1. なかみは しろいのに、みみだけ ちゃいろい わけ
1. 同じパンなのに、耳だけ茶色くなる理由
1. クラムは約100℃で止まり、クラストは100℃を超える
パンを オーブンで やくと、まわりから あつく なります。パンの 外がわの みずは、まず かわいて いきます。
みずが へった 外がわは、100ど(℃)を こえて、オーブンの 中の あつさに ちかづきます[1]。これが みみです。
いっぽう、なかみは みずが たっぷり のこり、100どの まわりで とどまります[1]。
では、みずが へって あつく なると、どうして ちゃいろに なるのでしょうか。
水が先に逃げた場所が、耳になる
パンを焼くと、表面の水分がまず蒸発し、その「蒸発の前線」が少しずつ内側へ進みます。水が抜けた外側の層は、温度が100℃を超えて、オーブンの温度に近づいていきます。この層が耳で、水分が少なくなります[1]。
内側の中身は、水分があまり変わらず、温度は100℃前後にとどまります[1]。「約100℃」は目安で、いつもぴったり100.0℃という意味ではありません。
水があるうちは、熱が水を蒸発させるのに使われるので、温度が上がりにくい。フライパンの水がなくなってから焦げ目がつくのと似ています。ただし、パンの中では水が動いたり、すき間があったりして、もっと複雑です。
では、100℃を超えると、なぜ茶色になるのでしょうか。
焼成中のパンでは、表面から水が蒸発し、蒸発の前線が内部へ進む。外層は水分が減って温度が100℃を超え、オーブン温度に漸近する。この層がクラストで、水分が少ない。内側のクラムは水分がほぼ変わらず、温度は100℃前後にとどまる[1]。「約100℃」は目安で、常に100.0℃ではない。
水があるあいだは、熱が水の蒸発に使われ、温度が頭打ちになる。この差が、同じパンの中に温度の違う2つの領域をつくる。では、100℃を超えた領域で何が起きて、色がつくのか。
2. ちゃいろの しょうたいは なに?
2. 茶色の正体は、糖とアミノ酸がつくる物質
2. 褐変の2つの経路 ── メイラード反応とカラメル化
パンの ちゃいろは、おもに ふたつの できごとで うまれると いわれます[2]。ひとつは、さとうの なかまが ねつで ちゃいろく かわる こと(カラメル)。もうひとつは、さとうと、からだを つくる もとになる アミノさんが、ねつで くっつく はんのうです[1]。
この はんのうを、「メイラードはんのう」と いいます。はんのうが すすむと、さいごに ちゃいろの おおきな つぶが できます[1]。
ブロックを つなぐ ようすに にて います。ちいさな ブロックが つながって、おおきな かたまりに なると、いろが ついて みえるのです。ただし ほんとうは、くっつき方は ひとつでは ありません。
3. いい においは、はんのうの とちゅうで できる
3. 焼きたてのにおいは、反応の途中でできる
3. 香気成分はストレッカー分解など中間段階で生じる
はんのうは、いきなり ちゃいろく なる わけでは ありません。とちゅうで、においの もとにも なる ものが できます[1]。
だから、パンの みみが ちゃいろに なる ころ、いい においが して きます。においの もとは はんのうの とちゅうで、ちゃいろの つぶは おわりに できるのです。ほかの できごとも、においに かかわります。
においは、あつさや、くっつく アミノさんの しゅるいで かわります。パンを やく ときは、こげたような においや、カラメルの においが します。ナッツや、パンらしい においも あります[6]。
香りの元になる中間生成物
反応の中間段階では、ストレッカー分解という変化が起こり、これが香りの元になる物質を生みます[1]。つまり、においは反応の途中、茶色の物質は最後。香りは同じ反応の途中、色は最後の場面に出てきます。なお、パンの香りには、カラメル化など別の変化も関わると考えられます。
パンが茶色くなるころに香ばしいにおいが立つのは、このためだと考えられます。
香りの種類は、条件で変わる
反応する糖やアミノ酸の種類、温度によって、できる香りも変わります。パンの焼成では、焦げ臭、カラメル臭、ナッツのような香り、パンらしい香りが生じる、と説明されています[6]。同じ反応でも、条件が変わると、別の香りになります。
4. はじめに きづいた 人は、だれ?
4. この反応に気づいたのは、フランスの研究者だった
4. 1912年のメイラールの報告と、反応機構の解明
この はんのうは、いまから 100ねん いじょう まえ、1912ねんに、フランスの メイラールさんが ほうこくしました[3]。
メイラールさんは、さとうと アミノさんを いっしょに あたためると、ちゃいろく なる ことに きづいた 人です。この ほうこくは、のちに「メイラードはんのう」と よばれる ように なりました。
ただし、この ときは、なぜ おこるのかまでは、まだ くわしく わかって いませんでした。しくみが わかって くるのは、もっと あとの ことです。
しかも この はんのうは、たべものだけの はなしでは ありません。人の からだの 中でも おこると いわれます[3]。
5. なん度で ちゃいろに なるの?
5. 何度で進む反応なのか ── 耳と中身を分けた温度
5. 反応が速く進む温度と、クラムが褐変しない理由
この はんのうは、140〜165どの あたりで、はやく すすむと、ふつうの せつめいで いわれます[4]。ただし これは めやすです。もっと ひくい おんどでも、とても ながい 時間を かければ すすみます。
みみは 100どを こえて、オーブンの あつさに ちかづきます[1]。だから、はんのうが すすみやすく なります。
なかみは 100どの まわりで とどまるので、いきおいよく すすむ 場所には なりません。これが、みみだけ ちゃいろい 理由の ひとつです。
140〜165℃が、反応の速い目安
メイラード反応は、およそ140〜165℃で速く進む、と一般的な解説では説明されています[4]。これは百科事典的な目安で、パンでの境目ではなく、「140℃にならないと全く起きない」という意味ではありません。常温でも反応は進みますが、長い時間がかかります。
耳と中身の差は、温度の差
耳の温度はオーブンの温度に近づくので、反応が速く進める温度帯に入ります。中身は100℃前後にとどまるため、速く進める温度帯には届きません[1]。
耳が茶色く香ばしくなるのは、水分が減って温度が上がった場所で、メイラード反応とカラメル化が進むから、と読めます。中身がほとんど白いままなのは、水がたくさんあって、温度が100℃付近で頭打ちになるからです。
自分でも しらべて みたく なったら
自分でも調べてみたくなったら
自分でも調べてみたくなったら
おうちの 人と いっしょに、トースターで 食パンを 1まい やいて みましょう。トースターの 中は あつく なるので、ひとりで ふれては いけません。
やく まえと あと、ちゃいろの ひろがり方を 見くらべます。みみと なかみの いろの ちがいを、見て みましょう。やけて きたら、においも かいで みます。
ちゃいろく なる ほど、においも かわって いくでしょうか。
家の人と一緒に、トースターで食パンを1枚焼いてみてください。トースターの中は高温で、やけどのおそれがあるので、取り出しは大人にしてもらってください。
焼く前と焼いたあとで、耳と中身の色の違いを見比べます。においも、焼く前と焼いたあとで比べると、変わっているでしょうか。
資料を読むなら、ブルーバックスの記事[5]が日本語で読めます。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:パンの焼成と褐変の論文、メイラード反応の歴史の解説、日本語の解説記事を使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。
- Giovanelli ら, Foods 2021, 10, 417(パンの褐変とヒドロキシメチルフルフラール)。https://doi.org/10.3390/foods10020417 (耳と中身の水分・温度、メイラード反応の段階について)
- Purlis, E. (2010) Browning development in bakery products: A review, Journal of Food Engineering 99(3)。https://ri.conicet.gov.ar/handle/11336/135528 (焼成中の色づきの原因について)
- Baking, Ageing, Diabetes: A Short History of the Maillard Reaction(TU Dresden)。https://fis.tu-dresden.de/portal/de/publications/baking-ageing-diabetes(fdd89714-31a8-4cf4-b2e2-ec95553efb21).html (1912年のメイラールの報告について)
- Maillard reaction(Wikipedia)。https://en.wikipedia.org/wiki/Maillard_reaction (反応が速く進む温度の目安について。解説記事)
- ブルーバックス(講談社)の記事、現代ビジネス掲載。https://gendai.media/articles/-/55656 (パンの焼き色とメイラード反応・キャラメル化について。日本語の解説)
- メイラード反応(Wikipedia 日本語版)。https://ja.wikipedia.org/wiki/メイラード反応 (パンの焼成でできる香りの種類について。解説記事)
なおした ところ
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