1. ハムは、やいた にくなの? ゆでる まえに、なにを するの?
1. ハムは焼いた肉ではない ── 加熱の前に、塩に漬けて寝かせる
1. 熟成ハムは、塩漬けしてから加熱する ── 塩漬けは0〜10℃で7日間以上
スーパーの ハムは、フライパンで やいた にくでは ありません。つくる ながれは、にくを ととのえる、しおに つける、つめる、けむりで いぶす、ゆでるか むす、ひやす、という じゅんばんです[3]。けむりで いぶさない ハムも あります。
この なかで、いちばん じかんが かかるのは、しおに つける ところです。にほんの きまり(JAS)では、「じゅくせい」と なのる ハムは、0℃から 10℃の ひくい おんどで、7にち いじょう しおに つけると きめられて います[1]。7にちは、1しゅうかん です。
ある てづくりの こうぼうでは、れいぞうこで 1しゅうかんほど ねかせます。けむりで いぶした あと、4じかんほど かけて ねつを とおします。そうすると おもさが へって、70〜80%ほどに なります[9]。1キログラムの にくは、700〜800グラムに なる ということです。
ただし これは、「じゅくせい」と なのる ハムの きまりと、ひとつの こうぼうの れいです。すべての ハムが おなじ にっすうに なる わけでは ありません。
どうして ゆでる まえに、しおに 1しゅうかんも つけるのでしょう。
スーパーで見かけるハムは、肉をオーブンで焼いたものではありません。メーカーの説明では、ハムづくりは、整形、塩漬、充填(ケーシングなどに詰めること)、燻煙、湯煮または蒸煮、冷却・包装の順に進みます[3]。肉を整えて塩に漬け、包んで、煙でいぶし、お湯や蒸気で中心まで熱を通し、冷やして包装する流れです。燻煙のない製品もあります。
この流れのなかで、いちばん時間をかけているのが塩漬けです。JASでは、「熟成」と名乗るボンレスハム・ロースハム・ショルダーハムについて、塩漬けを0℃以上10℃以下の低温で7日間以上行うと決めています[1]。冷蔵庫のような低い温度で、1週間以上寝かせてから、ようやく加熱に進みます。ただし、これは「熟成」と名乗る製品の条件で、すべてのハムが同じ日数というわけではありません。
小さな手づくり工房の例では、漬け液(ピクル液)を肉に注入してかき混ぜ、冷蔵庫で約1週間寝かせます。燻煙のあとは約4時間かけて蒸気で加熱し、加熱後の重さは加熱前の70〜80%ほどに減るそうです[9]。1kgの肉が700〜800gになる計算です。
では、なぜ加熱の前に、1週間も塩に漬ける必要があるのでしょうか。
ハムの製造は、整形、塩漬、充填、燻煙、湯煮または蒸煮、冷却・包装の順に進む。燻煙は煙で色と香りをつけ保存性を高める工程、湯煮・蒸煮は中心部まで十分に加熱する工程で、燻煙のない製品もある[3]。製法の説明によっては、最初に原料肉へ食塩と発色剤をまぶし、重石をかけて血絞りをする工程も挙げられる[8]。
この流れで最も時間を使うのが塩漬けである。JASの熟成ハム類(熟成ボンレス・ロース・ショルダーハム)では、「熟成」を、原料肉を一定期間塩漬することで色素を固定し、特有の風味を十分に醸成させることと定義し、塩漬は0℃以上10℃以下の低温で7日間以上行うと定める[1]。7日間以上という数字は「熟成」と名乗る上級規格の条件であって、すべてのハムの条件ではない。
同じ規格は、数値の上限・下限も決めている。赤肉中の水分は72%以下、粗たん白質は18.0%以上で、塩漬液を肉に注入する場合は原料肉の重さの15%以下とされる[1]。1kgの肉なら、注入できる漬け液は150gまでという計算になる。これも熟成ハム類だけの基準である。
実際の工程の一例として、中小の手づくり工房では、ピクル液を肉に注入してタンブラーで約30分かき混ぜ、冷蔵庫で約1週間寝かせ、燻煙後に約4時間かけて蒸気で加熱する。加熱後の重量は加熱前の70〜80%ほどに減る[9]。1社の工程なので、日数や時間はハムごとに違う。では、加熱ではなく塩漬けに、なぜこれほど時間を割くのか。
2. しおに つけると、どうして ばいきんが ふえにくく なるの?
2. 塩は菌を殺すのではなく、育ちにくい環境をつくる
2. 食塩が微生物の使える水を減らす ── 水分活性0.90・0.88・0.80という目安
しおに つけると にくが ながもちする ことは、とても むかしから しられて いたと いわれます。ハムや ソーセージの はじまりは、かりで とった えものを しおづけに すると ながく たもてると、むかしの ひとが しった ことだと、ぎょうかいだんたいは せつめいします[7]。いつ どこで だったかまでは、わかって いません。
しおが ながもちさせる わけは、みずと かんけいが あります。しおや さとうが おおいと、たべものの みずは、ばいきんが つかいにくい じょうたいに なります。ばいきんが つかえる みずが へるので、そだちにくく なります[4]。
ただし しおは、ばいきんを やっつけるのでは ありません。そだちにくく する だけです。だから ハムでは、しおに つけた あと、なかまで ねつを とおして、ひやして ふやさないように します[3]。
しおには、もうひとつ、みために かかわる やくめも あると いわれます。それは、いろです。
肉を塩に漬けて長持ちさせる考え方は、とても古いものです。業界団体の説明では、狩りで得た獲物を塩漬けにすると長く保存できると古代の人が知ったことが、ハム・ソーセージのはじまりだとされています[7]。いつ、どこでのことかまでは特定されていません。
塩が肉を長持ちさせる仕組みは、水と関わっています。食塩や砂糖が多い食品では、中の水の大部分が、それらを溶かすのに使われます。すると、微生物が使える水が少なくなり、十分に育てなくなります[4]。広島県の資料では、育つために必要な水分活性(使える水の多さの目安)が、ふつうの細菌で0.90以上、酵母で0.88以上、カビで0.80以上とされています。これは食品全般についての目安で、ハムひとつひとつの数字ではありません。
ここで大切なのは、塩は菌を殺すのではなく、育ちにくくする、という点です。だからハムでは、塩漬けのあとに、中心部まで十分に加熱する湯煮・蒸煮と、冷やして細菌の増殖を防ぐ冷却の工程が続きます[3]。保存のための工夫が、一つではなく、塩・加熱・低温と重ねてあるわけです。
塩漬けには、保存のほかにもう一つ、目に見える役目があるといわれます。ハムの色です。
塩漬けを保存の工夫とみなす考え方は古い。業界団体の資料は、獲物を塩漬けにすると長く保存できると古代の人が知ったことをハム・ソーセージのはじまりとし、のちに十字軍が持ち帰った香辛料で風味と保存の技術が向上したと述べる[7]。ただし年代・場所は特定されておらず、あくまで業界団体の説明である。
塩が保存性を高める理由は、水分活性の考え方で説明できる。食塩・砂糖・ブドウ糖・アミノ酸などが多いと、食品中の水の大部分がそれらの溶解に費やされ、微生物の利用できる水が少なくなって、十分に発育できなくなる。広島県の資料は、発育できる水分活性の目安を、普通細菌0.90以上、普通酵母0.88以上、普通カビ0.80以上と示す[4]。数字が小さいほど少ない水でも育てることになるので、この目安の上では、カビがもっとも水の少ない環境に耐えやすい。
ただし、塩は菌を殺すわけではなく、増えにくくするだけである。しかも上の数値は食品一般の目安で、ハム個別の測定値ではない。そのため、製造では塩漬けに続いて、中心部まで十分に加熱する湯煮・蒸煮の工程があり、加熱後は冷却して細菌の増殖を防ぐ[3]。塩漬け・加熱・低温という複数の手段を重ねる設計だと読める。
では、規格が塩漬けの目的に挙げる「色素の固定」とは何か。加熱しても赤みが残るという、ハムの色の話に移る。
3. ハムの ピンクいろは、どうやって できるの?
3. 加熱しても赤い色が残る ── 塩漬けと色の関係は、研究が続いている
3. 発色剤とニトロシル・ヘム錯体 ── 2022年の研究が示した別の可能性
ハムは、なかまで しっかり ねつを とおします。それなのに、うすい あかい いろが のこって います。
にほんの きまりでは、「じゅくせい」とは、しおに つけて、にくの いろの もとを おちつかせ、ふうみを じゅうぶんに ひきだす ことと されて います[1]。しおづけは、しおと「はっしょくざい」を くわえて、ひくい おんどで つけこむ ことです[2]。はっしょくざいは、いろを だす ための ざいりょうです。
はっしょくざいを つかわず、しおだけで つけた ものは、「むえんせきハム」と わけて よばれます[2]。
ハムの あかい いろは、はっしょくざいから できる ものが、にくの あかい いろの もとと くっつく ためだと、かんがえられて きました。ところが 2022ねんの けんきゅうでは、はっしょくざいを つかわず、ポリフェノールと いう ざいりょうで ハムを つくっても、おなじように あかく なりました。いろの もとに なる ものが、いくつか まざって いろを つくって いる、とも ほうこくされて います[6]。
ハムの いろの しくみには、まだ けんきゅうが つづいて いる ところが あります。
つぎは、ねつを とおす こうていが ない ハムの はなしです。
ハムは、湯煮や蒸煮で中心まで熱を通します。それなのに、赤みのある色が残っています。この色は、塩漬けのときに決まるといわれます。
規格では、「熟成」とは、原料肉を一定期間塩漬けすることで、肉の色素を固定し、特有の風味を十分に引き出すことをいいます[1]。ハム類の定義では、塩漬けは「食肉に食塩、発色剤などを加え、低温で漬け込みを行うこと」です。発色剤を使わず塩漬けにしたものは、「無塩漬ハム」として区別されます[2]。
発色剤として使われる亜硝酸ナトリウムは、食品衛生法に基づく食品添加物として、チーズ、清酒、食肉製品、鯨肉ベーコンへの使用が認められ、使用基準が設けられています[5]。
では、赤い色はどういう仕組みで残るのでしょうか。加熱したハムの赤い色は、亜硝酸塩に由来するニトロシル・ヘム錯体(一酸化窒素とヘムという色素の結びついたもの)が原因だと考えられてきました。ところが2022年の研究では、亜硝酸塩を使わず、ポリフェノールを使ってつくったハムも同じように赤くなり、プロトポルフィリン類の混合物も色に関わっていると報告されました[6]。
つまり「ピンク色は亜硝酸塩のはたらき」と言い切れるほど、仕組みは決着していません。主要な説と、新しい報告の両方があります。
さて、加熱しないハムもあります。
加熱ハムの赤い色は、塩漬けの段階で決まる部分が大きい。熟成ハム類のJASが、熟成の目的に「色素を固定し、風味を十分醸成させること」を挙げているのも、そのためである[1]。ハム類の定義では、塩漬は「食肉に食塩、発色剤等を加え、低温で漬け込みを行うこと」で、発色剤を用いず塩づけしたものは「無塩漬ハム」と区別される[2]。
発色剤の亜硝酸ナトリウムは、食品衛生法に基づく食品添加物として、チーズ、清酒、食肉製品、鯨肉ベーコンの発色剤に使用が認められており、使用基準が設けられている[5]。色のための材料が、使い方まで決められた形で使われているということである。
では、赤色の正体は何か。長く有力だったのは、亜硝酸塩に由来する一酸化窒素とヘムが結合したニトロシル・ヘム錯体が、加熱ハムの赤色の色素だとする説である。ところが2022年の研究は、亜硝酸塩を使わず、ポリフェノールを用いてつくったハムも同様に赤くなることを示し、プロトポルフィリン類の混合物が色に寄与すると報告した[6]。
この報告は、ニトロシル・ヘム説を単純に否定するものではない。「ピンク色は亜硝酸塩だけで決まる」とは言い切れず、仕組みは研究途上にある、というところまでが確かな範囲である。塩漬けを経て、加熱しても色が残る。この点まで押さえたうえで、そもそも加熱の工程を持たないハムの定義を見る。
4. なまハムは、なまの にくなの?
4. 「生ハム」は生肉ではない ── 湯煮も蒸煮もない作り方
4. ラックスハムの定義には湯煮・蒸煮がない ── 塩漬けと乾燥で仕上げる
「なまハム」と きくと、やいて いない なまの にくだと おもうかも しれません。でも にほんの きまりでは、いわゆる なまハムは「ラックスハム」と いう なまえで、つくりかたが きめられて います[2]。
ていぎは、ぶたの かた、ロース、ももの にくを ととのえて、しおに つけ、つつんだ あとで、ひくい おんどで けむりで いぶすか、いぶさずに かわかす、と なって います。ゆでる、むす という こうていは ありません[2]。
つまり なまハムは、しおづけと かんそうで しあげた せいひんです。ふつうの ハムとは しあげかたが ちがいますが、しおに つける ところは おなじです。
ところで、ハムには「ボンレス」「ロース」「ショルダー」と、いろいろな なまえが あります。この ちがいは なんでしょう。
「生ハム」という名前から、焼いていない生の肉を思い浮かべる人もいるでしょう。ところが、日本の規格の定義を引いた県の資料では、いわゆる生ハムは「ラックスハム」という名前で、作り方が決められています[2]。
その定義は、豚の肩肉、ロース肉、またはもも肉を整形し、塩漬けして、ケーシングなどで包装したあと、低温で燻煙するか、燻煙せずに乾燥したもの、というものです。ふつうのハムにある、湯煮・蒸煮の工程が、定義に入っていません[2]。
つまり生ハムは、「加熱していない生の肉」ではなく、塩漬けと乾燥で仕上げた製品です。ふつうのハムとは仕上げ方が違いますが、塩に漬ける点は共通しています。どちらも、塩漬けが土台にあります。
ところで、ハムにはボンレス、ロース、ショルダーと、名前が分かれています。この違いは、何でしょうか。
「生ハム」という言葉から、未加工の生肉を連想しやすい。しかしハム類の定義を引く県の認証基準を見ると、いわゆる生ハムはラックスハムという名前で定義されている。豚の肩肉、ロース肉またはもも肉を整形し、塩漬し、ケーシング等で包装した後、低温でくん煙し、またはくん煙しないで乾燥したもの、というものである[2]。
ここで注目したいのは、ボンレス・ロース・ショルダーハムの定義にある「湯煮し、若しくは蒸煮」の部分が、この定義に出てこない点である。ハム類の定義では、肉を整形して塩漬し、包装したあと、くん煙して湯煮・蒸煮するか、くん煙せずに湯煮・蒸煮したものがボンレス・ロース・ショルダーハムとされる[2]。つまり二つの違いは、湯煮・蒸煮という加熱の工程を通るかどうかにある。
したがって、「生ハム=加熱していない生肉」という理解は正確ではない。塩漬けと乾燥で仕上げた製品である。ふつうのハムと共通するのは、塩漬けから始まる点だ。ここで使った定義は県の基準が引くもので、現行のJAS本文そのものではない。そのため、製品の表示については、実際の包装で確かめるのがよい。
ところで、加熱するハムの側にも名前の分かれ目がある。ボンレス、ロース、ショルダーとは、何の区別なのか。
5. ボンレスハムと ロースハムは、なにが ちがうの?
5. ボンレス・ロース・ショルダーは、豚の体のどこを使うかで分かれる
5. ハムの名前は、豚のどの部位を使うかで分かれる ── 原料肉はもも・ロース・肩に決められている
この 3つの なまえは、ぶたの からだの どこの にくを つかうかで わかれて います。にほんの きまりでは、ボンレスハムは ぶたの もも、ロースハムは ぶたの ロース、ショルダーハムは ぶたの かたの にくを つかうと きめられて います[1]。
どれも、にくを かたまりの まま つかいます。ひきにくに して あじを つけ、かわに つめた ものは、ソーセージです。ハムと ソーセージの ちがいは、にくが かたまりか、ひきにくか だと、あるメーカーは せつめいして います[3]。
この なかの ロースハムは、にほんで いちばん にんきの ある ハムと いわれます[7]。では、その ロースハムは、どうやって うまれたのでしょう。
名前の分かれ目は、豚の体のどの部分の肉を使うかです。JASの熟成ハム類では、熟成ボンレスハムは豚のもも肉、熟成ロースハムは豚のロース肉、熟成ショルダーハムは豚の肩肉だけを原料肉に使うと決められています[1]。
どれも、肉を塊のまま加工するのが特徴です。ハムとソーセージの違いについて、あるメーカーは、ハムは原料を肉の塊のまま加工する商品、ソーセージはひき肉を香辛料や調味料と混ぜてケーシングなどに詰めた商品と説明しています[3]。これは企業の説明で、JASではハム類とソーセージ類が別の規格になっています。
業界団体は、このなかのロースハムを「現在、日本で一番人気のあるハム」と述べています[7]。では、その人気のロースハムは、どうやって生まれたのでしょうか。
ハムの種類は、原料肉の部位で決まる。JASの熟成ハム類では、熟成ボンレスハムは豚のもも肉、熟成ロースハムは豚のロース肉、熟成ショルダーハムは豚の肩肉だけを原料肉に使う[1]。部位ごとに名前が付く以上、「ロースハム」と書いてあれば、原料の肉の場所まで読みとれることになる。
肉の形については、あるメーカーが、ハムは原料を肉塊のまま加工する商品、ソーセージはひき肉を香辛料や調味料と混ぜてケーシングなどに詰めた商品、と説明している[3]。ただしこれは企業の説明であり、JAS上の厳密な区別は、ハム類とソーセージ類という別々の規格によっている。
部位で名前が分かれるハムのなかで、業界団体は、ロースハムを「現在、日本で一番人気のあるハム」と記している[7]。この数字(人気の順位)は団体の記述であり、調査の方法までは示されていない。では、なぜロースの肉が、日本のハムの主役になったのか。
6. ロースハムは、にほんで どうやって うまれたの?
6. 使われていなかったロース肉に目をつけた人がいた ── 日本のハムの歩み
6. 1872年の長崎から1921年のロースハムへ ── 食卓に届くまでの長い道のり
1921ねん、ドイツの ひと アウグスト・ローマイヤは、そのころ ちゅうかりょうりてんで つかわれて いなかった ぶたの ロースに めを つけました。そして、にほんの ひとの このみに あう ハムを つくり、ロースハムとして ひろめた、と ぎょうかいだんたいは せつめいして います[7]。この はなしは、ぎょうかいだんたいの せつめいに よる ものです。
ハムそのものは、もっと まえから にほんに ありました。たしかな きろくでは、1872ねんに ながさきで、かたおかいえもんという ひとが、アメリカの ひとから にくの かこうを ならって、ハムづくりを はじめました[7]。
それでも、ハムが ふつうの いえの しょくたくに のぼるのは、しょうわ 30〜40ねん(1955〜1965ねんごろ)からです。それまでは、めいじから ずっと こうきゅうひんでした[7]。
ロースハムは、もとは つかわれて いなかった にくを、おいしく たべる ために うまれた ハム、と いうことです。
1921年(大正10年)、ドイツ出身のアウグスト・ローマイヤは、当時の中華料理店で使われていなかった豚のロース肉に目をつけました。そして、日本人の好みに合うハムをつくり、ロースハムとして広めた、と業界団体は説明しています[7]。この話は、業界団体の記述によるものです。
ハムそのものは、それよりずっと前から日本にありました。確実な記録としては、1872年(明治5年)に、長崎の大浦で片岡伊右衛門が、アメリカ人のペンスニから食肉加工を教わり、工場を建ててハムをつくりはじめたものがあります[7]。それ以前の1868年からという説は、はっきりした記録がありません。ロースハムの誕生は、その49年あとです。
ハムが一般の家庭の食卓にのぼるようになったのは、昭和30〜40年(1955〜1965年ごろ)になってからです。それまで、ハム・ソーセージは明治から長いあいだ、高級品でした[7]。
使われずにいた部位に目をつけて、日本人の好みに合わせた。ロースハムの話は、そう伝えられています。では、いま家にあるハムを、この話と照らしてみましょう。
日本のハムの出発点は、確実な記録では1872年(明治5年)にある。長崎大浦の片岡伊右衛門が、米国人のペンスニ(資料により「ペンスン」とも)から食肉加工を伝授され、工場を建設してハムの製造を始めた[7]。それ以前の1868年からという説もあるが、はっきりした記録がない。
それから49年後の1921年(大正10年)、ドイツ人アウグスト・ローマイヤが、当時の中華料理店で使われなかった豚のロース肉に目をつけた。彼はこれを活用して、日本人の好みに合ったハムを造り、ロースハムとして広めたと、日本ハム・ソーセージ工業協同組合は述べる[7]。創業の地は品川区大崎とされる。同じ資料の年表には「日本で初めてロースハム」とあるが、ハム自体の日本初は、上の1872年である。
この「中華料理店で使われなかった」という点は、この団体の記述であり、企業史など独立した出典と突き合わせたものではない。そのため、「そう伝えられている」という強さで受け止めたい。
では、普及はどうか。同じ資料は、一般家庭の食卓にハム・ソーセージがのぼるようになったのは昭和30〜40年(1955〜1965年ごろ)で、明治からそのころまでは高級品だったと述べる[7]。つまり、1872年に製造が始まってから、家庭の食べ物になるまで、80年ほどかかったことになる。製法は同じでも、広まるには、肉の部位の選び方と暮らしの変化が要ったということである。
7. スーパーの ハムを みくらべて みよう
7. 袋の名前と原材料を、部位と作り方で読んでみる
7. 表示から部位と製法を読みとる ── 規格の言葉を手がかりに
おうちに ハムが あれば、ふくろの まえの なまえを みて ください。「ボンレス」「ロース」「ショルダー」、または「なまハム」と かいて ありますか。
みつけたら、ぶたの からだの どこの にくか、いまの はなしと くらべて みます。ボンレスなら もも、ロースなら ロース、ショルダーなら かたです。
ふくろの うらの げんざいりょうの らんも みて みましょう。どんな ざいりょうが、どんな じゅんで かいて あるでしょうか。
なまハムと ふつうの ハムが どちらも あれば、たべくらべても いいです。かむ ときの かたさや、しおの かんじは、どう ちがいますか。たべる ときは てを あらって、きげんの ひょうじを まもります。
ふくろには、ぶいの なまえしか かいて いない ことも あります。しりたい ことが のこったら、メーカーの ホームページや、きまり(JAS)を しらべる ことが できます。
家にハムがあれば、まず袋の名前を見てください。「ボンレス」「ロース」「ショルダー」「生ハム」のどれが書いてあるでしょうか。
名前が見つかったら、規格の言葉で読みなおします。ボンレスなら豚のもも肉、ロースならロース肉、ショルダーなら肩肉です。生ハムなら、塩漬けと乾燥で仕上げた、加熱の工程のない製品のはずです。
次に、原材料名の欄を見ます。どんな材料が、どんな順で書かれているかを、ハムごとに比べてみると、おもしろい発見があるかもしれません。
生ハムとふつうのハムの両方があれば、食べ比べもできます。かむときの歯ごたえや塩のきき方は、どう違うでしょうか。食べる前には手を洗い、期限の表示を守ります。
パッケージには、部位の名前しか書かれていないこともあります。何日間塩漬けしたのか、どんな漬け液なのかは、メーカーの公式サイトなどで確かめられる場合があります。原典に当たりたい人は、農林水産省の熟成ハム類のJAS(出典欄の[1])で、原料肉の部位と塩漬けの条件を日本語で読めます。
手元にハムがあれば、規格の言葉を当てはめて読める。まず、包装の名前から、ボンレス、ロース、ショルダー、生ハムのどれかを探す。ボンレスは豚のもも肉、ロースはロース肉、ショルダーは肩肉と、原料肉の部位が名前で決められている[1]。
ただし、名前の種類と製法は一対一ではない。熟成ハム類は7日間以上の塩漬けなどの条件を満たしたもので、そうでないハムも店には並ぶ。生ハムはラックスハムとして別の定義があり、湯煮・蒸煮の工程を持たない[2]。袋の名前だけで、何日塩漬けしたかまでは分からない。
確かめるなら、原材料名の欄や、メーカーの公式サイトの製造工程の説明が手がかりになる[3]。包装に「熟成」と書いてあるかどうかも、規格との対応を考える材料になる。食べ比べをするときは、手を洗い、期限の表示を守る。
原典に当たるなら、農林水産省の熟成ハム類のJAS[1]で、原料肉・塩漬けの温度と日数・水分などの数値を、日本語で読める。県の認証基準[2]は、ハム類やラックスハムの定義を引用しており、本文の定義と照らすときの入り口になる。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:国や県の資料、メーカーや業界団体の説明、研究論文、百科事典を使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。
- 農林水産省「熟成ハム類の日本農林規格」。https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/pdf/kikaku_59.pdf (熟成の定義、塩漬けの温度と日数、原料肉の部位、水分などの数値について)
- 埼玉県ふるさと認証食品「ハム類の認証基準」。https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/12868/16hamrui.pdf (ハム類・ラックスハムの定義、塩漬けの定義、無塩漬ハムについて。JASの定義の引用)
- 大山ハム「よくあるご質問」。https://www.daisenham.co.jp/7/ (ハムの製造工程と、ハムとソーセージの違いについて。メーカーの説明)
- 広島県「食品の水分活性」。https://www.pref.hiroshima.lg.jp/soshiki/26/foodfaq6-5.html (食塩と水分活性、微生物の発育の目安について)
- 食品安全委員会 企画等専門調査会資料「亜硝酸塩等の発色剤」。https://www.fsc.go.jp/sonota/hazard/hyoka_5.pdf (発色剤として使用が認められている食品と、使用基準があることについて)
- Reddish Colour in Cooked Ham Is Developed by a Mixture of Protoporphyrins(PMC, 2022)。https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9777776/ (加熱ハムの赤い色の仕組みについて。英語の論文)
- 日本ハム・ソーセージ工業協同組合「ハムソベ史」。https://content.hamukumi.or.jp/history/ (塩漬けの始まり、日本のハム製造の記録、ロースハムの由来、普及の時期について。業界団体の説明)
- 日本大百科全書「ハム」(コトバンク)。https://kotobank.jp/word/ハム (製法の初めの工程について。百科事典の記述)
- サンデリカ「ハムの作り方」。https://sundelica.jp/philosophy/howto-ham.html (手づくり工房の工程の一例について。1社の例)
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