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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

こんぶと かつおぶしを あわせると、なぜ あじが なんばいにも なるの?

昆布とかつお節を合わせると、うま味が何倍にも感じられるのはなぜか

昆布のグルタミン酸とかつお節のイノシン酸:混ぜると7〜8倍に感じる理由と、一番だし・二番だしのちがい

分野:歴史・文化

こんぶの だしと、かつおぶしの だし。ひとつずつ のむより、あわせて のむと、あじが ずっと つよく かんじられます。こんぶにも かつおぶしにも、それぞれ うまみの もとが あります。ふたつを あわせると、うまみを もっと つよく かんじることが あるのです。

どうして そんな ことが おきるのでしょう。この メモでは、した の ふしぎな しくみと、一番だし・二番だしの つかいわけが わかります。

昆布のうま味成分とかつお節のうま味成分を1対1で混ぜると、単独で味わうときの7〜8倍に感じられるとされています。ヒトの舌にある受容体の反応を調べた報告では、約8倍という数字も出ています。1+1が、なぜ2より大きくなるのでしょうか。

この記事では、舌の中で起きていると説明されている仕組み、うま味の正体が見つかるまでの道のり、一番だしと二番だしの使い分けが分かります。

グルタミン酸とイノシン酸を1対1で混ぜると、単独のときより約7〜8倍強く感じるとされる。ヒトのうま味受容体の応答を調べた報告でも、グルタミン酸だけのときの約8倍という値が示されている。ところがラットでは約1.7倍にとどまる。同じ混ぜ方なのに、なぜここまで差が出るのか。

この記事では、昆布×かつお節の組み合わせが強まる仕組みの説明、成分の発見史、一番だしと二番だしの性格のちがいが分かる。

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1. こんぶ だけ、かつおぶし だけ、あわせると?

1. 昆布だけ、かつお節だけ、合わせるとどう変わるのか

1. 7〜8倍という数字は、何と何を混ぜたときの値なのか

こんぶには「グルタミン酸さん」という あじの もとが ふくまれて います。かつおぶしには「イノシン酸さん」という べつの あじの もとが あります。どちらも「うまみ」と よばれる あじです。

この ふたつを 1たい1で まぜると、ひとつだけの ときより 7〜8ばいも つよく かんじると されています[4]。

ただし この 7〜8ばいは、「あじの もと」を 1たい1で まぜた ときの はなしです。こんぶと かつおぶしを そのまま まぜた ときの ばいりつでは ありません。

昆布にはグルタミン酸、かつお節にはイノシン酸という、種類のちがううま味成分が含まれています。前者はアミノ酸の仲間、後者は核酸の仲間です。この2つを1対1で混ぜると、単独で味わうときのおよそ7〜8倍に強く感じられるとされています(大学の食品学研究室の資料で紹介されている値です)[4]。

注意したいのは、この倍率が「成分どうしを1対1で混ぜた条件」での値だという点です。昆布とかつお節をそのまま合わせたときの倍率ではありません。群馬県の研究所が味覚センサーで昆布とかつお節の粉末の配合を変えて測った例では、かつお節の割合が50〜70%のときに相乗効果が高く出ました。ただし差は小さく、特定の粉末と装置での測定値で、人が食べたときの倍率ではありません[7]。

では、味の強さが何倍にもなるのは、舌のどこで起きているのでしょうか。

うま味成分の代表は、昆布などに多いグルタミン酸(アミノ酸系)と、かつお節などに多いイノシン酸(核酸系)である。両者を1対1で混ぜると、単独で味わうときに比べておよそ7〜8倍強く感じるとされる(大学の食品学研究室の資料での記載)[4]。

ただし、この倍率は成分どうしを1対1で混ぜた条件に限った値で、昆布とかつお節という食材そのものの比ではない。食材で見ると、群馬県立産業技術センターが味覚センサーで粉末の配合比を変えて測った例では、かつお節の割合が50〜70%のときに相乗効果が高かった。しかし差は小さく、特定の粉末と装置での測定値であり、人が食べたときの倍率でも一般則でもない[7]。

ここで、冒頭の疑問に戻る。ヒトでは約8倍、ラットでは約1.7倍という差は、受容体のどこで生じるのか。

2. した の なかで、ふたつの あじは どこに くっつく?

2. 舌の受容体では、2つの成分がとなり合う場所にくっつく

2. T1R1とT1R3:グルタミン酸とイノシン酸は受容体のどこに結合するのか

した には、あじを かんじる「受容体じゅようたい」という ちいさな しくみが あります。うまみ用の ものは、ハエトリグサのような 「くち」を もって いると せつめい されています。

この くちの ところに、グルタミン酸さんが くっつきます。かつおぶしの イノシン酸さんは、そのとなりの ばしょに くっつきます。ふたりが となりどうしに すわると、あじの あいずが ぐんと おおきく なる、と かんがえられて います[3]。

ただし ほんとうは、いすが ならんで いるのでは ありません。ひとつの ぶひんの なかの、くっつく ばしょの はなしです。

この しくみが ほんとうに わかったのは、さいきんの ことです。2000ねんに、グルタミン酸さんに はんのう する じゅようたいが した にある ことが わかりました[5]。

舌のうま味受容体は、T1R1とT1R3という2つのたんぱく質がペアになったものです。そのうち T1R1 には、ハエトリグサが虫をはさむ形に似た「ハエトリグサ様の部分」があり、グルタミン酸はここに結合すると説明されています。

イノシン酸は、その部分の中の、グルタミン酸が結合する場所のすぐ隣に結合します。すると、受容体の反応がさらに強まります。これが、混ぜると強く感じる仕組みとして説明されています[3]。ただし、この仕組みは現在の有力な説明であって、すべてが決着したとまでは言い切れません。

こうした受容体が舌にあることが分かったのは、2000年のことです。マイアミ大学の研究で、グルタミン酸に反応する受容体が見つかり、うま味は甘味・塩味・酸味・苦味に続く第5の味として、国際的に「UMAMI」と呼ばれるようになりました[5]。

ところで、この成分を最初に取り出したのは、いつ、だれだったのでしょうか。

うま味受容体は、T1R1とT1R3のペアである。T1R1 にはハエトリグサに似た構造部分(Venus flytrap module)があり、グルタミン酸はそこに結合する。イノシン酸は、そのグルタミン酸の結合部位に近い隣接部位に結合し、応答をさらに強める(アロステリックな調節)と説明されている[3]。

この説明は現時点の有力なモデルで、完全に決着したと断定はできない。それでも、冒頭の種差には手がかりがある。ヒトの受容体では、混合の応答がグルタミン酸単独の約8倍になるのに対し、ラットは約1.7倍である[3]。約8倍はヒトでの値であって、全動物に当てはまるわけではない。

受容体の存在そのものが示されたのは2000年で、マイアミ大学の研究が、グルタミン酸に反応する受容体を舌に見いだした。これによってうま味は、甘・塩・酸・苦に続く第5の味として、国際語「UMAMI」になった[5]。

では、成分の側はどう見つかったのか。

3. うまみの もとは、だれが みつけたの?

3. うま味の正体は、昆布とかつお節から別々に見つかった

3. 1908年の昆布、1913年のかつお節:うま味成分はいつ、どう特定されたか

1908ねん、いけだ きくなえという 研究けんきゅう者が、こんぶから グルタミン酸さんを とりだしました。そして、その あじを「うまみ」と なづけました[1]。

それから 5ねん あと、1913ねんには、こだま しんたろうという ひとが、かつおぶしから イノシン酸さんを みつけました[3]。

こうして、こんぶと かつおぶしは、べつべつの うまみの もとを もって いる ことが わかりました。

でも、これを しる まえから、りょうりを する ひとたちは、どうして 2つを あわせて いたのでしょう。

1908年、池田菊苗は助手の栗原喜賢と協力して、昆布から取り出したグルタミン酸がうま味の成分であることを明らかにし、その味を「うま味」と名づけました[1]。グルタミン酸という物質自体は、1866年にドイツで発見されていました。池田は、それが昆布の味の本体だと示したのです。

5年後の1913年、小玉新太郎がかつお節からイノシン酸を見いだし、これもうま味をもつことが分かりました[3]。干ししいたけのグアニル酸が分かったのは、さらに後のことです。

こうして、昆布のグルタミン酸、かつお節のイノシン酸という「別々のうま味」が出そろいました。ところが、この2つを合わせると強まる理由は、成分が分かっただけでは説明がつきません。それでも、料理の現場では、ずっと前から2つを合わせていました。

1908年、池田菊苗は助手の栗原喜賢と協力して、昆布からグルタミン酸を取り出し、それがうま味の成分であることをつきとめ、その味を「うま味」と名づけた[1]。翌1909年には、味の素として商品化されている[2]。なお、グルタミン酸という物質自体の発見は1866年のドイツで、池田の功績はそれが昆布の味の本体だと示した点にある。

では、かつお節はどうか。Kurihara(2015)によれば、小玉新太郎が1913年にかつお節から5'-イノシン酸を同定し、これにもうま味があることが分かった。さらに干ししいたけの5'-グアニル酸は、国中明による、さらに後の発見である[3]。

このように、成分の特定は昆布が先、かつお節が後という別々の道を通った。しかし「合わせると強まる」という性質は、成分の単独の発見からは出てこない。そして実は、その性質は成分が特定されるよりずっと前から、料理人によって使われていたとされる。

4. しくみが わかる まえから、どうして あわせて いたの?

4. 仕組みが分かる前から、日本の料理は2つを合わせていた

4. 経験が科学に先行した:室町・江戸の料理書に残るだしの取り方

むかしの りょうりの ほんには、かつおぶしで だしを とる ほうほうが のって います。むろまち じだいの ほんです[5]。

えどじだいに なると、かつおぶしと こんぶの だしの とりかたが、たくさんの ほんに のりました。「だしは りょうりの もと」と かかれた ものも あります。

りょうりを する ひとは、「なぜ おいしいか」の しくみを しらなくても、あじを たしかめながら、つかい かたを そだてて きたのでしょう。むかしから、こんぶや かつおぶしで うまみを ひきだして きたのです[6]。

室町時代の料理書には、かつお節を使っただしの取り方が紹介されています。江戸時代になると、かつお節や昆布のだしの取り方がさまざまな料理書に載り、「だしは料理の元である」と書かれるようにもなりました[5]。

農林水産省の資料では、昆布のグルタミン酸とかつお節のイノシン酸が組み合わさることで相乗効果になり、だしのうま味が引き立つと説明されています。昆布やかつお節でうま味を引き出す食文化が、日本で長く続いてきたことがうかがえます[6]。

うま味という言葉も、受容体も知られていなかった時代に、人々は舌で確かめながら作り方を伝えていたことになります。では、そのだしを実際にとるとき、何がちがうのでしょうか。

日本の料理書をたどると、室町時代にはかつお節によるだしの取り方がすでに紹介され、江戸時代には昆布・かつお節のだしの取り方が多くの料理書に載り、「だしは料理の元である」とまで書かれるようになった[5]。農林水産省の資料も、グルタミン酸とイノシン酸の組み合わせが相乗効果となって、だしのうま味を引き立てると説明している[6]。

ここで注目したいのは、時間の順序である。成分の特定は1908年と1913年、受容体の発見は2000年だった。つまり、組み合わせの効果は、理由が分かるよりはるか前に、舌で確かめられて受け継がれていたことになる。

では、その経験知は、だしのとり方の中でどう具体化されているのか。

5. いちばんだしと にばんだしは、なにが ちがうの?

5. 一番だしと二番だしは「濃い・薄い」ではなく性格がちがう

5. 一番だしと二番だしの使い分け:香りと旨みの出方、とり方のちがい

こんぶと かつおぶしで さいしょに とる だしが、一番だしです。かおりが たかくて、すんだ いろに なります。おすいものや ちゃわんむしのような、やさしい あじの りょうりに あいます[8]。

その あとの、だしがらから とる だしが、二番だしです。かおりは よわく、うすい ちゃいろですが、うまみは しっかり でます。みそしるや にものの ように、あじの こい りょうりに むいて います[9]。

だから、二番だしは「でがらしで あじが ない」のでは ありません。つかう りょうりが ちがうのです。

一番だしは、昆布とかつお節から最初にとるだしです。香りが高く、澄んだ琥珀色で、上品な味になります。お吸い物や茶碗蒸しのような繊細な料理に向いています[8]。昆布は煮立てすぎるとぬめりなどが出るため、沸騰直前に取り出すとされます。

二番だしは、一番だしをとった後のだし殻からとります。煮出すので香りは弱く、色は薄茶色ですが、しっかりした旨みが出ます。味噌汁や煮物、炊き込みご飯のように味の濃い料理に向いており、香りを補うために少量の追いがつおをすることもあります[9]。

鳥取県の資料では、二番だしは一番だしをとった後の素材に、一番だしの半量の水を加え、蓋をせずに3分間沸騰させてとる方法が示されています。一番だし(削りかつお)は約1分の加熱です[10]。

二番だしは「出がらし」ではなく、香りは控えめでも旨みをしっかり使いたい料理のためのだし、と説明されています。

一番だしは、昆布とかつお節から最初にとる。香り高く、濁りのない琥珀色で、上品な味になるため、吸い物・薄口の煮物・茶碗蒸しなど繊細な料理に向く。昆布は煮立てすぎるとぬめりなどが出るため、沸騰直前に取り出すとされる[8]。

二番だしは、一番だしをとった後のだし殻からとる。煮出すため香りは弱まり、色も薄茶になるが、強い旨みが出る。そのため味噌汁・煮物・炊き込みご飯など濃い味付けの料理に向き、香りを補うために少量の追いがつおをすることがある[9]。鳥取県の資料では、二番だしは一番だしの半量の水を加えて蓋をせずに3分沸騰させるのに対し、一番だし(削りかつお)の加熱は約1分である[10]。

ここから、二番だしを「出がらしで味がない」と見るのは正確ではない。香りは弱いが旨みはしっかり出るという企業・自治体の説明が示すように、香りを楽しむ料理には一番、旨みを土台にする料理には二番、という使い分けがあるといえる。ただし、両者のうま味成分量を直接比べた測定値は、今回使った資料にはない。

自分でも しらべてみたく なったら

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

きょう できること:おうちの人と いっしょに、あたたかい おゆで、こんぶだけの だし、かつおぶしだけの だし、ふたつを あわせた だしを つくって、すこしずつ あじを くらべて みましょう。おゆは あついので、やけどに きを つけて ください。

でかけて できること:おみせで、だしパックや けずりぶしの ふくろの うらを みて、なにから できて いるか しらべて みましょう。

しらべる ときは:のうりんすいさんしょうの 「わしょく」の ページには、だしの しりょうが のって います。

今日できること:家の人と一緒に、お湯で昆布だけのだし、かつお節だけのだし、2つを合わせただしをとり、少しずつ味をくらべてみましょう。お湯が熱いので、やけどに気をつけてください。味噌汁に使うなら、一番だしと二番だしでも飲みくらべられます。

出かけてできること:売り場でだしパックや削り節の袋の原材料表示を見て、何が使われているかを調べてみましょう。

公式情報:農林水産省の「和食」関連の資料に、だしとうま味についての解説があります[6]。

今日できること:昆布だけ、かつお節だけ、両方を合わせたものの3種類のだしをとり、味わいをくらべる。熱湯を使うので、家の人と一緒にやけどに注意して行う。味噌汁に使って、一番だしと二番だしの旨みの出方をくらべてもよい。

出かけてできること:だしパック、削りぶし、昆布などの原材料表示を見くらべ、どの食材がどの成分源として使われているかを考える。

公式情報・原典:うま味受容体の仕組みは Kurihara(2015)の総説にまとめられている(英語)[3]。成分の発見史は国立国会図書館の解説[1]、だしのとり方は鳥取県の資料[10]が読みやすい。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文の参照番号と対応しています。公的機関・学会・博物館などの資料を中心に使いました。

  1. 国立国会図書館「うま味」の発見(NDLイメージバンク kaleido 17-3) https://www.ndl.go.jp/kaleido/entry/17/3.html (1908年の池田菊苗の発見)
  2. 味の素グループ プレスリリース https://www.ajinomoto.co.jp/company/jp/presscenter/press/detail/2008_03_21_2.html (うま味の命名と商品化)
  3. Kurihara K. (2015) Umami the Fifth Basic Taste: History of Studies on Receptor Mechanisms and Role as a Food Flavor. BioMed Research International https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4515277/ (イノシン酸の発見、受容体の仕組み、種による差)
  4. 東京聖栄大学 食品学第二研究室「だしとは何?」ポスター https://www.tsc-05.ac.jp/images/nutrition_ed/2017fsp/No3.pdf (1対1で混ぜたときの7〜8倍)
  5. 東京都教育庁 伝統・文化に関する教育推進資料13号 https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/kyoiku/dentou_suishinsiryo013 (2000年の受容体の発見、室町・江戸の料理書)
  6. 農林水産省 和食ワールドチャレンジ 学習資料 https://www.maff.go.jp/j/yusyutu_kokusai/washoku-world-challenge/learning_03.html (相乗効果の説明)
  7. 群馬県立産業技術センター 研究報告 2022「味覚センサーを利用した旨味のみえる化」 https://www.tec-lab.pref.gunma.jp/wp-content/uploads/R4_09.pdf (かつお節の配合比と相乗効果の測定例)
  8. マルトモ だしペディア https://www.marutomo.co.jp/dashipedia/archives/480 (一番だしの特徴)
  9. 小林食品 和食のうま味 一番だしと二番だし https://www.kobayashi-foods.co.jp/washoku-no-umami/itban-niban (二番だしの特徴)
  10. 鳥取県 商工労働部 食パラダイス推進課 だし・うま味の資料 https://www.pref.tottori.lg.jp/224613.htm (一番だし・二番だしのとり方)

なおした ところ

更新履歴

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