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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

ウリハムシは、なぜ にがい ウリの はを すきなの?

ウリハムシはなぜ、苦いウリ科の葉を食べるのか

ウリハムシはなぜウリ科を選ぶのか:苦味への反応は虫の種で違う

分野:生きもの

キュウリの はに、コンパスで かいた ような まるい あな。やった のは、オレンジいろの ちいさな 虫、ウリハムシです。

ウリの なかまは、虫に たべられない ために、にがい せいぶんを もって いると いわれます。ところが ウリハムシは、その にがい せいぶんを「ごはんは ここだよ」の あいずに して いるようです。どうして なのでしょう。この ページを 読むと、ウリハムシの えらびかたと、まるい あなの ひみつが まだ 決まって いない ことが わかります。

キュウリの葉に、コンパスで描いたような円い穴。犯人のウリハムシは、ウリ科の植物が虫から身を守るために持つ苦味成分を、食べ物の合図にしていると報告されています。毒よけのはずの苦味が、なぜ目印になるのでしょうか。

この記事を読むと、ウリハムシが苦味成分に反応する様子、ウリハムシの仲間には、その成分に近いものを体にためて鳥よけに使う種もいること、近縁の虫や別の植物では反応が違うこと、そして円い穴の理由がまだ決着していないことが分かります。

円形の食べ跡を残すウリハムシにとって、ウリ科が防御のために持つ苦味成分ククルビタシンは、避ける対象ではなく、食べ始める合図として働くと報告されている。植物が虫を遠ざけるための苦味が、なぜ食事の目印になるのか。

この記事を読むと、ろ紙を使った試験で示された反応の強さ、近縁種やゴーヤの葉では結果が違うこと、ウリハムシの仲間が苦味成分の類縁物質を体にためて鳥よけにする例、円い穴の理由がまだ決着していない点が分かる。

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1. キュウリの はに まるい あなを あけるのは、どんな 虫?

1. キュウリの葉に円い穴をあけるのは、どんな虫か

1. 円い食べ跡を残す甲虫:ウリハムシは何を食べ、どう一年を過ごすか

ウリハムシの おとなは、からだの ながさが 7〜8mmほど。せなかは オレンジいろで、おなかがわは くろい 虫です[1]。

この 虫が たべる のは、キュウリ、カボチャ、メロン、スイカなどの はっぱです。はっぱには きれいな まるい あとが のこります[1]。

ウリハムシは 1ねんに 1かい だけ うまれて、おとなの すがたで ふゆを こします。かれ草の したや、いしがきの すきまで じっと して いるそうです[1]。はるの はじめには、ウリの なかまで ない ソラマメも たべます[1]。

ウリの なかまを えらぶ のには、わけが ありそうです。その ヒントは、ウリの にがい あじに ありました。

ウリハムシの成虫は体長7〜8mmほど。背中が橙黄色で、腹側が黒い甲虫です[1]。キュウリ、カボチャ、メロン、スイカなどのウリ類の葉を食べ、葉にはきれいな円形の食べ跡が残ります[1]。

年に1回発生し、成虫のまま枯草の下や石垣のすき間で冬を越します。春先にはウリ類だけでなく、ソラマメの葉も食べます[1]。ウリ科だけとは限らない、というのは覚えておきたい点です。

それでも、畑でウリ科の葉に集まる姿が目立つのは確かです。そこには、この虫にだけ通じる「目印」がありそうです。手がかりは、ウリ科の植物がわざわざ作っている苦味にあります。

夏の畑でキュウリやカボチャの葉に整った円形の穴があれば、食べたのはウリハムシの成虫であることが多い。体長7〜8mm、背面が橙黄色で腹面が黒い甲虫で、年に1回発生し、成虫で枯草の下や石垣のすき間などに潜んで越冬する[1]。ウリ類(メロン・キュウリ・カボチャ・スイカ・シロウリ)の葉を食べるが、春先にはソラマメも食べるので、ウリ科だけの専門家というわけではない[1]。

それでも、畑でウリ科に集中する姿が目立つのはなぜか。ウリハムシは、ウリ科の植物が防御のために持つ苦味成分を、食べ始める合図として使っていると考えられる。以下では、その根拠と例外、そして円い穴をめぐる未決着の点を順に見る。

2. ウリの にがい あじは、なんの ために あるの?

2. ウリ科の苦味は、植物が身を守るためのもの

2. ククルビタシン:ウリ科が防御に持つ苦味成分と、栽培で薄められた経緯

キュウリの はしの ほうが にがかった ことは ありませんか。あの にがい あじの もとは、ククルビタシンという せいぶんです。

これは ウリの なかまが、虫や びょうきの もとから からだを まもるために もって いる ものだと、せつめいされて います[2]。たとえば、あつさなどで ウリが つかれると、ふえる ことも あるそうです[2]。

いま わたしたちが たべる ウリの なかまは、この せいぶんが すくなく なるように そだてられて きました[2]。だから ふだんは あまり にがく ありません。

にがければ、虫は にげる はず。ところが ウリハムシは、ちがう はたらきかたを する ようなのです。

ウリ科の苦味のもとは、ククルビタシンという成分です。キュウリやズッキーニ、カボチャなどに含まれ、植物にとっては害虫や病原体から身を守るための防御物質だと説明されています[2]。暑さや乾燥のような環境ストレスで、量が増えることもあります[2]。

今の食用品種は、この成分の量が低く抑えられているので、私たちがふだんの食卓で強い苦味に出会うことは多くありません[2]。

2014年には、キュウリでククルビタシンCを作る遺伝子のグループと、葉と果実での調節因子が見つかったと報じられました。人が育てるうちに果実の苦味が失われたこと、野生のウリ科では苦味が捕食者から身を守ると説明されていることも、同じ報道に書かれています[3]。遺伝子の細かい中身は、ここでは立ち入りません。

苦味が守りなら、虫は寄りつかないはずです。ところがウリハムシは、その苦味に引き寄せられるように見えます。

ククルビタシンは、キュウリ・ズッキーニ・カボチャなどに含まれる強い苦味の成分で、植物にとっては害虫や病原体から身を守る防御物質と説明される。環境ストレスで量が増えることがあり、現在の食用品種では含有量が低く抑えられている[2]。ゴーヤの苦味は別の成分(モモルディシン)によるもので、ククルビタシンとは区別される。

2014年にはキュウリで、ククルビタシンCの合成に関わる遺伝子群と、葉・果実での調節因子(Bi・Bt)が特定され、栽培化の過程でBtの働きが変わって果実の苦味が失われたと報じられた。同じ報道は、野生のウリ科では苦味が捕食者から植物を守る、と説明している[3]。遺伝子の細部は、原論文の要約で報告されている範囲にとどまる。

防御物質であるなら、虫に避けられるのが筋である。ところが、この物質の側から虫を見ると、避けるどころか目印にする虫が知られている。次の章でその根拠を見る。

3. にがい あじが「ここに ごはんが ある」の あいずに なるの?

3. 苦味が「ここに食べ物がある」という合図になる

3. カイロモンとしてのククルビタシン:防御物質が食事の合図に変わる

1980ねんの けんきゅうでは、ウリの にがい せいぶんが、ハムシという なかまの 虫に とって「ここに たべものが ある」と しらせる あいずに なると しめされました[4]。こういう あいずを、カイロモンと よびます。

1983ねんの ほうこくでは、ウリハムシが ぞくする なかまにも、この せいぶんが「たちどまって むちゅうで たべる」きっかけに なると のべられて います[5]。ほんの すこしでも かんじる ようです。

日本の けんきゅうでは、ろ紙に にがい せいぶんを しみこませて、ウリハムシに あたえました。すると、ためした 4しゅるいの せいぶんの ぜんぶで、つよく たべたがったのです[6]。

ウリの はっぱは、虫に 食べられないように にがいのに、ウリハムシには ごちそうの かんばんに なって いる。ふしぎな ぎゃくてんです。

1980年の研究は、ククルビタシンがハムシの仲間にとって、宿主を選ぶ手がかりになり、夢中で食べる行動を促すカイロモンだと示しました[4]。カイロモンとは、出した側ではなく、受け取った虫の側に都合のよい、化学的な合図のことです。

1983年の報告は、新大陸のDiabroticina亜族と、旧大陸のAulacophorina亜族(ウリハムシはこちら)のハムシについて、ククルビタシンが足止めと夢中の摂食を起こす物質だと述べ、ごく微量でも感知できるとしています[5]。なお、「1ナノグラムでも反応する」という数字は、新大陸のDiabrotica属で得られた結果で、ウリハムシ自身の値ではありません[4]。

ウリハムシそのものを使った日本の試験もあります。ろ紙に染みこませたククルビタシンB・E・Iと、Eの配糖体の4種すべてで、ウリハムシ(Aulacophora femoralis)は強く食べるよう刺激されました[6]。

植物が守りに使う苦味が、この虫には「食べ物はここ」という看板になっています。では、ウリ科を食べる虫は、みんな同じ反応をするのでしょうか。

防御物質のはずのククルビタシンは、一部のハムシ類にとって宿主選択を促し、夢中の摂食を引き起こすカイロモン(受け手の虫に利益をもたらす化学的な合図)として働く。1980年の研究がまず新大陸のDiabroticite類で示し[4]、1983年の報告は、新大陸のDiabroticina亜族と旧大陸のAulacophorina亜族(ウリハムシが属する)の両方で、足止めと夢中の摂食を引き起こし、ナノグラム量でも感知されると述べた[5]。

ここで注意したいのは、「1ナノグラムのククルビタシンBでも反応する」という数字が、薄層クロマトグラフィー用の板を使ったDiabrotica属の結果で、ウリハムシの閾値ではないことだ[4]。仲間の結果を、ウリハムシにそのまま当てはめない。

ウリハムシ自身の根拠は、2000年のろ紙試験にある。ウリハムシ(Aulacophora femoralis)とA. lewisiiは、ククルビタシンB・E・Iとその配糖体(E)の4種すべてで強い摂食刺激を示した[6]。植物が防御のために作った成分が、ウリハムシには食べ始めの合図として働くことになる。

ただし、ウリ科を食べる虫がすべてこう反応するのか、という問いは別に立てる必要がある。次の章がその点である。

4. ウリを たべる 虫は、みんな にがい あじに むちゅうなの?

4. ウリ科を食べる虫は、みんな苦味に夢中になるのか

4. 反応の種差:近縁種・ゴーヤ・葉のろうが示す「苦味だけでは決まらない」選び方

おなじ ウリハムシの なかまでも、ちがいが ありました。ちかい しゅの A. nigripennis(ニグリペニス)は、にがい せいぶんに、ほとんど はんのうしませんでした[6]。ウリを たべる 虫が みんな、にがさに むちゅうに なる わけでは ありません。

ウリの なかまの ゴーヤの はっぱも、ウリハムシには あまり たべられません。ゴーヤの はには、たべるのを やめさせる せいぶん(モモルディシン)が あります[7]。ただし ウリハムシは、その せいぶんが こい ときだけ いやがる ようで、ぜんぜん たべない とは かぎりません。ニグリペニスの ほうは、もっと うすくても いやがりました[7]。

はっぱの 表面の ろうにも、たべる 気を おこさせる せいぶんが ありました。でも、それは ウリの はっぱを 見わける 手がかりでは ない ようです[8]。

つまり にがい あじは「たべよう」の ひとつの あいずで、これだけで すべてが きまる わけでは ありません。

同じ属で、日本にいる近縁のAulacophora nigripennisは、ククルビタシンにほとんど反応しませんでした。この研究の著者は、ウリ科を食べる虫のすべてが、ククルビタシンで強く食べるよう刺激されるわけではない、と結論しています[6]。

ウリ科でも、ゴーヤ(ニガウリ)の葉はウリハムシにあまり食べられません。ゴーヤの葉に含まれるモモルディシンIとIIが摂食を抑えるためで、ウリハムシにはIIが高濃度のときだけ効き、nigripennisにはより低い濃度でも効きました[7]。ただし「まったく食べない」とは書かれていません。

葉の表面を覆うろうの成分(直鎖アルカン)も、ウリハムシの食べる行動を刺激します。しかしこれは、宿主を見分ける手がかりではないと報告されています[8]。

ウリハムシの選び方は、苦味という「食べろ」の合図に、別の手がかりや忌避の成分が重なった結果と考えられます。なぜウリ科に特化したのか、その進化の道すじは、集めた資料では分かりません。

近縁のA. nigripennisは、同じろ紙試験でククルビタシンにほとんど反応しなかった。著者の結論は、ウリ科を食べる甲虫のすべてがククルビタシンで強く食べるよう刺激されるわけではない、というものである[6]。ククルビタシンがないと食べない、とまでは言っていない。

ウリ科のなかでも、ゴーヤ(Momordica charantia)の葉はウリハムシにあまり食べられない。葉の成分モモルディシンIとIIが摂食を抑えるためで、ウリハムシにはIIが高濃度のときだけ効き、A. nigripennisではより低い濃度で効いた[7]。ウリハムシがゴーヤを全く食べないという意味ではなく、弱い忌避が働くということである。

葉のろう(表面のワックス)に含まれる直鎖アルカンも、ウリハムシの摂食を刺激する。ただし2023年の報告は、アルカンは摂食行動を刺激するが、宿主選択の手がかりではないと結論する[8]。

以上を合わせると、ウリハムシの食事は、ククルビタシンという強い「食べろ」の合図を中心に、ろうの成分による摂食刺激と、ゴーヤのような忌避の成分が重なって決まるように見える。なぜウリ科に専門化したのか、その進化の経路は未決着だ。

5. にがい あじを たべて、からだに ためると どうなるの?

5. 食べた苦味を体にため、鳥から身を守る

5. 苦味の再利用:ウリ科の根から取りこみ、鳥が食べるのをいやがる物質として体にためる

ウリハムシは、にがい せいぶんを たべるだけでは ありません。ウリの 根ねを たべて、その ちかい せいぶんを じぶんの からだに ためる、ウリハムシの なかまが います[9]。

この せいぶんには、とりが 食べるのを いやがる はたらきが ありました。そのため、ウリハムシの なかまは、にがさを みを まもる ために つかって いると かんがえられて います[9]。

ウリハムシの 子ども(幼虫ようちゅう)は、土の 中で ウリの 根を 食べます。6がつの はじめごろに たまごを うみ、7がつの なかごろに いちばん おおく なります[1]。おとなに なるのは 7がつの おわりごろからです[1]。

はっぱの にがさを ごはんの めじるしに して、おなじ にがさを おまもりにも する。虫の ちえ、と いいたく なります。

1992年の研究によると、ウリハムシの仲間を含む東アジアのAulacophora属3種は、ウリ科の根を食べて、ククルビタシンと近い物質(23,24-ジヒドロククルビタシンD)を体にためます。この仲間の物質には、鳥の捕食者が食べるのをいやがる働きがあり、防御に使われていると考えられています[9]。

3種のうち、ウリハムシ自身が含まれるかは、要旨だけでは読み取れませんでした。ここでは「ウリハムシの仲間」と書いておきます。

ウリハムシの幼虫は土の中でウリ科の根を食べ、主根に達すると株が弱って枯れることがあります。産卵は6月上旬に始まり、7月中旬に最も多くなります。新しい成虫は7月下旬から羽化します[1]。

株を痛める側から見れば、やっかいな虫です。同時に、ウリ科の防御物質を食事の合図にし、仲間には体にためて自分の防御にも使う種がいる、植物と虫の駆け引きの当事者でもあります。

摂食の合図に使うだけでなく、取りこんだ苦味を自分の防御に回す虫もいる。1992年の研究では、ウリ科の根を食べて、ククルビタシンに近い23,24-ジヒドロククルビタシンDを体にためるAulacophora属の東アジアの3種が報告された。この類縁物質には鳥の捕食者が食べるのを抑える作用があり、研究は防御に使われていると考えている[9]。

ただし要旨では、3種のなかにウリハムシそのものが入るかは読み取れない。本記事では「ウリハムシの仲間」と書く。同じ資料から、植物の防御物質が、食べる側のもとで防御として再利用される例がある、というところまでは言える。

ウリハムシの暮らしと重ねると、幼虫が土の中でウリ科の根を食べて育つ点が目を引く[1]。根を食べた幼虫は、主根に達すると株を衰えさせることがある。産卵は6月上旬に始まり7月中旬に最多、新しい成虫は7月下旬から羽化する[1]。ただし、幼虫の段階でこの物質をためるかどうかは、挙げた資料には書かれていない。

食事の合図とも防御の材料ともなる苦味の二重の使い方は、植物と虫のあいだの駆け引きとして、研究の対象になっている。では、冒頭の円い穴にはどんな意味があるのか。最後の謎に進む。

6. まるい あなは、どうして まるいの?

6. 円い穴の理由は、まだ決着していない

6. 円い食べ跡の理由:テントウムシダマシ類で出た二つの説と、ウリハムシで未決着の点

ウリの はに まるい あなを あける のは、どうしてでしょう。じつは、まだ ぴったりした 答えが ありません。

ちかい ようすは、アメリカの テントウムシダマシの なかまで しらべられました。この虫は はっぱに ぐるっと みぞを ほって から、内がわを 食べます。

1980ねんには「きずついた はっぱに にがい せいぶんが 40ぷんいない に あつまるので、みぞで それを さえぎって いるのでは」という かんがえが 出ました[10]。

1995ねんには「にがい せいぶんは むしろ たべる きっかけ。みぞは、ねばねばした しるを さけるため」という 説せつも 出ました[10]。

ウリハムシの まるい あなも おなじ わけなのか、それは まだ 分かって いません。

葉に円い溝を掘ってから、内側を食べる行動は「トレンチ行動」と呼ばれ、アメリカのテントウムシダマシの仲間(Epilachna)で調べられてきました。

1980年の研究は、傷ついた葉には苦味の成分が40分以内に集まるので、溝はそれを遮るためではないかと提案しました。これに対して1995年の研究は、ククルビタシンは食べる刺激になり、溝はねばる師管液を避けるためという説を出しています。いずれもアブストラクトで読める範囲の話で、説は分かれています[10]。

ウリハムシの円い食べ跡が、同じ理由でできているのかどうかは分かっていません。インターネット上には「ククルビタシンを避けるため」という説明もありますが、根拠の論文が示されていないものは、ここでは取り上げませんでした。

分かっていないことがはっきりしているのは、研究の入り口が開いているということでもあります。

葉に円い溝を切ってから内側を食べる「トレンチ行動」は、アメリカのテントウムシダマシ類(Epilachna)で調べられた。1980年の研究は、傷ついた葉に苦味物質が40分以内に集まるため、溝がその移動を遮るのだという仮説を出した。1995年の研究は、ククルビタシンは摂食刺激であって忌避ではなく、溝は粘る師管液を避けるためだという別の説明を示し、説は分かれている[10]。

ここで重要なのは、これらがウリハムシではなくEpilachnaの研究だという点である。ウリハムシの円形食痕が同じ理由でできているのかどうかは、挙げた資料では決まらない。一般向けサイトにはククルビタシンを避けるための行動という説明もあるが、根拠となる論文が示されておらず、本記事では取り上げない。

ここで引いた二つの研究は、アブストラクトに書かれた範囲の話だ。原論文にあたると、仮説の根拠となった実験を詳しく確かめられるかもしれない。ウリハムシで同じ検証がされているのかを探す入口にもなる。

円い穴は、苦味を合図にする虫の暮らしの一場面で、同時に、まだ答えの出ていない問いでもある。最後に、この問いを手元に持ち帰る方法を考える。

7. ウリの はっぱの あなを、じぶんの 目で 見たら?

7. 葉の円い穴を、自分の目で見るとしたら

7. 観察の見どころと、原典への入口

おうちの ちかくの はたけや ベランダで、ウリの なかまの はを 見る きかいが あったら、あなの かたちを よく 見て みましょう。ふちは まるいでしょうか。あなの まわりは どうなって いるでしょうか。

ノートに あなの スケッチを して、「どうして まるいのかな」と じぶんの かんがえを 1つ かいて みます。ただし 虫には さわらず、とおくから 見るだけに しましょう。

ウリハムシの ことを もっと 知りたい ときは、県の のうぎょうの けんきゅうじょが 出している「びょうがいちゅうの じょうほう」が 日本語で 読めます。

ウリ科の葉を見る機会があれば、円い穴の形を観察してみましょう。穴のふちはなめらかでしょうか。穴の外側に、何か筋のようなものはあるでしょうか。虫がどのあたりにいるのかも、メモしておきます。虫には触らず、離れて見るだけにします。

観察したものを、自分で考えた「円い理由」の候補と並べて書いておくと、あとで本や論文を読んだときに、どの説と近いかを比べられます。

日本語で読める資料としては、都道府県の農業技術センターの病害虫情報があり、ウリハムシの生活や被害が写真付きでまとまっています[1]。苦味とハムシの関係に興味が湧いたら、日本の研究者による1980年代の論文や、J-STAGEの論文が、原典への入口になります。

観察では、穴の縁が滑らかな円か、穴の外側に溝や筋が先に入っているかを、スケッチに残す。溝の有無は、トレンチ行動をめぐる二つの説の見分けに関係しうる点なので、見どころになる。ウリハムシに同じ検証がされているかどうかは、挙げた資料では決まらないが、観察記録を持っておけば、論文を読むときの手がかりになる。

日本語の資料としては、島根県農業技術センターの病害虫情報(キュウリ・ウリハムシ)が、成虫の形態や発生時期、被害をまとめている[1]。ウリハムシ(Aulacophora femoralis)の苦味への反応は、Abe, Matsuda & Tamaki(2000)に、モモルディシンの効果はAbe & Matsuda(2000)に、体にためる物質はNishida et al.(1992)に、それぞれ詳しい。

残る問いは三つある。ウリハムシの円い穴はなぜ円いのか。ウリハムシなどのハムシは、苦味をどの感覚器で感じ取るのか。ウリ科への専門化はどう進んだのか。いずれも、ここで挙げた資料では決まらない。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文の「〜と報告された」「〜とされる」は、各論文・資料の記述にもとづきます。論文はアブストラクトや報道の要約の範囲で読み、全文までは確かめていないものを含みます。

  1. 島根県農業技術センター 病害虫情報(キュウリ・ウリハムシ) https://www.pref.shimane.lg.jp/industry/norin/gijutsu/nougyo_tech/byougaityuu/byougaityuu-index/kyuuri/ki-urihamushi.html (成虫の形、食べるもの、発生の時期、幼虫の食害)
  2. ダノン健康栄養財団 メールマガジン Vol.274 https://www.danone-institute.or.jp/mailmagazine/37039/ (ククルビタシンは植物の防御物質、食用品種は低含有)
  3. ScienceDaily, 2014(Shang et al., Science 346:1084 の報道) https://www.sciencedaily.com/releases/2014/11/141127212342.htm (キュウリの苦味の遺伝子、野生種の苦味)
  4. Metcalf et al. 1980, PNAS 77:3769 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC349707 (カイロモンとしてのククルビタシン、Diabroticaの感度)
  5. Metcalf et al. 1983, Cucurbit Genetics Cooperative Report 6:79-81 https://cucurbit.info/?p=2222 (旧大陸のAulacophorinaでの足止めと夢中の摂食)
  6. Abe, Matsuda, Tamaki 2000, Applied Entomology and Zoology 35(1):137-142 https://www.jstage.jst.go.jp/article/aez/35/1/35_1_137/_article (ろ紙試験での種ごとの反応)
  7. Abe, Matsuda 2000, Applied Entomology and Zoology 35(1):143-149 https://www.jstage.jst.go.jp/article/aez/35/1/35_1_143/_article/-char/en (ゴーヤの葉の忌避成分)
  8. Kamata, Inui, Sakai 2023, Chemoecology 33:55-61 https://scholars.hkbu.edu.hk/en/publications/straight-chain-alkanes-derived-from-leaf-waxes-stimulate-feeding-/ (葉のろうと摂食行動)
  9. Nishida, Yokoyama, Fukami 1992, Chemoecology 3:19-24 https://www.alice.cnptia.embrapa.br/alice/handle/doc/197598?mode=full (苦味の類縁物質を体にためて鳥よけにする)
  10. Carroll & Hoffman 1980, Science 209:414 / 1995, Ecological Entomology 20:51(アブストラクト) https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17747815/ / https://doi.org/10.1111/j.1365-2311.1995.tb00428.x (円い溝を掘る行動をめぐる二つの説。ウリハムシの研究ではない)

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