1. ミツバチの ごはんは、2しゅるい
1. 蜜は主食、花粉はおかず。ミツバチの食事は2本立て
1. 糖の蜜と、栄養の花粉:成虫の食事の分担
花に とまった ミツバチを、見た ことが ありますか。あれは、ごはんを あつめて いるところです。
ミツバチが あつめる たべものには、みつと 花粉が あります。ひとつめは、花の みつです。あまくて、からだを うごかす ちからの もとに なります[1]。
ふたつめは、花粉です。こちらは、からだを つくる もとが たくさん はいって いて、ごはんで いえば おかずです。
みつは、ごはんです。花粉は、おかずです。ミツバチは、この ふたつを たべ わけて います。
ただし、本当に おかずが なければ、こまります。からだを つくる ものは、ほとんど 花粉から とって いると いわれます[2]。みつは、ちからの もとと して、なくては ならない ものです。
花の上で集めているのは、2種類の食べ物
花にとまったミツバチは、蜜を吸ったり、花粉を集めたりしています。この2つは、ミツバチにとって役割がまったく違う食べ物です。
蜜は糖が主体で、体を動かすエネルギー源になる主食にあたります。一方、花粉はタンパク質が豊富で、人間の食事にたとえると、おかずにあたる食べ物です[1]。
おかずがないと、体をつくる材料が足りない
ある総説では、ミツバチが必要とする脂質・タンパク質・ミネラル・ビタミンは、ほぼ花粉から得られるとされています[2]。蜜に栄養がないわけではなく、蜜はエネルギーを、花粉は体をつくる材料を受け持つ、という分担です。
では、この2つを、働き手のミツバチはどうやって巣へ持ち帰るのでしょうか。
2. 花粉を 足に つけて はこぶ
2. 後ろ脚の花粉団子から、巣の中の「蜂パン」まで
2. 運搬と貯蔵:花粉団子とビーブレッドになるまで
ミツバチは、花粉を うしろあしに つけて はこびます。花粉に みつを まぜて、まるく かためた、花粉だんごです[1]。
すに かえると、すの中の あいている はちの へやに、あたまで ぎゅっと おしこみます[3]。
その あとも しごとは つづきます。花粉に みつと つばを まぜて、へやに つめると、「ビーブレッド」に なると いわれます[2]。ハチの パンの ような ものです。
後ろ脚につけて運ぶ
ミツバチは、集めた花粉に蜜を混ぜて丸め、後ろ脚につけて巣へ運びます。これが花粉団子です[1]。遠くの花で見つけた食べ物を、足先に乗せて持ち帰るわけです。
頭で詰め込み、ビーブレッドに変わる
巣に着くと、花粉は空いている巣房に落とされ、頭で詰め込むようにして押しつぶされて貯蔵されます[3]。この花粉は、ミネラルやタンパク質、ビタミンが豊富な食事として、ふだんから食べられています。
貯めた花粉は、蜜やだ液と混ぜて巣房に詰められ、ビーブレッド(蜂パン)になると説明されています。タンパク質は乾燥した重さの約17〜30%で、花粉の種類によって幅があります[2]。
ところで、蜜のほうは、そのまま食べられているのでしょうか。
蜜は、巣の中で蜂蜜に仕立てられる
蜜は、外で働く蜂が胃にためて持ち帰り、仲間に口移しで渡します。受け取った蜂は薄く引き延ばして水分を飛ばし、だ液の酵素でショ糖がブドウ糖と果糖に変わって、蜂蜜になります[3]。ここでは、主食として貯めるまでの流れだけにとどめます。
集めた花粉は、後ろ脚に花粉と蜜を混ぜて丸めた花粉団子としてつけて巣へ運ばれる[1]。巣に着くと、空いた巣房に落とされ、頭で詰め込むようにして潰されて貯蔵される[3]。
だが、貯蔵した花粉はそのままではなく、蜜とだ液を混ぜて巣房に詰められてビーブレッド(蜂パン)になる、と総説は述べる。タンパク質は乾燥重量で約17〜30%とされるが、この幅は花粉の種類による差であり、一つの値で言い切れない[2]。
一方、蜜は、外勤の蜂が胃にためて持ち帰り、巣の中の蜂に口移しで渡す。受け取った蜂が薄く引き延ばして水分を飛ばし、だ液の酵素がショ糖をブドウ糖と果糖に変えると蜂蜜になる[3]。蜂蜜づくりの詳細は別の主題なので、ここでは「主食を貯める工程」として位置づけるにとどめる。
食べ物をこれだけ手間をかけて貯めるのは、誰のためか。成虫の食事だけでなく、巣の中には、まだ自分で食べ物を集められない幼虫がいる。
3. あかちゃんの ごはんは、おとなと ちがう
3. 幼虫には、ローヤルゼリーが与えられる
3. ローヤルゼリーの出どころと、幼虫の餌の切り替え
すの なかの 幼虫には、とくべつな ごはんが あります。ローヤルゼリーです。しろい ミルクの ような ものです[4]。
これは、生まれて 1しゅうかんくらいの わかい はたらきバチが、あたまの 中の ところから だします。いわば、こそだて がかりの しごとです。
はたらきバチに なる 幼虫は、3日目まで ローヤルゼリーを もらいます。そのあとは、みつ・ローヤルゼリー・花粉を まぜた ごはんに かわります[2]。
女王バチは、ちがいます。女王に なる 幼虫は、ずっと ローヤルゼリーだけを たべると いわれます。
ローヤルゼリーは、若い働きバチの分泌物
幼虫の食事の中心にあるのが、ローヤルゼリーです。育児係とよばれる若い働きバチが、頭の腺から出す、高タンパクの乳白色の液だと説明されています[4][2]。
働きバチと女王バチで、食事が分かれる
働きバチの幼虫は、ふつう3日目までローヤルゼリーを与えられ、その後は蜂蜜・ローヤルゼリー・花粉の混ぜ物で育てられます。女王バチは、一生ローヤルゼリーだけを食べるとされます[2]。
つまり、巣の中では、同じ幼虫の時期でも、食べ物が与えられ方によって分かれていることになります。
ところで、このローヤルゼリーは、どうやって作られるのでしょうか。作る側の若い蜂は、何を食べているのでしょう。
4. ローヤルゼリーを 作る 係は、なにを たべる?
4. ローヤルゼリーを作るには、花粉が欠かせない
4. 花粉→育児係→ローヤルゼリー:食べ物がつながる条件
ローヤルゼリーを 作る わかい ハチは、あたまの ところが よく はたらかないと、うまく 作れません。
その ために いるのが、花粉です。花粉を たくさん たべると、ところが そだって、ローヤルゼリーを だせるように なると いわれます[7]。
つまり、花粉は、わかい ハチの ごはんで あり、幼虫の ごはんの もとにも なって います。花から すへ、すから 幼虫へ、ごはんは つながって います。
花粉は、育児係の「材料」になる
ローヤルゼリーを出す育児係の腺は、花粉を食べることで発達する、と紹介する論文があります。花粉は、ローヤルゼリーを出す腺の発達に欠かせないとされています[7]。
ここで、食べ物が1本の線でつながって見えてきます。外の花で集められた花粉が、巣の中で若い蜂に食べられ、その体から出る液が幼虫の食べ物になる、という流れです。
成虫のおかずが幼虫の食事の材料になっているので、花粉は、幼虫の食べ物を作る材料にもなっていることになります。
育児係の下咽頭腺が発達し、ローヤルゼリーを分泌できるようになるには花粉の摂取が必要だ、という趣旨の記述がある[7]。この点は、要旨レベルの記述であり、条件ごとの詳しい数字までは扱わない。
この流れを整理すると、外勤蜂が花粉を集め、貯蔵された花粉やビーブレッドを育児係が食べ、その腺が幼虫の餌を作る、という連鎖になる。成虫が食べる「おかず」は、成虫自身の体づくりだけでなく、次世代の餌の原料にもなっているわけだ。
ここまでミツバチの話をしてきたが、同じ「大人と子どもで食べ物が違う」例は、スズメバチにもある。
5. スズメバチの こどもには、むしの にくだんご
5. スズメバチの幼虫は、虫の肉団子で育つ
5. スズメバチ属の幼虫の餌:種ごとに違う肉団子
スズメバチの こどもは、ミツバチの こどもとは、まったく ちがう ものを たべます。むしの にくだんごです。
おとなの ハチが かりに でかけます。つかまえた えものを かみくだき、まるめて、すに もちかえります[5]。
なにを つかまえるかは、スズメバチの しゅるいで ちがいます。オオスズメバチは、コガネムシや カマキリなど、大きな むしを ねらいます。
クロスズメバチは、ハエや ちいさな むしを つかまえます。あたらしい 動物の にくも、ちいさな だんごに して あげる ことが あるそうです[6]。
幼虫の食べ物は、狩りで集める
スズメバチの幼虫は、ミツバチの幼虫とは違い、虫の肉を食べて育ちます。成虫が獲物を噛み砕いて肉団子にして、巣へ持ち帰って与えます[5]。
どんな獲物を選ぶかは、種ごとに違う
名古屋市の資料によると、オオスズメバチはコガネムシやカマキリなど大形の昆虫を狩ります。クロスズメバチはハエや小さな虫を狩るほか、カエルなどの新鮮な動物の肉も小さな肉団子にして幼虫に与えるそうです[6]。
同じスズメバチの仲間でも、幼虫が食べる「おかず」は、狩る相手の大きさや種類で変わります。
ここまで見ると、スズメバチは肉食の昆虫に見えます。けれども、狩りをする当の成虫は、自分では何を食べているのでしょうか。
スズメバチ属の幼虫の餌は、成虫が狩った動物質である。成虫は獲物を噛み砕いて肉団子にし、巣へ持ち帰って幼虫に与える[5]。
ただし、何を狩るかは種で異なる。名古屋市の資料では、オオスズメバチはコガネムシ・カマキリなど大形の昆虫を、クロスズメバチはハエやチョウ・ガの幼虫など小型の昆虫を狩り、カエルなどの新鮮な動物の死体の肉も小さな肉団子にして与える、と整理されている[6]。
ここで注意したいのは、これが「スズメバチ属の餌の全体像」ではなく、2種についての記述だという点だ。種による差は大きく、狩る相手のサイズが肉団子の作り方にも影響しうる。
では、狩りをして肉団子を作る成虫自身は、その肉を食べないのか。
6. おとなの ごはんは、こどもが だす えき
6. 成虫が食べるのは、花蜜と樹液と、幼虫の出す液
6. オオスズメバチ成虫の食事:花蜜・樹液と幼虫の分泌液
おとなの オオスズメバチは、じつは、にくを たべないと いわれます[5]。
つかうのは、花の みつや、木の じゅえきなどです。そして、幼虫の だす えきです。
ほかの スズメバチの おとなも、じゅえき・くだもの・花の みつを つかう といいます[6]。
つまり、かりは「こどもの ため」の しごとです。おとなは、こどもに にくを あげて、こどもの だす えきを もらう。そんな やりとりが、すの なかで おきて います。
オオスズメバチの成虫は、肉を食べない
オオスズメバチの成虫は、意外なことに、花蜜や樹液などを利用し、幼虫の分泌液も摂ると紹介されています[5]。名古屋市の資料でも、オオスズメバチの働きバチは樹液、果実、花蜜などを餌として利用するとされています[6]。
肉団子は、成虫自身の食事ではなく、幼虫の餌なのです。
幼虫の出す液をもらう
では、幼虫の分泌液とは何でしょうか。資料では、成虫が幼虫に肉団子を与える代わりに、幼虫が出す液を成虫が摂る、と紹介されています。食べ物のやりとりが、大人と子どもの間で双方向になっているわけです。
この液の成分や量については、ここでは詳しい数字を使いません。
オオスズメバチの成虫は、花蜜や樹液などを利用し、幼虫の分泌液も摂ると紹介されている[5]。名古屋市の資料も、オオスズメバチの働きバチは樹液・果実・花蜜などを餌にすると述べ、整合している[6]。
この資料では、成虫は肉を食べず、狩りの成果である肉団子は幼虫の餌とされる。そのため、幼虫は肉団子を受け取り、見返りに分泌液を成虫に渡す、という双方向の栄養のやりとりが成り立つ。
ただし、この記述はオオスズメバチについてのもので、スズメバチ属の全種に当てはまるとは限らない。幼虫の分泌液の成分については、ここでは数値を扱わない。
ミツバチとスズメバチを並べると、どちらも「大人の食べ物」と「子どもの食べ物」を分け、その間を成虫が仲立ちする点が共通する。ただし、仲立ちの中身は、花粉から液を作る育児係と、肉団子と液を交換する成虫とで、まったく違う。
7. ハチを 見つけたら、ごはんを 見て みよう
7. ハチを見かけたら、何を持っているかを見る
7. ミツバチの花粉団子を観察し、資料をたどる
花が さいて いる ところで、ミツバチを さがして みましょう。あしに、まるい かたまりを つけて いるかも しれません。花粉だんごです。
ただし、ちかづきすぎは きけんです。さわったり、おいはらったり しては いけません。すや、スズメバチを 見かけたら、すぐに はなれて ください。
もっと しりたい ときは、おうちの 人と、名古屋市の スズメバチの ページを 見て みましょう。
今日できること
花の咲いている場所で、少し離れてミツバチを探してみましょう。後ろ脚に丸いかたまりがついていれば、それが花粉団子かもしれません。蜜を集めているのか、花粉を集めているのかを、見分けてみます。
巣やスズメバチには近づかないでください。さわったり追い払ったりせず、見つけたらすぐに離れます。
資料を探すなら
名古屋市の「スズメバチの生態」のページには、種ごとの餌の違いが整理されています。ミツバチ全般については、ホンダの「森の図書館」が読みやすくまとまっています。大人と子どもの食べ物が分かれていることを知ると、同じハチの姿が、少し違って見えてきます。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
この記事で使った資料です。本文の[ ]の数字と対応しています。
- Honda「森の図書館:ミツバチ」 https://global.honda/jp/philanthropy/hondawoods/forest/library/058/ (蜜が主食、花粉がおかず、花粉団子)
- Bee Products(PMC9204823) https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9204823/ (花粉の栄養、ビーブレッド、幼虫の餌。英語の総説)
- tenki.jp(日本気象協会)みつばちの日 https://tenki.jp/suppl/kous4/2020/03/08/29725.html (花粉の貯蔵、蜂蜜になるまで)
- コトバンク「ミツバチ」 https://kotobank.jp/word/%E3%83%9F%E3%83%84%E3%83%90%E3%83%81-138941 (ローヤルゼリーの出どころ)
- tenki.jp(日本気象協会)スズメバチ https://tenki.jp/suppl/kous4/2021/09/01/30594.html (オオスズメバチの成虫の食べ物、肉団子)
- 名古屋市「スズメバチの生態」 https://www.city.nagoya.jp/kenkofukushi/eisei/1015269/1034848/1015298/1034489/1034408/1015333.html (種ごとの幼虫の餌、成虫の餌)
- Scientific Papers Series D, Animal Science(2022) https://www.animalsciencejournal.usamv.ro/pdf/2022/issue_2/Art40.pdf (育児係の腺と花粉。英語の論文)
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