1. 12÷4には、2つの お話が ある
1. 同じ12÷4に、2つのお話がある
1. 同じ式12÷4を、「等分」と「包含」に読み分ける
あめが 12こ あります。4人で おなじ かずずつ 分けると、1人 3こです。
では、「1人に 4こずつ くばる」と、なん人に くばれる でしょう。こたえは 3人です。
この 2つは、どちらも 12÷4 と 書きます。1つめは「1つぶんは いくつ?」、2つめは「なん人ぶん とれる?」と きいて います。小学校の 3ねんせいで、この 2つの いみを ならいます[1]。
わりざんは、ほかにも、いろいろな ところで かくれて います。たとえば、まちの 人の かずを くらべる ときです。
あめ12個を、2通りに分ける
あめが12個あります。4人で同じ数ずつ分けると、1人3個です。これは「等しく分けたとき、1つ分はいくつか」を求める場面で、等分と呼ばれます。
一方、「1人に4個ずつ配ると、何人に配れるか」と聞かれたら、答えは3人です。「ある数量が、もう一方の数量のいくつ分か」を求める場面で、包含と呼ばれます。どちらも式は12÷4で、小学校3年のわり算では、この2つの意味を学びます[1]。
式は同じでも、聞いていることが違う
答えが同じ3でも、最初の3は「個」、次の3は「人」です。同じ式のなかに、単位の違う2つの問いが入っています。この違いを知っていると、わり算が出てくる場面の見つけ方が広がります。
では、人数も個数も決まっていない、まちの混み具合のような話に、わり算はどう使えるのでしょうか。
小学3年のわり算で扱う意味は二つある。一つは等分除で、12個のあめを4人で分けたときの1人分を求める。もう一つは包含除で、12個を4個ずつ分けたときに何人に分けられるかを求める。式はどちらも12÷4である[1]。
ここで注意したいのは、答えの3が表す単位が違うことだ。等分では「個」、包含では「人」になる。式が同じでも、何を未知として聞いているかが違うので、場面を読んで意味を決めることになる。授業では、どちらの意味から先に導入するかが研究の論点にもなっている[1]。
この区別は、あとで割合や速さを学ぶときにも効いてくる。たとえば「60kmを2時間で走った速さ」は、60を2等分して1時間あたりを求める等分の読みで、「30kmずつ進むと何時間か」は、60の中に30がいくつ入るかを数える包含の読みになる(筆者の例)。式の形が同じでも、問いの向きは二通りありうる。
この二つの意味は、人数と個数のように、数えられるものが2種類ある場面で使い分けられる。では、面積や時間のような「連続した量」を相手にしたとき、わり算はどう使われるのか。
2. ひろさも じかんも、わりざんで くらべる
2. 広さの違うまちを、どう比べるのか
2. 「1あたり」でそろえる:人口密度と燃費
A町には 5000人、B町には 3000人 すんで います。A町の ほうが 人が おおいと 言えるでしょうか。じつは、町の ひろさが ちがうと、くらべられません。
A町が 20km²、B町が 10km²だと します。5000÷20=250、3000÷10=300 です。1km²に 250人と 300人。こむ ようすは、B町の ほうが 上です。
こうして ひろさ 1つぶんの 人の かずを「人口みつど」と いいます。人の かずを ひろさで わって だします[2]。
くるまの「ねんぴ」も おなじ なかまです。1リットルで なんkm 走れるかを あらわします[5]。
わりざんは、かずの ほかに、「あまり」でも つかわれます。
人数だけでは、混み具合は比べられない
A町に5000人、B町に3000人が住んでいるとします。人数だけならA町が多いのですが、町の面積が違えば、混み具合は比べられません。A町が20km²、B町が10km²なら、5000÷20=250、3000÷10=300で、1km²あたりではB町のほうが混んでいます(この数字は、わり算の考え方を確かめるための仮の例です)。
こうして1km²あたりの人口を求めたものが人口密度で、自治体の統計では、総人口を総面積で割って出します[2]。小学5年の「単位量あたりの大きさ」で習う考え方です。
車の燃費も「1あたり」
自動車の燃費は、1Lの燃料で何km走れるかをkm/Lで表します。表示に使われるWLTCモードは、市街地・郊外・高速道路の3つの走り方を、平均的な時間の配分で組み合わせたものです[5]。表示の値は決まった試験条件のものなので、渋滞や運転のしかたで、実際の値は変わります。
ここまでは、割り切れる数でした。では、割り切れずに残った「余り」にも、使い道はあるのでしょうか。
人口の多さだけでは、地域どうしの混み具合は比べられない。そこで面積をそろえる。例えば面積20km²に5000人なら、5000÷20=250人/km²である(計算の考え方を示す仮の例)。これが人口密度で、自治体の統計指標でも算出方法は総人口÷総面積とされる[2]。なお、人口集中地区(DID)の人口密度は、別の基準で区切った地区の値であり、混同しないようにしたい。
道のり÷時間で速さを出すのと同じく、燃費は走行距離÷燃料の量で、1Lあたりの走行距離(km/L)になる。国土交通省の資料によると、WLTCモードは市街地・郊外・高速道路の3つの走行を、平均的な使用時間の配分で組み合わせた国際的な走行モードである[5]。ただし表示値は決まった試験条件での値であり、渋滞や運転の方法で実際の燃費は変わる。「1あたり」にそろえると比べやすくなるが、その値は条件つきの目安だと読む必要がある。たとえば60km走って燃料を2L使ったなら、60÷2=30km/Lと計算できるが(仮の例)、同じ車でも、渋滞の多い日には数字が下がることがある。
ここまでは、商の部分を使った例だった。では、割り切れなかった「余り」は何の役に立つのか。
3. 本の ばんごうの さいごは、あまりで きまる
3. 本の番号の最後の1桁は、余りで決まる
3. ISBN-13の検査数字:和を10で割った余りの使い方
本の うらを 見て ください。978 から はじまる 13この かずが あります。ISBNと いう、本の ばんごうです。
この さいごの 1つは、まえの 12この かずから つくります。左から 1ばんめ、3ばんめ…には 1を、2ばんめ、4ばんめ…には 3を かけて、ぜんぶ たします。たとえば 978-4-10-109205 では、ごうけいが 82です。
82を 10で わると、あまりは 2。10から 2を ひいて、さいごの かずは 8に なります[3]。
もし ばんごうの どこかを まちがえて うつと、この けいさんの こたえが あわなく なります。まちがいを 見つける ための、わりざんの あまりの つかい方です[4]。
では、むかしの 人は、わりざんを どう していたのでしょう。
13桁の最後は「検査数字」
本の裏の、978で始まる13桁の番号がISBNです。最後の1桁は検査数字と呼ばれ、前の12桁から計算して決めます。左から1、3、1、3……と順に掛けて足し、その和を10で割った余りを使います[3]。
たとえば978-4-10-109205で計算します。9×1+7×3+8×1+4×3+1×1+0×3+1×1+0×3+9×1+2×3+0×1+5×3=82です。82÷10の余りは2なので、10−2=8が最後の1桁になります(余りが0なら0です)[3]。
なぜ余りを使うのか
最後の1桁まで足した和が、必ず10で割り切れるように決めてあるからです。番号を書き間違えたり、打ち間違えたりすると、割り切れなくなることが多く、機械がすぐ気づけます[4]。ここでは、「何個分あるか」ではなく、「割ったあとに何が残るか」が役に立っています。
では、そもそもわり算は、いつ日本の暮らしに入ってきたのでしょうか。
ISBN-13の末尾の検査数字は、わり算の余りが主役になる例だ。先頭の12桁に、左から1、3、1、3……の重みを掛けて足し、10で割った余りから定める[3]。978-4-10-109205 の場合、和は82、82÷10の余りは2で、10−2=8が検査数字になる。余りが0のときは0とする。
定め方の意味は、「検査数字まで含めて重み付きの和をとると、10で割った余りが0になる」ことにある[4]。入力時に1桁をまちがえた場合、和は10の倍数でなくなり、受け取る側の計算で誤りに気づけることが多い。なお、旧来の10桁ISBNは11で割る別の方式で、混ぜて考えない。
商ではなく余りを使うわり算は、誤り検出符号という分野につながる。では、手計算の時代、わり算はどうやって実際に行われていたのか。
4. えどの 本にも、わりざんの 手じゅんが あった
4. 江戸の人気本が教えた、そろばんのわり算
4. 『塵劫記』と割声:そろばんで割る技術が広まった背景
えどじだいの はじめ、よしだみつよしと いう 人が「じんこうき」と いう 本を かきました。そろばんの つかい方の「まにゅある」と いわれる 本です。じょうかんには、そろばんで かけざんや わりざんを する 方ほうが のって います[6]。
この 本には、田んぼの ひろさを はかる もんだいや、ねずみが ふえて いく ふしぎな もんだいも のって いました。1634ねんに でた 本が いちばん ひろまった と されます[6]。
そろばんと「わりごえ」(わりざんの 九九)は、むろまちじだいの おわりごろに つたわり、じだいの ひつようから ぜんこくに ひろまった と いわれます[7]。
田畑の広さも、ねずみ算も載っていた
江戸時代、吉田光由が『塵劫記』という算術書を出しました。そろばんのマニュアルとされ、上巻にはそろばんを使った掛け算と割り算のやり方が載っています[6]。
中巻・下巻には、田畑の面積や工事(普請)に関わる実用的な問題と、ねずみ算のような遊びの問題があります。寛永11年(1634)版が、もっとも広まった版とされます[6]。
割声は、時代の必要から広まった
そろばんと「割声」(わり算の九九にあたる唱え方)は、室町時代の終わりごろに伝わったとされます。その後、時代の必要に応えて全国に広まったという説明があります[7]。
『塵劫記』の中巻・下巻に田畑の面積や工事の問題が並んでいることを思うと、割る場面は暮らしの中にあったのでしょう(これは筆者の読みで、資料が因果まで述べているわけではありません)。
では、いま私たちが、わり算を見つけるには、どうしたらよいでしょうか。
江戸時代の算術書『塵劫記』(吉田光由)は「そろばんのマニュアル」とされ、上巻にそろばんによる乗算・除算の計算法を載せる。中巻・下巻には、田畑の面積や普請などの実用問題と、ねずみ算など遊戯的な問題がある。複数の版があり、寛永11年(1634)版がもっとも普及した[6]。
そろばんと割声(わり算の九九)は室町時代末に伝来し、時代の必要性に応えて全国に普及したと説明される[7]。割声の手順は、和算の資料で調べられる。
実用問題と遊戯的な問題の両方が一冊に載る構成は、割る計算が「必要な技術」であると同時に、考えること自体が楽しまれていたことを示すとも読めるが、これは解釈である。いずれにせよ、わり算は、等分と包含、「1あたり」、余りという異なる顔を持ったまま、手計算から機械の検査まで使われ続けている。
5. 家の 中の わりざんを、さがして みよう
5. 家の中で、わり算を探してみる
5. 日常でわり算の「意味」を分類し、原典で確かめる
1つめ。おやつを 12こ(ぶんだけ)ならべて、「4人で わける」と「4こずつ わける」を、やって みましょう。おなじ 12÷4でも、こたえの いみが ちがうのが わかります。
2つめ。おうちの 本の うらの ISBNを、左から 1、3、1、3…と かけて たして みましょう。さいごの かずが、あっているか たしかめられます。
電たくを つかっても かまいません。あまりが 0の ときは どう なるか、本を かえて ためして みましょう。ぜんぶ あうと、ちょっと うれしく なります。
今日できること:同じ式の2つのお話
おやつやおはじきなど、家にある物を12個数えます。「4人で等しく分ける」と「4個ずつ分ける」を実際にやってみて、答えの「3」が、それぞれ何を表しているかを書いてみます。同じ12÷4でも、個数と人数に分かれることが確かめられます。
本で確かめる:ISBNの検査数字
家にある本の裏の13桁を探し、先頭の12桁に1、3、1、3……を掛けて足してみます。10で割った余りから10を引いた値(余りが0なら0)が、最後の1桁と合っているかを見ます。電卓を使ってかまいません。数冊試して、余りが0になる本があるかを探すのも面白いでしょう。
原典を読むなら
1あたりの考え方は、自治体の統計指標の解説で、ISBNの検査数字は、大学の誤り検出符号の講義資料で読めます。『塵劫記』については、国立国会図書館の和算のページがあります。
身のまわりの割り算を、意味で分類してみるとよい。等しく分けているのか(等分)、いくつ分あるかを数えているのか(包含)、単位あたりにそろえているのか、余りを使っているのか。分類の際は式ではなく、単位と問いを書く。同じ式が二通りに読める例が見つかれば、本稿の第1章の確認になる。
ISBNは、手元の本で追試できる。先頭の12桁に1と3を交互に掛け、和を10で割った余りから検査数字を求めて、本の表示と比べる。なお、検査数字は桁の誤りを見つけるための数であり、本の内容や価格を表すものではない。
原典は、鹿児島大学の除法導入の研究紀要、自治体の統計指標の算出方法、中央大学の誤り検出符号の資料、国立国会図書館の和算のページである。割声や八算の手順、塵劫記の初版は、国立国会図書館の和算のページから調べていける。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文は、ここにある資料の内容を、自分の言葉で言いかえたものです。年・人名・名称は、資料によって細部が異なることがあります。数値の例のうち「仮の例」と書いたものは、考え方を確かめるための筆者の計算です。
- 鹿児島大学 研究紀要(除法の導入に関する論文) https://ir.kagoshima-u.ac.jp/record/16153/files/AN10374875_v25_p23-32.pdf (等分除と包含除。二次資料)
- 富山県 統計指標(出所:総務省 令和2年国勢調査) https://www.pref.toyama.jp/sections/1015/lib/shihyo/_shihyo06/_admin/007.pdf (人口密度の算出方法)
- 国際ISBN機関 What is an ISBN? https://www.isbn-international.org/content/what-isbn (ISBNの説明と検査数字)
- 中央大学 桑田研 誤り検出符号の資料 https://www.kuwata.r.chuo-u.ac.jp/Current/Files/Info_Math_2/1-error_detecting_codes-b4.pdf (ISBN-13の余りの説明)
- 国土交通省 燃費関連資料 https://www1.mlit.go.jp:8088/common/001177552.pdf (WLTCモードの説明)
- 国立国会図書館 本の万華鏡「日本の数学 和算」 https://www.ndl.go.jp/math/s2/1.html (『塵劫記』の内容と版)
- 静岡県立中央図書館資料 https://www.tosyokan.pref.shizuoka.jp/data/open/cnt/3/354/1/SZK0002716_20041004175947707.pdf (そろばんと割声の伝来。二次資料)
なおした ところ
更新履歴
更新履歴(改版の記録)
- 初版を公開。
このサイトでは、公開した記事の本文は原則として書き直しません。誤りが見つかったときや、内容が古くなったときだけ手を入れ、その理由をこの欄に残します。