1. ヒナに ある 道具は なに?
1. 手のないヒナが、殻にどう挑むのか
1. 問いの整理 ── 割る道具・力・手順
ヒナには 手が ありません。あしで けって わる ことも、むずかしそうです。ヒナは、たまごの 中で 体を まるめて います。
そこで 見つけたいのは、3つです。なにで わるのか。どこから 力が 出るのか。どんな じゅんばんで わるのか。
この 3つを、1つずつ 見て いきます。
ヒナは卵の中で体を丸めていて、腕のように使える部分がありません。それでも殻を割るのですから、何かの「専用の仕組み」がありそうです。
この記事では、道具(卵歯)、力(孵化筋)、手順(膜を破る→穴をあける→回りながら割る)の3つに分けて見ていきます。胚がどう育つかの全体は、すでにこのサイトの「卵の中のヒナは、21日で何をしているのか」の記事にあるので、ここでは割る場面だけを取り上げます[7]。
2. くちばしの さきの、小さな 「は」
2. 道具は、くちばしの先の「卵歯」
2. 卵歯 ── 殻を割るときに使う突起
ヒナの 上の くちばしの さきには、かたくて とがった 小さな とっきが あります。「らんし」と 言います。「たまごの は」と 書きます。
この とっきは、ニワトリの ヒナが からを わる ときに つかいます。ものを かむ ためでは ありません。
たとえば、はさみで 紙を まるく 切る ときは、さきっぽで 切りこみを 入れて、紙を 少しずつ 回します。らんしも、さきっぽで からを つついて、からに きずを つけて いきます。ただし ヒナは はさみでは なく、くちばしの とっきを つかいます。
らんしは、ヒナが 生まれたあと、しばらくすると なくなると いわれます。しごとを おえた 道具なのです。
3. 力は どこから 出るの?
3. 力を出すのは、首の後ろの「孵化筋」
3. 孵化筋(複合筋)── 首の筋肉が卵歯を打ちつける
とがった とっきが あっても、力が なければ からは われません。ヒナの 力は、首の うしろの 筋肉から 出ます。「ふかきん」と 言います。
この 筋肉が 頭を ぐいっと もちあげます。すると、らんしが からの 内がわに ぐっと ぶつかります。
ふかきんは、生まれる 少し 前に 大きく なると いわれます。ブロイラーという ニワトリでは、生まれる までの あいだに およそ 4.8ばいの 重さに なったと 言われて います。
そして 生まれた あと、1日で およそ 3分の 2も へると いいます。やくめが おわった 筋肉も、すぐに ちいさく なるのですね。
4. さいしょに やぶるのは、からでは ない
4. 最初に破るのは、殻ではなく内側の膜
4. 内側のピッピング ── 気室の膜を破り、肺呼吸へ切りかわる
ヒナが さいしょに やぶる ものは、じつは からでは ありません。からの すぐ 内がわに ある、うすい まくです。
たまごの まるい ほうには、くうきの たまった へやが あります。ヒナは、らんしで この へやとの あいだの まくを やぶります。
すると、ヒナは この くうきを はいで すいはじめます。ここから、じぶんの 肺で いきを する ほうへ、少しずつ かわって いくと いわれます。
からを わる まえに、まず いきを する。じゅんびが できてから、外に 出る たたかいが はじまります。
ヒナが最初に卵歯をぶつけるのは、殻ではありません。卵の丸い側にある気室と、ヒナとの間の膜です。ここを破るのが、内側のピッピング(日本の飼鳥資料では「嘴打ち」)です[4]。
膜が破れると、ヒナは気室の空気を吸えるようになり、肺呼吸への切りかえが進むと説明されています[4]。つまり、殻を割る大仕事の前に、息の切りかえが先に始まります。
孵化の少し前に、頭を翼の下にもぐらせるような姿勢になるという説明もあります。ただし何日前かは資料で幅があり、はっきり言い切るのは難しそうです。
孵化の最初の動作は、殻の破壊ではなく、卵の丸い側の気室との間の膜を卵歯で破ることである(内側のピッピング、日本の資料では「嘴打ち」)。ここで卵歯が膜を貫くと、気室の空気を吸い、肺呼吸への切りかえが進むと説明される[4]。
孵化直前の姿勢(頭を翼の下に入れる)についての記述もあるが、本文を確認できておらず、日数の幅も大きいので、ここでは詳しく扱わない。
5. あなを あけて、ぐるっと まわる
5. 殻に穴をあけ、少しずつ回って割る
5. 外側のピッピングと回転 ── 休みながら十数時間〜1日
いきが できるように なると、ヒナは からにも あなを あけます。ちいさな あなが 1つ できます。ここから 外の くうきが 入ります。
それから ヒナは、らんしで からを つつきながら、少しずつ 体を 回します。ヒナから 見て 左まわりに 回ると いう しりょうが あります。回る むきは、ヒナに よって ちがうかもしれません。
ぐるっと ひとまわりすると、からの まるい ほうの ぶぶんが ぼうしの ように はずれます。ヒナは そこから 出て きます。
ここまで、ふつうは 十数時間から 1日ほど。ヒナは 何度も 休みながら すすめます。
6. ほかの いきものにも、らんしは ある?
6. 卵歯は鳥だけのものではない
6. 卵歯の比較 ── 歯・皮膚・くちばしの突起
らんしは、鳥だけの ものでは ありません。ヘビや トカゲ、ワニなどの 卵から 生まれる いきものにも、からを わる ための とっきが あると いわれます。
ただし、つくりは いきものに よって ちがいます。ヘビや トカゲでは、ほんものの 歯が 生えて います。ワニでは、ひふが かたく なった ものだそうです。
いきものに よって つくりは ちがいますが、どれも、たまごから 出る ときに からを わる やくめが あります。
卵歯は、卵から生まれる動物のあいだで、何度も見つかっています。ヘビやトカゲの多くでは、あごの骨(前上顎骨)から生える本物の歯です。ワニでは、皮膚が硬くなった突起だと説明されています[6]。
つまり「殻を割るための突起」という役目は同じでも、材料もでき方も生きものによって違います。鳥の卵歯はケラチンの突起でした。役目が同じで、つくりが違う。こうした例は、体の進化を考える手がかりになりそうです。
7. たまごの まるい ほうを 見て みよう
7. ゆで卵で、気室のあとを探す
7. 出口 ── ゆで卵で気室を見る/資料を読む
おうちの おとなと いっしょに、ゆで卵を 作って、よく さましてから、からを むいて みましょう。とがって いない、まるい ほうから むきます。
まるい ほうの すみに、小さな へこみが ありませんか。ここに、生まれる ヒナが 息を する くうきの へやが できます。
つぎは、ヒナの 生まれる 日を 書いた 本や 図かんを 見て みましょう。なんども 休む ところも、さがして みてください。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:日本の飼鳥解説、鳥類学の解説、BMC Genomicsの論文、孵化の解説2件、ウィキペディア、当サイトの既存記事を使い、飼育資料を中心に整理した。
- OPiときめく愛鳥図鑑「孵化|嘴打ち、卵歯」 https://opi.toumoto.net/health/hatch/ (卵歯の役目、嘴打ち、回転、時間の幅)
- Ornithology.com「The Hatching Muscle」 https://ornithology.com/the-hatching-muscle/ (孵化筋の役割、卵歯の組成と脱落)
- BMC Genomics(2024)ブロイラーの複合筋の研究 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11619642/ (孵化筋の重さの変化)
- Raising Happy Chickens「Chick Hatching」 https://www.raising-happy-chickens.com/chick-hatching.html (内側のピッピングと呼吸、孵化の時間)
- Buffalo Bill Center of the West「How Do Eggs Hatch?」 https://centerofthewest.org/2016/05/24/how-do-eggs-hatch/ (孵化にかかる時間)
- Wikipedia「Egg tooth」 https://en.wikipedia.org/wiki/Egg_tooth (ヘビ・トカゲ・ワニの卵歯)
- 当サイト「卵の中のヒナは、21日で何をしているのか」 chick-embryo-development.html (発生の全体像)
なおした ところ
更新履歴
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