1. 大きな 水そうの 中で、ダイバーは なにを して いるの?
1. 水槽の中に潜ったダイバーは、何をしているのか
1. 水槽に潜るダイバーは、何を、どれくらいの頻度で磨いているのか
水族館で、ダイバーが 水そうの 中に いるのを 見た ことが ありますか。あれは、掃除を して いるのです。
おたる水族館では、ダイバーが 水に もぐって、スポンジで ガラスを 中から みがきました。アオウミガメと ねったいぎょの いる、ふかさ 1.8メートルの 水そうです。この 水族館では、まいしゅう 水そうの そうじを して いると つたえられて います。
おおさかの 海遊館には、掃除を する ダイバーが います。ぐんてを して、アクリルガラスを ふくそうです。ある ときは、ワモンアザラシの ミゾレが、ブラシの うごきが きに なって ちかづいて きたと いいます。
では、水を ぬかずに、人が 中に はいって ふく だけで ぜんぶ きれいに なるのでしょうか。
おたる水族館では、2012年12月の大掃除で、ダイバーがアオウミガメと熱帯魚約30匹が入る深さ1.8mの水槽に潜り、スポンジでガラスを内側から丁寧に磨きました[5]。同じ報道によると、この水族館は水槽の掃除を毎週行っているということです。
海遊館には「清掃ダイバー」がいて、軍手をはめてアクリルガラスを掃除します。掃除の時間帯や曜日は決まっておらず、ワモンアザラシの「ミゾレ」が、床をこするブラシなど動くものに興味を示して近づいてくる様子が紹介されています[10]。
外国の例では、米国のナショナル・アクアリウムに、130人以上のスタッフとボランティアのダイバーがいます。60〜90分ごとに交代し、ブラシ、柔らかいミット、高圧洗浄機、バキュームを使って藻やゴミを取ります。アクリルを週3回以上掃除する水槽もあります。使う機械は、生き物の反応を見ながら少しずつ動かして慣らすそうです[11]。これは米国の1館の例で、日本の水族館の数字ではありません。
ガラスや岩を毎日のように磨いても、全部は落とせない汚れがあります。それは、どう落とすのでしょうか。
水槽の中に人が潜ると聞くと、特別な行事のように思えるが、水族館にとってダイバーの手磨きは日常の作業の一部である。2012年12月のおたる水族館の大掃除では、アオウミガメ1頭と熱帯魚約30匹が入る深さ1.8mの水槽に、ダイバーが潜ってスポンジでガラスを内側から磨いた。同じ報道は、この水族館が毎週水槽の掃除をしていると伝えている(検索結果の要約による情報なので、頻度は目安として読む)[5]。
海遊館の「清掃ダイバー」は軍手をはめ、アクリルガラスを掃除する。作業の時間帯や曜日は不定期で、当時1歳だったワモンアザラシの「ミゾレ」が、床をこするブラシなど動くものに興味を示して近づくことがあったと紹介された[10]。生き物がいる水槽の中で作業するのだから、動かし方には配慮が要る。米国のナショナル・アクアリウムは、作業用の機械を、生き物の反応を見ながら少しずつ動かして慣らしていくと説明している[11]。
同館の記事によれば、130人以上のスタッフとボランティアのダイバーが60〜90分交代で、ブラシ、ソフトミット、高圧洗浄機、バキュームを使って藻やゴミを取り、アクリルを週3回以上掃除する水槽もある。ただしこれは米国の1館の事例であり、日本の水族館の頻度や人数にそのまま当てはめることはできない[11]。
では、これだけ頻繁に磨いても残る汚れは、どう処理するのか。
2. 水を ぜんぶ ぬく 日は、なにを するの?
2. 水を全部抜く「落水清掃」の三日間
2. 水を全部抜く落水清掃:手順と、クラゲ水槽で気をつけること
ふだんの 掃除では、おとせない よごれが あります。そこで、きめた ころに 水を ぜんぶ ぬいて あらう 「らくすいせいそう」を する ことが あります。
サンシャイン水族館の 水そう(水 20トン)では、3日 かけて やりました。まず 魚たちを うらの ばしょに うつします。水を ぬいて、塩素で しろく して ばいきんを なくし、あとから 塩素を けす くすりを いれます。水で あらい、コケを 1つずつ 手で おとして、さいごに あたらしい 海の 水を いれます。
20トンは、おふろ 100ぱいぶんほどです(1ぱい 200リットルと した けいさん)。とても たくさんの 水ですね。
クラゲの 水そうは、また べつです。クラゲは 体が ほとんど 水で、やわらかくて よわいので、水ごと そっと すくって うつします。
日々の手磨きでは、アクリルの汚れや人工のサンゴにつくコケ、魚の体に付いた寄生虫まで落としきれません。そこでサンシャイン水族館では、水を全部抜いて洗う「落水清掃」をして、日々の清掃で落としきれない汚れを取ります[1]。
サンシャイン水族館の「大西洋〜カリブ海〜」水槽(海水20トン)では、7月10日から12日までの3日間をかけて行われました。生き物をバックヤードへ移し、水を抜いて塩素で漂白と殺菌をし、中和剤で塩素を消してから水洗いします。コケは1つずつ手作業で落とし、最後に海水を入れ替えます[2]。20トンは、家庭の浴槽(1杯200リットルとして)約100杯分です。
同じ水族館のクラゲの水槽(横幅4m)は、年に3〜4回、大掃除をします。排水に約30分、塩素とスポンジで洗い、中和剤で塩素を取り除き、新しい海水で満たして一晩置き、水温を整えます。クラゲは体がほとんど水分とゼラチン質でもろいため、水ごとそっとすくって移します。アクリルの内側は傷つきやすいことも、気をつける点です[3]。
それなら大水槽でも、全部の水を抜けば安心なのでしょうか。
日常の手磨きで落としきれない汚れがあるため、サンシャイン水族館では、日々の清掃で落とせない汚れを取るため、水を全部抜いて洗う。これを落水清掃という[1]。トラベルWatchの記事は、アクリルの汚れ、人工サンゴのコケ、魚に付いた寄生虫を、日々の清掃では落としきれないものとして挙げている[2]。
サンシャイン水族館の「大西洋〜カリブ海〜」水槽(海水20トン)の落水清掃は、7月10〜12日の3日間だった。魚はバックヤードへ移し、水を抜いて塩素で漂白・殺菌し、中和剤で塩素を取り除いてから水洗いする。コケは手作業で1つずつ落とし、最後に海水を入れ替える[2]。家庭の浴槽を200リットルとして割ると約100杯分にあたる。
水槽が変われば、気をつける点も変わる。同じ水族館のクラゲ水槽(横幅4m)は、年3〜4回大掃除する。排水に約30分、塩素とスポンジで洗い、中和剤で塩素を除き、新しい海水で満たして一晩置いて水温を整える。クラゲは体がほぼ水分とゼラチン質で、もろく弱い生き物であるため、水ごとそっとすくって移す。また、アクリルの内部は傷つきやすい[3]。
塩素で殺菌し、中和剤で消し、水を入れ替える。ここまで徹底した手順なら、水槽は完全にきれいになるように思える。では、大きな水槽ではどうするのか。
4. そうじを した 水そうの 魚が、どうして よわったの?
4. 大掃除をした水槽の魚が弱り、掃除できなかった水槽の魚は元気だった
4. おたる水族館は、なぜ年1回の大掃除のやり方を変えたのか
おたる水族館は、1ねんに 1かい、水を ぜんぶ ぬいて、塩素で 大そうじを して いました。
すると、そうじを した 水そうの 魚が、すこしずつ よわって いきました。そうじが できなかった 水そうの 魚は、げんきでした。
水そうの 中には、目に 見えない バクテリアという 小さな いきものが たくさん いて、水を きれいに たもって いました。塩素の 大そうじで、その バクテリアの はたらきも よわった かも しれません。バクテリアも へって いた ようです。
そこで、水族館は そうじの やりかたを かえました。
バクテリアは、魚の ふんなどから でる、からだに よくない ものを、あまり わるくない ものに かえて くれると いわれて います。
おたる水族館は、年1回、水を全部抜いて塩素で水槽を大掃除していました。すると、掃除をした水槽の魚は少しずつ弱り、掃除できなかった水槽の魚が元気だったことに、職員が気づいたそうです[6]。
背景として語られているのは、水槽の中にいる目に見えない微生物、バクテリアです。バクテリアは水槽の中にたくさんいて、水質を安定させてくれていました。塩素を使った大掃除は、汚れと一緒に、水を守る働き手まで減らしていたのかもしれません。水族館はこれを受けて、掃除のやり方を変えました[6]。新しい掃除の具体的な中身は、報道には書かれていません。
バクテリアの働きは、「硝化」と呼ばれています。魚のふんなどから出るアンモニアを、毒性の低い硝酸塩に変えて水質を保つ働きです。解説では、水槽の中でこの働きを担うのは硝化菌という微生物だといわれています[8]。飼育水をろ過槽に通し、ろ床の細菌が行う硝化反応でアンモニアを魚への毒性が低い硝酸イオンに変える、という大学の解説もあります[12]。
では、大きな水槽では、この水の守り手を、どう生かしているのでしょうか。
おたる水族館は、年に1回、水を全部抜いて塩素で水槽を大掃除していた。ところが、掃除した水槽の魚が少しずつ弱り、掃除できなかった水槽の魚が元気だったことに気づいた。水槽内には目に見えない微生物のバクテリアがいて、水質を安定させていた。塩素を使った大掃除が、汚れと同時にその微生物も減らしていたことが、魚が弱った背景にあると読める。この経験から、水族館は掃除の方法を変えた[6]。
水質を保つ微生物の働きは「硝化」と呼ばれる。微生物がアンモニアから亜硝酸や硝酸を作る作用で、水槽では魚の排せつ物に由来するアンモニアを、毒性の低い硝酸塩に変えて水質を保つ[8][12]。
新しい掃除の中身や、現在の掃除の頻度は、報道では述べられていない。ここから「おたる水族館は大掃除をやめた」と読むのは行き過ぎで、水槽ごとに、汚れを取ることと水質を保つ微生物を残すことの釣り合いを考えるようになった、と受け取るのが資料に沿った読み方である。他の水族館が同じように改めたかどうかも、資料にはない。
では、大きな水槽では、この微生物の働きは、どのように設備として組み込まれているのか。
5. 大きな 水そうの 水は、どうやって きれいに なるの?
5. 大水槽の水を、ろ過装置と微生物がきれいに保つしくみ
5. 650立方メートルの水を約20時間で循環させるろ過装置:砂・微生物・紫外線
かがわけんの 四国水族館には、大きな 水そう「わたつみの けい」が あります。水は 650立方メートルです。ここでは、24じかん うごく 装置が、水を きれいに して います。
水は 水そうから ぬかれて、いくつもの ところを とおります。まず すなで ゴミを とります。つぎに バクテリアが、からだに よくない ものを へらします。そのあと 光で ばいきんを なくし、水の おんどを ととのえて、水そうの 上から もどします。
20じかんほどで、水そうの 水が ぜんぶ いれかわると いいます。これは 四国水族館の この 水そうの 話で、ほかの 水族館も おなじとは かぎりません。
計算すると、1ぷんに ペットボトル(2リットル)で 270ほんぶんの 水が ながれて いる ことに なります。
四国水族館(香川県宇多津町)の大型水槽「綿津見の景」は、水量650立方メートル、水温は23℃前後です。24時間動くろ過装置により、約20時間で水槽の中のすべての水が入れ替わるといいます[7]。これは1つの水槽の例で、すべての水族館に共通する数字ではありません。
水は、まず砂の層を通ってゴミが取り除かれます。次にバクテリアがアンモニアを分解し、紫外線で殺菌し、たんぱく質を取り除き、水温を整えてから水槽の上部に戻します[7]。おたる水族館で気づかれた、微生物が水質を保つ働きが、設備の中に組みこまれていると読めます。
650立方メートルは65万リットルです。約20時間(1200分)で割ると、1分あたり約540リットルになります。2リットルのペットボトルなら270本分です。装置の中を、それだけの水が毎分通る計算です(平均の値で、実際の流量はこの資料からは分かりません)。
ダイバーの手磨き、水を抜く大掃除、ろ過装置と微生物。水族館の水槽は、この3つの役割分担で保たれています。
微生物の働きを、設備として組みこんだ例がある。四国水族館(香川県宇多津町)の大型水槽「綿津見の景」は、水量650立方メートル、水温23℃前後で、24時間稼働するろ過装置により約20時間で水槽内のすべての水が入れ替わる[7]。20時間という数字は1つの水槽の例であり、水族館に共通の値ではない。
水の流れは、砂によるゴミの除去、バクテリアによるアンモニアの分解、紫外線殺菌、たんぱく質の除去、水温調整、水槽上部への戻し、という順になっている[7]。おたる水族館の経験で見えたバクテリアの役割が、ろ過装置の1段として取り入れられていると読める。掃除で消える微生物が、装置の中では水を守る役を負っているわけである。
流量を概算してみる。650立方メートルは65万リットル、20時間は1200分なので、65万÷1200で1分あたり約540リットル、2リットルのペットボトルに換算して約270本分になる。「全部の水が入れ替わる」という表現を、ろ過装置を通る水量の平均と読んだときの計算であり、実際の流量や、水が1回で完全に入れ替わるのかは資料からは分からない。
これで、水族館の水槽が、ダイバーの手磨き(日常)、落水清掃(一定期間ごと)、ろ過装置と微生物(常時)という3つの層で保たれていることが分かる。そして、おたる水族館の経験は、きれいにする作業の側にも「やりすぎ」があり得ることを示した。
6. こんど 水族館に いったら
6. 水族館で、水そうの「手入れ」を探してみる
6. 水槽の手入れを探しに行くとき、出典として読める資料
つぎに 水族館へ いったら、水そうの ガラスを よく 見て みましょう。ダイバーが いたら、手に なにを もって いるでしょうか。
水そうの 上の ほうに、水が もどって くる ばしょが あるかも しれません。係の 人が いたら、「水そうの そうじは、どうして いますか」と きいて みても いいですね。
水族館の ひろばの かんばんや おしらせにも、そうじの ことが のって いる ことが あります。
水族館に行ったら、水槽の中をゆっくり眺めてみましょう。ダイバーがいたら、手に何を持っているか、どこを磨いているかを見ると、報道で読んだ道具や作業とくらべられます。水槽の上のほうに、ろ過された水が戻ってくる場所があるかもしれません。ただし、見える設備は水族館ごとにちがいます。
飼育員さんに質問できる機会があれば、「ふだんはどう掃除していますか」と聞いてみてもよいでしょう。公式サイトやお知らせにも、大掃除の日程やようすが載ることがあります。
水族館を訪れたら、水槽のガラスやアクリルの状態、ダイバーが手にしている道具、水槽の上のほうにある水の戻り口を見くらべてみたい。水槽ごとに掃除の頻度や方法が異なることは、ここまでの資料からも読み取れる。
飼育員に質問できる機会があれば、「ふだんはどう掃除していますか」と聞いてみるのもよい。公式サイトやお知らせに、大掃除の日程やようすが載ることもある。この記事の出典のうち、おたる水族館の2件と四国水族館の1件は地方報道で、原典は出典欄のリンクから開ける。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文の事実は、次の報道・水族館の資料にもとづきます。数字は出典の記載を基本にし、換算値は本文中に計算方法を示しています。
- AFPBB News「サンシャイン水族館クラゲ水槽」 https://www.afpbb.com/articles/-/3188878 (日常の清掃と落水清掃)
- トラベルWatch「サンシャイン水族館」 https://travel.watch.impress.co.jp/docs/news/1515357.html (落水清掃の手順)
- 琉球新報「美ら海水族館のサメ水槽の掃除」 https://ryukyushimpo.jp/news/entry-419624.html (サメ水槽のオリでの掃除)
- 北海道新聞「おたる水族館大掃除」 https://www.hokkaido-np.co.jp/movies/detail/5292949829001/ (ダイバーによる手磨き)
- 北海道新聞「大掃除やめて水質安定」 https://www.hokkaido-np.co.jp/movies/detail/6191194930001/ (大掃除と水質の気づき)
- KSB瀬戸内海放送ニュース(四国水族館) https://news.ksb.co.jp/article/14768605 (ろ過装置の流れ)
- Wikipedia「硝化」 https://ja.wikipedia.org/wiki/硝化 (硝化の説明)
- 北海道新聞「ノシャップ寒流水族館」 https://www.hokkaido-np.co.jp/movies/detail/5975204670001/ (回遊水槽の大掃除)
- ねとらぼ「海遊館の清掃ダイバー」 https://nlab.itmedia.co.jp/cont/articles/3337606/ (清掃ダイバーの様子)
- National Aquarium, Spring Cleaning at the Aquarium https://aqua.org/stories/2025-03-17-spring-cleaning-at-the-aquarium (米国の水族館のダイバーと道具。英語)
- 岡山理科大学 研究・社会連携「施設・設備」 https://renkei.office.ous.ac.jp/ercop/research_item3.html (ろ過槽での硝化反応の説明)
なおした ところ
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