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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

卵たまごの 殻からは、にわとりの おなかで どうやって できるの?

卵の殻は、母鶏の体の中でどう組み立てられるのか ── 約20時間の工程

ニワトリの卵殻形成 ── 約20時間の石灰化と、夜に骨が材料になるしくみ

分野:生きもの

にわとりの 卵たまごの 殻からは、うすくて、ちょっとさわると われそうです。その 殻からが、にわとりの おなかの 中で、やく20じかんで できあがります。しかも、おもに つくられるのは、えさを たべられない くらい じかんです。殻からの ざいりょうは、どこから やって くるのでしょう。この ページでは、殻からが できる じゅんばんと、よるの ひみつが わかります。

ニワトリの卵の殻は、厚さが0.3mmほどしかありません。それでも、1個ぶんの殻の材料である炭酸カルシウムが、約20時間のあいだに5〜6g積み上がるといわれます。そして、その石灰化の大半は、えさを食べられない暗い時間に進みます。材料はどこから来て、どんな順番で組み立てられるのでしょうか。膜、結晶、いちばん外側のクチクラと、夜の骨の使い方が分かります。

ニワトリの卵殻は厚さ0.3mm前後と薄いが、炭酸カルシウムが約20時間で5〜6g沈着してできる。その石灰化の大半は、餌のカルシウムがほとんど得られない暗い間に進む。薄い殻を、この短時間で、しかも夜に仕上げるために、体の中ではどんな順番で何が起きているのか。殻に先立つ膜、膜の上で育つ結晶、表面をおおうクチクラ、そして夜の骨の使い方までが分かる。

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1. たまごの からは、どのくらい かかって できるの?

1. 薄い殻に、なぜ約20時間もかかるのか

1. 薄い殻は、1日の大半をかけて積み上がる

にわとりは、24〜25じかんに 1こ ぐらい、卵たまごを うみます。そのうち、殻からを つくるのに かかるのは、やく20じかんです。ほとんど 1にち じゅう、おなかの 中で 殻からを つくって いるのです。

ざいりょうは、炭酸たんさんカルシウムという、ひとつぶ ひとつぶが かたい ものです。1こ ぶんで 5〜6グラム くらい。これは 1えんだまの おもさの 5〜6ばい ぐらいです。

たとえば、あみの 上に、こおりの つぶを ぎっしり ならべて いく ところを そうぞうして みて ください。ただし ほんとうは、つぶは ならべられるのでは なく、殻からの 中で じぶんで そだつ ものです。

では、いちばん はじめに できるのは、殻からそのもの なのでしょうか。

ニワトリは、24〜25時間おきに卵を産み、年間ではおよそ300個を産むといわれます[9]。1個の殻ができるまでの時間は、平均で約20時間です[1]。つまり、体の中では、1日のほとんどの時間をかけて殻をつくっていることになります。

この20時間のうち、炭酸カルシウムが盛んに積み上がるのは、排卵のおよそ10時間後から22時間後のあいだと報告されています[2]。全体の約20時間とは、数え方が別です。そして、その間に5〜6gの炭酸カルシウムが子宮で沈着します。

5〜6gを300個ぶんに掛けると、年に1.5〜1.8kgです。これは、年300個として単純に掛けた概算で、実際の数字ではありません。それでも、薄い殻の裏に、これだけの炭酸カルシウムの量があることが分かります。

速さにも驚かされます。子宮での殻の石灰化は、生物界でもっとも速い鉱物のできかたの一つといわれ、血しょうのカルシウムの全量を約12分で使い切る速さに相当するそうです[3]。12分は、殻ができる時間ではありません。血液の中のカルシウムが入れ替わる速さの目安です。

ところで、この殻は、いきなり結晶から始まるのではありません。

ニワトリは24〜25時間間隔で産卵し、年間およそ300個を産むとされる[9]。1個の殻が形成される時間は平均約20時間[1]で、産卵の周期のほとんどを殻づくりが占める計算になる。

ただし、20時間のあいだ一様に沈着が進むわけではない。鉱化が起こる時間帯は排卵後およそ10〜22時間とされ[2]、「約20時間」とは数え方が異なる。その間に子宮(卵殻腺)で5〜6gの炭酸カルシウムが沈着する[2]。年300個として単純に掛けると、概算で1.5〜1.8kgになる。

炭酸カルシウムの質量の約4割がカルシウムだから、5〜6gなら純粋なカルシウムは約2.0〜2.4gになる。これは、後で出てくる「1個あたり約2g」という資料の数字[7]とおおむね合う。

さらに、子宮での石灰化は「生物界でもっとも速い鉱化過程の一つ」とされ、血しょう中のカルシウム全量を約12分で消費する速さに相当すると報告されている[3]。この12分は殻の完成にかかる時間ではなく、血中のカルシウムが入れ替わる速さの目安である。では、これほど速く積み上げる結晶は、何の上に育つのか。

2. からより さきに、できるものは なに?

2. 殻より先に、膜ができている

2. 結晶の足場になる膜は、殻より先に完成する

ゆでたまごの からを むくと、うちがわに うすい かわが くっついて います。卵たまごの 殻からの まく、というものです。

この まくは、殻からより さきに、卵たまごの とおる みちの 「きょうぶ」と いう ところで できあがります。殻からを つくる ところに くる ころには、まくは もう できているのです。

たとえるなら、タイルを はる まえの、かべの したじです。ただし ほんとうは、したじが あらかじめ あるから タイルが じょうずに はれる、と いう ところまでが しりょうで わかる ことです。

では、タイルに あたる つぶは、まくの どこから そだち はじめるのでしょう。

ゆで卵の殻をむくと、内側に薄い皮のようなものがついています。これが卵殻膜です。

卵殻膜は、卵管の峡部というところでつくられ、子宮に下りる直前にできあがる、と電子顕微鏡の観察で報告されています[4]。繊維が少しずつ重なって、峡部の始め、中ほど、終わりで形を整えていきます。つまり、殻をつくる子宮では、完成した膜の上に殻の結晶が積み上がっていくことになります。

順番がそうなっていると、どう都合がよいのでしょうか。資料は、そこまでは述べていません。分かっているのは、順番が膜、そして殻だということです。

では、結晶は膜のどこから育ちはじめるのでしょうか。

殻を割ると、内側に卵殻膜がある。この膜は卵管の峡部で形成され、卵が子宮へ下りる直前に完成する、と走査電子顕微鏡による観察で報告されている[4]。膜は、峡部の始め・中ほど・終わりと進む間に、繊維が重なって仕上がる。

したがって、子宮で殻が形成されはじめるとき、足場となる膜はすでに完成している。殻の結晶が膜の上に育つことは次の章で述べるが、膜が先にできる理由(たとえば結晶の育ちやすさへの影響)まで、ここで使った資料は述べていない。

では、結晶は完成した膜のどこから育ちはじめるのか。

3. からの つぶは、どこから そだち はじめるの?

3. 結晶は、膜の上の小さな点から育ちはじめる

3. 殻の結晶は、膜上の有機物のかたまりから始まり、柱状に伸びる

まくの 上には、ところどころ、ちいさな ぶつの かたまりが のって います。結晶けっしょうは、そこから そだち はじめます。まず、とんがり ぼうしの ような かたちの ぶぶんが できます。

その 上に、ほそ ながい はしらの ような 結晶けっしょうが のびて、殻からの かたい ぶぶんに なって いきます。殻からの ほとんどは、この 結晶けっしょうです。のこりの すこしは、たんぱく質しつなどで、結晶けっしょうを つなぐ やくめを します。

さて、殻からが できあがる のは、おもに 食べものを たべられない くらい じかん。それなのに、殻からの ざいりょうは たりるのでしょうか。

殻の結晶は、卵殻膜の上に集まった有機物のかたまり(乳頭核)から育ちはじめると報告されています[5]。そこから円すい形の乳頭層ができ、その上に、柱のような形の結晶の層(さく状層)が伸びます。

殻の大部分は炭酸カルシウムの結晶(方解石)で、のこりは、結晶を安定させるたんぱく質などの有機物です[1]。たんぱく質は結晶をつなぎ、育ちかたを整える役目があるとされます。

殻づくりは、大きく3つの段階に分けて説明されています。はじめは結晶の核をつくる段階、次は結晶が一定の速さで積み上がる活発な成長の段階、最後は結晶の成長が抑えられる段階です。段階ごとに、子宮液の中で働くたんぱく質が入れ替わると報告されています[6]。

ところが、殻づくりの大半は暗い間に進みます。食べたものから得られるカルシウムが少ない時間に、これだけの材料が要るのです。

殻の結晶形成は、膜の表面に沈着した有機物のかたまり(乳頭核)から始まる[5]。そこから円すい形の乳頭層(にゅうとうそう)が形成され、その上に柱状の結晶層であるさく状層(さくじょうそう)が伸びる。

組成は、大部分が炭酸カルシウムの結晶(方解石)で、残りがたんぱく質などの有機物である[1]。有機物は結晶を安定させる基質として働くとされる。

形成の過程は、方解石の核形成を行う初期、直線的に沈着が進む活発な成長期、結晶の成長が抑えられる終期の3段階に分けられ、各段階で子宮液中の別のたんぱく質が順に働くと報告されている[6]。

このうち活発な成長期に必要なカルシウムは、莫大である。にもかかわらず、石灰化の大半は暗い間に進み、その間は餌からのカルシウムがほとんど得られない[7]。この矛盾は、どう解けるのか。

4. よるに たべなくても、ざいりょうは たりるの?

4. 食べられない夜に、カルシウムはどこから来るのか

4. ニワトリは夜、骨や砂のうからカルシウムを取り出す

にわとりは、くらく なると えさを たべません。ところが、卵たまご1こ の 殻からには、カルシウムが やく 2グラム いります。

そこで つかうのが、骨ほねです。卵たまごを うむ めすの にわとりには、卵たまごの ための、とくべつな 骨ほねが できます。殻からの カルシウムの 2〜4わりは、この 骨ほねから とかされて つかわれる、といわれます。

もうひとつ、おなかの ふくろに のこった 石灰石せっかいせきの つぶも、よるのあいだに すこしずつ とけて、カルシウムに なります。

たとえるなら、ひるまの うちに おかねを ためて おく、ちょきんばこです。ただし ほんとうは、骨ほねは ためる ばしょでも あり、ほねの かたちを たもつ ものでも あります。

さいごに、殻からが できたら、まだ やる ことが あります。

1個の殻には、約2gのカルシウムが使われるといわれます。いっぽう、夜はえさを食べないので、えさから新しく入ってくるカルシウムはほとんどありません[7]。足りない分を、どこかから出す必要があります。

その1つが骨です。産卵期のメスには、髄様骨(ずいようこつ)という一時的な骨ができ、殻のカルシウムのおよそ2〜4割が、骨から出されるとされます[7]。髄様骨は血管が多く、結晶の向きがばらばらで、卵をつくっている間に素早くつくられては溶かされます。性成熟でエストロゲンというホルモンが増えると、できてきます[7]。

もう1つは、砂のうです。餌を食べない夜のあいだも、砂のうに残った粗い石灰石の粒が胃酸でゆっくり溶かされ、腸でカルシウムとして取り込まれると報告されています[7]。

子宮は、そうして血液に届いたカルシウムを、細胞を通り抜けさせる能動的な輸送を中心に取り込むとされます[7]。ただし、細かい仕組みは、この記事では扱いきれません。

こうして材料がそろい、結晶ができあがると、殻にはまだ仕上げが残っています。

1個の殻には約2gのカルシウムが使われるとされる一方、暗い間は餌からのカルシウムがほとんど得られない[7]。そのため、吸収した分だけでは足りず、体内の別の蓄えから出す必要がある。ただし、骨が受け持つ量を単純な引き算で求めることはできない。

実際、ニワトリは殻に必要なカルシウムのおよそ20〜40%を骨から動員すると報告されている[7]。資料により30〜40%と20〜40%の幅があるため、ここでは「2〜4割」程度にとどめる。この骨は髄様骨(ずいようこつ)という、産卵期のメスに現れる一時的な骨で、血管が豊富で水酸アパタイトの結晶の向きがばらばらであり、卵の形成中に急速に合成と分解を繰り返す。性成熟に伴いエストロゲンが増えることで形成される[7]。

骨だけではない。砂のう(すなのう)に残った粗い石灰石の粒は、夜間も腸の酸性を保って溶かされ、カルシウム源になる[7]。

子宮でのカルシウムの取り込みは、細胞を通り抜ける能動輸送が主で、カルシウムポンプ、交換輸送体、チャネルが関わるとされる[7]。ここまでで材料と段取りはそろった。残るのは、殻の表面の仕上げである。

5. できあがった からの いちばん そとがわには、なにが ある?

5. 殻の最後の仕上げは、表面をおおう薄い膜

5. 気孔をふさぐクチクラと、殻に載る色素

できあがった 殻からの いちばん そとがわには、「クチクラ」という、とても うすい まくが かぶさります。

殻からには、ちいさな あなが 7000こ いじょう あいて います。クチクラが、この あなを おおいます。細菌さいきんや ほこりが はいるのを ふせぎます。

殻からの いろは、殻からが できる とき、おなかの 中の ふくろの ひょうめんの さいぼうから でる いろの もとが のって きまる、と いわれます。

ここまでの ことを、おうちの 卵たまごで たしかめて みましょう。

産卵のあと、殻のいちばん外側は、クチクラというたんぱく質の薄い膜でおおわれます。厚さは数マイクロメートル(1mmの千分の1が1マイクロメートル)ほどで、7,000個以上ある気孔をふさぎます[10]。クチクラが、細菌やほこり、水分の出入りを防ぐ役目をします。

殻の色素は、子宮の表面の細胞から子宮液に出され、そこから殻に載ると報告されています[8]。白い卵を産むニワトリにも、色素の材料がないとは限りません。茶色い卵では、子宮に色素を出す量の調節が関わると書かれています。

薄い殻は、膜に始まり、結晶、そしてクチクラへと、それぞれ別の役目をもつ層が重なってできています。

殻の最表面は、厚さ数マイクロメートルのたんぱく質の膜であるクチクラでおおわれる。殻表面には7,000個以上の気孔があり、クチクラがこれをふさぐことで、細菌・ほこり・水分の出入りを抑えるとされる[10]。気孔の数の幅(たとえば1万を超える数字)は資料により異なるため、ここでは7,000個以上にとどめる。

殻の色素(プロトポルフィリンなど)は、子宮の表面の細胞から子宮液へ分泌され、殻に載る[8]。白い殻でも色素がないとは限らず、褐色卵では子宮への色素放出量の調節が関わる。

以上の層は、膜(峡部)、乳頭層とさく状層の結晶(子宮)、クチクラの順に重なる。薄い殻の中に、役割の異なる層があるわけだ。

6. ゆでたまごの からで、まくを さがして みよう

6. ゆで卵の殻で、膜と薄さを確かめる

6. 殻の内側を見て、資料の原文にあたる

ゆでたまごを つくって、よく ひやして から、からを むいて みましょう。うちがわに、うすい まくが ありますか。まくは、ゆびで そっと はがせるか、ためして みましょう。

からを わった ところを よく みると、どのくらい うすいか わかります。われた からで、ゆびを きらないように きを つけて ください。ゆでたまごは ひやして から、あついうちは さわらないでね。

ゆで卵を作り、冷めてから殻をむいて、内側の膜を探してみましょう。膜は指でそっとはがせるでしょうか。ゆで卵は熱いので、冷ましてから手に取ってください。

殻の割れ口もよく見てください。0.3mm前後と、どれほど薄いかが実感できます。割れた殻で指を切らないように気をつけましょう[9]。

家庭では、ゆで卵(よく冷ましたもの)の殻の内側に膜があるかを確かめ、割れ口の厚さを観察できる。割れた殻で指を切らないよう注意する。

資料を読むなら、子宮のカルシウム輸送の機構は BMC Genomics(PMC3582589)に、髄様骨とカルシウムの動員は Frontiers in Physiology(2023)にまとまっている。どちらも英語で、専門用語が多い。卵殻膜と結晶の写真は、広島大学水畜産学部紀要(1971年・1974年)の電子顕微鏡観察で見られる。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文の数字・仕組みは、次の資料から使っています。

  1. Eggshell(Wikipedia) https://en.wikipedia.org/wiki/Eggshell (殻の形成時間・組成)
  2. Nys, Gautron ほか INRAE 論文 https://hal.inrae.fr/hal-02679821/document (鉱化の量と時間帯)
  3. Identification of uterine ion transporters for mineralisation precursors of the avian eggshell(BMC Genomics) https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3582589 (石灰化の速さ)
  4. 広島大学水畜産学部紀要 9巻2号(1971) https://hiroshima.repo.nii.ac.jp/records/2038113 (卵殻膜の形成)
  5. 広島大学水畜産学部紀要 13巻1号(1974) https://hiroshima.repo.nii.ac.jp/records/2038165 (結晶の育ちはじめ)
  6. Hen uterine gene expression profiling during eggshell formation(PMC3999959) https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3999959/ (形成の3段階)
  7. Physiological regulation of calcium and phosphorus utilization in laying hens(Frontiers in Physiology, 2023) https://www.frontiersin.org/journals/physiology/articles/10.3389/fphys.2023.1112499/full (カルシウムの動員・髄様骨・砂のう)
  8. Eggshell pigments - from formation to deposition(SRUC) https://pure.sruc.ac.uk/en/publications/eggshell-pigments-from-formation-to-deposition/ (色素)
  9. さいたま市 サイエンスナビ https://www.city.saitama.lg.jp/sciencenavi/tanoshimu/004/p040175.html (殻の厚さ・産卵の周期)
  10. Lohmann Breeders クチクラの解説 https://lohmann-breeders.com/%F0%9F%A5%9A-eggstraordinary-insights-the-cuticle-the-eggs-invisible-shield/ (クチクラと気孔)

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