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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

おさしみの さかなの なかに、むしが いるのは どうして?

刺身の魚にいるアニサキスは、本来どこへ行くつもりだったのか

刺身の魚に潜むアニサキスの幼虫:宿主の連鎖から、酢では死なず、冷凍・加熱で死ぬ条件を読む

分野:生きもの

おさしみの さかなの なかには、ほそくて ちいさな むしが いる ことが あります。アニサキスと いう むしです。

この むしは、じつは さかなに すみたかったわけでは ありません。ほんとうは、クジラや イルカの おなかへ いく とちゅうです。では、ひとが たべると どうなるのでしょう。すや わさびは きくのでしょうか。この ページでは、そのわけが わかります。

刺身の魚にいることがあるアニサキスは、魚に住みつきたかったわけではありません。本来の行き先は、クジラやイルカの胃です。魚の体にいる間は、大人になる前の幼虫のままで、人もその旅の行き止まりにあたります。

では、なぜ人が食べると激しく痛むのでしょうか。酢やわさびで死なないのに、冷凍すると死ぬのはなぜでしょうか。この記事を読むと、虫の一生から順に、その理由が分かります。

刺身の魚にいるアニサキスの幼虫は、魚の中で完結する寄生虫ではない。成虫になる場所はクジラやイルカなど海の哺乳類の胃で、魚は幼虫が通る途中の宿主にすぎない[1]。人も、成虫になれない行き止まりの宿主である[1]。

では、なぜ人が食べると腹痛を起こすのか。酢やわさびで死なず、冷凍と加熱で死ぬのはなぜか。このメモを読むと、虫の一生をもとに、刺身の注意を理屈で理解できる。

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1. このむしは、どこへ いく とちゅうなの?

1. 魚の中の虫は、クジラの胃へ向かう途中だった

1. アニサキスにとって魚は終点ではない

アニサキスの おとなは、クジラや イルカの いの なかに すんでいます[1]。そこで うまれた たまごは、うんちと いっしょに うみへ でていきます。

うみで たまごから かえった ちいさな 幼虫ようちゅうを、オキアミが たべます。オキアミは、えびの なかまの ちいさな いきものです。その オキアミを、サバや イカが たべると、むしは さかなの からだに はいります[1]。

でも、さかなの なかでは、むしは おとなに なりません。クジラや イルカに たべられて、はじめて おとなに なります[2]。つまり さかなは、ゴールでは なくて、のりつぎの ばしょのような ものです。

では、まちがって ひとが たべて しまったら、どうなるのでしょう。

卵から幼虫まで、海の中の旅

アニサキスは、線虫と呼ばれる細長い虫の仲間です。成虫はクジラやイルカなど、海にすむ哺乳類の胃に寄生します。卵はそこでうまれ、ふんと一緒に海へ出ていきます[1]。

海の中で卵から孵った幼虫を、オキアミが食べます。そのオキアミをサバやイカなどが食べると、幼虫は魚介類の体に入ります[1]。

魚の中では、大人になれない

魚の体の中にいる幼虫は、「第3期幼虫」という段階のままです。クジラやイルカなどの哺乳類に食べられると、ようやく次の段階へ進み、成虫になります[2]。

この旅では、オキアミが最初の中間宿主、サバやイカが次の中間宿主で、クジラやイルカが終宿主です。魚は終点ではなく、乗りつぎの場所にあたります。

では、その乗りつぎの途中に、人が食べてしまったら何が起こるのでしょうか。

アニサキスは線虫の一種で、成虫はクジラやイルカなど海産哺乳類の胃に寄生する。卵はふんとともに海へ排出され、孵化した幼虫をオキアミが食べる。そのオキアミを、サバやイカなどの魚介類が食べると、幼虫は第3期幼虫の状態で魚介類の体に入る[1]。

ここで押さえたいのは、魚の体内では幼虫が成長を終えないという点だ。魚の中の幼虫は第3期幼虫のままで、終宿主である海産哺乳類に食べられて、はじめて第4期幼虫・成虫へ進む[2]。宿主を整理すると、第1中間宿主はオキアミ、第2中間宿主はサバやイカ、終宿主は海産哺乳類となる(宿主とは、寄生虫が育つ体の持ち主のこと)。ただし、この宿主の呼び分けは、要約をもとにした資料による整理なので、大づかみな流れとして読むのがよい。

つまり、刺身になる魚は、この虫にとって通過点にあたる。そう見ると、人が食べたときに起こることは、虫の「旅の予定」の外で起きていることだと分かる。では、その場合に体では何が起きるのか。

2. ひとが たべると、どうして おなかが いたいの?

2. 行き止まりの人の体で、幼虫は何をするのか

2. 人は成虫になれない宿主:腹痛が起きる仕組みと時間

ひとが、むしの いる さかなを なまで たべると、むしは いや ちょうの かべに、あたまを もぐりこませます[1]。そのため、おなかが とても いたく なる ことが あります。

でも、ひとの からだの なかでは、むしは おとなに なれません[1]。ふえる わけでも ありません。むしにとっても、ここは いきどまりなのです。

いたく なる じかんは、いに はいった ときと、ちょうに はいった ときで ちがいます。いの ときは たべてから 数時間から 十数時間、ちょうの ときは 十数時間から 数日あとに、いたく なる ことが あります[3]。

では、この むしは、さかなの どこに いるのでしょう。

胃や腸の壁に頭を潜りこませる

人が幼虫のいる魚介類を生で食べると、幼虫は胃や腸の壁に頭の部分を潜りこませます。これが、激しい腹痛を起こす原因です[1]。

ただし、人の体の中では成虫にまで育ちません[1]。「人の中で増える」わけではなく、人は虫にとっても行き止まりの宿主です。

痛み出すまでの時間は、場所で違う

農林水産省の説明では、胃に入った場合は、食後数時間から十数時間で、みぞおちの激しい痛みや吐き気、嘔吐が出ます。腸の場合は、食後十数時間から数日後に、激しい腹痛が出ます[3]。時間はあくまで目安です。

治す薬は基本的になく、胃にいれば内視鏡で、器具を使って虫を取り除くと紹介されています[5]。では、そもそもこの虫は、魚のどこにいるのでしょうか。

人が幼虫のいる魚介類を生で食べると、幼虫は胃壁や腸壁に頭部を潜入させる。この刺激が、激しい腹痛を引き起こすと説明されている[1]。一方で、幼虫は人の体内では成虫に発育しない[1]。つまり人は、虫の一生のめぐりから見ると行き止まりの宿主であり、「人の体内で増える」という理解は誤りだ。

症状の出る時期は、侵入した場所で異なる。胃の場合は、食後数時間〜十数時間で、みぞおちの激しい痛み、吐き気、嘔吐が出る。腸の場合は、食後十数時間〜数日後に激しい腹痛が出る[3]。この時間幅は、資料が示す目安であり、個人差を含む。

治療については、基本的に治療薬はなく、胃に虫が確認されたら内視鏡と鉗子で取り除くと紹介されている[5]。これは報道記事の紹介であり、実際の診断や治療は医療機関の判断による。

ここまでで、虫の体の使い方と、人の体で起こることが分かった。では、食べる前に、虫は目で見つけられるのか。

3. めで みれば、すぐに みつかるの?

3. 目で見つけられるのか、いつ筋肉に移るのか

3. アニサキスの大きさと、魚が死んだあとの移動

アニサキスの 幼虫ようちゅうは、ながさが 2〜3.5センチ ほどで、いとのように ほそい むしです[3]。めで みえる おおきさでは あります。

ふだんは、さかなの ないぞうの まわりに おおい と いわれます。でも、さかなが しんで じかんが たつと、ないぞうから、たべる ぶぶんの 「み」の なかへ うつる ことが あると いわれて います[4]。

サケの なかまは、はじめから みの なかに いる ことが おおい そうです[4]。だから、さかなを とったら、はやめに ないぞうを とる ことが すすめられて います。

では、すや しょうゆを つければ、むしは しんで くれるのでしょうか。

見える大きさでも、身の中は見つけにくい

体の長さは約20〜35ミリ、幅は0.3〜0.6ミリで、目で見える大きさです。サバ、サンマ、アジ、カツオ、サケ、スルメイカなどの、内臓のまわりや筋肉の中にいます[3]。魚の種類は幅広く、身近な魚にもいることがあります。

魚が死んで時間がたつと

ふだんは内臓の表面に多い虫が、魚が死んで時間がたつと、内臓から筋肉(身)へ移ることが知られています[4]。サケの仲間は、もともと筋肉の中にいることが多いとも説明されます[4]。

移る仕組みや速さまでは、資料には書かれていません。ただ、そのため新鮮なうちに内臓を取り除くことが勧められます。ここまでで、見た目の注意は分かりました。では、昔からよく言われる「酢でしめれば安心」は、どうなのでしょうか。

虫体は体長約20〜35mm、幅0.3〜0.6mmで、肉眼で見える。サバ、サンマ、アジ、カツオ、サケ、スルメイカなどの海産魚介類の、内臓周辺、腹腔内、筋肉内に寄生する[3]。宿主になる魚介類の種類は幅広く、特定の魚だけの問題ではない。

注意したいのは、虫の位置が固定ではない点だ。寄生した魚介類が死んで時間が経つと、内臓から筋肉に移動することが知られている[4]。もともと、サケ科の魚は筋肉内に寄生していることが多いとも説明される[4]。だから、鮮度のよいうちに内臓を取り除くことが勧められる。

ただし、移動の仕組みや速さは、ここで使った資料には書かれていない。「何時間で移る」といった数字は、断定できない。

では、虫が筋肉の中に入っていたら、調味料でどうにかなるのか。次の章で、俗説の中身を確かめる。

4. すや わさびでは、むしは しなないの?

4. 酢でしめても、わさびをつけても、幼虫は死なない

4. 調味料では死なない:しめサバが予防にならない理由

おさしみには、わさびや しょうゆを つけます。しめサバには、すも つかいます。でも、ふつうの りょうりで つかう くらいの すや しお、しょうゆ、わさびでは、アニサキスは しにません[3]。

しめサバに しても、よぼうには ならないと いわれて います[4]。

むしは、さかなの みの なかに いる ことも あります。ですから、さしみに ちょっと あじを つける くらいでは、とどかない ばあいが あるのかも しれません。

では、なにを すれば、むしは しぬのでしょう。

「酢でしめれば安心」は誤解

酢や塩、しょうゆ、わさびなどの調味料では、アニサキスは死にません[3]。しめサバにしても、予防にはなりません[4]。ここでいうのは、一般的な料理で使う程度の量や濃さの場合です。

なぜ効かないのか

資料には、効かない理由までは書かれていません。ただ、幼虫は筋肉の中に入ることもあるため、表面に調味料をつけただけでは届かない場面があるのかもしれません。これは資料に書かれた事実ではなく、考えられる一つの見方です。

調味料が効かないなら、何が効くのでしょうか。次の章で、虫が死ぬ条件を見ます。

刺身にわさびやしょうゆを添える、しめサバに酢を使う、といった習慣は、虫の予防とは別の話だ。酢、塩、しょうゆ、わさびなど一般的な料理で使う程度の調味料では、アニサキスは死なない[3]。しめサバにしても、予防にならないとされる[4]。

この「一般的な料理で使う程度」という条件は大事で、資料が述べているのは、日常の調理で使う濃度や時間の範囲での話である。

効かない理由については、資料に書かれていない。幼虫が筋肉の中に入ることもある[4]ことと関係するかもしれないが、因果としては確かめられた話ではなく、推測にとどまる。

調味料が効かないなら、予防は何によるのか。虫が死ぬのは、冷凍と加熱の決まった条件を満たしたときだ。

5. なにを すれば、むしは しぬの?

5. アニサキスを死なせる冷凍と加熱の条件

5. 死滅条件は冷凍と加熱:マイナス20℃24時間、中心60℃1分

むしが しぬ ほうほうは、2つ あります。ひとつは、れいとう です。マイナス20ど いかで、24時間 いじょう ひやすと、しぬと いわれて います[3]。

もうひとつは、かねつ です。さかなの まんなかの おんどが 60どで 1ぷん いじょう なれば、しぬと されて います[3]。

ここで だいじなのは、「おんど」と「じかん」です。ひやす じかんが たりないと、だめな ことが あります。おうちの れいとうこが マイナス20どまで さがるかは、せつめいしょや ひょうじで みられます。

むしの いきかたを しると、おさしみの ちゅういが、りくつで わかります。

主な条件は、冷凍と加熱の2つ

資料によると、アニサキスが死ぬのは、マイナス20℃で24時間以上冷凍したとき、または中心温度が60℃で1分以上になるよう加熱したときです[3]。70℃以上では、すぐに死ぬと説明する資料もあります[4]。

冷凍は時間も大事

冷凍は、マイナス20℃に達していても24時間に満たなければ条件を満たしません。加熱は、表面ではなく中心の温度で見ます。冷凍庫の温度がマイナス20℃まで下がっているかどうかは、家ごとに違います。説明書や表示で確かめられます。

ここまでで、虫の一生と、食べる側の注意がつながりました。では、これを手がかりに、自分でも確かめるには、どうすればよいのでしょうか。

資料が示す死滅条件は、マイナス20℃で24時間以上の冷凍、または中心温度60℃で1分以上の加熱である[3]。70℃以上であれば瞬時に死ぬと説明する資料もある[4]。

重要なのは、冷凍では「温度」と「時間」の組で条件が与えられている点だ。マイナス20℃に達していても、24時間に満たなければ条件を満たさない。加熱は、表面ではなく「中心」の温度で見る。

家庭の冷凍庫が、実際にマイナス20℃以下を保っているかは、機種や使い方で変わる。これは、資料の数値とは別に、家の冷凍庫の説明書などで確かめる必要がある。

こうして整理すると、冒頭の問いに戻れる。アニサキスは、クジラやイルカの胃へ向かう旅の途中にいる幼虫で、人は行き止まりの宿主である。そして、予防の条件は調味料ではなく、冷凍と加熱の温度・時間で決まっている。

6. かみに、むしの たびを かいて みよう

6. 虫の旅を、紙の上でたどってみる

6. 出典で確かめる:一生のめぐりと予防の条件

かみに、むしの たびを やじるしで かいて みましょう。「クジラ」から はじめて、「うんち」「うみ」「オキアミ」「サバ」と つなぎます。

さいごに「ひと」を かく ときは、いきどまりの しるしを つけて みて ください。むしの たびが、どこで とまるのか、めで みて わかります。

おうちの ひとと いっしょに、さかなの パックを みるのも おもしろい です。「なまで たべられる」など、どんな ことが かいて あるか、さがして みましょう。

紙に旅の道すじを描く

紙にクジラ、ふん、海、オキアミ、サバと書いて、矢印でつないでみます。最後に「人」を書き足して、行き止まりの印をつけます。

書き終えたら、「魚の中の幼虫は、何期のままなのか」と、「大人になるのはどこか」を、矢印のそばに書き足してみると、1枚の図で虫の一生を振り返れます。

出典を読むなら

出典欄の愛知県衛生研究所のページは、虫の一生と症状を短くまとめています。農林水産省のページは、大きさ、症状の出る時間、調味料と冷凍・加熱の条件を載せています。島根県のページは、魚が死んだあとの虫の動きに触れています。

出発点になる資料は、愛知県衛生研究所の「アニサキス症」のページ(生活環・腹痛の起こり方)[1]と、農林水産省の「食中毒の原因 アニサキス」のページ(大きさ・症状の時間・死滅条件)[3]だ。魚が死んだあとの虫の動きは島根県のページ[4]にある。

本稿は、書かれた内容を整理したもので、診断や治療の助言ではない。症状があるときは、医療機関に相談してください。読み比べるときは、「冷凍の温度と時間」「一般的な料理で使う程度」という条件の言い回しが、各資料でそろっているかを見るとよい。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文は、ここにある資料の内容を、自分の言葉で言いかえたものです。数字や条件は、資料によって細部が異なることがあります。

  1. 愛知県衛生研究所「アニサキス症」 https://www.pref.aichi.jp/eiseiken/5f/anisakiasis.html (生活環、腹痛の起こり方)
  2. 食品安全委員会 ファクトシート(アニサキス) https://www.fsc.go.jp/factsheets/index.data/factsheets_anisakidae.pdf (魚の中では第3期幼虫のまま。要約をもとにした二次情報)
  3. 農林水産省「食中毒の原因 アニサキス」 https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/foodpoisoning/f_encyclopedia/anisakis.html (大きさ、症状の時間、調味料、冷凍・加熱の条件)
  4. 島根県「アニサキス」 https://www.pref.shimane.lg.jp/life/syoku/anzen/chuudoku/anisakisu.html (死後の筋肉への移動、しめサバ、加熱)
  5. ニューズウィーク日本版(アニサキスの記事) https://www.newsweekjapan.jp/articles/-/13309 (寄生する魚介類の種数、治療。報道記事のため目安として扱う)

なおした ところ

更新履歴

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