1. ももいろは、どこの いろ?
1. 「桃色」はトマトのどこの色なのか
1. 分類の基準は果肉ではなく皮の色
トマトは、かわの いろで 3つに わけられます[2]。ももいろけい、あかいろけい、きいろけいです。
ももいろけいは、かわが うすくて すきとおって いるので、ももいろに 見えると いわれています[1]。なかみが ピンクなのでは なく、赤い なかみが かわごしに 見えるのです。
ももいろけいは あまみが あって、なまで たべるのに つかわれる ことが 多いそうです[2]。
トマトは、果皮の色によって、桃色系・赤色系・黄色系の3つに大きく分けられます[2]。注目したいのは、分け方の基準が果肉ではなく「皮」の色だという点です。
農林水産省の広報誌では、桃色系の特徴を「果皮が比較的薄く透明なため、桃色に見える」と説明しています[1]。つまり、桃色は皮ごしに見たときの色で、中身がピンクというわけではありません。
桃色系は甘みが強く、酸味やトマトらしい青くささが少ないので、おもに生で食べるために使われます[2]。サラダやそのままの一切れにぴったりの性格です。
トマトは果皮の色によって、桃色系・赤色系・黄色系の3つに大別される[2]。分類の基準が果肉ではなく果皮にあることは、見落とされやすい。
農林水産省の広報誌は、桃色系を「果皮が比較的薄く透明なため桃色に見える」と説明し、甘みが強く生食向きとしている[1]。独立行政法人農畜産業振興機構の資料も、桃色系は甘みに富み、酸味やトマト臭が少ないので生食に使われると述べる[2]。
ただし、言い方は資料でゆれる。生産者向けの品種資料には、桃色系の代表品種について「果実の皮は透明で果肉は桃色。完熟で赤に変わる」と書くものがある[7]。果肉そのものが桃色だと読めてしまう表現だ。この記事では、色素と遺伝を調べた論文[3]に合わせ、「皮が透明で、下の赤みが透けて桃色に見える」という形で扱う。
2. かわに なにが ないと、ももいろに なるの?
2. 皮の黄色い色素がないと、なぜ桃色に見えるのか
2. 単一の劣性遺伝子 y と皮の黄色い色素
ももいろけいの かわには、きいろい いろの もとが ありません[3]。だから かわは むしょくで すきとおります。
すきとおった ビニールぶくろに あかい ものを 入れると、赤が よく 見えますね。それに にています。ただ、ほんとうの トマトの かわは、ビニールほど すきとおっては いません。
赤い いろの もとの りょうは、ももいろけいと あかいろけいで かわらないと いわれています[3]。ちがいは、かわの きいろい いろの もとが あるか ないか なのです。
2010年に発表された論文によると、桃色の果実は、ひとつの劣性遺伝子(y遺伝子)のはたらきで生まれます[3]。この遺伝子の持ち主では、熟すにつれて皮に黄色い色素(フラボノイドのなかまのナリンゲニン・カルコン)がたまりません。
すると皮が無色になり、皮ごしに見える色が変わります。赤い色のもとであるリコペンなどのカロテノイドの量は、赤い果実と変わらないと報告されています[3]。同じ赤い中身でも、皮に黄色い色素があるかないかで、外から見える色が変わるわけです。
皮の色素がないほうが、下にあるリコペンの色が見えやすくなる、という指摘もあります[3]。外から見た色で、中身の赤さを判断しやすくなるのです。
この遺伝子の正体として有力なのは、皮の色素を作るスイッチのような役目をもつ遺伝子(SlMYB12)です。2016年の研究では、桃色の新しい突然変異体で、そのはたらきが失われた変異が見つかっています[4]。
桃色の果実は、単一の劣性遺伝子 y(yellow)の座によって生じる、と報告されている[3]。y が劣性なので、桃色になるのは、両親から y の変異を1つずつ受け取った場合だ。
その結果、熟すときに皮へ黄色い色素ナリンゲニン・カルコン(フラボノイドの一種)がたまらなくなり、皮が無色透明になる。ところが、カロテノイドの量は赤い果実と変わらない[3]。そのため、桃色系の果肉は赤いまま、皮ごしの見え方だけが桃色になる。この論文は、黄色い色素が皮から消えると下のリコペンが見やすくなったとも述べる。
y 座の有力候補は、転写因子 SlMYB12 をコードする遺伝子だ。2016年に発表された研究では、桃色の新しい突然変異体で、SlMYB12 の機能が失われた変異(ヌル対立遺伝子)が見つかっている[4]。同じ論文は、桃色の性質が1925年にリンドストロームによって、皮が透明で本来の黄色いフラボノイドを欠く果実として記載されたことにも触れている。
ここで確かなのは、「皮の色素がない」という点まで。桃色系の甘みや生食向きといった味の性格が、この遺伝子から説明できるかどうかは、今回読んだ資料からは言えない。
3. あかい トマトは、どんな ところが とくべつ?
3. 赤色系トマトは、どんな場面で選ばれるのか
3. 赤色系の特徴と、桃色系との味のちがい
あかいろけいの トマトは、さんみが つよく、にこんでも くずれにくい ものが 多いと いわれます。トマトソースなどの かこうに むくと いわれています[1]。
「りんか409」という トマトは、あかいろけいの 一つとして しょうかいされています[6]。ももたろうに くらべて 少し 小さく、「あかい トマトらしい いろ」で、コクが あると いわれています。
それなら、トマトは あかければ いい、ももいろけいが いい、とは きめられません。つかいみちが ちがうからです。
では、赤色系の特徴は何でしょうか。農林水産省の広報誌は、赤色系は酸味が強く、加工用に向くと説明しています[1]。トマトソースやケチャップのように、煮たり加熱したりする料理で力を出すタイプです。
品種の例として、雑誌の記事は「りんか409」を赤色系の一つとして取り上げています[6]。桃太郎に比べて実がやや小さく、「赤いトマトらしい色」をしていて、甘みと酸味のバランスがよく、コクが感じられると紹介されています。
桃色系がサラダ向き、赤色系が加熱料理向き、という分け方は、あくまで傾向です。実際には、同じ赤色系でも品種によって味はさまざまで、どれが「上」ということはありません。
赤色系は、桃色系と比べて酸味が強く、加工用に向くとされる[1]。分類が皮の色素で決まる以上、桃色系と赤色系の違いは、皮の色素だけでなく、味の性格にも及んでいる。
国内の赤色系の例として、雑誌 Precious の記事は「りんか409」を取り上げ、桃太郎に比べて実がやや小さく、「赤いトマトらしい色」をしていて、甘みと酸味のバランスがよくコクが感じられると紹介している[6]。生食でも使えるわけで、「赤色系は加工用」という言い方が、そのまま当てはまらない品種があることが分かる。
赤色系の皮の厚さを、桃色系と数値で比べた資料は、この記事の材料の中にはない。「皮が厚い」「煮崩れしにくい」といった説明は、傾向として聞く程度にとどめるのが安全だ。
4. むかし、トマトが「まずくなった」のは どうして?
4. 青いうちに収穫された時代と「桃太郎」の登場
4. 青切り出荷への不満と、完熟出荷をめざした「桃太郎」の開発
むかしの 日本では、トマトが 赤く なる まえの、青い うちに とって はこぶ ことが 多く なりました。まちが おおきく なり、トマトを つくる ところが とおく なったからです。
そのため、買う 人から「トマトが まずく なった」という 声が 出たと いわれます[5]。
そこで タキイしゅびょうの チームは、赤く なっても いたみにくく、あまい トマトを めざしました。かたさと あまさを りょうりつ させる ことが だいじでした。10ねん ぐらい かけて、1985年に「ももたろう」が 売り出されました[5]。
「ももたろう」は、ももいろけいの だいひょうの ひんしゅです[1]。
1960年代の後半、都市が広がると、トマトの産地は消費する街から遠くなりました。長い距離を運んでも傷まないように、完熟する前の青い状態で収穫する「青切り出荷」が主流になり、消費者からは「トマトがまずくなった」という声が出たと伝えられています[5]。
そこで、種苗会社のタキイ種苗の開発チームは、完熟しても傷みにくく、甘くておいしいトマトを目指しました。特に重視したのは「かたさ」と「甘さ」を両立させることです。開発に約10年かかり、1985年に「桃太郎」が発売されました[5]。
桃太郎は、桃色系の大玉トマトの代表的な品種として知られています[1]。発売後、トマトの単価は1980年と比べて1.2倍以上になったという記述もありますが、桃太郎だけの効果とは言えません[5]。
桃色系が日本の食卓に広まった背景には、収穫の時期をめぐる不満があったとされる。1960年代後半、都市化で産地が消費地から遠くなると、輸送中の傷みを避けるため、完熟前の青い状態で収穫する青切り出荷が主流になった。その結果、消費者から「トマトがまずくなった」という声が上がった[5]。
この声に応える形で、タキイ種苗の開発チームは、完熟しても傷みにくいかたさと、甘さの両立を目標に掲げた。約10年の開発を経て、1985年に「桃太郎」が発売された[5]。完熟させてから出荷できれば、青切りで失われていた風味を、消費者に届けられる。ここに、輸送と味の両立という開発の筋道がある。
桃太郎は、農林水産省の広報誌でも大玉トマトの代表例の一つとして挙げられており、桃色系の品種だ[1]。発売後、トマトの単価が1980年と比べて1.2倍以上になったと紹介する資料もある[5]。ただし、その間の価格には他の要因も重なるはずで、桃太郎だけの効果と断定することはできない。
ここで混同しやすいのが、「皮が透明」と「皮がかたい」の関係だ。桃色系の皮は薄く透明と説明される[1]一方、桃太郎には「かたさ」が求められたとされる。透明さとかたさがどう両立しているのかを、数値で示した資料は、この記事の材料の中にはない。
5. にほんで ももいろけいが おおいのは、どうして?
5. 日本で桃色系が多いのは、なぜなのか
5. 日本の大玉トマトに桃色系が多い理由と、世界の傾向
にほんの おおきな トマトは、ももいろけいが 多いと いわれます[1]。「ももたろう」のほかに「れいよう」や「りんか409」も ありますが、りんか409は あかいろけいです。
にほんでは なまで たべる ことが 多いので、ももいろけいが ふつうだと、のうちく さんぎょう しんこうきこうの しりょうは いっています[2]。赤く なってから とどけたい という ねがいも かんけい したのかも しれませんが、はっきりした りゆうは わかっていません。
アジアでは ももいろけいを たべる 人が 多く、せかい中でも にんきが 高まっていると いわれています[4]。
日本で流通する大玉トマトには、桃色系が多いとされ、桃太郎のほかに、麗容(れいよう)やりんか409が大玉の例として挙げられています[1]。ただ、りんか409は先ほどのとおり赤色系に分類されるので、「大玉はぜんぶ桃色系」とまでは言えません。
なぜ桃色系が多いのかについて、農畜産業振興機構の資料は、日本では生で食べることが中心なので桃色系が主流だと説明しています[2]。ここに、完熟させてから出荷したいという声も関係したのかもしれませんが、はっきりした理由は分かっていません。
桃色系は日本だけのものではなく、アジア全体で消費が多く、世界でも人気が高まっていると、2016年の論文は述べています[4]。
日本の大玉トマトに桃色系が多いとされる点については、「大玉」の代表例として桃太郎、麗容、りんか409が挙がる[1]。ただし、りんか409は先に見たとおり赤色系に分類される。このため、「大玉はすべて桃色系」とは言えず、「桃色系が目立つ」という程度に読むのが妥当だ。割合を示した数値は出典にない。
では、なぜ桃色系が多いのか。農畜産業振興機構の資料は、日本では生食が中心であるため桃色系が主流だと述べる[2]。これに完熟出荷への要望が重なった可能性はあるが、青切り出荷との関係は別の資料[5]からの推測で、はっきりした理由は分かっていない。
海外にも目を向けると、2016年の論文は、アジアでは桃色系の消費が多く、世界でも人気が高まっていると述べている[4]。日本の事情だけでなく、アジア圏の好みや流通も関わっている可能性がある。
この論文は、理由の追究というより、桃色系の遺伝子を調べる研究の導入として人気の高まりに触れている点には注意したい。出典を原文で読むときの目安にもなる。
6. トマトを 切って、かわごしの いろを 見て みよう
6. 切ったトマトの断面と、外側の色を見くらべてみる
6. トマトの色を観察し、資料でそのしくみを読む
おうちの 人と いっしょに、トマトを 切って みましょう。ほうちょうは おとなに おねがいします。
そとがわの いろと、切った ところの いろを くらべます。かわを ほんの すこし はがして、あかるい ところで すかして 見ると、うすさや すきとおりかたが 分かるかも しれません。
スーパーで ひんしゅの なまえを 見て、ももいろけいかなと よそうして みるのも おもしろいです。
トマトを大人といっしょに切って、外側の色と断面の色を見比べてみてください。包丁は大人にお願いします。
切り口の皮のはしを、爪でほんの少しはがして、明るい場所で透かしてみるのもよいでしょう。皮の透明さや厚さの感じが、品種によってちがうかもしれません。
スーパーで品種名を見て、桃色系か赤色系かを調べるのは楽しいものです。農林水産省の広報誌は、公式サイトで読むことができます。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文で使った資料の一覧です。
- 農林水産省 aff 2022年8月号 https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/2208/spe1_01.html (桃色系・赤色系の特徴と品種の例)
- 独立行政法人農畜産業振興機構 野菜情報 2017年4月号「トマトの需給動向」 https://www.alic.go.jp/content/000147263.pdf (果皮の色による3つの分類)
- Ballester et al. 2010, Plant Physiology 152(1):71-84 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2799347 (y遺伝子と皮の黄色い色素)
- Fernandez-Moreno et al. 2016, Plant Physiology 171(3):1821-1836 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4936558 (SlMYB12と世界での人気)
- Precious「桃太郎とりんか409」 https://precious.jp/articles/-/21318 (りんか409の紹介)
- 野菜の品種特性資料(5aday) https://www.5aday.net/v350f200/gaishoku/pdf/veg16-23.pdf (桃色系の品種の特性の書き方)
なおした ところ
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