計数」と呼ぶ[4]。

この結果を支えるのは、数以外の手がかりを減らす工夫である。距離を変えて、距離の手がかりだけには頼れないようにした実験でも、ミツバチは成功した[5]。ミツバチの目印計数の最初の報告は、1995年のヒッツカとガイガー(Animal Behaviour 49:159-164)とされるが[5]。この記事で数値を使うのは2008年の研究だけである。

ここで注意したいのは、「4つまで」の読み方である。これは目印を順に通るという課題での上限で、ミツバチ全般の数の限界ではない[4]。前章のゼロの研究(図形が1〜6個)と合わせても、扱う課題ごとに結果の範囲が違う、という点を押さえる必要がある。

では、こうした小さな数の区別は、経験から学ぶのか、最初から備わっているのか。次は、生まれて1日目の魚が手がかりになる。

4. うまれて 1日目の 魚と、ヒヨコは?

4. 生まれて1日目のグッピーと、生まれたてのヒヨコは数の違いに気づくか

4. 生後1日のグッピーとヒヨコ ── 小さい数の区別と大きい数の区別は別のしくみか

グッピーという 魚の あかちゃんは、うまれて 1日目から、なかまの むれの 2ひきと 3びきを みわけられました[6]。魚は、なかまの 多い むれに はいる くせが あります。その くせを つかった 実験じっけんです。

でも、4ひきと 8ひき、4ひきと 12ひきは、1日目では みわけられませんでした。大きい 数の ちがいが わかるように なるのは、のちのちで、せいちょうと なかまとの くらしの りょうほうが かかわると いわれます[6]。40日の 魚は、4ひきと 8ひきを わけられました。

ヒヨコも、実験じっけんで 5と 10、10と 20のような ちがいを わけました。えさと むすびつけて おぼえさせた 実験じっけんです[8]。

ただし これは「かぞえて いる」と 言いきれる ものでは ありません。ちがいを みわけて いる、までです。

魚は、仲間の多い群れに入りたがる性質があります。この性質を使って、イタリアのビサッツァ(Bisazza)たちは、孵化して1日目のグッピーに、2匹の群れと3匹の群れを選ばせました。グッピーはこの区別ができました。一方、4匹と8匹、4匹と12匹は区別できませんでした。40日齢になると、4匹と8匹も区別しました[6]。小さい数の区別は生まれつきで、大きい数の区別は、成長と社会経験の両方によって後から現れる、というのが論文の結論です[6]。

これは群れに入る性質を使った選択実験で、魚が人のように「数えている」とまでは言い切れません。別の総説は、魚の数の能力は他の脊椎動物と大きく似ており、小さい数の正確な区別と大きい数の比の区別という別々のしくみが、サルやヒトの赤ちゃんと共通していると考えられる、とまとめています[7]。

ヒヨコでも似た結果があります。孵化したばかりのヒヨコは、訓練なしで5対10や10対20の数の違いを区別しました。餌と結びつけて学習させた実験で、大きさなど数以外の手がかりをそろえても成り立ちました[8]。生後数日のヒヨコは、2対3、4対8などの違いも区別し、小さい数にも大きい数にも同じしくみが使われている可能性が示されました[9]。

数の違いを区別する力は、思ったより早くから動物に備わっているようです。では、人が数を数えるときのように、数を「自分から出す」動物はいるのでしょうか。

ビサッツァらの2010年の研究では、孵化後1日目のグッピーに、仲間の魚の群れの大きさを選ばせた。2匹と3匹は区別できたが、4匹と8匹、4匹と12匹は区別できなかった。40日齢では4対8を区別した。著者らは、小さい数を区別する能力は生まれつきで、大きい数の区別は、成熟と社会経験の両方の結果として後から現れると結論する[6]。

これは、群れに入りたがる性質を利用した選択実験で、魚が「数えている」とは言い切れない。アグリッロらの総説(2017)は、魚の数の能力が他の脊椎動物のものとかなり似ており、小さい数の正確な区別と、大きい数の比の区別という別々のしくみが、サルやヒトの赤ちゃんと共通すると考えられる、と述べる[7]。

ヒヨコの研究は、条件が違う。ルガーニらの2013年の研究では、孵化直後のヒヨコが、訓練なしで5対10、10対20の違いを区別し、数以外の手がかりを統制しても成り立った[8]。ただし、餌と結びつけて学習させた実験なので、「生まれつき数えられる」とは断定できない。2014年の研究では、生後数日のヒヨコが2対3、2対8、6対9、8対14、4対6、4対8を区別し、小さい数と大きい数に共通の1つのしくみがあることを支持するとした[9]。

ここには見かけ上の食いちがいがある。グッピーでは、小さい数と大きい数で、できる時期が分かれる。一方ヒヨコでは、小さい数と大きい数に共通のしくみを考える。生物の種類や実験の方法が違うため、単純には比べられない。

見て区別する段階までは分かった。では、音を聞いて数え、さらに自分で数を出す動物はいるのか。

5. 鳴く 回数を きめてから 鳴く カラス

5. 鳴く回数を決めてから鳴くカラスと、数に反応する脳の細胞

5. ハシボソガラスの鳴き声の計画と、数に選択的なニューロン

2024年、ドイツの 大学で、3わの ハシボソガラスの 実験じっけんが ありました。色の ついた 数字を 見せるか、ある 音を きかせると、カラスは 1回から 4回 鳴き、さいごに くちばしで つついて 終わりを しめしました[10]。

研究者は、カラスが 鳴き はじめる 前に、回数を 考えて いると 話します。これは、ことばで 数を 言えない 小さな 子の かぞえかたに にて いて、本当に かぞえる ちからの 前の はじまりかも しれない、と 研究した 人たちは 話します[11]。

鳴く 回数が ふえるほど、はじめるまでの 時間は 長く なりました。でも、合図が 目から か、耳から かは、かんけい ありませんでした[11]。

カラスは、ことばの 数を つかって かぞえて いるわけでは ありません。そこは まちがえないように したい ところです。

2024年5月24日付のScience誌で、ドイツのテュービンゲン大学のニーダー(Nieder)研究室などが、ハシボソガラス3羽の実験を報告しました。色のついた数字(目で見る合図)や、特定の音(耳で聞く合図)に応じて、カラスは鳴き声を1〜4回出し、最後にくちばしでつついて終わりを示しました[10]。

注目されたのは、鳴き始める前に回数を計画しているらしいことです。研究者は、これは言葉の数詞を理解する前の幼児の数え方に似ていて、本当の「数える」力の進化的な前段階かもしれない、と述べます[11]。鳴く回数が増えるほど反応までの時間が長くなりましたが、合図が目から来ても耳から来ても、時間は変わりませんでした[11]。カラスが数詞で数えているわけではなく、前段階の可能性まで、という読み方が大切です。

カラスの脳の中でも、数に反応する細胞が見つかっています。2015年にディッツとニーダーが報告したもので、点の大きさや形に関係なく、特定の個数にだけ反応するニューロンが脳の一部にありました。その働きは、霊長類の脳の連合野に見られるものと驚くほどよく似ていました[12]。

ミツバチ、魚、ヒヨコ、カラスと見てくると、数の違いをつかむしくみは、思ったより広く動物に見つかるようです。それでもそれぞれが「数える」と同じ意味かどうかは、実験ごとに慎重に見る必要があります。

リャオらの2024年のScience論文(ニーダー研、テュービンゲン大学)は、ハシボソガラス3羽が、色つきの数字や特定の音を合図に、鳴き声を1〜4回出し、最後にくちばしでつついて終わりを示すことを報告した[10]。合図は視覚(数字)と聴覚(音)の2種類で、どちらにも同じように応じた。

ここで重要なのは、鳴き声を出し始める前に、回数が計画されているらしい点である。研究者は、この能力が、言葉の数詞(基数詞)を理解する前の幼児の数え方に似ており、「真の数える能力の進化的な前段階」かもしれない、と論文で述べる[11]。反応時間は鳴く回数が増えるほど長くなったが、合図が目か耳かには影響されなかった。なお、これは3羽の結果であり、カラス全体に広げて言うことはできない。

脳の側からの証拠もある。ディッツとニーダー(2015、PNAS)は、カラスの脳の一部に、点の大きさや形に関係なく特定の個数にだけ反応するニューロンを見つけた。行動と神経の両方で見た数の表現は、霊長類の連合野で見られるものと驚くほどよく似ていた[12]。論文は専門用語の部位名で書かれているが、ここでは「脳の一部」とだけ述べる。

ここまでの研究を並べると、見えてくるのは、脳の大きさや種類の異なる動物で、数に関わる行動が報告されているということである。ただし、行った課題も条件も違う研究を、「同じ数える力」の証拠として束ねるのは難しい。この食いちがいを残したまま、読者自身がどう確かめられるかに話を移したい。

6. ことばを つかわずに、音の 数を たしかめて みよう

6. 音の回数を、数えずに言い当てられるか試す

6. 数える・区別する・計画するの違いを、自分の体で感じる

ひとりで やって みましょう。つくえを トン、トン、トンと 3回 たたきます。目を とじて、家の 人に 3回 たたいて もらうのも いいです。

こんどは、「いち、に、さん」と 言わないで、同じ 回数だけ たたき返して みましょう。ことばで かぞえないと、少し むずかしく なります。

カラスは、こういう ことを ことばなしで して いると いわれます。でも ほんとうに 同じ ことかは、まだ 分かって いません。

おなじ 回数でも、リズムを かえて たたくと、むずかしさは かわるでしょうか。やって みましょう。魚の むれを 見かけたら、ながめて みるのも いいです。魚は、なかまの 多い むれに はいる くせが あります[6]。

まず、机を指で何回かトントンと叩いて、同じ回数だけ叩き返してみましょう。「いち、に、さん」と声に出さず、心の中でも数えないことにします。回数が増えると難しくなるでしょうか。カラスの実験で鳴く回数が増えるほど反応時間が長くなったことと、結びつけて考えられます[11]。ただし、これは私たちの感覚を試すだけで、カラスと同じしくみが働くとは限りません。

もう一つは、観察です。魚を飼っているなら、水槽の魚が仲間の多いほうへ寄るか見てみましょう。グッピーの実験は、この性質を使っています[6]。ただし結果は、魚の種類や場面によって変わりうるので、「こうなるはず」と決めつけずに見ます。

机をたたく遊びでは、どんな手がかりを使えば、数えなくても同じ回数を返せてしまうでしょうか。リズムや、たたく間隔を使えば、数えずにできそうです。あなたなら、どうやって手がかりを消しますか。

この記事の研究は、動物の行動を「数える」「数の違いを区別する」「数を計画して出す」のどれとして読むかで、意味が変わる。ミツバチは順に通る目印を4つまで数え、ゼロを最小の数として順序づけた。魚とヒヨコは数の違いを区別した。ハシボソガラスは鳴く回数を計画した。同じ「数」という語でも、扱っている課題が違う。

自分の体で試すなら、机を叩く回数を、声に出さず数えずに、別の人に叩いてもらった回数と同じだけ叩き返す方法がある。回数を増やしたとき、正確さや時間がどう変わるかを見てみる。これはカラスの課題の再現ではなく、「数えずに回数を扱う」とはどういうことかを、感じるための試みである。魚を飼っている人は、仲間の多いほうに寄る傾向を観察することもできる[6]。結果は条件で変わりうる。

資料を読むときの見どころは3つある。①ダッケとスリニバサンの論文[4]は、間隔・種類・距離を変える統制の例として読める。②CNRSの発表[1]は、ゼロの実験の概要を、ニューロン数の比較とともに示す。③ビサッツァらの論文[6]は、小さい数と大きい数の区別の時期のずれを、データとともに示す。

ゼロ実験の60〜70%は日本語の解説で紹介された数字なので、原論文を読むと、条件や意味がより詳しく分かる。「動物の数」は、1つの結論で閉じた話ではなく、課題ごとに答えが変わる問いである。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

出典について:研究機関の発表、論文の要旨、日本語の解説記事、古典の書籍を使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。

  1. CNRS Press「Bees and the thought of naught」(Howard et al. 2018, Science)。https://www.cnrs.fr/en/press/bees-and-thought-naught (ミツバチのゼロの順序づけと、ニューロン数の比較について。研究機関の発表)
  2. GIGAZINE「ミツバチは「ゼロ」の概念を理解できる」(2018年6月8日)。https://gigazine.net/news/20180608-honey-bee-learn-zero (白いカードに長く滞在した、という日本語の紹介。数値は解説による)
  3. Pfungst, O. "Clever Hans (The Horse of Mr. von Osten)"。https://www.gutenberg.org/ebooks/33936 (賢馬ハンスと、人の姿勢・表情の変化が合図だったことについて。古典の書籍)
  4. Dacke, M. & Srinivasan, M. V. (2008) "Evidence for counting in insects", Animal Cognition。https://link.springer.com/doi/10.1007/s10071-008-0159-y (ミツバチが目印を4つまで数えたことについて。論文)
  5. Pahl, M. et al. (2013) Frontiers in Psychology(引用文献に Chittka & Geiger 1995)。https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fpsyg.2013.00162/pdf (ミツバチの目印計数の最初の報告の書誌について。論文)
  6. Bisazza, A. et al. (2010) "Ontogeny of numerical abilities in fish", PLoS ONE。https://europepmc.org/search?query=%22Ontogeny%20of%20numerical%20abilities%20in%20fish%22 (生後1日のグッピーの数の区別について。論文の要旨)
  7. Agrillo, C., Miletto Petrazzini, M. E. & Bisazza, A. (2017) "Numerical abilities in fish: A methodological review", Behavioural Processes。https://europepmc.org/search?query=%22Numerical%20abilities%20in%20fish%3A%20A%20methodological%20review%22 (魚と他の脊椎動物の数の能力の類似について。総説の要旨)
  8. Rugani, R., Vallortigara, G. & Regolin, L. (2013) "Numerical abstraction in young domestic chicks", PLoS ONE。https://doaj.org/article/728751765d344653ae5e68e5957a3e50 (孵化直後のヒヨコの数の区別について。論文の要旨)
  9. Rugani, R. et al. (2014) "From small to large: Numerical discrimination by young domestic chicks", Journal of Comparative Psychology。https://www.ebi.ac.uk/europepmc/webservices/rest/search?query=Rugani%20From%20small%20to%20large%20chicks&format=json (小さい数と大きい数の区別に共通のしくみがある可能性について。論文の要旨)
  10. Liao, D. A. et al. (2024) Science(EurekAlert 発表)。https://sciencesources.eurekalert.org/news-releases/1045186 (ハシボソガラスが鳴き声の回数を出し分けたことについて。研究機関の発表)
  11. GIGAZINE「カラスは数を数えられる」(2024年5月24日)。https://gigazine.net/news/20240524-crows-count-number/ (鳴く前の計画、幼児との比較、反応時間について。日本語の解説)
  12. Ditz, H. M. & Nieder, A. (2015) "Neurons selective to the number of visual items in the corvid songbird endbrain", PNAS。https://europepmc.org/search?query=%22Neurons%20selective%20to%20the%20number%20of%20visual%20items%22 (カラスの脳の数に反応するニューロンについて。論文の要旨)

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