1. どんな 草だったの?
1. 祖先は、メキシコの乾いた森の草
1. テオシント ── 野生の祖先の姿と分布
この 草の なまえは、テオシントです。今も メキシコの 南西の、雨が ふる 時期と ふらない 時期が ある 森に、はえて います[2]。
ほは、小指より 小さい と いわれます[4]。そこに 実が ほんの すこし。実は 石のように かたい から(ほの 一部)で、まもられて います[3]。
今の とうもろこしは、から が なくて、実が はだかです。この ちがいが、とても 大きな ちがいです。
2. いつ、どこで はじまったの?
2. 約9000年前、メキシコ南部で
2. 単一起源 ── 遺伝マーカーと遺跡の証拠
とうもろこしは、すべて おなじ ところから はじまった、と かんがえられて います。メキシコの 南の ほうで、九千年ぐらい 前の こと です[1]。
この 話は、二百六十四本の とうもろこしと、ちかい 草の DNAを 見くらべて わかりました。
ずっと あとに なって、その 近くの いせきで、石の どうぐに のこった つぶが 見つかりました。八千七百年 いじょう 前の 人が、とうもろこしを つかって いた しょうこ です[2]。
3. から を ぬいだ、えだが へった
3. 殻をぬぎ、枝が減った ── 遺伝子の研究
3. tga1とtb1 ── 殻と枝分かれを切り替える遺伝子
テオシントと とうもろこしの ちがいを うむ、いでんしが いくつか 見つかって います。
ひとつは tga1(ティージーエーワン)。かたい から を、はだかの 実に かえる ことに、大きく かかわると いわれます[5]。この いでんし だけで 全部 かわった わけでは ありません。
もうひとつは tb1(ティービーワン)。たくさんの えだを、一本の くきに かえる はたらきが あります[6]。
たとえば、小さな 木の えだを ぜんぶ きって、一本の みきに 力を あつめる ように します。ただし 本当は、切る のでは なく、はじめから えだが のびにくく なった のです。
殻をぬぐ遺伝子
tga1(teosinte glume architecture1)は、テオシントとトウモロコシの違いを大きく左右する場所として、1993年の研究で注目されました[5]。この遺伝子の変化が、硬い殻を「はだかの実」に変えるのに関わったと考えられています。ただ、1つの遺伝子だけで変わったとまでは言えません。
枝を減らす遺伝子
tb1(teosinte branched1)は、たくさんの枝に分かれる形から、1本の茎に大きな穂がつく形への切り替えに関わります。1997年に単離され、トウモロコシ型のtb1は、テオシント型の約2倍の強さで働くと報告されました[7]。遺伝子そのものの変化というより、働き方が変わったことが、違いの一因とされます。
のちの研究では、tb1がtga1などほかの栽培化に関わる遺伝子も調節しており、複数の遺伝子が網の目のようにつながって選ばれてきたことが示されました[6]。
たとえるなら、庭木の枝を切りそろえて一本の幹に力を集めるようなことです。ただし実際に切ったのではなく、はじめから枝が伸びにくくなったと考えられています。
tga1は、テオシントとトウモロコシの差を大きく制御する座位として、Dorweilerらが1993年に報告した[5]。硬い殻(穎果を包む構造)を裸の実へ切り替える鍵の遺伝子と考えられるが、この形質が1遺伝子だけで説明できるとは限らず、「大きく関わる」にとどめておく。
tb1は、テオシント型の多数の枝分かれから、1本の茎に大きな穂をつける形への切り替えに関わる。Doebleyらが1997年に単離し、トウモロコシ型のアレルは、テオシント型の約2倍の発現量を示す。塩基配列の違いよりも発現の違いが、形の違いの一因とされる[7]。
後の解析で、tb1は細胞周期の中心的な遺伝子とtga1の両方を調節し、tb1ネットワークの複数の成員が選抜の標的になったとみられることが示された[6]。栽培化は、単一の遺伝子ではなく、つながった遺伝子群への選択として進んだと読める。
4. とちゅうの すがた
4. 途中の姿 ── 古い穂軸が語ること
4. 穂軸の考古学 ── ギラ・ナキッツと古代DNA
いせきから 出た 古い ほじくは、「とちゅうの すがた」を おしえて くれます。
メキシコの ギラ・ナキッツの どうくつから 出た ほじくは、六千二百年ぐらい 前の もの です。実が しっかり じくに ついて いて、人が 手で はずして うえる ひつようが ありました[8]。
もっと あとの、五千三百年ぐらい 前の ほじくは、長さが 二センチ より 短く、実は 八れつ でした[9]。今の とうもろこしと くらべると、ずっと 小さいです。
ギラ・ナキッツ洞窟の穂軸
メキシコ・オアハカのギラ・ナキッツ洞窟から出た穂軸は、直接の年代測定で約6250暦年前(放射性炭素では5400年前)と示され、2001年の時点ではアメリカ大陸で最古とされました。実が硬い軸に固くついていて、人が手で外して植える必要のある特徴をもちます[8]。8700年前の証拠はデンプンの粒で、穂軸ではありません。
古代DNAが語る「中間の姿」
メキシコのテワカン谷から出た、約5310年前の穂軸のゲノムが調べられました。テオシントより今のトウモロコシに近いものの、まだ途中の姿でした。実をやわらかくする遺伝子の型はすでにもっていましたが、まだ途中の姿で、長さは2cm未満、実は8列だったとされます。数千年をかけて少しずつ変わったと考えられています[9]。
5. しあげは どこで?
5. 仕上げは南米でも進んだ
5. 栽培化の最終段階 ── 複数の場所という仮説
2018ねんの けんきゅうでは、まだ とちゅうの とうもろこしが、六千五百年 いじょう 前に、南アメリカの 西南に とどいた と かんがえられて います[4]。
そこで 長い 時間を かけて、今の すがたに ちかく なって いった、と いう ことです。しあげは、ひとつの ばしょ では なかった かもしれません。
はじまりは 一かい、しあげは あちこち。この 二つは、ぶつかる はなし では ありません。
自分でも しらべて みたく なったら
自分でも調べてみたくなったら
自分でも調べてみたくなったら
ゆでた とうもろこしを 見る ときは、つぶが 何れつ ならんで いるか、かぞえて みましょう。おうちの 人の とうもろこしと、くらべても おもしろいです。
本を さがすなら、図書館で「とうもろこし」「さいばい」の 本を たのんで みましょう。
今日できること:ゆでたトウモロコシの粒を、1列ずつ数えてみてください。テワカン谷の古い穂軸(8列)と、列の数を比べられます。家族が食べているものと数を比べても、おもしろいでしょう。
調べるなら:図書館で、トウモロコシの歴史や栽培の本を探してみましょう。遺跡の話は、博物館の展示にもあります。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:学術論文の要旨・公開論文と、研究者の所属機関などによる解説記事を使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。
- Matsuoka et al. (2002) A single domestication for maize shown by multilocus microsatellite genotyping. PNAS. https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.052125199 (約9000年前・メキシコ南部での単一起源について。要旨で確認)
- Piperno et al. (2009) Starch grain and phytolith evidence for early ninth millennium B.P. maize from the Central Balsas River Valley, Mexico. PNAS. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2664064 (祖先の自生地とシワトキストラ遺跡の証拠について)
- Earth@Home "Evolution: Teosinte and the domestication of maize". https://evolution.earthathome.org/grasses/andropogoneae/maize-domestication/ (穂の構造と、殻のある実・はだかの実の違いについて)
- Smithsonian解説・phys.org (2018) Scientists overhaul corn domestication story. https://phys.org/news/2018-12-scientists-overhaul-corn-domestication-story.html (テオシントの穂の大きさの表現と、南米での最終段階について。Kistler et al. 2018 の解説)
- Dorweiler et al. (1993) Teosinte glume architecture 1: a genetic locus controlling a key step in maize evolution. Science. https://www.science.org/doi/10.1126/science.262.5131.233 (tga1が殻と実の違いに大きく関わることについて。検索結果の要旨で確認)
- tb1ネットワークに関する論文(PMC5629337)。https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5629337 (tb1が枝分かれとtga1を調節し、複数の遺伝子が選ばれたことについて)
- Doebley, Stec, Hubbard (1997) The evolution of apical dominance in maize. Nature. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9087405/ (tb1の単離と発現量が約2倍であることについて。要旨で確認)
- Piperno & Flannery (2001) The earliest archaeological maize (Zea mays L.) from highland Mexico. PNAS. https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.98.4.2101 (ギラ・ナキッツ洞窟の穂軸の年代と特徴について。検索結果で確認)
- phys.org (2016) Genome sequence of 5,300-year-old maize cob (Ramos-Madrigal et al., Current Biology の解説). https://phys.org/news/2016-11-genome-sequence-year-old-maize-cob.html (テワカン谷の穂軸のゲノムと中間の姿について)
なおした ところ
更新履歴
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