1. カメは なぜ 日なたで じっと して いるの?
1. 朝のカメは、なぜ日なたでじっとしているのか
1. 日なたのカメは体温を上げている ── 熱を外から得るという生き方
あさ、カメは、からだが うごける あたたかさに なるまで、ひなたに います。そのあとで、えさを さがしに いきます[3]。
カメの ように、ねつを おもに からだの そとから もらう どうぶつを、へんおんどうぶつと いいます。ひなたに 出たり、日かげに はいったり して、からだの あたたかさを ととのえて います[2]。
では、じぶんで ねつを つくる どうぶつは、どうでしょう。
カメは、朝のうちは体温が活動できる高さになるまで日なたにいて、そのあとでえさを探しに行くのが典型的な行動だといいます。日なたで過ごす時間が長いと、えさ探しの時間が減るので、両立はむずかしいようです[3]。
カメのように、体温の熱源の多くを外に頼る動物は、変温動物(外温性動物)と呼ばれます。日なたに出たり日かげに入ったりする行動で、体温をある程度調節しています。昆虫には、羽をふるわせて体温を上げるものもいます[2]。
これに対して、哺乳類と鳥類は、環境の温度にかかわらず深部体温をほぼ一定に保つ恒温動物(内温性動物)とされることが多く、体の中に熱源を持っています[1]。体の中で熱を作るのには、何が必要なのでしょうか。
カメは、朝は体温が活動に足る高さになるまで日光浴を続け、その後に採食に移る。採食に使う時間は日光浴の時間と競合する、という整理がある[3]。熱を日光という外部の熱源に頼るため、行動そのものが体温調節になるわけである。
このように熱源の多くを体外に依存する動物が変温動物で、外温性動物とも呼ばれる。日なたと日かげの行き来による行動性体温調節で、体温をある程度コントロールしており、昆虫には羽を震わせて体温を上げるものもある[2]。対して恒温動物は、環境温度にかかわらず深部体温を一定に保つ動物で、体内に熱源を持つため内温性動物とも呼ばれる。一般に哺乳類と鳥類がこれに当たるとされる[1]。
ただし、「変温」の定義には幅があり、分野によっては外温・内温の語を分けて使う。この記事は通称の変温・恒温を主に使い、外温・内温を補足とする。では、体内の熱源を保つ代償はどれほどか。
2. あたたかい からだを たもつと、なにが たいへん?
2. 体温を保つ代償は、食べ物の量にあらわれる
2. 体内に熱源を持つ代償 ── 摂取エネルギーが体重あたり数十倍になる
ストーブを つけっぱなしに すると、たくさん ねんりょうが いりますね。からだの なかで ねつを つくる どうぶつも、おなじです。
おなじ おもさで くらべると、からだを あたためつづける どうぶつは、へんおんどうぶつの すうじゅうばいから ひゃくばいも、たべものの エネルギーを とると いわれます[1]。ただし、これは おもさ あたりの はなしです。ごはんの りょうが そのまま すうじゅうばいに なる わけでは ありません。
そんなに たいへんなら、どうして からだを あたためつづけるのでしょう。
ストーブは、つけっぱなしにすると燃料がどんどん減ります。体の中で熱を作り続ける恒温動物も、似た事情をかかえています。
体温を保つ代償として、恒温動物は多量の食べ物のエネルギーを取る必要があり、体重あたりでは変温動物の数十倍から百倍にもなる、と説明されています[1]。見落としやすいのは「体重あたり」という点です。食事の量そのものが数十倍になるわけではありません。
別の資料には、こんな比べ方もあります。安静にしている恒温動物が使う酸素の量は、変温動物が全力で動いたときの量にほぼ等しい。しかも恒温動物が全力を出すと、安静時の5〜10倍にもなるというものです[4]。倍率が資料でちがうのは、比べる条件がちがうためで、1つの数にはまとめられません。
これだけの代償を払ってでも、体温を保つと何が得られるのでしょうか。
恒温動物は体温を保つ代償として多量の食物エネルギーを要し、体重あたりの摂取量は変温動物の数十倍から百倍にもなる[1]。ただしこれは体重あたりの比較であり、1日の食事量が数十倍という意味ではない。
別の整理では、酸素消費量で比べる。講義資料が引く1980年の研究によれば、恒温動物の安静時の酸素消費は変温動物の最大値に等しく、恒温動物の最大値は安静時の5〜10倍に達する。同じ大きさで活動中の両生類・爬虫類が使う代謝エネルギーは、恒温動物の10分の1未満になりうるという[4]。「数十倍〜百倍」と「10分の1未満」の倍率がそろわないのは、何を何と比べるか(摂取か消費か、安静か活動か)が条件ごとに異なるためで、1つの倍率には言い切れない。
では、これほどの費用を払う利点は何か。
3. ねつを つくる どうぶつと、つくらない どうぶつ。どちらが とく?
3. 体温を保つ動物と、節約する動物。得をするのはどちらか
3. 恒温性の利点と、変温性の強み ── 生息域とエネルギーの収支
からだを あたためて おけば、さむい ところでも うごけます。ほにゅうるいや とりは、いろいろな おんどの ばしょに すむように なりました[1]。
へんおんどうぶつは、さむいと うごきが にぶく なり、すめる ばしょが かぎられやすい のです[1]。
でも、へんおんどうぶつにも とくが あります。たべものを ほとんど つかわないので、たべものや みずが たりない ときに つよいと いわれます[5]。
体温を保つ利点は、寒い場所でも動けることです。低い気温では変温動物の動きは鈍くなり、生息域が限られやすいのに対して、哺乳類や鳥類は、さまざまな温度の環境に生息域を広げました[1]。
では変温動物は損ばかりかというと、そうでもありません。1980年の論文の要旨によると、両生類や爬虫類は、食べ物・水・酸素が足りなくなる時期がある環境に、鳥や哺乳類よりも向いているとされます[5]。燃料を少ししか使わない暮らし方だからです。
トカゲの約80%の種は、大人になっても、小型の鳥や哺乳類より体重が軽い、という数字も、この論文を紹介する資料にあります[5]。少ない燃料で小さな体のまま暮らせることが、その理由の一つと考えられます。
ところで、「変温動物は冷血」という言い方は、どこまで当たっているのでしょう。
恒温性の利点は、低温でも活動でき、生息域を広げられることにある。変温動物は低温環境で行動が鈍り、環境温度の影響を強く受けるため生息域が限定されやすいのに対し、恒温動物は多様な温度環境に進出した[1]。
一方、変温性にも収支上の強みがある。1980年のPoughの論文要旨によれば、両生類・爬虫類は、食物・水・酸素が周期的に不足する生態的状況に、鳥類・哺乳類より適している[5]。この論文を紹介する資料には、トカゲの約80%の種で成体の体重が小型の鳥類・哺乳類より軽いという記述もあり、小さな体で成り立つことの理由の一つが低エネルギーの暮らしだと読める[5]。恒温性は「高コストだが、低温でも活動しやすい」戦略、変温性は「低コストで、資源の不足に強い」戦略とも整理できる。
ここまでは、変温と恒温をきれいに分ける話だった。だが、その境目に立つ動物がいる。
4. さかななのに、からだを あたためる マグロ
4. 魚なのに体を温める ── マグロの筋肉は、水より10℃以上高いことがある
4. 魚でありながら体の一部を温める ── クロマグロの奇網と部分的内温性
さかなは へんおんどうぶつと される ことが おおいです。でも マグロや カツオは、からだの まんなかの きんにくが、まわりの みずの おんどより 10ど いじょうも たかい ことが あります[2]。
だから、へんおんどうぶつを「れいけつ」と よぶのは、ただしく ありません。からだが ひとより あたたかい ことも あるからです。
こんな ふうに からだの いちぶだけを あたためる さかなは、ごく わずかで、マグロや カジキ、ホホジロザメなどの、よく およぐ さかなに かぎられます[7]。
魚は変温動物とされることが多いのに、マグロやカツオなどの回遊魚では、中心部の筋肉の温度が体の表面より10℃以上高いことがあります[2]。変温動物の体温が人より高いこともあるため、「冷血」という言い方は正確ではない、と百科事典にも書かれています[2]。
太平洋クロマグロの総説によると、その仕組みは、動脈と静脈が交互にならんだ「奇網」という構造です。筋肉が出した熱を、血の流れに乗せて逃がさないようにします。成魚では、水温より10℃を超えて体が温かいことが報告されています[6]。ただし幼魚は、小さいほどその差も小さく、25〜35cmでは約0.25〜1℃です[6]。
体の一部だけを温める魚は、魚全体の中ではごく一部で、よく泳ぐ捕食者であるマグロ類・カジキ類・ネズミザメ科(ホホジロザメなど)に限られるとされます[7]。全身の体温を一定に保つわけではありません。
魚は変温動物とされるが、マグロ・カツオなど回遊魚の中心部筋肉は、体表より10℃以上高いことがある。このため、変温動物を一律に「冷血」とするのは正確でない[2]。
太平洋クロマグロの総説では、熱源は主に赤身筋で、動脈と静脈が交互に並ぶ奇網(rete mirabile)が向流熱交換器として働き、代謝熱を保持するとされる。体長30cm以上の幼魚で水温より3〜4℃、成魚では10℃を超える温度差が報告されている。一方、25〜35cmの幼魚では約0.25〜1℃にとどまり、体が小さいほど差は小さい[6]。向流熱交換とは、筋肉で温まった血が外へ出ていく前に、冷たい血へ熱を渡して回収するしくみである。
これは体の一部を温める部分的内温性で、全身の体温を一定にするものではない。魚でこの能力を持つのは、よく泳ぐ高性能な捕食者であるマグロ類・カジキ類・ネズミザメ科(ホホジロザメなど)に限られるとされる[7]。なお「魚の何%」という数字は、手元の資料からは示せない。
魚が内温性に近づくなら、哺乳類や鳥類の側にも、変温動物に近づくものがいるのではないか。
5. ほにゅうるいや とりでも、からだの あたたかさが かわる?
5. 哺乳類や鳥でも、体温は変わることがある
5. 境目の例外 ── ハリモグラ・カッコウ・夜のハチドリ
ほにゅうるいや とりの なかにも、からだの あたたかさが まわりの おんどで すこし かわる ものが います。ハリモグラや カッコウが そうです[1]。
ですから、へんおんどうぶつと こうおんどうぶつを、はっきり ふたつに わけるのは むずかしいのです。
よるに からだの おんどを ぐっと さげる とりも います。くわしくは、ほかの メモで よみます。
哺乳類や鳥類でも、ハリモグラやカッコウのように、深部体温が環境温度の影響でいくらか変動するものがいます。そのため、恒温動物と変温動物を単純にきっぱり分けるのはむずかしい、と解説されています[1]。
アンデスのハチドリの一種は、夜に体温を3℃台まで下げ、エネルギーの消費を約95%減らして朝を待つ、と報道されています[8]。恒温動物なのに、夜だけ体温を変温動物のように使う鳥です。くわしくは、同じサイトの別のメモが扱っています。
マグロの部分的な温かさやハチドリの夜の低体温を考えると、変温と恒温の境目は、きっぱり二つに分けられないことがあるようです。
哺乳類・鳥類でも、ハリモグラやカッコウのように深部体温が環境温度の影響である程度変動するものがいる。したがって、恒温動物と変温動物を単純かつ明確に区分することは難しい[1]。
報道によれば、アンデスのクロテリオハチドリは夜間に体温が3.26℃まで下がり、鳥類と非冬眠性哺乳類で記録された最低とされる。エネルギー消費は約95%減り、朝は筋肉の震えで約1分に1℃ずつ体温を上げる[8]。この例は原論文でなく報道経由であり、夜間休眠(トーパー)は別のメモで詳しく扱う。
クロマグロのような部分的な内温性、ハリモグラ・カッコウのような変動、ハチドリの夜間の低下。両極のあいだには連続的な例が並ぶ。変温・恒温は、動物を2つの箱に入れる分類というより、熱の得かたと使いかたの傾向の幅として読むほうが実態に近い。
自分でも しらべて みたく なったら
自分でも調べてみたくなったら
自分でも調べてみたくなったら
今日できること
てんきの いい 日に、おなじ ばしょの ひなたと 日かげに、おんどけいを おいて くらべて みましょう。おんどけいが なければ、ひなたと 日かげの おなじ ような いしを、てのこうで そっと さわります。ひなたの いしは あつい ことが あるので、ながく さわらないでね。いきものも、この ちがいを つかって いるのです。
出かけてできること
いけや どうぶつえんで、ひなたぼっこを して いる カメを さがして みましょう。とおくから 見るだけで、さわったり つかまえたり しません。
しりょうを よむなら
「おんどせいぶつがく ハンドブック」に、へんおんどうぶつと こうおんどうぶつの かいせつが のって います。
今日できること
晴れた日に、同じ場所の日なたと日かげで、同じような石や地面を温度計で比べてみましょう。温度計がなければ、手の甲でそっとさわります。日なたの石は熱いことがあるので、長くはさわらないでください。変温動物は、この差を行動で使っているのです。
出かけてできること
池や動物園で、日光浴をしているカメやトカゲを探して、何時ごろに日なたに出ているか観察してみましょう。遠くから見るだけにして、さわったり捕まえたりはしません。
公式情報
国立生理学研究所の「温度生物学ハンドブック」に、恒温動物と変温動物の解説(2-24)があります。
今日できること
晴れた日に、同じ場所の日なたと日かげで、同じような地面や石の温度を比べる。熱くなった面は手で長くさわらない。温度計があれば、数値で記録する。変温動物の行動性体温調節が、この差の利用だと確かめられる。
出かけてできること
池や動物園で、日光浴をするカメの活動時間を観察し、朝のうちに日なたにいる時間が長いかを記録する。生きものには近づきすぎない。
資料を読むなら
国立生理学研究所「温度生物学ハンドブック」2-24(日本語)が定義と代償・利点を簡潔に整理している。クロマグロの熱交換はFrontiers in Physiology(2025)の総説、変温性の利点はPough(1980)の論文要旨が手がかりになる。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
定義と代償・利点は国立生理学研究所の解説に、マグロやカメの例は総説・百科事典・博物館の解説に依拠した。倍率は資料ごとに条件が異なるため、それぞれの出どころを添えて書いた。
- 中村和弘「温度生物学ハンドブック 2-24 恒温動物と変温動物」 https://www.nips.ac.jp/thermalbio/handbook2/2-24.pdf (定義、代償、利点、境目のあいまいさ)
- コトバンク「変温動物」 https://kotobank.jp/word/変温動物 (行動による体温調節、冷血の言い方、マグロ・カツオ)
- Smithsonian Qrius「カメの体温調節」 https://qrius.si.edu/taxonomy/term/12103 (カメの日光浴)
- Northern Arizona University 講義資料「Temperature Regulation」 https://www2.nau.edu/~gaud/bio300/tempreg.htm (酸素消費の比較)
- Pough (1980) The advantages of ectothermy for tetrapods, American Naturalist(要旨) https://digitalarchive.rit.edu/xmlui/handle/1850/2480 (変温性の利点、トカゲの体の小ささ)
- Frontiers in Physiology (2025) 太平洋クロマグロの総説 https://www.frontiersin.org/journals/physiology/articles/10.3389/fphys.2025.1512043/full (奇網、体温差)
- University of Dublin 学位論文要旨 https://edepositireland.ie/handle/2262/104160 (部分的内温性の魚の範囲)
- Science News(Biology Letters 2020 の報道) https://www.sciencenews.org/?p=3091240 (ハチドリの夜の体温)
なおした ところ
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