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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

ぎんなんを たべすぎると、どうして からだに よくないの?

ギンナンを食べすぎると、体の中で何が起きるのか

ギンナンの毒はビタミンB6に似た物質とされる:なぜ「何個まで」と言い切れないのか

分野:生きもの

ぎんなんの どくは、やいても、ちゃわんむしに しても、なくなりません。この どくは、からだに ひつような ビタミンB6の「にせもの」の ような ものです。

では、にせものが はいると、どう なるのでしょう。どうして「なんこまで」と いえないのでしょう。このページでは、そのことが わかります。

ギンナンの毒は、焼いても、茶わん蒸しにしても消えません。しかもその正体は、体に必要なビタミンB6によく似た形をした物質で、本物の働きをじゃまするものだと考えられています。

では、にせものが入ると体の中で何が起こり、どうして「何個までなら大丈夫」と言い切れないのでしょうか。この記事を読むと、毒のしくみと、10年分の相談件数からわかる食べる人の特徴が分かります。

ギンナンの有毒成分は4'-O-メチルピリドキシン(以下MPN)で、ビタミンB6と構造が似ており、熱に強いため加熱しても毒性は失われない[1][2]。

では、MPNは体内で何を邪魔するのか。そして、毒の量が個人の栄養状態に左右されるとすれば、なぜ「何個まで」という数字を示せないのか。この記事を読むと、けいれんの機序の仮説と、10年分の中毒相談の年齢・月別の偏りが分かる。

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1. やいても ちゃわんむしに しても、どくは のこる

1. 焼いても茶わん蒸しにしても、毒は残る

1. 加熱しても毒は失われない:食べ方の工夫では防げない

ぎんなんは、いちょうの たねです。かたい からの なかの ぶぶんを、いって たべます。ちゃわんむしに はいっている、あの きいろい つぶです。

この ぎんなんを たくさん たべると、はいたり、体が ひきつる ことが あります[1]。ひきつる ことを「けいれん」と いいます。

「よく ねつを とおせば だいじょうぶ」と おもうかも しれません。でも、この 毒どくは ねつに つよく、にても やいても なくなりません[2]。

だから「なんこ たべたか」と「だれが たべたか」が、だいじに なります。

毎年の秋に出てくる食べ物

ギンナンはイチョウの種子です。熟した実の外側の皮を取り除き、炒るなどして加熱し、固い殻の中の部分を食べます。一度にたくさん食べると、嘔吐やけいれんなどの中毒症状が出ることがあります[1]。

「火を通せば安全」とは言えない

毒は熱に強く、加熱調理しても消えないとされています[2]。焼いても、茶わん蒸しに入れても、毒性が下がるわけではありません。そのため、調理のしかたで毒を抜くことはできず、食べる数を控えめにするしかありません。

では、この毒は体の中で何をしているのでしょうか。

ギンナンはイチョウの種子で、外種皮を除いて加熱し、殻の内側を食用にする。大量に摂取すると嘔吐やけいれんなどの中毒症状が出ることがある[1]。

ここで問題になるのは、有毒成分MPNが熱に安定で、煮ても焼いても毒性が消えないことである[2]。食品の毒には加熱で分解されるものも多いが、MPNにはその逃げ道がない。したがって、調理法では毒を防げない。食べる量や、食べる人の年齢・体調に気をつける必要がある。

では、MPNは体内で何を邪魔しているのか。

2. どくの しょうたいは「ビタミンB6の にせもの」

2. 毒の正体は、ビタミンB6に似た「にせもの」

2. MPNはビタミンB6に似た構造で、本物の働きを妨げる

ビタミンB6は、体の なかで はたらく、たいせつな えいようです。ぎんなんの どくは、この ビタミンB6と ようすが よく にています[1]。

かぎあなに、にた かたちの にせの かぎが はいって、ほんものを はたらけなく する。そんな ふうに かんがえると わかりやすいです。ただし ほんとうの しくみは、もう すこし こまかいです。

ビタミンB6が はたらけないと、神経しんけいを しずめる ものが つくれなく なり、神経しんけいが ふつうより はげしく はたらくと かんがえられて います[1]。それが けいれんです。

いちょうの なかまは ほかに いません。この どくを もつ しょくぶつも、ほかには しられて いません[1]。

鍵穴に入りこむ、よく似た鍵

毒の名前は4'-O-メチルピリドキシンです。ビタミンB6と構造が似ていて、ビタミンB6の作用をじゃまし、中枢神経を異常に興奮させます[1]。毒性は昔から知られていましたが、この成分が分かったのは1980年代に入ってからです[1]。

鍵穴に形の似た別の鍵が入りこみ、本物の鍵が使えなくなる様子を思い浮かべると、イメージしやすいでしょう。ただし、実際は体の中の化学反応の話で、鍵と鍵穴ほど単純ではありません。

神経をしずめる物質が足りなくなる

ビタミンB6は、体の中で活性型のピリドキサールリン酸に変わって働きます。これが不足すると、神経の興奮をおさえるGABAという物質が作られなくなり、神経が異常に興奮して、けいれんが起こると考えられています[1]。香港の毒性植物の資料も、ほぼ同じ流れで説明しています[4]。

この毒を持つ植物は、ほかに知られていない

イチョウは1科1属1種で、近縁の植物がありません。この毒を含む植物も、ほかには知られていません[1]。

MPNはビタミンB6(ピリドキシン)と構造が似ており、その作用を競合的に阻害して、中枢神経系の異常興奮を起こす[1]。毒性自体は古くから知られていたが、成分の解明は1980年代に入ってからである[1]。

けいれんに至る道すじは、次のように考えられている。MPNがビタミンB6の働きを邪魔すると、補酵素型であるピリドキサールリン酸が不足する。するとGABAの合成が滞り、抑制のかかりにくくなった神経系が異常に興奮する[1]。香港の毒性植物資料も、グルタミン酸脱炭酸酵素の阻害によるGABA低下を同様に説明している[4]。ただし、いずれも「と考えられている」段階の説明である。

ビタミンB6は、食事だけで単独に欠乏することは少ない。それでもギンナンの毒や一部の薬で「機能的欠乏」が起こり、けいれんの原因になると、研究会の案内は述べている[3]。体内にビタミンが足りていても、働けなければ欠乏と同じ、というわけだ。

なお、イチョウは1科1属1種で近縁種がなく、MPNを含む植物は他に知られていない[1]。

3. どうして「なんこまで」と いえないの?

3. 「何個まで大丈夫」と、なぜ言い切れないのか

3. 安全な個数が示せない理由:潜在的なビタミンB6不足という個人差

「なんこ たべたら あぶないの?」と、ききたく なりますよね。でも、これは だれにでも あてはまる かずが ありません[1]。

りゆうは、ビタミンB6が どれだけ たりて いるかが、ひとに よって ちがうからです[1]。

たとえば、6〜7こ たべて けいれんを おこした、5さい いかの こどもの れいが あります[1]。ただ、これは「6〜7こで かならず なる」と いう ことでは ありません。

いっぽう、ちゃわんむしに はいって いる くらいの りょうで ぐあいが わるく なった れいは、しらべた センターでは つかんで いません[1]。それでも、ちいさな こには たべさせない ほうが よいと されて います。

6〜7個で症状が出た子がいる

日本中毒情報センターは、6〜7個食べてけいれんが出た5歳以下の子どもの例を把握しています[1]。ただしこれは1つの例の報告で、「6〜7個で必ず中毒になる」という意味ではありません。

茶わん蒸しの数個では、症状の例は把握されていない

茶わん蒸しに入っている程度のギンナンで症状が出た例は、センターでは把握していません。それでも、小さな子には食べさせないほうがよいとされています[1]。

人によって、ビタミンB6の余裕がちがう

個数を決められない理由は、中毒のなりやすさが、食べた人のビタミンB6が潜在的にどれだけ足りないかによって変わるからです[1]。大人でも、偏食や飲酒でビタミンB6が不足した状態だったり、不足を起こしやすい薬を飲んでいたり、たくさん食べたりすると、中毒を起こすことがあります[1]。

では、実際にはどんな人からの相談が多いのでしょうか。

「何個までなら安全か」には、一概に答えられない。理由は、中毒のなりやすさが、食べた人のビタミンB6の潜在的な欠乏状態によって異なるためである[1]。MPNの作用がビタミンB6の働きを邪魔することであれば、元の余裕が小さい人ほど、少ない量でも影響が出うるという筋道になる。ただしこの点は、センターの説明をもとにした筆者の読みである。

センターが把握している例には、6〜7個を食べてけいれんが出た5歳以下の小児がいる。一方、茶わん蒸しに入る程度の量で症状が出た例は把握していない[1]。前者は症例の報告であり、閾値ではない。

成人でも、偏食や飲酒でビタミンB6が欠乏した状態、欠乏を起こしうる薬の服用、大量摂取のいずれかがあると中毒を起こしうる[1]。薬について、研究会の案内は一部の薬物で機能的欠乏が起こりうると述べている[3]。

では、相談の記録は、実際にどんな人に偏っているのか。

4. そうだんが おおいのは、ちいさな こどもと あきの おわり

4. 10年分の相談件数に出る、子どもと秋の偏り

4. 2013〜2022年の中毒相談281件:年齢と月の偏り

にほんちゅうどくじょうほうセンターには、ぎんなんを たべて しんぱいに なった ひとの そうだんが、10ねんで 281けん ありました[1]。

そのうち 193けんは、5さい いかの こどもでした。ぜんぶの うち およそ 7わりです[1]。

つきでは、10がつ、11がつ、12がつが おおく、この 3かげつで、ぜんぶの 3ぶんの 2ほどです[1]。ぎんなんが よく でまわる じきと、かさなります。

こどもの そうだんは、まだ ぐあいは わるくない けれど しんぱい、と いう ものが おおいようです[1]。

相談281件のうち、5歳以下が約7割

2013〜2022年の10年間に、中毒110番へ寄せられた「ギンナンを食べて心配だ」という相談は281件でした。このうち5歳以下が193件で、全体の69%です。1歳代が87件(31%)、2歳代が67件(24%)で、20歳以上も71件(25%)ありました[1]。

10月から12月に、3分の2が集まる

月別では、10月57件、11月74件、12月58件で、3か月で約3分の2を占めます[1]。ギンナンが店に並び、家庭で食べる時期と重なります。

子どもと大人では、相談の中身がちがう

5歳以下の193件で、相談までに症状があったのは35件(18%)で、嘔吐が8件、けいれんが6件でした。大人の71件では48件(68%)に症状があり、悪心と嘔吐が各16件、めまいが9件、けいれんが5件です[1]。子どもの相談は、まだ症状が出ていない段階の心配が多いと読めます。

なお、この数字は「心配する相談」の数であって、中毒になった人の数ではありません。

日本中毒情報センターによれば、2013〜2022年の10年間に中毒110番に寄せられたギンナン関連の相談は281件だった。内訳は5歳以下が193件(69%)、うち1歳代87件(31%)、2歳代67件(24%)、20歳以上が71件(25%)である[1]。

月別では10月57件(20%)、11月74件(26%)、12月58件(21%)で、秋の3か月に約3分の2が集中する[1]。相談件数の多い時期は、ギンナンの旬と重なっている。

症状の有無は年齢で大きく異なる。5歳以下193件のうち、相談時点で症状があったのは35件(18%)で、嘔吐8件、けいれん6件。20歳以上71件では48件(68%)に症状があり、悪心16件、嘔吐16件、めまい9件、けいれん5件だった[1]。子どもの相談の多くは、食べた直後や症状が出る前の心配段階であり、大人の相談は症状が出てからの傾向がある、と読める。

注意すべきは、これは「相談」の件数であって、中毒患者数ではないことである。相談が多い層=発症しやすい層とは限らない。

では、相談件数は年々増えているが、それは中毒が増えたからなのか。

5. そうだんが ふえたのは、ぎんなんが あぶなく なったから?

5. 相談が増えたのは、中毒が増えたからとは限らない

5. 相談件数の増加は何を意味するか:1988年1件から2022年35件へ

そうだんは 1988ねんに 1けん、2008ねんに 27けん、2021ねんは 36けん、2022ねんは 35けん でした[1]。ふえて います。

でも、センターは「たべたあとに、インターネットや SNSで この どくの ことを しって、しんぱいに なる ひとが ふえたのでは」と かんがえて います[1]。びょうきの ひとが ふえたと、きまった わけでは ありません。

もし、たべたあとに ぐあいが わるく なったら、けいれんが くりかえす ことが あるので、かならず びょういんへ いきます[1]。まよったら、ちゅうどく110ばんに でんわで そうだん できます。

1件から36件へ、でも理由はわからない

相談は、1988年に1件、2008年に27件、2021年に36件、2022年に35件と増えてきました[1]。センターは、食べたあとにインターネットやSNSで中毒のことを知り、不安になって相談する人が増えたのではないか、と見ています[1]。相談の増加が、そのまま中毒の増加を意味するとは限りません。

症状が出たら、必ず医療機関へ

症状がある場合は、けいれんが繰り返し起こる可能性があるため、必ず医療機関を受診するよう呼びかけられています。判断に迷うときは、中毒110番に相談できます(大阪は365日24時間)[1]。

毒があると知ったうえで、秋のギンナンをどう楽しむか。最後に、読み終えたあとの観察を考えてみます。

相談件数は、1988年の1件から、2008年の27件、2021年の36件、2022年の35件へと増えている[1]。ただし、センター自身は、食後にインターネットやSNSで中毒を知って不安になり相談する人が増えたのではないか、と推測している[1]。相談の増加を中毒発生の増加と読むには、別の資料が要る。

症状がある場合は、けいれんが繰り返し起こりうるため、必ず医療機関を受診するよう案内されている。判断に迷う場合は中毒110番に相談できる(大阪は365日24時間)[1]。

なお香港の毒性植物資料は、中国と日本で過剰摂取による中毒の報告があるとし、解毒にはビタミンB6の活性型が使われてきたと説明している[4]。この説明は、センターの示す機序の仮説とおおむね同じ筋道であり、本稿では補強として使った。

6. つぎに きに なったら

6. 数字を自分で数えてみると

6. 一次資料を読むなら:相談の統計表の見かた

こんど ちゃわんむしを たべる ときは、ぎんなんが なんこ はいって いるか、かぞえて みましょう。おうちの ひとに、「たべる こと」を はなして みるのも いいですね。

この ページに ある かずは、にほんちゅうどくじょうほうセンターの しりょうで、さがせます。

次に茶わん蒸しを食べるとき、ギンナンが何個入っているか数えてみてください。数えるだけでも、「何個まで」が言い切れない理由が実感しやすくなります。

もう一つ、元の資料を読む手もあります。日本中毒情報センターの案内には、年齢別・月別の表と、よくある質問が載っています。この記事で使った数字がどこにあるかを探してみると、相談件数と中毒患者数の違いも、自分の目で確かめられます[1]。

この記事の数字の多くは、日本中毒情報センターの「ギンナンの食べ過ぎに注意しましょう」(2023年9月29日更新)に基づく[1]。

読むときの手がかりは3つある。①相談件数と患者数は別物であること、②症例の報告と一般的な目安は別物であること、③機序は「と考えられている」段階であること。この3つを区別して読むと、「何個まで」という問いに答えが出ない理由が、資料の側から見えてくる。

また、イチョウは1科1属1種で近縁種がなく、MPNを含む植物も他に知られていない[1]。なぜイチョウだけがこの成分を作るのか、本稿の資料では分からない。残された問いとして、別の資料で調べる価値がある。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文の数字・説明の出どころです。

  1. 日本中毒情報センター「ギンナンの食べ過ぎに注意しましょう」(2023年9月29日更新) https://www.j-poison-ic.jp/wordpress/wp-content/uploads/ginkgo20230929-2.pdf (毒の成分、相談件数、よくある質問)
  2. 大津市保健所「食の安全安心情報」(令和5年9月27日号) https://www.city.otsu.lg.jp/material/files/group/4/230927saaj.pdf (加熱しても毒が消えないこと)
  3. 大阪大学 臨床栄養研究会セミナー案内(講師:岡山大学 秋山倫之、2018年) https://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/hp-kensyu/cms/wp-content/uploads/2019/06/20181015.pdf (ビタミンB6の機能的欠乏)
  4. Hong Kong Hospital Authority Toxicology Reference: Ginkgo biloba https://www3.ha.org.hk/toxicplant/en/ginkgo_biloba.html (けいれんの仕組みの補強)

なおした ところ

更新履歴

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