このサイトは、ほんの入り口です

ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

むしの すくない ふゆに さく ツバキの はなの こなは、だれが はこぶの?

虫が少ない冬に咲くツバキの花粉は、だれが運ぶの?

虫の少ない冬に咲くツバキの花粉は、だれが運ぶのか

分野:自然

ツバキの はなは、さむい ふゆに さきます。でも その つぼみは、はなが さく よりも はんとし いじょう まえの なつに、もう できはじめて いるそうです[1]。

その つぼみは、いつ できるのでしょう。この ページを よむと、つぼみの できる じき、さむい ふゆに はなの こなを はこぶ とり(メジロなど)、じぶんの こなと べつの きの こなで み の できかたが ずいぶん ちがう こと、えだの さきに み が なる わけが わかります。

冬に咲くツバキの花の蕾は、咲く半年以上前の夏には、もうできはじめています。雪国に生えるユキツバキという近い仲間の観察では、6月の終わりごろから新しい芽がつくられ、7月の終わりごろに蕾が分かれてできるとされています[1][2]。

虫が少ない冬の花は、だれが受粉するのでしょうか。代表的な運び手として紹介されているのは、鳥のメジロです[4]。蕾から花、花から実へと進むツバキの1年を読むと、蕾ができる時期、花粉を運ぶ鳥、実が枝先につく理由が分かります。長崎県の試験では、別の木の花粉をつけた花と自分の花粉をつけた花とで、1花あたりの油の期待値が約70倍もちがいました。

冬に咲くツバキの花は、咲く半年以上前の夏に、すでに蕾としてつくられはじめている。雪国に自生するユキツバキの観察では、新芽の形成が6月下旬に始まり、蕾の分化は7月下旬とされる[1][2]。ヤブツバキも似た時期と考えられるが、この観察の対象はユキツバキ系である。

では、昆虫の活動が少ない冬に、花粉はだれが運ぶのか。代表的な運び手とされるのはメジロである[4]。受粉した実は、当年枝の先につき、7月末に肥大が止まったあと、9月以降に種子の油含有率が約30%に達する(五島列島の調査)[5][6][7]。このメモを読むと、蕾の形成時期、鳥による花粉媒介、他家受粉と自家受粉で一花あたりの油の期待値が約70倍ちがった長崎県の試験、実が当年枝の先につくことと日当たりの関係、5月に咲く北限の椿山が分かる。

読み方を切り替えられます。画面の上にある「よみかた」のボタンで、小学校低学年むけ・小学校高学年むけ・中学生むけの3つの書き方に切り替わります。むずかしいと思ったら、いつでもやさしい方に戻ってください。選んだ読み方はブラウザが覚えているので、次に別の記事を開いたときも同じ読み方で始まります。

1. つぼみは、いつ できるの?

1. 冬の花の蕾は、前の年の夏にできはじめる

1. 蕾の形成:新芽の基部に、夏のうちに花芽が分化する

ツバキは、ふつう 2月から 4月ごろに はなが さきます。はやい ものは 11月、おそい ものは 5月に さきます[3]。

この はなの つぼみは、いつ できるのでしょう。ゆきぐにに はえる ユキツバキと いう なかまを しらべた けんきゅうが あります[1]。

はるに のびた えだの はが ひらき おわる 6月の おわりごろから、あたらしい めが できはじめます。ユキツバキの なかまを しらべた けんきゅうでは、その めは 8月の うちに ほとんど できあがり、つぼみは めの もとの ほうに できます。

べつの ほうこくでは、つぼみが わかれて できるのは 7月の おわりごろです。なつの あいだに すこしずつ おおきく なり、あきの おわりには、つぎに さく はなの もとが できた すがたで ふゆを こします[2]。

ふゆの はなは、もう なつから じゅんびが はじまって いるのです。ふゆは、その つぼみが ひらく きせつです。では、むしの すくない さむい ふゆに、はなの こなは だれが はこぶのでしょう。

ツバキの花は、ふつう2月から4月ごろに咲きます。早いものは11月、遅いものは5月に咲くとされ、咲く時期には幅があります[3]。この冬の花の蕾は、いつつくられるのでしょうか。

新潟大学の石沢進さんが書いた、雪国の植物の観察記録が手がかりになります。対象は雪国に生えるユキツバキと、その仲間のユキバタツバキです。春に伸びた枝の葉が開き終わる6月の終わりごろから新しい芽がつくられはじめ、8月のうちにほぼできあがります。花芽は、その新芽の根もとにできます[1]。

別の記録では、蕾は当年枝が伸びきった7月の終わりごろに分かれてでき、夏のあいだに少しずつ大きくなります。そして秋の終わりには、翌年の花や葉などができた状態で冬を越します[2]。

ここから、蕾づくりは6月の終わりから8月ごろにかけて進み、分化は7月の終わりごろとされていることが分かります。観察対象はユキツバキの仲間なので、ヤブツバキも似た時期だろうと考えられますが、この資料が直接示しているのはユキツバキ系です。

つまり冬の花は、半年以上前の夏に仕込まれています。咲いた花は、虫が少ない季節に、どうやって実になるのでしょうか。

ツバキの開花は、種や品種によって幅が広く、一般に2〜4月、早いものは11月、遅いものは5月に及ぶ[3]。冬の花の蕾は、いつつくられるのか。この問いに答えるのは、新潟大学の石沢進による、ユキツバキ・ユキバタツバキの自生地での観察記録である。

それによると、春に枝が伸びて新しい葉の展開が終わる6月下旬ごろから新芽の形成が始まり、8月中にほぼ完成する。花芽は、その新芽の基部、いちばん外側の苞のわきにでき、秋にかけて葉芽より蕾のほうが大きくなる[1]。別の記録では、蕾は当年枝が伸びきった7月下旬に分化し、夏のあいだに少しずつ成長して、秋の終わりには翌年の花や葉などの器官ができた状態で冬を迎え、春を待つ[2]。

2つの記録は、新芽の形成が6月下旬〜8月、蕾の分化が7月下旬と、互いに矛盾しない。なぜなら、新芽の形成の途中で、その基部に花芽が分かれるからである。ただし、観察対象はユキツバキ系に限られる。ヤブツバキについては同様の時期と考えるのが自然だが、この資料だけで同じと言い切ることはできない。

では、前年の夏に仕込まれた蕾が冬に開いたとき、昆虫の少ない季節に花粉はだれが運ぶのか。

2. むしの いない ふゆに、だれが こなを はこぶの?

2. 虫の少ない冬に、花粉を運ぶのはだれか

2. 鳥媒花としてのツバキ:冬の花粉媒介者

ふゆの おわりから はるの はじめは、むしが あまり うごきません[4]。

そんな ころに さく ツバキの はなは、おおきくて じょうぶな つくりです。みつが たくさん でます。

ツバキの はなの こなを はこぶ とりとして よく ならぶのが、メジロです[4]。メジロは、みつを なめに はなに やって きます。その とき、はなの こなが からだに つきます。

ツバキの はなに くる とりは、メジロだけとは かぎりません。ここでは、よく ならぶ とりとして メジロを あげました。

じぶんの はなの こなと、べつの きの はなの こなでは、み の できかたに ちがいが あるのでしょうか。

ツバキが咲く2月から4月は、虫があまり活動しない季節です。この時期の花を訪れて受粉を手伝う代表的な鳥として、メジロが紹介されています[4]。

鳥に花粉を運んでもらう花は、「鳥媒花」とよばれます。鳥媒花は、色や形を目立たせ、強いかおりと多くの蜜を出して、虫や鳥を引き寄せるといわれます[4]。ツバキの花が大きく丈夫で、蜜が多いのは、こうした鳥の訪れに向いた作りです。

ただし、ツバキの花を訪れる鳥がメジロだけとは書かれていません。この資料が示すのは、メジロが代表的な花粉の運び手とされている、というところまでです。

花粉が運ばれたあと、実ができるかどうかは、どの花粉が届いたかでも変わるようです。自分の木の花粉と、別の木の花粉では、実のできかたにちがいがあるのでしょうか。

ツバキの花期は昆虫の活動が少ない冬から早春にあたる。この時期の花粉媒介者として、メジロが代表的な鳥とされる[4]。鳥による花粉媒介に適応した花は鳥媒花とよばれ、色や形が目立ち、強いかおりと多量の蜜で鳥や虫を引き寄せる、と解説されている[4]。ツバキの花が大型で丈夫で、蜜が多いことは、この説明と合っている。

ここで注意したいのは、資料が述べる範囲である。ヒヨドリなど他の鳥も花を訪れるかもしれないが、この資料はメジロを代表的とするだけで、他の鳥の役割は述べていない。メジロがどれほど効率よく受粉させるのかといった数値は、ここで使った資料には書かれていない。

花粉がどの木から来たかは、結実に関わると考えられる。次の章では、受粉の方法を変えて、実のでき方を比べた長崎県の試験を見る。

3. べつの きの こなだと、なにが ちがうの?

3. 別の木の花粉と自分の花粉で、実と油の量はどうちがうか

3. 他家受粉と自家受粉:結実率・種子数・油の期待値

ながさきけんの しけんじょうが、ツバキの はなに こなの つけかたを かえて、み の できかたを しらべました[5]。つかったのは、タマノウラと いう ひんしゅです。

じぶんの きの こなを つけた はなは、100こに 5こほどしか み に なりませんでした。べつの きの こなを つけた はなは、100こに 47こほどが み に なりました。こなを つけなかった 40この はなは、ひとつも み に なりませんでした。

ひとつの み に はいって いる たねの かずも ちがいました。じぶんの こなでは 2こ、べつの きの こなでは 8.5こです。

ひとつの はなから とれる あぶらの かずは、じぶんの こなで 0.015グラム、べつの きの こなで 1.045グラムでした。1えんだまが 1グラムなので、べつの きの こなの ほうは 1えんだま 1まいぶんです。じぶんの こなの ほうは、その 70ぶんの 1ほどです。

ただし これは 1つの ひんしゅを 1ねん しらべた けっかで、すべての ツバキに あてはまる かずでは ありません。

み に なったら、そのあと どう そだって いくのでしょう。

長崎県の農林技術開発センターは、ツバキの受粉の方法を変えて、種子と油のできかたを比べました。種子をとる親として使ったのは、玉之浦という品種です[5]。

花が実になる割合(結実率)は、自分の花粉をつけた自家受粉で5.0%、別の木の花粉をつけた他家受粉で47.5%、自然にまかせた自然受粉で71.0%でした。花粉をつけなかった40花からは、ひとつも実ができませんでした。1つの実に入る種子の数は、他家受粉が平均8.5、自然受粉が4.3、自家受粉が2.0でした[5]。

一花あたりの油の収量の期待値は、他家受粉が1.045g、自然受粉が0.639g、自家受粉が0.015gでした。他家受粉の1.045gを自家受粉の0.015gで割ると約70倍です(私の計算)。1円玉は1gなので、1花から1円玉1枚ぶんの油が期待できる木と、その70分の1しか期待できない木の差ということになります。

自然受粉の結実率が最も高いのに、油の期待値は他家受粉より低い点は、おもしろいところです。この報告は、自然受粉の結実率が高い理由は分からないと述べています。また、1品種・1年の試験なので、すべてのツバキにそのまま当てはめることはできません。

受粉に成功した実は、そのあとどう育つのでしょうか。

長崎県農林技術開発センターの成果情報は、玉之浦を種子親として、受粉方法別に結実と種子形成を調べている(2017年)[5]。結実率は、自家受粉5.0%、他家受粉47.5%、自然受粉71.0%で、無受粉は40花中0果であった。1果あたりの種子数は他家8.5、自然4.3、自家2.0である。

一花あたりの油収量の期待値は、他家1.045g、自然0.639g、自家0.015gと報告されている。他家÷自家は1.045÷0.015≒69.7で、約70倍になる(計算は筆者)。ここで見落としやすいのは、この値が結実率と1果あたりの種子数や油量の積に近い「期待値」だという点である。自家受粉は結実率が低いだけでなく、1果あたりの種子も少ないため、差が大きく開く。

興味深いのは、結実率は自然受粉が最も高いのに、油の期待値は他家受粉のほうが大きいことである。報告自身が、自然受粉の結実率が高い理由は分からないとしている。したがって、「別の木の花粉が必ず有利」という一般則ではなく、1品種・1年・1か所の試験で、他家受粉の油が最も多かったという結果にとどまる。無受粉でまったく実ができなかったことは、受粉が結実に必要であることを示している。

受粉に成功した実は、その後どのように育つのか。実の成長の記録も、同じ報告にある。

4. み は、いつまで おおきく なるの?

4. 実は7月末で大きくなるのをやめ、秋に種子の油がふえる

4. 実の肥大の終わりと、種子の油含有率

おなじ ながさきけんの しけんでは、ツバキの み の ふとさを、4月20日から 8月28日まで はかりました。み が おおきく なるのは、7月の おわりには とまります[5]。

この ころは、つぎの はなの つぼみが わかれて できる じきと おなじ 7月の おわりごろです。ひとつの えだの うえで、み の せいちょうが おわり、つぎの つぼみが できはじめて いるのです。ただし、2つが かんけいして いると いう しりょうは ありません。

ごとうれっとうでは、9月から あとの たねの なかの あぶらは、およそ 30パーセントでした[6]。そのまえに とると、あぶらの りょうが へります。

み は せいじゅくすると、ふつう 3つに さけて、なかに おおきな たねが あります[3]。

み が いつ とりごろか、きを みても わかりにくい ことが あります。そこで、ちかくの のの はなの ようすを めやすに する けんきゅうも あります。ヤブガラシや ノブドウの はなが みられなく なった ころが、とりごろの めやすと されました。

では、み も つぼみも、えだの どこに できるのでしょう。

同じ長崎県の試験では、4月20日から8月28日まで、ツバキの実の太さを測っています。実の肥大成長は7月末には止まりました[5]。

7月の終わりは、前の章で見たユキツバキの蕾が分化するころとも重なります。同じ時期に、実の成長が終わり、次の花の蕾ができはじめているわけです。ただし、この2つに関係があるかどうかは、どちらの資料も述べていません。

実が育ったあと、種子の油は秋にそろいます。長崎県の五島列島で調べた報告では、9月以降の種子の油含有率は約30%で、これより前に採ると油の収量が下がります[6]。成熟した実は、普通3つに裂け、中に大きな種子が入っています[3]。

とりごろの判断はむずかしく、木ごとの裂け具合は、地域全体の適期を判断する目安にしにくいと報告されています。そこで、周辺に咲く野の花を目安にする研究があります。ヤブガラシやノブドウは、採取地の周りで花が見られなくなったころが適期とされ、指標にする植物ごとに判断の基準はちがいます。約30%という数字は、2015年の福江島の調査のものなので、全国一律の値ではありません[6]。

実も蕾も、枝のどこにできるのでしょうか。

同じ長崎県の成果情報には、実の肥大の観測がある。4月20日から8月28日の果実径の測定で、ツバキの実の肥大は7月末には止まる[5]。この時期は、前の章のユキツバキ観察で蕾が分化する7月下旬と重なる。同じ枝の上で、実の成長が終わるころに次の蕾が分かれはじめるが、両者に因果があるかどうかは、どちらの資料も述べていない。

成熟した果実は球形で果皮が厚く、普通3つに裂けて、中に大きな種子をもつ[3]。種子の油については、五島列島(福江島)の2015年の調査で、9月以降の油含有率は約30%と報告され、これより前に採ると油の収量が下がる[6]。採取適期の判断は、樹ごとの裂果の状態では地域全体の判定がむずかしい。そこで、周辺の指標植物の開花の様子を目安にする研究が試みられている。ヤブガラシ・ノブドウは採取地周辺で花が見られなくなった時期が適期とされるが、判断の基準は指標植物ごとに異なる。

約30%は福江島のこの年の値で、ほかの地域や年にそのまま当てはめることはできない。それでも、木の実の成熟を、木そのものでなく足もとの野の花で読もうとする発想は、季節がそろって進む自然の記録を使う例として面白い。実の肥大が止まり、種子が熟し、蕾が育つ。ツバキの枝の上では、こうした作業が夏から秋にかけて重なっている。

それらが枝のどこで起きているのかが、次の章の問いである。

5. み は、えだの どこに なるの?

5. 実は枝先につくので、枝先の多い木ほど実がなる

5. 当年枝の先に結実する:樹形と種実の生産量

ツバキは、その としに のびた えだの さきに、はなが ついて、み が なります[7]。

ですから、み を ふやすには、えだの さきの かずが おおい きが よいと いわれます。きの そとがわの ひろさが おおきい かたち、と いう ことです。

ながさきけんの しけんでは、まわりに きが すくない ひとりだちの きと、きが こみあう はやしの なかの きを くらべました。み や たねの りょうは、ひとりだちの きでは 1ぼん あたり へいきん 790グラム、こみあう はやしの なかでは 297グラムでした。790を 297で わると、およそ 2.7ばいです[7]。

ただし、しらべた きの かずは、ひとりだちが 4ほん、こみあう はやしが 19ほんです。わかったのは、まわりに きが すくない きの ほうが み が おおかった、と いう ことです。ひなたの ちがいも かんけい して いるかも しれませんが、この しけんでは ひなたの りょうを はかって いません。

ここまでは、ながさきの はなしでした。ツバキは、にほんの もっと きたでも さくのでしょうか。

ツバキは、その年に伸びた枝(当年枝)の先に花がつき、実がなります。そのため、実を増やすには樹冠の表面積(枝先の面)を大きくする必要があると、長崎県総合農林試験場は報告しています[7]。

この報告は、周りの木と混み合わない孤立木と、混んだ林の中の木を比べました。種実の生産量は、孤立木が1本あたり平均790g、混んだ林の中の木が297gでした。790÷297は約2.7倍で、報告は「2倍強」とまとめています[7]。

測った木の数は、孤立木が4本、混んだ林の木が19本で、4年間の測定です。木の数が多くない調査なので、2.7倍をほかの場所に当てはめることはできません。それでも、花と実が枝先につく木では、周りに木が少なく枝先を広げやすい孤立木のほうが、実の量が多かったという結果です。日当たりが関わるかどうかは、この報告からは分かりません。

夏にできる蕾も、新芽の根もとにあるので、これも枝先の近くにできます。1つの枝先で、実と蕾が時期をずらしながら育っていることになります。

ここまでは、長崎や新潟といった比較的暖かい地方の話でした。ツバキは、もっと寒い北でも咲くのでしょうか。

長崎県総合農林試験場の成果情報は、ツバキが当年枝の先端に着花・結実することから、着果量を増やすには樹冠表面積を大きくすることが必要だとする[7]。枝先ほど花も実も増えるなら、枝先の多い樹形が有利になる、という筋道である。

この報告では、周囲の木と混み合わない孤立木と、混み合った林内の木で、種実の生産量を比べている。1本あたりの平均は孤立木が790g、林内の木が297gで、790÷297≒2.7となる(計算は筆者)。報告の要約は「2倍強」としており、計算上は少し大きく見える。ただし、孤立木は4本、林内の木は19本で、測定は4年間である。サンプルの木の数が小さいため、2.7倍はこの調査の値にとどまり、ほかの林に当てはめるには向かない。

前の章の蕾の観察と合わせて読むと、1つの枝先に実と蕾が同居している。夏に分化する蕾は新芽の基部にでき、実も当年枝の先につくため、枝先の多い樹形は、蕾と実の両方がつく場所が多いと考えられる。ただし、日当たりが実や蕾の数に関わる可能性はあるものの、手元の資料では直接測られていない。

ここまでの話は、長崎や新潟といった比較的温暖な地域の記録だった。では、ツバキの自生の北端では、花はどう咲くのか。

6. もっと きたの ツバキは、いつ さくの?

6. 青森の椿山では、5月に咲く

6. 分布の北限・椿山:5月上旬〜中旬に咲く群落

ヤブツバキは、にほんの みなみから まんなかに かけて おおく、ひがしきたへ いくほど すくなく なります。あおもりけんの ひらないまちに ある つばきやまが、ヤブツバキの いちばん きたの ばしょと されて います[8]。

ここには、おおきい きと ちいさい きを あわせて 1まん ほん あまりの ヤブツバキが あります。1922ねんに てんねんきねんぶつに なりました。

さく じきは 5月の はじめから なかごろです。べにいろの はなが ひらきます[8]。

ツバキの はなの さく じきは、はやい ものの 11月から、おそい ものの 5月まで、ひろく ひろがって います。おなじ ツバキでも、すむ ばしょや ひんしゅで、さく じきは ずいぶん ちがいます。

ここまで、ツバキの 1ねんを みて きました。つぎは、ちかくの ツバキを、じっさいに みに いって みましょう。

ヤブツバキは日本の南部から中部に多く、東北に行くほど少なくなります。青森県平内町の椿山は、その分布の北限とされています[8]。

椿山には、大小あわせて1万本余りのヤブツバキがあり、1922年(大正11年)に天然記念物に指定されました。咲くのは5月上旬から中旬で、紅色の花を開きます[8]。

ツバキの花の時期は、早いものは11月、遅いものは5月に及ぶとされます[3]。神奈川県のように2月ごろから咲く地域もあれば[4]、椿山のように5月に咲く群落もあります。同じヤブツバキでも、地域によって、花の季節は数か月ずれることになります。

北のツバキでも、新芽ができる時期から花の時期まで同じ仕組みで進むのかは、読み手が調べる余地のある問いです。

ヤブツバキは日本の南部から中部に分布し、東北に行くほど少なくなる。青森県平内町の椿山は、その分布の北限とされる群落で、大小1万本余りのヤブツバキからなり、1922年(大正11年)に天然記念物に指定された。開花期は5月上旬から中旬で、紅色の花を開く[8]。

ツバキの開花期は、早いものは11月、遅いものは5月に及ぶ[3]。神奈川県のように2月ごろから咲く例[4]と、椿山の5月は、地域や個体群によって数か月のずれがあることを示す。冬の花は、前の年の夏に蕾ができ、冬を越して咲く。その流れの全体が椿山でも同じ時期に進むのかは、今回の資料に記述がなく、分かっていない。

ここで確かめられるのは、咲く時期が場所で大きく変わる、というところまでである。北限のツバキが蕾をいつつくるのかは、次の問いの候補になる。

7. ちかくの ツバキの えださきを みて みよう

7. 近くのツバキの枝先で、蕾・花・実を探す

7. 枝先を観察する道すじと、原典の読み方

ちかくに ツバキが あったら、おとなと いっしょに みに いきましょう。ひとの おうちの にわには、かってに はいりません。えだは おらないで、みるだけに します。

みる ところは、えだの さきです。はや つぼみが ついて いる ときも あれば、はなが さいて いる ときも あれば、み が なって いる ときも あります。

みつけた ものを、ノートに かいて おきます。つぼみ、はな、み の ほかに、なにも ない えださきが あっても かまいません。

ことしの えだの さきと、まえの としの えだの さきを くらべて みましょう。みじかい えだが ふえて いる ところが あるかも しれません。

み が なって いる ときは、さわっても いいですが、くちには いれません。

家の近くや公園にツバキがあれば、枝先を見に行ってみましょう。人の家の庭には勝手に入らず、枝は折らずに見るだけにします。

ツバキは常緑なので、1年を通して枝先を見ることができます。同じ木の同じ枝先に、蕾、花、実のどれがついているかを、月ごとにノートに書いておくと、この記事の「夏に蕾ができる」「7月末に実の成長が止まる」といった話が、自分の木ではどうなっているかが分かります。

見たものを日付と一緒に書いておくと、半年後に見返すことができます。枝先に何もない月があっても、記録のうちです。実は、口に入れないようにします。

原典は、新潟大学リポジトリの石沢進さんの記録と、長崎県の成果情報(受粉・油・樹形)の3本が、日本語で読めます。出典欄に載せました。

北のツバキの蕾づくりが、南と同じ時期なのかを知る資料は、ここでは見つかっていません。次は、椿山の蕾ができる時期を青森県の資料などで探し、南の6月終わりごろ〜8月と比べてみると、北のツバキの1年が見えてきます。

家の近くのツバキで確かめられることは、枝先に蕾・花・実のどれがあるかを、月ごとに記録することである。ツバキは常緑で、1年を通して枝先を観察できる。人の庭や私有地には立ち入らず、枝は折らず、実は口に入れない。観察の結果は、本文のユキツバキの記録(蕾は夏に分化する)と長崎県の測定(実の肥大は7月末に止まる)と、同じ時期に変化が起きているかどうかを、自分の木で確かめる材料になる。ただし、1本の木の記録は、種類や場所の影響を受ける点に注意が必要である。

原典は、石沢進による新潟大学リポジトリの2本の記録(蕾の分化と新芽の形成)と、長崎県の成果情報3本(受粉形態別の種子形成、指標植物による収穫適期、樹形と実の生産性)である。いずれも日本語で読め、出典欄から探せる。どの数字も1か所の試験・調査の値で、全国一律ではないことを念頭に読むとよい。椿山のある青森県の資料は、北のツバキの蕾づくりを調べる次の手がかりになる。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文は、ここにある資料の内容を、自分の言葉で言いかえたものです。観察や試験の対象は、ユキツバキ・玉之浦・五島列島のヤブツバキなど場所と種類が限られているので、すべてのツバキに同じ数字が当てはまるわけではありません。

  1. 石沢進「雪国の植物 ユキツバキ32」 新潟大学学術リポジトリ https://niigata-u.repo.nii.ac.jp/record/30530/files/03_39_0006.pdf (新芽・花芽ができる時期)
  2. 石沢進「雪国の植物 ユキツバキ7 花芽の分化・蕾の変異」 新潟大学学術リポジトリ https://niigata-u.repo.nii.ac.jp/record/30717/files/03_15_0010.pdf (蕾の分化と冬越し)
  3. コトバンク「ツバキ」(日本大百科全書ほか) https://kotobank.jp/word/%E3%83%84%E3%83%90%E3%82%AD-1564770 (開花時期・果実の形・樹高)
  4. アドバンテスト ビオトープだより第8号 https://www.advantest.com/ja/about/sustainability/environment/environmental-communication/biotope/no_8/ (メジロ・鳥媒花)
  5. 長崎県農林技術開発センター「受粉形態別の種子形成と油重量」(成果情報) https://www.pref.nagasaki.jp/e-nourin/nougi/theme/result/H29seika-jouhou/shidou/S-29-51.pdf (結実率・油の期待値・実の肥大)
  6. 長崎県農林技術開発センター「指標植物によるツバキ実収穫適期の判定」(成果情報) https://www.pref.nagasaki.jp/e-nourin/nougi/theme/result/H27seika-jouhou/fukyu/F-27-15.pdf (種子の油含有率・採取適期)
  7. 長崎県総合農林試験場「ツバキ実生産性の高いツバキ林の目標林型」(成果情報) https://www.pref.nagasaki.jp/e-nourin/nougi/theme/result/H19seika-jyouhou/sidou/S-19-23.pdf (枝先の結実・孤立木と林内の木の比較)
  8. 青森県教育委員会「ツバキ自生北限地帯」 https://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/kyoiku/e-bunka/kinen_tennen_1_02.html (椿山・北限・開花期)

なおした ところ

更新履歴

更新履歴(改版の記録)

  •  初版を公開。

このサイトでは、公開した記事の本文は原則として書き直しません。誤りが見つかったときや、内容が古くなったときだけ手を入れ、その理由をこの欄に残します。