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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

きりを みずに して いきる しょくぶつって、いるの?

霧を水にして生きる ── 砂漠の植物と、霧集めネット

霧から水を得る生きもの ── ティランジア・サボテン・セコイアの集水、甲虫説の見直し、霧集めネット

分野:生きもの

あめが ほとんど ふらない さばくに、きりの みずだけで いきて いるらしい しょくぶつが います。

はっぱは、どうやって きりを のむのでしょう。その しくみを まねして、むらに みずが とどいた はなしも あります。この きじで、しくみが わかります。

南米チリのアタカマ砂漠は、世界でもとくに雨の少ない場所として知られています。そこに、霧で水をまかなう植物が育っています。

葉のどこに、どんな工夫があるのでしょう。サボテンやセコイア、有名な甲虫の話、そして植物をヒントにした霧集めネットまで、集めた資料から分かることを紹介します。

チリのアタカマ砂漠に生えるパイナップル科の植物 Tillandsia landbeckii(ティランジアの一種)は、葉のトリコーム(毛状の構造)が捕らえた霧で水をまかなう、と報告されている[2]。雨の少ない土地で、霧を水として使う生きものは、ほかにもいる。

その集め方はどうなっているのか。ティランジアの「水弁」、サボテンのとげ、セコイア林の葉面吸水、有名な甲虫説とその見直し、霧集めネットを、原著論文の要旨・全文と二次資料から整理し、どこまでが確かで、どこからが仮説かが分かる形にまとめる。

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1. きりの あさに、しょくぶつは なにを するの?

1. 雨の代わりに、霧を待つ植物

1. アタカマ砂漠のティランジア ── 霧で水をまかなう

あさ、まちが きりに つつまれる ことが あります。きりは、とても ちいさな みずの つぶが ういて いるものです。

チリの さばくに はえる ティランジアと いう しょくぶつは、この きりを つかまえて みずに します[2]。あめを まつのでは なく、きりを まつのです。

その ひみつは、はっぱに ある、ちいさな 「け」に あります。

霧は、とても細かい水の粒が空気中に浮かんだものです。雨のように上から降ってはきませんが、風に乗って植物の葉にぶつかります。

チリのアタカマ砂漠に生えるティランジア(Tillandsia landbeckii)は、葉をおおう特別な毛(トリコーム)で霧を捕らえ、その水で生きていると報告されています[2]。雨を待つかわりに、霧を待つ植物です。

この毛が、どうやって水を集めているのか。次の章で見ていきます。

Tillandsia landbeckii はチリのアタカマ砂漠に生育するパイナップル科の植物で、葉の特殊化したトリコームが捕らえた霧により、水の必要をまかなうとされる[2]。この要旨は Raux ら(2020, Nature Communications)による。

霧の捕捉には3つの大きさが関わる、という説明もあるが、これは検索で得た抜粋にとどまるため、ここでは数値を挙げない。

2. きりの みずは、はっぱに はいって、でて いかないの?

2. 一方通行の水弁 ── 5800倍の差

2. トリコームの「一方通行の水弁」── 透水性の5800倍の非対称

みずを すいこむだけなら、スポンジでも できます。でも、スポンジは かわくと、みずを はきだして しまいます。

ティランジアの「け」は、ちがいます。しめった ときは みずを すいこみ、かわいた ときは みずが にげにくい つくりです。いっぽうだけ とおれる、いちほうつうこうの みちのようです[2]。

みずの とおりやすさには、5800ばいの ちがいが ある、と ほうこくされて います。

ただし ほんとうは、うごく ぶひんは ありません。かべの つくりだけで、そう なって います。

水を吸うだけなら、スポンジにもできます。ただ、スポンジは乾くと水を手放してしまいます。砂漠の植物にとって、せっかく集めた水が逃げるのは困ります。

研究では、この毛は、細かい水滴の吸収と、乾いたときの蒸発防止を両立する「一方通行の水弁」だと説明されました。水の通りやすさには5800倍の差があるとされます[2]。

しくみは、厚くて水を吸いやすい壁と、半透膜(水などを選んで通す膜)の組み合わせです。動く部品は使っていません。

葉の表面のようすについては、傘を逆さにしたような鱗状の毛が、乾くと折りたたまれ、水滴に触れると広がって水をためる、という説明もあります[3]。こちらは百科事典にある説明です。

Raux ら(2020)は、この植物のトリコームが、細かい水滴の吸収と乾燥時の蒸発防止を両立する一方向性の水弁として働くと報告した。厚い吸湿性の壁と半透膜の組み合わせにより、水の通しやすさ(コンダクタンス)に5800倍の非対称が生じるという[2]。可動部を持たない受動的な構造である点が要旨の核心だ。

葉が傘を逆さにしたような鱗状トリコームでおおわれる、という記述もある[3]。これは百科事典の記述で、原著の図で確かめた内容ではない。

3. サボテンの とげは、みずの みち?

3. サボテンのとげが水を運ぶ

3. Opuntia microdasys ── 円すい形のとげの勾配

さばくの しょくぶつと いえば、サボテンも います。あの とげの ある かたちにも、きりを あつめる はたらきが あると、けんきゅうされて います。

ある サボテンの とげは、さきが とがり、ねもとは ふとい えんすいの かたちです。ちいさな みずの つぶが とげに つくと、さきから ねもとへ、すこしずつ ながれて いくと、ほうこくされました[1]。

とげが した むきでも、みずは ねもとへ すすみます。ねもとの け が、その みずを すいとります。

ただし、とげの やくめは、きり あつめ だけでは ありません。ほかにも いろいろ かんがえられて いて、けんきゅうしゃの あいだでも いけんが わかれて います。

サボテンにも、霧を水にする工夫があります。ウチワサボテンの仲間 Opuntia microdasys の茎は、円すい形のとげと毛の集まりで霧を集める、と報告されています[1]。

とげは、先端・中間・根もとの3つの部分にわかれています。先端には向きのそろった細かい逆とげ、中間には幅が変わる溝があります。霧の水滴は、先端から根もとへ向かって運ばれます。とげが下向きでも、水滴は重力に逆らって動くそうです。根もとの毛が、その水をすばやく吸収すると説明されました[1]。

水滴を動かす力は、とげの形が生む圧力の差と、表面のエネルギーの差だとされています。

とげの役割は霧の集水だけではありません。日よけや防御なども論じられていて、主な役割は研究者の間でも一致していません。

Ju ら(2012, Nature Communications)は、Opuntia microdasys の茎が、円すい形のとげとトリコームが分布する集水系をもつと報告した[1]。とげは先端・中間・根もとの3部分に分かれ、役割が異なる。

先端には向きのそろった逆とげ、中間には幅が変わる溝があり、水滴は先端から根もとへ、とげが下向きでも運ばれ、根もとのトリコームがすばやく吸収する、と説明されている。駆動力はラプラス圧の勾配と表面自由エネルギーの勾配とされるが、この点は検索で得た抜粋にもとづく。

サボテンのとげの役割は集水に限らず、日よけ・防御なども論じられ、主役は研究でも一致していない。本記事はこの点を、霧を水源にする一例として扱う。

4. おおきな きは、はっぱで みずを のめるの?

4. セコイアの森 ── 葉で吸う水

4. カリフォルニアのセコイア林 ── 葉面吸水

アメリカの カリフォルニアには、とても たかい セコイアの もりが あります。ここは、なつに あめが ふらない ときが ながい ところです。

この もりの きの うち、80パーセントの しゅるいが、はっぱから みずを すう と ほうこくされました[4]。きりを あびると、はっぱの みずの りょうが、2から11パーセント ふえたそうです。

くちの かわりに、はっぱでも のんで いる ようなものです。あめの ない きせつの みずぶそくを、きりが おぎなって いると かんがえられて います。

カリフォルニアのセコイア林は、夏に雨がほとんど降らない土地です。それでも、巨大な木々が育ちます。

研究では、この森の優占種(その森でとくに多い種)の80%が、葉から水を吸う「葉面吸水」をしていました。霧にあたると、葉の含水量は2〜11%増えたと報告されています[4]。根から吸う水に、葉から吸う水がそえられる形です。

雨の降らない季節の水不足を、霧が補っていると考えられています。

この森で、霧がしたたる水の量までは、今回の資料では確かめられませんでした。

Limm ら(2009, Oecologia)は、カリフォルニアのセコイア林で、優占種の80%が葉面吸水による水獲得戦略をもつことを示した。霧にさらされると、葉の含水量が2〜11%増えたという[4]。

夏に降雨のない季節に、霧が根からの吸水を補う可能性が示されたことになる。なお、別の要約には「10〜20%」という数字もあるが、原文で確かめられたのは2〜11%である。「霧しずく」として落ちる水の量については、今回の資料では確認できなかった。

5. せなかの でこぼこが、みずを あつめる?

5. 有名な甲虫の説と、その見直し

5. ナミブ砂漠の甲虫 ── 説の提示と再検証

アフリカの ナミブさばくにも、きりが きます。あめは ほとんど ふりませんが、あさぎりから みずを あつめる こんちゅうが しられて います[5]。

ここに すむ ゴミムシダマシの なかまが、きりの あさに、あたまを さげて かぜを うけ、せなかの みずを のむと つたえられて きました。せなかの でこぼこが、みずの つぶを そだてて、くちへ ころがすのだ、と いう せつが ゆうめいです。

その あと、べつの けんきゅうが ありました。みずを あつめる しせいを とったのは、せなかが つるつるの むしだけ でした。でこぼこの むしと、あつめる りょうに、はっきりした ちがいは、みつかりませんでした[6]。

この けんきゅうでは、だいじなのは せなかの かたちより、きりに むかう しせいや うごきだと かんがえられました。かがくは、あたらしい しらべで、せつめいが かわって いくことも あるのです。

ナミブ砂漠は雨がほとんど降りませんが、朝霧から水を集める甲虫が知られています[5]。ここにすむ、でこぼこの背中をもつゴミムシダマシ(Stenocara)が霧を集める、という報告が2001年にありました。親水性(水になじむ)の頂と、はっ水性でろう質の谷のおかげで、水滴が育って口へ転がる、という説明です。

この説は有名になり、霧集めの材料や装置づくりのヒントにもなったといわれます。

ところが2010年、Nørgaard と Dacke が、別の見方を示しました。霧の中で頭を下げる集水の姿勢をとったのは、背中がつるつるの Onymacris unguicularis だけでした。実験では冷凍した甲虫を約23度の角度に置いて測りましたが、体の表面積あたりの集水量は、でこぼこの種とのあいだに有意な差がなく、調べた4種はすべてはっ水性で、水になじむ部分は見つからなかったといいます[6]。

この研究は、大事なのは背中の構造より、霧にむかう姿勢と行動だとしました。「でこぼこ説は誤りだった」と決まったわけではなく、別の見方が出た、ということです。

Parker と Lawrence(2001, Nature)は、ナミブ砂漠のゴミムシダマシ(Stenocara)が、親水性の頂と疎水性のろう質の谷をもつ背中で霧の水滴を育て、口へ導くと報告した[5]。ナミブは雨がほとんどなく、朝霧から水を集める甲虫が知られている。Nature の原文は購読制限で確認できておらず、ここは二次資料にもとづく。

Nørgaard と Dacke(2010, Frontiers in Zoology)は、4種を比較した[6]。霧の中で頭を下げる集水姿勢(fog-basking)をとったのは、背中が滑らかな Onymacris unguicularis だけだった。集水量は、冷凍した甲虫を約23度に置いて霧室で測定した体表面積あたりの値で、でこぼこの種と有意な差がなかった。4種すべてが疎水性で、親水域は見つからなかったという。彼らは、物理的な適応より行動そのものが重要だと結論した。

この再検証は、前の説を否定するというより、別の見方を加えたものと読める。原著のどちらが、どの条件に強いのかは、まだ整理されていない。

6. きりを あつめて、みずに できるの?

6. 霧集めネット ── 植物から人の暮らしへ

6. 霧集めネットの仕組みと、チュングンゴ村の事例

きりを あつめて みずに する ためには、あみが つかえます。プラスチックの ほそい あみです。ポリプロピレンや ポリエチレンで できて います[7]。

くもった まどガラスに ついた ちいさな つぶが くっついて、おおきく なって、つたって おちる ことが あります。あみの あなでも、おなじ ことが おきます。きりの つぶが くっつきあって、おおきな みずの しずくと なって、あみを つたい おちます[8]。

おちた みずは、といに あつめて、タンクに ためます。ばしょに よって ちがいますが、あみ 1まいで、きりの きせつに、1にち 150から 750リットル あつまった れいが あると いいます[7]。

チリの チュングンゴと いう むらでは、100きの きりあつめの そうちが、10ねん、みずを とどけました[7]。ただし ほんとうは、すべての ところで うまく いくわけでは ありません。きりが よく でる ばしょが ひつようです。

霧集めネットは、ポリプロピレンやポリエチレンのメッシュでできています[7]。霧の中に立てて、風を受けさせます。

しくみは、窓ガラスにつく細かい水滴に似ています。メッシュの細かい穴に霧の粒がくっつき合って、大きな水滴になり、繊維を伝って落ちるのです[8]。落ちた水は樋で集めて、タンクにためます。場所によってちがいますが、霧の季節に1枚のパネルで1日150〜750リットルを集めた例があるといいます[7]。

チリのチュングンゴ村は、年間の降水量が6cm未満という地域です。ここでは100基の霧集め装置が、10年間、村に水を供給したと紹介されています[7]。資料によって水量の数字が食い違うので、ここでは「10年間供給した」にとどめます。

近年は、植物や昆虫、鳥の表面をまねたコーティングや形の研究も進んでいるといいます[8]。

霧集めネットは、ポリプロピレンまたはポリエチレンのメッシュで[7]、霧の粒が付着し、合体して大きな水滴となって繊維を伝い落ち、樋で水タンクへ導かれる[8]。集水量は場所によって異なり、霧の季節に1パネルで1日150〜750リットルの例がある[7]。

チリのチュングンゴ村(年降水量6cm未満)では、100基の集水装置が10年間水を供給したと紹介される[7]。ただし年間の水量は資料により食い違い、他の資料の1日約1万リットルという数字とも整合しないため、供給量の数値は採用しない。いずれも二次資料で、原報告は未確認である。

ネットの近年の研究では、植物・昆虫・鳥の表面構造をまねたコーティングや形状の検討が進むとされる[8]。本記事で扱った植物・甲虫のどの構造が、実際にどの程度ネットに生かされているかは、この資料の範囲では分からない。

自分でも しらべて みたく なったら

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

いえで できること

せんたくネットを ひろげて、おふろばで きりふきの みずを ふきつけて みましょう。ネットの したに おさらを おいて、しずくが ついて、おちる ようすを 見ます。ほんものの きりより つぶは おおきいので、しくみを かんじる ぐらいに なります。

そとで 見つけられたら

きりの あさに あえたら、くもの すや くさの はに ついた しずくを 見て みましょう。

しらべる ときは

としょかんの しょくぶつの ほんで、「ティランジア」を さがして みましょう。

家でできること

洗濯ネットを広げて、お風呂場で霧吹きの水をふきつけ、下に皿を置いて、水滴がついて落ちるようすを観察してみてください。本物の霧より粒が大きいので、あくまで「しくみを感じる実験」です。網目を細かいものと粗いものに変えて、比べてみるのもよいでしょう。そのときは、霧吹きの回数やネットの置き場所を毎回そろえます。

外で見つけられたら

霧の朝に出会えたら、クモの巣や草の葉についた水滴を見てみましょう。

調べるときは

図書館の植物や砂漠の本で、ティランジアやサボテン、セコイアの項を読んでみてください。

家でできること

洗濯ネットを広げ、浴室で霧吹きの水をふきつけて、下に置いた皿に水がたまる量を比べる。霧吹きの回数などの条件をそろえたうえで、網目の細かさや、ネットの向きを変えると、集まる量がどう変わるかを考えられる。霧吹きの粒は本物の霧より大きいので、結果は「傾向をつかむ」程度に扱う。

外で見つけられたら

霧の朝に出会えたら、クモの巣や草の葉についた水滴の付き方を観察する。

原典にあたるとき

出典の Raux ら(2020)、Ju ら(2012)、Limm ら(2009)、Nørgaard と Dacke(2010)は、いずれも英語の論文。まず要旨と図から読み、Parker と Lawrence(2001)の原文にも進んでみるとよい。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

論文は、要旨や全文を読めたものと、要旨・検索抜粋にとどまるものがある。ティランジアの葉の細部、甲虫の最初の説、霧集めネットの水量は、二次資料にもとづく。

  1. Ju et al. (2012) Nature Communications(サボテンのとげ) https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3535335 (サボテンの集水)
  2. Raux et al. (2020) Nature Communications(Tillandsia landbeckii 要旨) https://ideas.repec.org/a/nat/natcom/v11y2020i1d10.1038_s41467-019-14236-5.html (ティランジアの水弁)
  3. Tillandsia(Wikipedia英語版) https://en.wikipedia.org/wiki/Tillandsia (葉の毛の動きの補足)
  4. Limm et al. (2009) Oecologia(葉面吸水) https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2727584 (セコイア林の葉面吸水)
  5. Scientific American(甲虫の記事) https://www.scientificamerican.com/article/desert-dwelling-beetle-sp/ (甲虫の説)
  6. Nørgaard and Dacke (2010) Frontiers in Zoology https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2918599/ (甲虫の見直し)
  7. The Fog Collectors(Columbia Climate School) https://news.climate.columbia.edu/2011/03/07/the-fog-collectors-harvesting-water-from-thin-air (霧集めネットの水量・チュングンゴ村)
  8. Smithsonian Magazine(霧から水を集める装置) https://www.smithsonianmag.com/innovation/device-collects-water-clouds-180962705/ (ネットのしくみ)

なおした ところ

更新履歴

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