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ネコザメの「ネコ」は、どこが ねこに にて いるの?

ネコザメの目の上は、ネコの耳? 英語では牛の角?

ネコザメの眼上隆起は、日本語ではネコの耳、英語では牛の角 ── 辞典間で割れる和名の見立てを読みくらべる

分野:生きもの

ネコザメは、ねこの 名前を もつ サメです。でも、じてんを ひいて みると、「ねこの どこに にて いるか」の せつめいが、ほんによって ちがって いました。

「顔」と いう じてんも あれば、「頭」「耳」と いう せつめいも あります。辞典じてんごとの せつめいを くらべて みましょう。この 記事では、名前の ほかに、ふしぎな 歯と たまごの ことも わかります。

ネコザメの目の上には、小さな盛り上がりがあります。日本語ではこれをネコの耳に、英語では牛の角に見立てたといわれます。ただ、辞典で「ネコ」の由来を引きくらべると、顔つき、頭の大きさ、耳と、説明は一つに決まっていません。

この記事では、辞典ごとの説明を並べて読み、英語名 bullhead(牛の頭)の見立てもたしかめます。あわせて、この魚の変わった歯と卵の形も紹介します。

ネコザメ(Heterodontus japonicus)の和名の「ネコ」が何を指すかは、資料によって割れている。『世界大百科事典』は顔つき、『ブリタニカ国際大百科事典』は大きな頭、Wikipedia は目の上の皮膚の隆起を耳に見立てたとし、英名の bullhead は同じ隆起を牛の角に見立てたといわれる[1][2]。

和名の「ネコ」は耳への見立てとされる一方、辞典の説明は顔つき・頭部・耳に分かれる。このメモでは、その食いちがいを整理し、学名の「異なった歯」と、らせん形の卵という、名前とは別の特徴まで見ていく。

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1. じてんに よって、ねこの 「どこ」かが ちがう

1. 辞典を引くと、ネコの「どこ」に似ているかが分かれる

1. 和名の由来 ── 顔つき・頭部・眼上隆起という3通りの記述

ネコザメの 名前の いわれを、じてんで しらべました。すると、「顔つきが ねこに にて いる」と かいた ほんが ありました[1]。

べつの じてんは、「体に くらべて 頭が 大きくて、ねこの 頭を おもわせる」と かきます[1]。ほかの サメより、口の あたりが みじかくて、ねこの ような 顔に 見える、と いう せつめいも あります[1]。

さらに、もう ひとつ。ネットの 百科じてんには、目の 上の もりあがりが、ねこの 耳に 見えた、と かいて あります[2]。つりの サイトにも、にた せつめいが ありました[3]。

本によって、顔、頭、耳と、ねこに 見立てる ところが ちがいます。名前を つけた 人が どこを 見たのかは、ここで 見た じてんでは わかりません。

百科事典の説明は同じではない

『世界大百科事典』は、ネコザメの名を「顔つきがネコに似ていること」に由来すると説明します[1]。ところが『ブリタニカ国際大百科事典』は、体に比べて頭が大きく、ネコの頭を思わせるからだと書きます[1]。『最新 地学事典』は、ほかのサメより吻(口先)が短く、ネコのような顔つきだと記します[1]。

似ているのは顔全体なのか、頭の大きさなのか、口先の短さなのか。同じ「ネコに似ている」でも、辞典ごとに注目した場所が少しずつちがいます。

「耳」とする説明もある

日本語版Wikipediaには、目の上の皮膚の盛り上がりをネコの耳に見立てた、という説明があります[2]。釣り情報サイトにも、目の上の突起がネコの耳に似ていることから名がついた、という紹介があります[3]。ただし、これらは一般向けの解説で、名づけた人の記録で裏づけられた語源とは言えません。

辞典の説明は、どれも名づけた人の記録そのものではありません。そのため「ネコのどこか」とは言えても、「ここだ」とは言い切れません。

和名の由来について、手元の資料は一致しない。『世界大百科事典』は「顔つきがネコに似ていることに由来」とし[1]、『ブリタニカ国際大百科事典』は「体に比べて頭部が大きく、ネコの頭を思わせる」からだとする[1]。『最新 地学事典』は、ほかのサメより吻が短く、ネコのような顔つきだと記す[1]。

見立ての対象が、顔全体か、頭部の比率か、吻の長さかで分かれている点に注意したい。これらは同じ特徴を別の言葉で言いかえたものとも読めるが、辞典の側がそう整理しているわけではない。

もう一つの系統が、目の上の盛り上がりを耳に見立てたとする説明である。日本語版Wikipediaは、和名は目の上の皮膚の隆起をネコの耳に見立てたもので、英名は同じ隆起をウシの角に見立てたもの、と書く[2]。釣り情報サイトも同様の紹介をするが[3]、一般向けのサイトであり、命名の記録に当たった裏づけにはなっていない。

資料によって、見立て先は顔・頭部・耳の3通りに分かれる。どれも命名者の記録に基づく説明ではないので、いずれかを語源と断定はできない。

2. えいごでは、おなじ ところを 牛の 角と 見た

2. 英語圏は、同じ盛り上がりを「牛の角」と見た

2. 英名 bullhead と、眼上隆起の形

おもしろい ことに、えいごの 名前は ねこでは ありません。「ブルヘッド」、つまり 「牛の 頭」と いう 意味の 名前で よばれます[2]。

さっき 出てきた 目の 上の もりあがりを、日本では ねこの 耳、えいごでは 牛の 角に 見立てた、と いわれます[2]。おなじ ところを 見て いても、見立てる ものが ちがうのです。

この もりあがりは、目の 上に あさく ならび、あいだが 少し へこんで います[4]。2つの ふくらみと、その まんなかの へこみ。みなさんなら、なにに 見えるでしょうか。

英語では、ネコザメの仲間を bullhead shark と呼びます。bull は雄牛、head は頭です[2]。日本語版Wikipediaは、日本語の「ネコの耳」と英語の「ウシの角」は、同じ目の上の盛り上がりへの見立てだと書いています[2]。

その盛り上がりについて、英語版Wikipediaは、目の上に浅い隆起があり、隆起と隆起の間が少しくぼんでいると説明します(Compagno 2002 による記述)[4]。頭は短くて幅が広く、鼻先はブタのように丸いとも書かれています[4]。

同じ顔を見て、日本ではネコ、英語圏ではウシを思い浮かべたことになります。鼻先をブタに見立てる書き方もあり、見立ての種類は一つではありません。ただし、英名の由来そのものは、英語版Wikipediaには書かれていません。

名前が似ていて別の魚もいる

英語で catshark と呼ばれるのは、トラザメなどの仲間で、ネコザメとは別の科です[6]。名前だけで同じ仲間だと思わないよう、注意が必要です。

英名 bullhead shark(Japanese bullhead shark)は、ウシの頭の意味である。日本語版Wikipediaは、和名・英名とも同じ眼上の隆起への見立てだとする[2]。英語版Wikipediaは、Compagno(2002)に基づき、目の上に浅い隆起(supraorbital ridges)があり、その間はわずかに凹むと記す。頭は短く幅広で、鼻先は丸い[4]。

注目すべきは、この隆起が耳にも角にも見立てられている点だ。2つの小さな盛り上がりと、その間の凹みという形があれば、文化によって別の動物の頭が連想されうる。ただし英語版Wikipediaにも英名の由来は書かれておらず、「同じ隆起への見立て」とするのは日本語版の記述である。

混同しやすいのが catshark である。トラザメ(Scyliorhinus torazame)は Torazame Catshark と呼ばれ、ネコザメ(Heterodontus japonicus)とは別の科に分類される[6]。FishBase などでネコザメの別名に cat shark が載る例もあるが、その由来は書かれていない。名前が似ていても、同じ「ネコ」の見立てだと決めつけられない。

3. サザエも わる、ふしぎな 歯

3. 名前では分からない、敷石のような歯

3. 学名 Heterodontus ── 「異なった歯」

ネコザメには、名前よりも ふしぎな ところが あります。それは 歯です。

口の まえの ほうの 歯は、小さくて とがって います。でも、よこや おくの 歯は、まるくて 大きく、ぴったり くっついて ならびます[1]。石だたみの ような ならびかたです。

この 歯で、かたい 貝がらを かみくだきます。かたい 貝がらを くだく 歯を もつ ことから、「サザエワリ」とも よばれます[1]。夜に うごいて、貝や ウニや カニの なかまを 食べる サメです[2]。

歯の かたちが ちがう ことは、学名にも あらわれて います。それは 「ちがう 歯」と いう 意味です[5]。

ネコザメの特徴は、名前の由来になった見た目だけではありません。口の前のほうの歯は小さくとがり、横から奥の歯は丸く大きく、すき間なく並びます[1]。道に敷き詰めた石畳のような形です。

この歯が、貝やウニ、甲殻類のかたい殻をかみ砕くのに使われると考えられます。硬い貝殻を砕く歯をもつことから、「サザエワリ」とも呼ばれます[1]。夜行性で、貝やウニ、甲殻類を食べる魚です[2]。

学名の属名 Heterodontus は、ギリシャ語の heteros(異なる)と odous(歯)からできた言葉で、「異なった歯」を意味します[1][5]。尖った歯と丸い歯が同じ口に並ぶことに注目した名前です。FishBase によると、種小名の japonicus は、日本の海の魚の標本群から1884年に記載されたことを表し、模式標本は東京沖で採れた雌です[5]。

ネコザメは歯の形が一様でない。前部の歯は小さくて尖り、側部の歯は丸く肥大して互いに密着し、敷石状に並ぶ[1]。硬い貝殻を砕く歯をもつことから「サザエワリ」とも呼ばれ、貝・ウニ・甲殻類を食べる夜行性の魚とされる[1][2]。

この歯の特徴は、学名にも反映されている。属名 Heterodontus は、ギリシャ語の heteros(異なる)と odous(歯)に由来し、「異なった歯」の意である[1]。FishBase も heteros と odontos から成ると説明する[5]。種小名 japonicus は、日本の海の魚の標本群から記載されたことを表す。記載は1884年、模式標本は東京沖の雌とされる[5]。

和名が顔・頭・耳という「見た目の見立て」で語られるのに対し、学名は「歯」という機能と結びついた名づけである。同じ生き物に対し、外見から名づけるか、体の仕組みから名づけるかで、名前の性格が変わることが分かる。学名の由来の解説は FishBase の記述による。

4. らせんの かたちを した たまご

4. 岩のすき間に収まる、らせん形の卵

4. 卵殻の螺旋と、孵化までの1年

ネコザメの たまごも、とても かわって います。まわりに、らせんの ように ひねった ひだが ついた からに 入って います[1]。

この ひだは、岩の すきまや 海そうの あいだで、たまごを とめる やくわりが ある、と いわれます[2]。ねじを まわして ねじこむ ような ものかも しれません。

日本では、3月から 9月ごろに たまごを うみ、いちばん おおいのは 3月から 4月です。めすは 1かいに 2こずつ うみます[4]。

赤ちゃんは、たまごの 中で 1年ほど かけて そだちます。うまれる ときは 18センチくらいです[4]。おとなの ネコザメの いちばん 長い 大きさは 1.2メートルほどなので、うまれる ときは、その 15パーセントくらい。わりと 大きな 赤ちゃんです。

卵も独特です。ネコザメは、周りにらせん状の張り出し(ひれ状のひだ)がある特殊な形の殻に卵を入れて産みます[1]。このひだは、岩のすき間や海藻の間で卵を固定する役割があるとされます[2]。

産卵は日本では3〜9月で、盛りは3〜4月です。雌は一度に2個ずつ産みます。子は卵の中でおよそ1年かけて育ち、孵化するときは約18cmです(Compagno 2002 による)[4]。

成魚の最大全長は約1.2mとされるので[4]、18÷120=0.15より、孵化時の約18cmは、成魚の最大全長に対しておよそ15%です。雄は69cmで成熟するといわれ[4]、浅い海の水深数メートルから40メートル未満の海底にすみます[4]。浅い海の岩場に、らせんの形の卵が固定されている様子を想像できます。

卵殻は、周囲にらせん状の張り出しをもつ特殊な形をしており[1]、この張り出し(ひれ状のひだ)は、岩の隙間や海藻の間で卵を固定する役割があるとされる[2]。浅い海底にすむ生態と結びつけて読める記述だが、役割の根拠として示されているのは「とされる」の水準で。

繁殖について、Compagno(2002)に基づく英語版Wikipediaの記述では、日本では3〜9月に産卵し、盛りは3〜4月、雌は一度に2個ずつ産む。仔は卵の中で約1年かけて育ち、孵化時は約18cmである[4]。

成魚の最大全長は約1.2m、雄の成熟は69cmとされる[4]。ここから計算すると、孵化時の約18cmは、成魚の最大全長に対して18÷120=0.15、約15%で、雄の成熟サイズ69cmに対して約26%(18÷69≒0.26)にあたる。最大値と成熟サイズは別の基準なので、比べるときは「最大全長に対して」「成熟した雄に対して」と分けて読む。

生息域は水深数m〜40m未満の浅い海底とされる[4]。

5. じぶんなら、どこを なにに 見立てる?

5. 自分なら、どこを何に見立てるか

5. 「見立て」の食いちがいから、資料の読み方へ

ネコザメの 名前は、「ねこの どこ」かが はっきり きまって いません。でも それは、ふしぎで おもしろい ことです。人は、おなじ ものを 見ても、ちがう ものに 見立てるのです。

ずかんや 本に ネコザメの 写真が あれば、目の 上、口もと、歯を 見くらべて みましょう。そして、「じぶんなら なにに 見立てるか」を 3つの ことばで かいて みましょう。

もし ほかの 本や じてんで ネコザメが のって いたら、「どこが ねこなのか」を、どう かいて いるか 見て みて ください。

ネコザメの「ネコ」は、顔つき・頭の大きさ・目の上の盛り上がりと、資料によって見立てがちがい、英語圏では牛の角に見立てました。名づけた人の記録をたどった資料は、ここで使った範囲にはありません。

図鑑や本でネコザメの写真を見る機会があれば、目の上、口もと、歯の並びを見くらべて、自分ならどれを何に見立てるか、3つの言葉で書いてみてください。図書館や学校の図鑑で、ネコザメの項目が名前の由来をどう書いているかを、本どうしで比べるのもいい方法です。

辞典の説明がそろわないときは、どの本がどこを「ネコ」に見立てているかを、メモに書き分けてみると整理できます。

本稿で見たように、ネコザメの和名の見立て先は資料により3通りに分かれ、英名は牛の角という別の見立てを含む。語源を直接示す資料(命名者の記述)に当たる作業は残っている。

次の調べ方が考えられる。①図書館の日本語の百科事典・辞典・図鑑で「ネコザメ」の項を2冊以上そろえ、どの部位に言及しているかを表にする。②「サザエワリ」など別名が載っているかも見くらべる。③英語の資料で一般名(common name)が複数あることに気づいたら、日本語の資料と対応させて読む。

見た目の名前、歯の学名、らせん形の卵という3つの切り口は、同じ魚について、名づける側が何に注目したかの違いでもある。ネコの耳と牛の角のように、同じ場所が別の動物に見立てられた例は、ほかの生きものの名前でも探せそうだ。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文の事実は、次の資料の記述をつき合わせて確かめた。語源の見立てについては、直接の記録ではなく、辞典・百科事典・解説サイトの説明であることに注意。

  1. コトバンク「ネコザメ」(世界大百科事典、ブリタニカ国際大百科事典、日本大百科全書、最新 地学事典) https://kotobank.jp/word/%E3%83%8D%E3%82%B3%E3%82%B6%E3%83%A1 (名前の見立て・歯・卵の形)
  2. Wikipedia「ネコザメ」 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8D%E3%82%B3%E3%82%B6%E3%83%A1 (和名・英名の見立て、食べもの、卵の役割)
  3. TSURI HACK https://tsurihack.com/4588 (一般向けの紹介記事での名前の説明)
  4. Wikipedia “Japanese bullhead shark” https://en.wikipedia.org/wiki/Japanese_bullhead_shark (隆起の形・産卵・大きさ。Compagno 2002 に基づく記述)
  5. FishBase “Heterodontus japonicus” https://www.fishbase.se/summary/Heterodontus-japonicus (学名の意味・記載年)
  6. GBIF https://www.gbif.org/species/8324168 (catshark とネコザメの分類のちがい)

なおした ところ

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