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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

銅どうの ボウルで 卵たまごの 白身を かきまぜると、泡あわが もつのは なぜ?

銅のボウルで卵白を泡立てると、なぜ泡がくずれにくくなるのか

銅のボウルで泡立てた卵白は、なぜ安定するのか:オボアルブミンの架橋と、銅・鉄・亜鉛・銀のちがい

分野:技術

卵たまごの 白身を かきまぜて 泡あわに する とき、銅どうで できた ボウルを つかう 人が います。ふしぎな ことに、銅どうの ボウルは、泡あわが できやすく なる のでは なく、できた 泡あわが くずれにくく なる と いう 研究が あります。

では、銅どうは 白身の 中で 何を して いるのでしょう。銀ぎんだったら どうなの でしょう。この ページを 読むと、銅どうが タンパク質しつを つなぐ という 考えと、銀ぎんの はたらきの ちがいが わかります。

お菓子づくりの本には、卵白は銅のボウルで泡立てるとよい、と書かれていることがあります。日本調理科学会誌に載った実験では、銅のボウルで泡立てた卵白は、ガラスのボウルで泡立てたものより、泡の膜の粘り気とはね返る力が大きく、より安定した構造になっていました[1]。しかも銅は、泡の「立ちやすさ」には関わっていませんでした。

泡立ちは同じなのに、なぜ泡だけが長持ちするのでしょうか。鉄や亜鉛のボウルではどうなのでしょうか。そして、同じ金属の仲間の銀は、卵白のタンパク質とどう付き合うのでしょうか。この記事を読むと、銅がタンパク質同士をつなぐという考え方と、銀との反応の特徴が分かります。

日本調理科学会誌の実験では、銅のボウルで調製した泡立て卵白は、ガラスのボウルのものよりも粘弾性が大きく、より安定な構造をもつことが示された。しかも銅イオンは、起泡性(泡立ちやすさ)には関与せず、安定性だけに関わっていたという[1]。では、銅は卵白のタンパク質に何をしているのか。同じ遷移金属である鉄や亜鉛ではなぜ同じ効果が出ないのか。銀イオンはどう反応するのか。

この記事を読むと、オボアルブミン分子間の架橋という実験上の説明、複数の説が並んでいる現状、銀イオンが結びつく先はチオール基だけではないという分析化学の報告が分かる。

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1. 銅どうの ボウルだと、泡あわの 何が かわるの?

1. 銅のボウルで変わるのは、泡の「立ちやすさ」か「持ち」か

1. 銅イオンは泡立ちやすさを変えず、泡の粘弾性を高める

おなじ 卵たまごの 白身を、ガラスの ボウルと 銅どうの ボウルで かきまぜて くらべた 研究が あります。銅どうの ボウルの 泡あわは、ねばり気と、おして ももどる ちからが 大きく、しっかり した つくりに なって いました[1]。

おもしろいのは、泡あわが できやすく なった わけでは ない ことです。銅どうは 「泡あわの たちやすさ」には かかわらず、「できた 泡あわの もち」に かかわって いた そうです[1]。

では、銅どうは 白身の 中で 何を して いるのでしょう。

※ 生の 卵たまごを さわった あとは、せっけんで 手を あらいます。

泡立てた卵白は、小さな空気の粒を、タンパク質の薄い膜が包んだものです。この膜が弱いと、泡はすぐにしぼんでしまいます。日本調理科学会誌の実験では、銅のボウルで作った泡立て卵白は、ガラスのボウルで作ったものより粘弾性(粘り気と、押されて元に戻る力)が大きく、より安定な構造だと報告されました[1]。

注目したいのは、銅イオンが泡の「立ちやすさ」には関わらず、「安定性」に関わっていたという点です[1]。泡立ちのよさを決めるのは、おもに卵白を構成するタンパク質自身で、混ざっている無機塩や糖の影響は小さい、という別の研究もあります[6]。銅は、泡の作りやすさではなく、できた膜を丈夫にする役のようです。

では、その膜の中で、銅は何をつないでいるのでしょうか。

※ 生の卵を触ったあとは、手を石けんで洗いましょう。

泡立て卵白の泡は、空気を包んだタンパク質の薄膜である。この膜が持ちこたえるかどうかが、泡の安定性を決める。銅ボウルで調製した泡立て卵白は、ガラスボウルのものより粘弾性が大きく、より安定な構造をもつと報告されている。さらに、銅イオンは起泡性には関与せず、安定性に関与していたという[1]。

起泡性と安定性は別の量である、という点が重要だ。別の研究は、卵白の起泡力は共存する無機塩や炭水化物の影響をほとんど受けず、ほぼ構成タンパク質自体が決めると報告している[6]。そのため、金属を足しても泡立ちやすさが変わらないという結果と、矛盾しない。では、銅はいったい膜の何を変えているのか。

なお、卵白は生の食品なので、実験でも調理でも、触ったあとは手洗いが前提になる。

3. 鉄や 亜鉛あえんの ボウルでは どうなの?

3. 鉄や亜鉛でも結びつくのに、泡は丈夫にならない

3. 銅だけが泡を安定させる:コンアルブミン複合体をめぐる複数の説

白身には、コンアルブミンという タンパク質しつも あります。銅どうイオンは これと むすびついて、きいろい つぶに なる と、アメリカの 化学の 会の 記事に 書かれて います[2]。

この つぶは コンアルブミンだけの ときより 安定で、白身が くずれすぎるのを ふせぐ、と 書かれて います[2]。

では、鉄てつや 亜鉛あえんの ボウルは どうでしょう。こちらも コンアルブミンと つぶを つくりますが、泡あわは 安定しない、と 同じ 記事に あります[2]。銅どうが とくべつ なのは、つぶが できる から だけでは なさそうです。

どうして 銅どうだけ なのかは、せつが いくつか あって、まだ 一つに きまって いません。

卵白にはコンアルブミンという別のタンパク質も含まれています。アメリカ化学会シカゴ支部の解説では、銅イオンはコンアルブミンと結びつき、黄色い複合体をつくり、この複合体は単独のコンアルブミンより安定なので、銅ボウルの卵白は過度に変性しにくい、と説明されています[2]。

一方、鉄や亜鉛の金属もコンアルブミンと複合体をつくります。それでも、その複合体は泡を安定にしない、と同じ解説は述べています[2]。複合体ができること自体が決め手ではない、ということです。

一般向けの解説には、銅とコンアルブミンの複合体が、ジスルフィド結合(硫黄どうしの結合)の生成を抑えるためだという説明もあります[3]。銅が、ほかのタンパク質の硫黄を含む部分とも反応するかもしれない、という見方も並べて紹介されています[2]。説は一つに決まっていません。先ほどの実験の解釈と、これらの説明が、どこで重なりどこで食いちがうのかは、これから調べられていく部分です。

卵白にはコンアルブミンも含まれる。シカゴ支部の解説によれば、銅イオンはコンアルブミンと黄色い複合体を形成し、この複合体は単体より安定で、卵白が過度に変性しにくくなる[2]。他方、鉄や亜鉛もコンアルブミンと複合体をつくるが、泡の安定性は高めない[2]。結びつくだけでは足りず、銅に特有の何かが必要だ。

この「何か」には複数の説明がある。一つは、銅とコンアルブミンの複合体が、ジスルフィド結合の生成を抑えるという一般向けの説明である[3]。もう一つは、銅が他のタンパク質の硫黄を含む部分にも作用するという見方である[2]。前章の、オボアルブミン分子間のS-Cu-S架橋という実験的な示唆[1]は、後者の方向と相性がよい。ただし、どの説がどのくらい効いているのかは、この記事の資料の範囲では特定できない。

ちなみに別の研究は、卵白のタンパク質を単独で比べ、鉄をもつコンアルブミンが最も高い起泡力を示したと報告している(起泡力の順は、鉄コンアルブミン、グロブリン、コンアルブミン、オボアルブミン、オボムコイド、リゾチーム)[6]。鉄は、泡の立ちやすさに関わっても、泡の持ちを良くするとは限らない。起泡性と安定性を分けて考える意味が、ここにも見える。

4. 銀ぎんは、たまごの タンパク質しつと どう むすびつくの?

4. 銀イオンは、卵白のタンパク質のどこに結びつくのか

4. 銀イオンの結合先はチオール基だけではない

銀ぎんの ばあいは、ようすが ちがいます。銀ぎんの つぶ(銀ぎんイオン)は、いおうを ふくむ ぶぶんと むすびつきやすい と、ばいきんに ついての 研究で 考えられて います[5]。そして、いおうを もつ システインを くわえると、銀ぎんの はたらきが うち消された と いう じっけんも あります[5]。

では、たまごの タンパク質しつでは どうでしょう。銀ぎんイオンに 合わせて 電気が かわる センサーで、卵たまごの タンパク質しつ(卵たまごアルブミン)が どれくらい あるかを はかる 研究が あります。それによると、銀ぎんが むすびつくのは いおうを ふくむ ぶぶんだけ では なく、ほかの ぶぶんの はたらきも 大きかった そうです[4]。

なお、銀ぎんが 泡あわの もちに どう かかわるかを、じかに しらべた けんきゅうは、ここでは とりあげて いません。

銀のほうは、銅と少し役どころが違います。銀イオンが細菌のはたらきをさまたげるのは、タンパク質や酵素のチオール(SH)基との相互作用と深く関係すると考えられています[5]。システインのようにチオール基をもつ物質を加えると、細菌に対する銀の作用が打ち消されたという実験もあります[5]。ただし、これは細菌についての研究で、卵白の話ではありません。

卵白のタンパク質に関しては、分析化学の研究があります。銀イオンに反応する電極(銀イオン選択性電極)を使うと、溶液の卵アルブミンの濃度に応じて電極の応答の時間が変わるため、タンパク質の量を測る方法として試みられました[4]。その中で、銀イオンとアルブミンの反応には、システインのチオール基だけでなく、それ以外の官能基の寄与も大きいことが分かったと報告されています[4]。

銀イオンと卵白の泡立ちの関係を、直接調べた資料は、この記事では取り上げていません。銅の効果を銀に置きかえて考えることは、できないようです。

銀イオンは、細菌の研究では、タンパク質や酵素のチオール基との相互作用と密接に関係すると考えられている。チオール基をもつ物質(システインなど)を加えると、銀の抗菌作用が打ち消されたという実験は、銀がSH基と結びつくことを支える結果の一つである[5]。この点だけを見ると、銅のS-Cu-S架橋と似たものを銀にも想像したくなる。

だが卵アルブミンについての分析化学の報告は、その想像に慎重さを求める。銀イオン選択性電極を使い、卵アルブミンの濃度に応じた応答時間から定量することが試みられ、その解析で、銀イオンとアルブミンの反応には、チオール基以外の官能基の寄与が大きいことが分かったという[4]。つまり、システイン残基のSH基だけが主役とは限らない。どの官能基が主要に働くかは、この記事の資料の範囲では特定できない。

注意すべき点は二つある。一つは、細菌の研究と卵アルブミンの研究が別の対象を扱うことだ。もう一つは、これらはどちらも泡立ちの話ではないことだ。銀イオンが卵白の泡の安定性にどう関わるかを直接調べた資料は、ここでは使っていないので、銅と同じ効果をもつかどうかは、この記事からは言えない。

5. おうちで、ためして みよう

5. 自分の台所で、泡の「持ち」を比べてみる

5. 泡の持ちを自分の手で比べ、原典に当たる

きょう できる こと

おうちの 人と いっしょに やって みましょう。生の 卵たまごを つかうので、さわったら 手を せっけんで あらいます。ボウルに 卵たまごの 白身だけを 入れ、かきまぜる どうぐで かきまぜます。泡あわが ふんわり した ところで やめて、おさらに のせます。5ふんごとに、おさらの すみに 水が たまるか 見て みましょう。

くらべて みよう

ボウルを かえて、同じ ことを やって みましょう。銅どうの ボウルが ない ときは、ガラスと ステンレスなど、あるもので かまいません。銅どうの けっかと 同じに なるとは かぎりません。

泡の「持ち」を比べる

おうちの人と一緒に試してみましょう。卵白だけをボウルに入れ、泡立て器で同じ回数だけ混ぜます。泡をお皿にのせ、5分ごとに、お皿の端に水がたまってくる様子や、泡の形が崩れてくる様子を見ます。生の卵を扱うので、触ったあとはよく手を洗ってください。

ボウルを変えてみる

ガラス、ステンレスなど、家にあるボウルで同じことをしてみます。銅のボウルがなくても構いません。ここで見るのは、器と泡立て方で、泡の持ちがどう変わるかです。研究で測られた粘弾性を、家で再現できるわけではありません。

原典に当たる

銅ボウルの実験は日本調理科学会誌に載っています[1]。日本語で書かれているので、要旨だけでも読めます。

手で確かめる

卵白だけをボウルに入れ、泡立て器で一定回数混ぜる。皿に取り分け、5分ごとに皿の端に出る水分と泡の崩れ具合を観察する。ガラスとステンレスなど、手元の器で比べてもよい。銅のボウルを使えるなら、日本調理科学会誌の実験条件[1]と見比べる。なお、粘弾性そのものや架橋の有無は、家庭の観察では測れない。生卵を扱うので手洗いをする。

資料を読むなら

銅ボウルの泡の安定性は日本調理科学会誌の論文[1]に、コンアルブミン複合体と他の金属の話は解説記事[2][3]にある。銀イオンと卵アルブミンの反応は分析化学の報告[4]に、起泡力と構成タンパク質の関係は農芸化学の報告[6]に載っている。論文の「示唆された」「と考えられる」といった言い回しが、どこまで実験で直接確かめたことで、どこから解釈なのかを、自分で線引きしながら読むと、説の並び方が見えてくる。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文で使った資料です。

  1. 銅ボウルで調製した泡立て卵白の安定性におけるオボアルブミンの役割. 日本調理科学会誌 46(5). https://www.jstage.jst.go.jp/article/cookeryscience/46/5/46_335/_article/-char/ja/ (銅ボウルの泡の粘弾性/銅イオンとオボアルブミンの架橋)
  2. Cooking with Copper Chemistry. Chicago Section, American Chemical Society. https://chicagoacs.org/articles/181 (コンアルブミン複合体/鉄・亜鉛との違い)
  3. Eggcellent Equipment, Eggcellent Results. A Moment of Science, Indiana Public Media. https://www.ipm.org/show/amomentofscience/2024-09-10/eggcellent-equipment-eggcellent-results (ジスルフィド結合の説明)
  4. 銀イオン選択性電極による卵アルブミンの定量. 分析化学 32(5). https://www.jstage.jst.go.jp/article/bunsekikagaku1952/32/5/32_5_308/_article/-char/ja/ (銀イオンと卵アルブミンの反応)
  5. Silver ions and thiol groups. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2292600/ (銀とチオール基/細菌での実験)
  6. 鶏卵卵白の泡立ちに関する研究(第3報). 農芸化学会誌 35(4). https://www.jstage.jst.go.jp/article/nogeikagaku1924/35/4/35_4_385/_article/-char/ja/ (起泡力と構成タンパク質)

なおした ところ

更新履歴

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