1. ひとつの のうじょうで、どれ くらい へるの?
1. 1か所の発生が、地域の採卵鶏の約8%にかかわった例
1. 北海道千歳市の例 ── 1か所の発生と道内の採卵鶏の約8%
北海道の 千歳市の れいを 見て みましょう。たまごを うむ 鶏が、1つの のうじょうで やく46万羽 いました。
北海道 ぜんたいで かわれて いる 鶏は 567万羽です。46を 567で わると、やく0.08に なります。つまり、およそ 8%です[1]。
1か所の のうじょうでも、地いきの 鶏の 1わり ちかくが かかわる ことが あるのです。
では、いなく なった 鶏の ぶんを、すぐに おぎなう ことは できるのでしょうか。
北海道千歳市で鳥インフルエンザが発生したときの報道では、対象となる採卵鶏は約46万羽で、道内で飼われている採卵鶏567万羽の8%にあたる、と伝えられました[1]。46を567で割ると約0.081なので、確かにおよそ8%です。
農場1か所の話でも、地域の卵の供給に響きうる規模だということです。ほかの地域の農場から卵が運ばれてくるとはいえ、道内に残る鶏の数は、そのぶん減っています。
鶏が減ったあと、足りない分はどのくらいで補えるのでしょうか。卵が生まれるまでの時間を、順に追ってみます。
2. ひなを 入れたら、すぐ 卵が とれるの?
2. ひなを入れても、卵が出るのは約半年後
2. 卵からひな、成鶏、産卵まで ── 約3週間+20〜22週
たまごが ひなに なる までに、3しゅうかん かかります。そこから ひなが おとなの 鶏に なるまでは、20〜22しゅうかん ほどです[2]。
3と 20を たすと 23、3と 22を たすと 25です。23〜25しゅうかんは、半年に ちかい 長さです。アメリカの せんもんかは、育てて 卵を うむ ように なるまで、やく6か月と せつめいして います[2]。
やさいで たとえると、たねを まいてから、みが なるまで まつ ようすに にて います。ただし 本当は、鶏は 生きもので、天気や 育ち方で 早さが かわります。
では、本当に 値段は そんなに 長く たかいままなのでしょうか。日本の 2023ねんを 見て みましょう。
アメリカのテネシー大学の家禽の専門家は、受精卵がひなにかえるまで約3週間、そのひなが成鶏になるまで約20〜22週間かかると説明しています。さらに、採卵鶏として育てて産卵させるまでを合わせると、約6か月になるといいます[2]。
3週間と20〜22週間を足すと、23〜25週間です。1週間を7日とすると161〜175日で、およそ5か月半から6か月近くになります。専門家の「約6か月」という説明と、ほぼ合っています。20〜22週間は成鶏になるまでの期間で、卵の大きさが整うまでを含めた「約6か月」とは少し数え方が違う、という点には注意が必要です。
この専門家は、2025年1月に失われた採卵鶏は、7月か8月より前には補えないという見方を示しました[2]。卵の不足は、鶏が減った時点でなく、その半年あとまで続く可能性があるわけです。
この「半年のずれ」は、日本の数字にも出ているのでしょうか。
テネシー大学の家禽専門家の解説は、受精卵がひなにかえるまで約3週間、ひなが成鶏になるまで約20〜22週、採卵鶏を育てて産卵させるまでを合わせて約6か月、と区切って示す[2]。
この区切りを足し合わせると、3週+20〜22週=23〜25週(161〜175日)となり、約5.3〜5.8か月だから、「約6か月」とほぼ一致する。ただし20〜22週は成鶏になるまでの期間であり、卵の大きさが整うまでの期間を含めた「約6か月」とは数え方がやや異なる。この解説では、2025年1月に失われた採卵鶏は7月か8月より前には補えないとされる[2]。
つまり、供給が戻る時期を考える手がかりの一つは、補充のひなが産卵を始める日だ。これは米国の説明であり、日本の飼育環境で同じ日数になるとは限らない。ただ、日本側の数字(次章以降)と並べると、同じ向きのずれが見えてくる。
3. 2023ねんの 卵は、いくらに なったの?
3. 2023年、東京の卸売価格は前の年より136円高かった
3. 2022〜23年の流行 ── 過去最多の殺処分と6月の卸売価格
2022ねんの あきから 2023ねんの はるまで、日本の 26の 道と 県で、鳥インフルエンザが おこりました。このとき いなく なった 鶏は、ぜんぶで 1771万羽でした[3]。
かんせんが 見つかったのは、4月7日が さいごです。6月20日に、「おさまった」と ほうこくされました[3]。
ところが、6月の 東京の おろしうりの ねだんは、1キロで 349円でした。前の としの 同じ 月より 136円 たかい ねだんです[3]。
349から 136を ひくと 213円です。349を 213で わると やく1.6ですから、およそ 1.6ばいです。
かんせんが とまっても、すぐには もどらない ようすが 見えます。もう 1つの 年も 見て みましょう。
2022年の秋から2023年の春にかけての流行では、日本の26道県で、過去最多の約1771万羽の鶏が殺処分の対象になりました[3]。シーズンの途中の段階でも、998万羽に達して、2020年度の987万羽を上回っていた、と農林水産省の発表を引いて報じられています[4]。998万羽は途中の数字で、最終的な1771万羽とは時点が違います。
感染が確認されたのは4月7日が最後で、6月20日に収束が宣言されました[3]。それなのに、6月の東京の卸売価格は1kgあたり349円で、前の年の同じ月より136円高いままでした[3]。
349円から136円を引くと、前の年の6月は213円です。349÷213は約1.64なので、およそ1.6倍に当たります。
この資料の組み合わせから、感染の収束と卵の値段が同じ日に戻るわけではない、と読めます。産卵が再開するまでの時間が一因の可能性はありますが、この価格の動きだけでは、その影響の大きさまでは切り分けられません。また、この時期の卵が高かった理由は、鳥インフルエンザだけではありません。北海道新聞は、生産にかかる費用が上がったことも理由に挙げています[1]。
では、もう1つの年、2025年はどうだったのでしょうか。
2022年秋から2023年春の流行では、農林水産省の発表を引いた報道が、シーズンの途中で殺処分が998万羽に達し、2020年度の987万羽を超えて過去最多になったと伝えた[4]。のちに最終の数字が約1771万羽となり、26道県に及んだ[3]。998万羽は途中の数字なので、最終の1771万羽と混ぜて比べない。また、これらは殺処分の合計で、卵を産む鶏だけの数かどうかは、引いた資料の範囲では分からない。
感染が最後に確認されたのは4月7日で、6月20日に収束が宣言された[3]。ところが、同じ6月の東京の卸売価格は1kgあたり349円(前月比1円安)で、前年同月より136円高かった[3]。
前年同月は349−136=213円で、349÷213≒1.64、約1.6倍となる。感染が止まっても価格がすぐ戻らなかった一因として、前章で見た、補充した鶏が産卵を始めるまでの時間差も考えられる。ただし、この価格推移だけでは、その影響の大きさを切り分けられない。資料自体も、この価格上昇を鳥インフルエンザの結果としてのみ書いているわけではない。北海道新聞は、卵不足の理由として生産費の増加を挙げている[1]。したがって、半年の時間差だけで価格を説明することはできない。
もう1つの年の数字も、同じ視点で見ておく。
4. 2025ねんの はじめは、どう なったの?
4. 2025年1月は単月で最多の648万羽、「夏ごろまで」の見通し
4. 2025年1〜2月 ── 単月最多の殺処分と「夏ごろまで」の見方
2025ねんの 1月には、いなく なった 鶏が、1か月で 648万羽に なりました。これは 1か月の 数としては、いちばん 多い ものです[5]。
2月の 東京の おろしうりの ねだんは、1キロで 315円でした。ことしの はじめより、4わり たかく なって いました[5]。
鶏は、生まれて 半年ほどから 卵を うみます。ですから、お店や 市場で はたらく 人たちは、夏ごろまで たかい 値段が つづく かも しれないと 見て いました[5]。
アメリカの せんもんかも、7月か 8月までは、おぎなえないと 話して います[2]。べつの 国の 2つの せつめいが、同じ ころを さして います。
では、この 時期の 卵は、食べても 大じょうぶなのでしょうか。
2025年1月は、殺処分の対象となった鶏が単月で最多の648万羽に急増しました[5]。2月には、東京地区Mサイズの卸売価格が1kgあたり315円になり、年初から4割上がったと報じられています[5]。
この記事は、鶏が生後半年ほどから卵を産むことをふまえて、流通関係者が夏ごろまで高値傾向が続くと見ている、と伝えています[5]。これは見通しで、実際にその時期まで続いたかどうかを、この資料では示していません。
注目したいのは、日本の関係者の「夏ごろ」と、アメリカの専門家の「7月か8月より前には補えない」が、ほぼ同じ時期を指していることです[2]。1月から約6か月数えると、7月ごろになります。国も資料も別ですが、同じ時間の長さから導かれた見方だといえます。
ところで、こうして高くなった卵は、安心して食べられるのでしょうか。
2025年1月、殺処分の対象となった鶏は単月で最多の648万羽に急増した[5]。2月には東京地区Mサイズの卸売価格が1kgあたり315円となり、年初から4割上昇した[5]。ここで「東京地区M」と限定されているとおり、全国の小売価格の平均ではない点は押さえておく。
この記事は、鶏が生後半年ほどから卵を産むことを前提に、流通関係者が夏ごろまで高値傾向が続くと見ていたと伝える[5]。ここで「見ていた」とあるように、これは当時の見通しであり、実際の推移を示したものではない。
注目すべきは、日本側の「夏ごろまで」と、米国の専門家の「7月か8月より前には補えない」[2]が、1月から約6か月という同じ時間の長さに根ざしていることである。生後半年ほどから産卵という日本側の前提と、20〜22週で成鶏、全体で約6か月という米国側の説明は、数え方は違っても、時間の長さはほぼ重なる。別の国・別の出典の見通しが、約半年という時期で重なっていると読める。
次に、高値の卵の安全性という、別の疑問に移る。価格の話と安全の話は、混ぜずに見る必要がある。
5. 卵や 鶏肉は、食べても 大じょうぶ?
5. 値段が上がった卵は、食べて安全なのか
5. 価格の話と安全の話は別 ── 農林水産省・栃木県の説明
農林水産省は、鶏肉や 卵を 食べる ことで 鳥インフルエンザが うつるのかに ついて、ホームページで せつめいして います[6]。
鶏肉や 卵を 食べて、人が 鳥インフルエンザに かかった れいは、世界でも ほうこくされて いません。ウイルスは さんに よわく、人の おなかの 中の さんで 力を うしなう、とも せつめいされて います[7]。
日本の 卵は、せんじょうされて、しょうどくされて います[7]。
また、日本では 毎年、鳥インフルエンザが 見つかって います[6]。ですから、どう はたらくかを 知って おくと、ニュースが 分かりやすく なります。
農林水産省は、鶏肉や鶏卵を食べることによる鳥インフルエンザの感染について説明しています[6]。栃木県のページによれば、鶏の肉や卵を食べたことによる、人への鳥インフルエンザの感染は、世界的にも報告されていません。ウイルスは酸に弱く、胃酸で感染性を失う、という説明もあります[7]。
国産の卵は、厚生労働省の衛生管理の要領にしたがって、GPセンターで洗卵・消毒されています[7]。値段が上がった理由(供給の減少)と、食品としての衛生管理や感染の説明は、別々の話です。
農林水産省は、高病原性鳥インフルエンザが世界的に大発生していて、日本でも毎年発生が認められると述べています[6]。毎年起こりうるなら、次にニュースを見たときに、何を確かめればよいのでしょうか。
農林水産省は、鶏肉・鶏卵を食べることによる鳥インフルエンザの感染について説明している[6]。栃木県のページは、家きんの肉や卵を食べたことによる人への感染は世界的にも報告がなく、ウイルスは酸に弱いため胃酸で感染性を失う、と説明する[7]。
国産の卵は、厚生労働省の衛生管理要領に基づき、卵の選別包装施設(GPセンター)で、次亜塩素酸ナトリウムなどを含む洗浄水で洗卵・消毒される[7]。価格が高くなる理由(供給の減少)と、食品としての衛生管理や感染の説明は、別々の話だ。
さらに、農林水産省は、高病原性鳥インフルエンザが世界的に大発生しており、日本でも毎年発生が認められると述べる[6]。発生が毎年あるなら、卵の値段のニュースを見る側の準備として、時間のずれを前提に読む視点が役に立つ。
6. 自分で たしかめて みよう
6. 次に値段のニュースを見たら、何を数えるか
6. 数字を自分で置きかえて確かめる ── 時間と価格の2つの見方
まず、お店で 卵の パックの 値段を 見て、ノートに 書きましょう。1しゅうかんに 1回で かまいません。何週間か つづけて 見ると、上がったり 下がったり する ようすが わかります。
つぎに、ニュースで「鶏が へった」と 聞いた 日を おぼえて おきます。その日から やく6か月後を、カレンダーで 数えて みましょう。たとえば 1月なら、7月ごろです。その ころの ねだんが どう なって いるか、見て みます。
おうちの 人と いっしょに、農林水産省の ホームページも 見て みましょう。鳥インフルエンザの ページに、毎年の ようすが のって います。
家の近くのお店で、卵のパックの値段を週に1回ノートに書いてみましょう。何週間か続けると、上がり下がりの形が見えてきます。
次に、「鶏が大きく減った」という報道を見かけたら、その日付を書き留めて、約6か月後をカレンダーで数えます。1月なら7月ごろです。その時期の値段のニュースと見比べると、この記事の「半年のずれ」が当てはまるか、自分の目で確かめられます。2023年のように、生産費の上昇など別の理由が重なる年があるので、ずれの大きさは年によって違うかもしれません。
農林水産省の高病原性鳥インフルエンザのページには、毎年の発生の様子がまとまっています。報道の数字と、国の説明とを見比べるのも、数字の読み方の練習になります。
確かめ方は2つある。1つ目は、時間の側。「鶏が大きく減った」という報道の日付から、約6か月(23〜25週)後がいつかをカレンダーで数え、その時期の卸売価格の報道と見比べる。2023年のように、生産費の上昇が重なる年もあるので、ずれの大きさは年ごとに違いうる。
2つ目は、価格の側。報道が「東京地区Mサイズ」「前年同月比」「1kgあたり」のどれを指しているかを読み分ける。同じ「卵の値段」でも、卸値と店の小売価格は別のもので、東京のMサイズが全国の価格を代表しているわけでもない。身近なところでは、店頭のパックの値段を週に1回ノートに記録しておけば、報道の卸値の動きと見比べられる。
原典として、農林水産省の高病原性鳥インフルエンザのページ、栃木県の食品の安全性の説明、テネシー大学の家禽専門家の解説は、本文で使った数字や説明の根拠になっている。時間の長さの違い(日本は生後半年ほど、米国は約20〜22週で成鶏、約6か月で産卵)を、自分で表にして比べるのもよい。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:北海道新聞、テネシー大学の家禽専門家の解説、ビジネス+IT、CNN.co.jp(農林水産省の発表を引いた記事)、マイナビ農業、農林水産省、栃木県の説明を使いました。
- 北海道新聞「千歳の養鶏場で鳥インフルエンザ」。 https://www.hokkaido-np.co.jp/article/1292486/ (千歳市の例の羽数・道内の割合と、生産費の増加について)
- University of Tennessee Institute of Agriculture(家禽の専門家の解説)。 https://utpoultry.tennessee.edu/high-egg-prices-expected-to-go-higher/ (ひなから成鶏、産卵までの期間について)
- ビジネス+IT「卵の価格」に関する記事。 https://www.sbbit.jp/article/refers/117574 (2023年の殺処分数・収束宣言・6月の卸売価格について)
- CNN.co.jp(農林水産省の発表を引いた記事)。 https://www.cnn.co.jp/business/35198516.html (シーズン途中の殺処分数が過去最多になったことについて)
- 農林水産省「高病原性鳥インフルエンザに関する情報」。 https://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/tori/index.html (毎年の発生と、鶏肉・卵の安全について)
- 栃木県「鳥インフルエンザと鶏肉・鶏卵」。 https://www.pref.tochigi.lg.jp/e07/life/shokuseikatsu/eisei/tori-influenza-keiniku-keiran.html (洗卵・消毒と、人への感染が報告されていないことについて)
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