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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

牛の 親子は、大きな むれの 中で、どうやって おたがいを 見つけるの?

牛の母と子は、大きな群れの中でどうやって相手を見分けるのか

牛の母子は、群れの中で互いをどう識別するのか ── 放牧下の再生実験から

分野:生きもの

牛の 母と 子は、おたがいの 声を 聞き分けて いると、ひろい のはらでの しらべで わかりました。しかも 研究した 人たちは、「母牛の ほうは 聞き分けないだろう」と 予想して いました[2]。

牛が たくさん いても、親子は なぜ まよわないのでしょう。声の しらべと、生まれた 直後の ようすが わかります。

子が親から離れて身をひそめる動物では、母と子の声の見分けは「子から母へ」の一方通行だろう、と研究者は予想していました。ところが、広い放牧地で母牛に子牛の声の録音を聞かせると、母牛は他の子より自分の子の声に反応しました[2]。

見た目のよく似た牛が大勢いても、母と子はどうやって相手を見つけるのでしょうか。声を中心に、母子の手がかりが何か、生まれた直後に何が起きているかが分かります。

子が親から離れて身をひそめる種では、母子の声による個体識別は一方向だろうと予想されていた。ところが、自由放牧の牛に子牛の声の録音を聞かせた実験では、母牛も他の子牛より自分の子牛の声に反応しやすく、識別は双方向だった[2]。予想とは逆の結果である。

似た姿の牛が集まる群れで、母子は何を頼りに互いを見つけるのか。声の実験を軸に、呼び声の種類、生後すぐの接触とにおい、他の子への授乳という例外まで、どこまで言えるかが分かる。

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1. 牛が たくさん いても、子牛は お母さんを 見つけられるの?

1. 似た姿の牛が大勢いても、母と子は迷わないのか

1. 群れの中で母子は互いをどう見分けるのか ── 視覚・嗅覚・聴覚のうち、実験で示されたのは声

草はらに 牛が たくさん いる ところを 思いうかべて ください。どの牛も 大きくて、色も 形も よく にて います。ぱっと 見ただけでは、見分けるのは むずかしそうです。

それでも、牛の 親子は おたがいを 見つけます。大きな 手がかりの ひとつが 「声」です。子牛は 母牛の 声を、母牛は 子牛の 声を、聞き分けて いると ほうこく されて います[2]。

手がかりは、声だけでは ありません。目で 見る こと、鼻で においを かぐ こと、耳で 聞く こと。この 3つが かかわると されます[6]。この 中で、じっけんで はっきり たしかめられて いるのは、声です。

では、「声で 見分ける」ことは、どうやって たしかめたのでしょう。

広い草地に牛が大勢いると、遠くからは、どの牛も似た姿に見えます。それでも母牛と子牛は、離れてしまっても相手を見つけます。

母子の見分けには、見ること、においをかぐこと、声を聞くことの3つが関わるとされます[6]。この中で、実験ではっきり確かめられているのは声による識別です。

題名の問いへの答えの要点は、「母牛と子牛は、おたがいに相手の声を聞き分けている」ことです[1][2]。どうやってそれを確かめたのか、実験を順に見ていきます。

似た姿の個体が集まる群れの中で、母牛と子牛は互いをどう見つけるのか。母子の識別には視覚・嗅覚・聴覚が関わるとされる。レビューはそう整理している[6]。感覚ごとの距離による使い分けの詳細は、牛では本記事の範囲では扱わない。

牛の母子で、実験により直接示されているのは声による識別である。子牛は母牛の声を[1]、母牛は子牛の声を[2]、それぞれ聞き分けるという結果が、別々の研究で報告されている。題名の問いへの答えの要点はここにある。

次の章から、この2つの実験を、条件を確かめながら順に読む。まず、子牛の側からである。

2. ろくおんした 声を 聞かせると、子牛は どうするの?

2. 録音を聞かせると、子牛は自分の母牛の声を好んだ

2. 生後3〜5週の子牛9頭 ── 声だけの手がかりで母牛を選ぶ

しらべた 人たちは、生まれて 3週間から 5週間の 子牛 9頭に、2つの 声を 聞かせました。ひとつは 自分の 母牛の 声。もうひとつは、知らない 母牛の 声です。どちらも ろくおんした ものです[1]。

すると 子牛たちは、自分の 母牛の 声の ほうが すきだったと ほうこく されて います。すがたも においも ない ろくおんでも、声だけで お母さんが わかったのです。

ここで 気を つけたい ことが あります。しらべた 子牛は 9頭で、数は 多くありません。この しらべだけで、どの牛でも 同じとは 言えません。それでも、あとで 見る ちがう しらべでも、子牛は 自分の 母牛の 声に 早く こたえて います。

では、お母さんの ほうは どうでしょう。子牛の 声を 聞き分けるの でしょうか。

1994年の研究では、生後3〜5週の子牛9頭に、2つの録音が聞かされました。1つは自分の母牛の声、もう1つは知らない母牛の声です。結果は、子牛が自分の母牛の声を有意に好んだ、というものでした[1]。「有意に」とは、偶然だけでは説明しにくい差だった、という意味です。

録音を使うのは、見た目やにおいの影響を取りのぞくためです。姿もにおいもない状態でも選べたのですから、声だけで母牛を見分けられる、と言えます。

ただし、調べた子牛は9頭で、生後3〜5週という時期の結果です。すべての牛、すべての月齢に当てはまるとまでは書けません。それでも、次の研究でも同じ方向の結果が出ています。

子牛が母牛の声を聞き分けるなら、母牛のほうはどうでしょうか。

子牛の側を調べたのは、Barfieldらの1994年の研究である(掲載誌 Ethology は動物行動学の学術誌)[1]。生後3〜5週の子牛9頭に、録音した自分の母牛の声と、見知らぬ母牛の声を聞かせ、どちらを好むかを調べた。結果は、自分の母牛の声を有意に好んだ、というものだった。

再生実験の利点は、視覚やにおいを切り離し、声の手がかりだけを残せる点にある。そのため、この結果は「声だけで母牛を見分けられる」ことを支える。一方で、対象は9頭で、生後3〜5週という限られた時期であり、成長した後も同じ強さで識別するかは、この研究からは決められない。

ここまでは、子から母への識別である。では逆向き、母から子への識別はあるのか。2016年の研究がこれを調べている。

3. 母牛も、わが子の 声を 聞き分けるの?

3. 予想がはずれた ── 母牛も、わが子の声に反応した

3. 放牧下での双方向識別 ── 「一方向」という予想と逆の結果

2016年に、ひろい のはらで くらす 牛で ためした 研究が あります[2]。母牛と 子牛の 声を ろくおんして、のはらで スピーカーから 流しました。

母牛は、ほかの 子牛より 自分の 子牛の 声に こたえやすい ようでした。耳を 動かす、声の ほうを 見る、体の むきを かえる、スピーカーの ほうへ 歩く、といった うごきです。子牛も、ほかの 母牛たちより 自分の 母牛の 声に 早く こたえました。

しらべた 人たちは「子が かくれる 動物では、声の 見分けは 子から 母への 一方だけ」と 予想して いました。けっかは、その 予想と ぎゃくでした。

この しらべでは、子牛が わかい ほど、その 母牛は 音に 強く こたえる ことが 多い ようでした[2]。

ただし、これは ひろい のはらで くらす、肉を とる 牛の しらべです。どんな 育て方の 牛にも 同じとは 言いません。

2016年の研究は、広い放牧地で暮らす肉用牛を対象に、母牛と子牛の声の録音をスピーカーから流して反応を比べました[2]。母牛が自分の子牛の声を聞くと、耳を動かす、声のほうを見る、体の向きを変える、スピーカーへ歩くといった反応が、他の子牛の声のときより多く見られました。子牛のほうも、他の雌牛の声より自分の母牛の声に素早く反応しました。

この結果が注目されたのは、研究者の予想と逆だったからです。子が親から離れて身をひそめる動物では、母子の声の見分けは一方向だろうと考えられていました。牛の子もそのグループと見られていたため、「母牛も子牛の声を聞き分ける」という結果は意外だったのです。

同じ研究では、子牛が若いほど、その母牛は再生音に強く反応する傾向もありました。「若い母牛」ではなく「月齢の小さい子牛の母牛」という点に注意が要ります。

これは放牧された肉用牛での実験です。牛舎での飼育など、ほかの飼い方の牛まで同じとは言えません。次に、牛が実際にどんな声で呼び合っているのかを見ます。

母から子への識別を調べたのは、Padilla de la Torreらの2016年の研究である(Animal Behaviour 114)[2]。自由放牧下の肉用牛で、母牛と子牛の声の再生実験を行い、母牛の行動(耳の動き・注視・向きの変更・スピーカーへの移動)と、子牛が反応するまでの速さを比べた。母牛は他の子牛より自分の子牛の声に反応しやすく、子牛も他の雌牛より自分の母牛の声に速く反応した。母子の声による個体識別は双方向である。

この結果の意味は、研究者側の予想と対照させると分かる。子が親から離れて身をひそめる種では、識別は一方向になりやすいと予想されており、牛はこの型にあてはまると考えられていた。したがって、双方向という結果は、その予想を支えなかった。ただし、この予想がどの程度確かなものだったかまでは、要旨からは読み取れない。

同じ研究では、子牛が若いほど母牛が強く反応する傾向も報告された。「若い母牛」ではなく「月齢の小さい子牛の母牛」である。

限界も確認しておく。対象は放牧の肉用牛であり、群れの大きさや頭数の詳細は要旨の範囲では分からない。したがって、「すべての飼育条件で母子は声を聞き分ける」とは書けない。では、牛はどんな声で呼び合うのか。

4. 牛の よびごえには、しゅるいが あるの?

4. 近くでは低い声、見えなくなると大きく高い声

4. 牛は近距離と視界外で、2種類の呼び声を使い分ける

イギリスの ノッティンガムの ちかくの、ひろい のはらで くらす 牛の むれを しらべた けんきゅうが あります。ニュースで しょうかいされました[3]。

母牛の よびごえには、2しゅるい ありました。子牛が 近くに いる ときは、ひくい 声。子牛が 見えない ところに いる ときは、大きくて 高い 声です。

子牛は、おっぱいを のみたい とき、母牛を よびます。声には 牛ごとの とくちょうが あって、それぞれの 母と 子の あいだで 使われて いました。

近くでは 小さな 声で、はなれたら 大きな 声で。人が 友だちを よぶ ときに ちょっと にて います。

イギリスのノッティンガム近郊で放牧されている牛を観察した研究が、報道で紹介されています(クイーン・メアリー大学の研究)[3]。母牛の呼び声は2種類で、子牛が近くにいるときは低い声、視界から外れたときは大きく高い声でした。

子牛は、乳を飲みたいときに母牛を呼びます。声には牛ごとの特徴があり、それぞれの母と子のあいだで使われていました。

距離によって声を変えるのは、人が近くの友だちには普通の声で、遠くの友だちには大きな声で呼ぶのと少し似ています。ただし牛の場合は、何が声を変えさせているのかまでは、この報道の範囲では分かりません。

声が手がかりになることは分かりました。では、においや、生まれた直後の接触はどんな役目を持つのでしょうか。

野外観察の例として、ノッティンガム近郊の放牧群を調べたQueen Mary大学(ロンドン)の研究が、報道で伝えられている[3]。母牛の呼び声は、子牛が近くにいるときの低い声と、視界から外れたときの大きく高い声の2種類があった。子牛は乳を飲みたいときに母牛を呼ぶ。声は個体ごとに特徴があり、母と子の組ごとに使われていた。

前の2つの実験は、録音を使って「聞き分けられるか」を調べたものである。これに対し、この観察は、実際の群れで「何のために、どんな声が使われるか」を示す。距離に応じて声の高さと大きさが変わるという点は、声が母子の識別に関わるという整理[6]と矛盾しない。

ただし、情報源は報道であり、頭数や観察の期間などの細部は読み取れない。声の特徴が牛ごとに違うことと、相手がその違いで見分けていることは別の話で、後者を示したのが前の2つの実験である。残る問いは、においと接触の役目である。

5. 生まれた ばかりの ときは、なにが おきて いるの?

5. 生まれた直後の数時間 ── なめることと、においの役目

5. 分娩直後の結びつき ── 舐める行動と、羊の実験から分かること

子牛が 生まれると、母牛は すぐに その 子を なめます。なめる ことで、体に ついた まくを とり、体を かわかし、体温が 下がるのを ふせぎます[4]。

母と 子の むすびつきは、生まれた 直後の 数時間に できると されます。牛や 水牛などの しらべを まとめた ろんぶんは、「生まれて 6時間より前に 作られる」と 書いて います。牛では、生まれた 直後の 5分間 ふれあうだけでも、強い むすびつきが できたと いう ほうこくも あります[4]。

においは どうでしょう。羊では、においが きめ手に なります。はなが きかない 羊は、ほかの 子も うけ入れました。羊の 話なので、牛の ことと して 言いきる ことは できません[4]。牛では、においで 見分けるか どうかは、声ほど はっきりとは わかって いません[6]。

声で 見分ける 牛でも、さいごに ひとつ ふしぎが のこります。

子牛が生まれると、母牛はすぐにその子をなめます。なめることには、体を包む膜を取り、体を乾かし、体温が下がるのを防ぐ役目があります[4]。

母と子の結びつきは、生まれた直後の数時間にできるとされます。水牛を中心にした反芻動物のレビューは「分娩後6時間以内」と述べています。乳牛では、分娩直後の5分間の接触でも強い結びつきができた、という報告も引かれています[4]。6時間は水牛を中心にした記述なので、牛の決まった数字とは言えません。

においについては、羊の例がよく知られています。羊ではにおいの識別が決め手で、鼻が利かない羊は、他の子も受け入れました。選ぶ力ができるのは、分娩後2〜4時間とされます[4]。ただし、これは羊の実験です。牛でも、子牛の毛のにおいへの反応は自分の子のほうが大きい傾向があったものの、他の子との差は小さく、声ほどはっきりとは示されていません[6]。

声が手がかりで、においはまだ決め手と言えない。それなら、母牛は自分の子だけに乳を与えているのでしょうか。

生後直後の過程は、反芻動物のレビュー(水牛を中心にした2024年の論文)が整理している[4]。分娩後、母牛は子牛を舐める。舐める行動は、胎膜を取り除き、体を乾かし、体温低下を防ぐ。結びつきは、分娩後6時間以内に形成されるとされ、乳牛では分娩直後の5分間の接触でも強い結びつきができたという報告が引かれている。ただし6時間は水牛を中心にした記述であり、牛に固定の値と読むことはできない。

においの役割は、羊の知見に頼る部分が大きい。羊では嗅覚による識別が決め手で、鼻が利かない羊は他の子も受け入れた。選別が可能になるのは分娩後2〜4時間とされる[4]。これは羊の実験であり、牛の知見として書くことはできない。牛では、2016年の乳牛の研究で、子牛の毛のにおいへの反応は自分の子>他の子>対照の順だったが、自分の子と他の子の差は有意ではなく、反応率も低かった(検索要約の範囲)[6]。牛でにおいによる識別が成り立つかは、声ほどはっきり示されていない。

結びつきを作る直後の接触と、その後の声による識別の関係は、この資料群からは決められない。どちらも別々の知見であり、一本の因果として並べることは避ける。では、結びつきは常に1対1なのか。例外の報告を見る。

6. 母牛は、自分の 子だけに ミルクを あげるの?

6. 見分けられても、よその子にミルクをあげることがある

6. 他個体への授乳 ── 識別があっても、世話は排他的とは限らない

母牛は、自分の 子の 声を 聞き分けます。でも、自分の 子ではない 子牛に ミルクを あげる ことも あると、ほうこく されて います[5]。

こぶの ある しゅるいの 牛(ゼブ牛)では、生まれてから 120日までの あいだに、ほかの 子牛に ミルクを あげたり、まもったり した ほうこくが あります。

だから 母牛は、100パーセント 自分の 子だけに あげる わけでは ありません。ただし、これは たまに 見られた ことです。どれくらいの 多さで おきるのかは、ここからは 言えません。

母牛は自分の子の声を聞き分けますが、いつも自分の子だけに乳を与えるとは限りません。牛や家畜・野生動物の他個体への授乳を整理した論文には、ゼブ牛(こぶのある牛)で、分娩後120日までに自分の子ではない子牛へ授乳し、保護した報告が載っています[5]。

このことは、「見分けられる」ことと「見分けた相手だけを世話する」ことが、同じではないことを示しています。ただし、これは報告された例の話です。どのくらいの頻度で起きるのか、どんな条件で起きるのかは、ここからは決められません。母牛の100%が自分の子だけに授乳するわけではない、というところまでが、書ける範囲です。

他個体への授乳(アロナーシング)については、家畜と野生動物の例を整理した2021年の論文がある[5]。ゼブ牛では、分娩後120日までの間に、自分の子ではない子牛へ授乳し、保護した例が報告されている。したがって、牛の母が自分の子だけに授乳する、という理解は、すべての場合に成り立つわけではない。

この例を、前の章までの識別と合わせて読むと、識別ができることと、世話の対象を厳密に自分の子へ絞ることは別の現象である、と整理できる。逆に、レビューが「分娩直後の数時間で選ぶ力ができる」と述べる一方で、こうした例外があることは、結びつきが一度できれば絶対というものではないことを示す。

ただし、頻度や条件は、この論文の要点だけでは示されない。報告された例として扱い、頻度は分からないので一般化はしない。

7. 目を とじて、声だけで 当てて みよう

7. 目を閉じて、家の人の声だけで当ててみる

7. 声だけの識別を自分で体験する ── 条件を変えて考える

牛の 子牛は 声だけで お母さんが わかりました。同じ ことを、家で ためして みましょう。

目を とじて、家の 人に ちがう 部屋から 「おーい」と よんで もらいます。だれの 声か 当てて みましょう。近くから よぶ とき、ドアの 向こうから よぶ とき、遠くから よぶ ときで、当てやすさは かわるでしょうか。

牛が いる 場所へ 行く ことが あったら、はなれた ところから 見て みましょう。さくの 中には 入らず、大きな 声も 出しません。親子が はなれた とき、どちらが 先に 声を 出すのか、見つけられるかも しれません。

目を閉じて、家の人に別の部屋から「おーい」と呼んでもらいます。誰の声かを当ててみましょう。近くから、ドア越しに、少し離れた場所から、と条件を変えると、当てやすさが変わるかもしれません。牛の実験で、録音を使って声だけの手がかりを調べたのと、考え方は同じです。

牧場や動物園などで牛を見かけたら、柵を越えず、離れたところから見てみましょう。母牛と子牛が離れたとき、どちらが先に声を出すのか、声が近いときと遠いときで変わるのか、観察してみてください。

声の手がかりを、もう1つ試せます。いつもの家族の声を、ふだんより小さな声やささやき声で聞いたとき、だれか分かるでしょうか。声の高さや大きさが変わっても聞き分けられるかを、ためしてみてください。

声だけの識別は、家庭でも簡単に体験できる。目を閉じ、家の人に別の部屋から呼んでもらい、誰の声かを当てる。距離やドアの有無を変えると、声がどれだけ手がかりになるかを自分の感覚で確かめられる。ただし、人の場合と牛の場合は同じではないので、あくまで考え方の体験である。

観察の機会があれば、柵を越えず、牛に近づかず、離れたところから母子の様子を見る。母子が離れたときにどちらが先に声を出すか、呼び声の高さと大きさが距離で変わるかを見ると、報道の観察[3]と比べられる。

原典に進むなら、Barfieldら(1994)[1]とPadilla de la Torreら(2016)[2]の要旨を読み比べるとよい。前者は子牛の側、後者は母牛の側を調べており、同じ「声による識別」でも、対象と飼育条件が違う点に注意して読むと、第3章の限界の意味が分かる。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

出典について:学術論文の要旨とレビューを主に使い、報道と検索結果の要約は補助的に使った。何に使ったかは、それぞれの項目に書いている。

  1. Barfield et al. 1994, Ethology 97(4):257-264(UNI ScholarWorks)。https://scholarworks.uni.edu/facpub/4338 (子牛が自分の母牛の声を好んだ実験について)
  2. Padilla de la Torre et al. 2016, Animal Behaviour 114:147-154(Animal Studies Repository)。https://wellbeingintlstudiesrepository.org/acwp_asie/127 (母牛と子牛の声による識別が双方向だった実験について)
  3. RTE News 2014年12月 牛の母子の呼び声についての報道(Queen Mary大学の研究)。https://www.rte.ie/news/2014/1217/667452-cows (呼び声の2種類について。報道の要約)
  4. Mother–Offspring Bonding after Calving in Water Buffalo and Other Ruminants, Animals 2024(PMC11428873)。https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11428873/ (分娩直後の結びつきとなめる行動について。水牛中心のレビュー)
  5. Allonursing in Wild and Farm Animals, Animals 2021(PMC8614478)。https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8614478/ (他の子への授乳について。例外的な観察)
  6. Rocky Mountain Elk Foundation の解説記事(牛の母子の見分けについて)。https://rmef.org/media/cow-tell-calf-apart-others/ (視覚・においと声の役割分担の整理。検索結果の要約の範囲で、補助的に使用)

なおした ところ

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