1. ふかさを はかるのに、なぜ とけいが いるの?
1. 水深10mの音は、なぜ0.013秒で戻るのか
1. 水深10mなら往復約0.013秒 ── 音響測深機は音の往復時間から水深を求める
ふねの 下から 音を 出すと、音は 水の 中を すすんで、海の そこに ぶつかり、はね返って もどって きます。この 時間を はかる きかいが、おとで ふかさを はかる きかいです[3]。
ふかさが 10メートルなら、音は 下へ 10メートル、上へ 10メートルで、ぜんぶで 20メートル すすみます。水の 中の 音は 1びょうに 1500メートルほど すすむと して けいさんすると、20÷1500で、およそ 0.013びょう です。1びょうの 75分の1ほどの、みじかい 時間です。
この きかいは、ふかさを 直せつ はかって いる わけでは ありません。はかって いるのは 時間です。だから、「ストップウォッチ」と よんで よいと、海上保安庁の 本に かいて あります[3]。
では、この ストップウォッチは、いつから みなとで つかわれて いるのでしょう。
音響測深機は、船の水面近くから音の信号を出し、それが海底ではね返って戻ってくるまでの時間を測って記録する機械です[3]。水深は、往復にかかった時間Tの半分に、音の速さVをかけて求めます。式にすると、D=T×1/2×Vです(Tは秒、Vはm/s、Dはm)[3]。
半分にするのは、音が水深の2倍の道のりを進むからです。海上測量では、音の速さとして1,500m/sを仮に決めて目盛りをつけます[3]。この値で水深10mを計算すると、音は往復20mを進むので、20÷1,500で約0.0133秒です。これは私たちの計算です。1秒の約75分の1にあたります。
海上保安庁の研究報告は、この機械を水深を直接測る機械というより「時間差測定機(ストップウォッチ)」と言ってよいと述べています[3]。港の水深の数字は、ものさしを当てて得たものではなく、一瞬の長さを読み替えた値なのです。
ところで、この時間を測る機械は、いつから港で使われているのでしょうか。
音響測深機は、水面直下で音波信号を発射し、海底で反射して発射点に戻るまでの往復所要時間を計測・記録する機器で、水深は D=T×(1/2)×V(T:往復時間、V:音速)で求まる[3]。往復で水深の2倍を進むので、Tを半分にする。海上測量では、音速として1,500m/sを仮に与えて目盛る[3]。
水深10mなら音は往復20mを進むから、20÷1,500で約0.0133秒(約75分の1秒)になる(自前の計算)。同じ報告は、この機械を水深を直接測る装置というより、時間差測定機すなわちストップウォッチと言ってよいと述べ、音速の正確さが測深精度に大きく影響すると指摘する[3]。
ここで注意したいのは、1,500m/sが仮定値だという点だ。実際の水中音速は水温や塩分などで変わる[3]。つまり港の水深の数字は、時間の測定に「ある音速」を掛けた結果であり、その音速をどう決めるかで答えが動く。この点は第3章で扱う。その前に、この時間測定が、いつ港の水深の主役になったのかを確かめる。
2. おもりと なわの じだいから、おとの きかいへ
2. 縄とおもりの測鉛から、音の機械へ
2. 測鉛から音響測深へ ── 大正末期の導入と1935年の海図採用
むかしの はかり方は、とても わかりやすい ものでした。おもい おもりを なわに つけて、ふねから 水に 入れます。そこに ついたら、なわの 目もりを よみます[1]。
おもりの そこには くぼみが あって、あぶらを つめて おきます。すると、すなや どろが くっついて きて、海の そこが どんな ところかも わかりました[1]。
日本では、大正の おわりごろに、おとの きかいが 入りました。はじめは ふかい 海で つかわれました。1960ねんごろには、おとで はかる ほうが ふつうに なりました[2]。
でも、おもりと なわは 消えて いません。ある 市の みなとの きまりでは、おとの きかいが つかいにくい ときは、おもりで はかる ことに なって います[4]。
水深を測る最も古い方法の一つは、重い鉛のおもりを縄につけて船べりから海へ入れ、底に着いたら縄の目盛りを読むやり方です[1]。おもりの底にはくぼみがあり、そこに獣脂を詰めておくと、砂や泥がくっついてきます。深さだけでなく、海底の性質も分かりました[1]。
日本の近代的な海図づくりは、1871(明治4)年に水路寮ができたことから始まります。明治から大正のころの水深は、おもりで測った粗い点のデータでした[2]。おもりを落として読む方法なので、測れるのは、落とした場所の一点です。
変化は大正の末ごろに来ました。音響測深機が導入され、まず深い海で使われました。1935(昭和10)年には、音響測深で測った水深が海図に採用され、1960(昭和35)年ごろまでには、水深の測定はおもりから音響測深が中心になりました[2]。
それでも、おもりの方法は消えていません。大阪市の港湾測量の仕様書には、音響測深機のほか、レーザー測深機、測鉛などで測深すると書かれ、音響測深機が使いにくい場合は原則としてレッド測深(測鉛)によるとあります[4]。ただし、これは大阪市が出す業務の仕様で、全国どこでも同じ決まりという意味ではありません。
こうして、港の水深は時間の測定が中心になりました。では、時間を水深に直すときの「音の速さ」は、どう決めているのでしょうか。
水深を測る最も古い方法の一つは、重い鉛のおもりを縄につけて船べりから投入し、着底したら縄の目盛りで水深を読む測鉛(錘測)だ。おもりの底のくぼみに獣脂を詰めると、砂や泥などの底質が付着し、水深とあわせて海底の性質も調べられた[1]。この出典は海洋辞典の英文の項目1件なので、いつ・どこで始まったかには立ち入らず、「古くからある方法」として扱う。
では日本ではどう移り変わったのか。海上保安庁の研究発表によると、近代的な海図づくりは1871(明治4)年の水路寮の発足に始まる。当時の水深は錘測による粗い点データで、大正末期に音響測深機が導入されると、まず大水深域から使われた[2]。測鉛は投入した一点の深さしか分からない方法だから、機械化の利点は大きかったはずだが、出典がそう書いているわけではない。出典が示す事実は、1935(昭和10)年に音響測深の水深が海図に採用され、1960(昭和35)年ごろまでに水深測定の主体が錘測から音響測深に移ったことである[2]。
ただし測鉛は消えていない。大阪市港湾局の共通仕様書は、測深を音響測深機(単素子・多素子・スワス音響測深機を含む)、レーザー測深機、測鉛等で行うとし、音響測深機によりにくい場合は原則としてレッド測深(測鉛)によると定める[4]。これは大阪市発注業務の仕様であり、全国一律の規則ではない。
音響測深が主役になったことで、残る問題は音速である。時間を水深に変える係数が仮定値なら、その誤差が水深の誤差になる。
3. 「1500」は、いつも ほんとう?
3. 仮の「1,500」を、毎日たしかめる
3. 仮定の音速1,500m/sは、どう補正されるか ── バーチェックと水深のずれ
おとの すすむ はやさは、水の あたたかさや、しおの こさで かわります[3]。「1500」は、はかる ときの かりの 数です。
もし ほんとうの はやさが、かりの 数より 1パーセント ゆっくりなら、水の ふかさ 10メートルは、10.1メートルと でて しまいます。10センチほどの ちがいです。これは、この 本の けいさんです。
そこで、ある 市の みなとの きまりでは、はかる 前に、まい日 1回、はやさを たしかめます。いちばん ふかい ところで、いたを 2メートルずつ 上げ下げして、その へいきんから、なおす 数を 出します[4]。
はかる 人は、毎日 ストップウォッチの めもりを あわせて いる ようなものです。
1,500m/sは、目盛りをつけるための仮の値です。実際の音の速さは、水温や塩分などで変わります[3]。海上保安庁の研究報告が、音速の正確さは測深の精度に大きく影響すると述べているのは、このためです[3]。
どれくらい影響するのか、試しに計算してみます。実際の音速が仮の値より1%小さい場合、機械は時間を長く読み、水深を1%大きく表示します。10mの水深なら約10cmの差です。これは私たちの概算で、実際の誤差は条件で変わります。
では、現場はどう補正するのでしょうか。大阪市の港湾測量の仕様書は、音響測深の値を潮位、音速度、喫水などで補正するよう求めています。水中の音速は、バーチェック法か音速度計で調べます[4]。バーチェックは1日1回、測深に着手する前に、測る海域のいちばん深い場所で行います。板を水深30mまでは2mごと、それより深いところは5mごとに上げ下げして、その平均から補正値を出します[4]。
この手順は大阪市が発注する業務の仕様で、全国一律の規則ではありません。それでも、音響測深機が「ストップウォッチ」なら、毎朝ストップウォッチの目盛りを合わせるような作業が欠かせない、ということは読み取れます。
補正の項目には、潮位も並んでいました。水深は、いったいどの高さの水面から数える数字なのでしょうか。
報告は、音響測深の実施には音速度の把握が不可欠で、その正確さが測深精度に大きく影響すると述べる[3]。どの程度の影響かを概算すると、実際の音速が仮定値より1%小さいとき、機械は往復時間を長く読み、水深を約1%大きく表示する。水深10mなら約10cmだ(自前の概算。実際の誤差は水温・塩分の分布などの条件で変わる)。
この補正を、現場の規定はどう定めているのか。大阪市港湾局の仕様書は、音響測深の値を潮位・音速度・喫水などで補正することを求め、水中音速はバーチェック法か音速度計で調べるとする[4]。バーチェックは1日1回、測深作業の着手前に、測深海域の最深部で行う。バー(板)を水深30mまでは2mごと、それより深い範囲は5mごとに上げ下げし、上げ下げの平均から補正値を出す[4]。
つまり、音速は一度決めて終わりではなく、日ごと・場所ごとに測り直す量として扱われている。ただし、この具体的な手順は大阪市発注の業務仕様書1件に基づく。国土交通省の港湾測量の仕様など、ほかの基準では細部が異なりうるので、全国共通の手順として読まないほうがよい。
次に問題になるのは、補正項目の一つに潮位が入っている点だ。潮で水面が上下するなら、「水深」はどの水面を基準に数えるのか。
4. しおで 水が へる とき、ふかさは どこから?
4. 海図の水深は、最低水面から数える
4. 最低水面とは何か ── 「これより下がることはまれ」という考え方
みなとの 水は、しおで 上がったり 下がったり します。では、ふかさの 数字は、どの 高さの 水から 数えるの でしょう。
海図に かいて ある ふかさは、「さいてい水面」と いう きまった 面から 数えて あります。しおが かなり ひいた ときに ちかい 高さに きめた 面です[5]。ふねの そこが 海に ぶつからない ように する ためです[5]。
だから 海図の 数字は、ふだんより ひかえめな ふかさです。ただし、この 面は 「ぜったいに これより 下がらない」 という 面では ありません。ふゆの おおしおの ころなどに、下まわる ところも あります[5]。
みなとの こうじでは、よびなの ちがう 面を つかう ことが あります。同じ 数字と 思わないで ください[4]。
海面は潮の満ち引きで上下します。そこで海図の水深は、最低水面という面を基準に書かれます。これは、船が海底に接触するのを避けるために、これより水面が下がることはまれだという面を選んでいる、という考え方によります[5]。
海上保安庁の説明では、その場所の平均水面から、主要な4つの分潮(M2・S2・K1・O1)の振幅の和だけ下げた面を最低水面とします。海図の水深は、「いちばん引いたときでも、たいていこれだけはある」という数字です[5]。
ただし、名前の「最低」は便宜的な呼び名です。この面より水面が下がることも珍しくなく、冬の大潮のころに下回る地点もあります[5]。「潮が絶対にこれ以下にならない面」と読んではいけません。
港の工事の側は、別の面を使います。大阪市の仕様書では、港湾の水深測量の基準面は原則として基本水準面で、検潮所で潮位を観測して補正します[4]。基本水準面と最低水面は別の名前の面で、ここでは同じものとして扱いません。同じ「水深」でも、どの面から数えた数字かを確かめる必要があるのです。
基準が決まれば、あとは数字を集めるだけです。では、その集め方は、点から面へどう変わったのでしょうか。
海面は潮汐で上下するので、水深は基準面を決めなければ意味を持たない。海図の水深は最低水面を基準に書かれる。船舶が海底に接触することを避けるため、これより下がることがまれな面を選ぶという理由による[5]。
海上保安庁は、その地点の平均水面から、主要4分潮(M2・S2・K1・O1)の振幅の和だけ下げた面を最低水面とする[5]。ここで誤解しやすいのは「最低」という語だ。報告は、これが便宜的な名称であり、この面より水面が下がることも珍しくないと述べ、冬の大潮のころに下回る地点もあるとする[5]。つまり最低水面は「潮が絶対にこれ以下にならない面」ではなく、「下がることがまれな面」として決められた約束の面である。
港湾の側では事情が異なる。大阪市港湾局の仕様書では、水深測量の基準面は原則として基本水準面とし、検潮所で潮位を観測して補正する[4]。これは海図の最低水面とは別の名前の面であり、同じ高さかどうかは今回の資料からは述べられない。このため、港湾工事の水深図と海図の水深を、数字だけで直接比べてはいけない。
基準面が決まると、測った瞬間の水深を、その面からの深さに直す作業が要る。その作業量を左右するのが測り方で、現在は点や線ではなく、面で測る方式が主力になっている。
5. 1本の おとから、何ひゃくもの おとへ
5. 数百本のビームで、海底を面で見る
5. マルチビームの導入と普及 ── 測り残しとデータ処理の問題
いまの 主な きかいは、「マルチビーム」と いいます。何ひゃくもの 音を ちがう むきに 出して、はばの ある おびのように 海の そこを いちどに はかる きかいです[6]。
日本では、1983ねんに 大きな そくりょう船に のせられ、1995ねんには あさい 海の ための ものも 入りました[2]。
2021ねんどには、みなとの こうじに ともなう そくりょうの、およそ 3分の2が マルチビームに なりました[6]。
はかる ものが ふえすぎると、1つずつ 目で たしかめるのは たいへんです。2022ねんには、データを 数で まとめて しらべる やり方が きまりに 入りました[6]。
おもりなら一点、普通の音響測深機なら船の真下の線を測るところを、マルチビーム音響測深機は、数百本の受波ビームで海底の幅広い帯を一度に測ります。そのため、これまでの機械では難しかった、すき間のない詳しい海底の地形が得られます[6]。
日本では、海上保安庁が1983(昭和58)年に大型測量船「拓洋」へマルチビーム測深機を積み、1995(平成7)年に浅い海用のマルチビームを入れました。調査の力は大きく伸び、デジタル化とマルチビームの普及が一気に進みました[2]。
港の測量にも広がり、2021(令和3)年度には、港湾工事などに伴う水路測量の件数の約3分の2がマルチビームになりました[6]。測り残しを減らす目標も、規定に表れています。大阪市の仕様書は、水域の区分ごとに「未測深幅」(測り残しの幅)の上限を決めていて、最も厳しい特級水域では、多素子かマルチビームで0mです[4]。区分や機器によって数字は変わるので、ここでは一例にとどめます。
データが増えると、新しい悩みも生まれます。全部の点を人が目で見て、おかしな点を消すやり方は、限界になりました。そこで2022年3月に、統計的に処理するCUBE処理が、水路測量業務準則の施行細則に入りました[6]。
面で測れる機械が港に入ると、測った数字は、何に使われるのでしょうか。
点から面への転換を示すのが、マルチビームの導入だ。海上保安庁は1983(昭和58)年に大型測量船「拓洋」へマルチビーム測深機を搭載し、1995(平成7)年に浅海用を導入した。これ以後、調査能力が大きく向上し、デジタル化とマルチビームの普及が一気に進んだ[2]。
現在の水路測量の主力機器がマルチビームである。数百本の受波ビームで面的に測るため、単素子や多素子の音響測深機では難しい、フルカバーの詳細な海底地形が得られる。国土交通省港湾局の「港湾工事におけるICT活用」などを通じて港の水路測量にも広がり、2021(令和3)年度には、港湾工事等に伴う水路測量の約2/3がマルチビームになった[6]。
面で測れるかどうかは、規定の側にも表れる。大阪市の仕様書は水域区分ごとに「未測深幅」(測り残しの幅)の上限を定め、最も厳しい特級水域では多素子またはスワス(マルチビーム)で0mとする[4]。ただし数字は水域区分と機器で異なるので、一般化はできない。
測深点が増えると、別の問題が起きる。全点を目視で点検・削除する従来のやり方は限界に達し、2022年3月に統計的処理のCUBE処理が水路測量業務準則施行細則で規定された[6]。データの量が増えた分、点検の方法も変わったのである。
こうして得た海底の面のデータは、港でどう使われるのか。
6. はかった ふかさは、何に つかうの?
6. 測った水深は、海底を掘る工事と、これからの測量に使われる
6. 浚渫の事前・事後測量と、GNSSと最低水面モデルで水深を出す研究
みなとの 海の そこには、どろや すなが たまって、あさく なって しまうことが あります。ふねが とおれる ふかさを まもる ために、そこを ほって ふかく します。これを「しゅんせつ」と いいます[7]。
ほる 前に、マルチビームで 海の そこの かたちを はかります。その データから、どこを どれだけ ほるか けいさんします。ほり おわった あとにも、もう 1回 はかって たしかめます[7]。
これから、しおの たかさを 見る 作業を へらす 研究も すすんで います[6]。
備讃瀬戸北航路(水深19m)で、四国地方整備局は浚渫工事を進めました。海底に土砂がたまって水深が浅くなったので、掘って水深を確保する工事です。19mは、この航路の計画上の水深です[7]。
この工事では、まずマルチビーム測深機で海底を3次元で測量します。そのデータから、掘る位置と土の量を計算し、工事のあとにもう一度マルチビームで検査します。2017年3月の発表によると、四国で初めてのICT浚渫でした[7]。
測量の仕事は、まだ変わろうとしています。海上保安庁は、GNSS(衛星を使った位置の測定)で船の高さを測り、最低水面のモデルと組み合わせる方法を研究しています。うまくいけば、現場での験潮(潮位の観測)なしで水深を出せます。後処理キネマティックという方法で、従来の潮高処理と差のない水深が得られたという報告もあります。ただし、これは研究と導入を目指す段階で、実用化されたわけではありません[6]。
ここまでで、音、速さ、水面の高さ、面での測定がつながりました。最後に、自分で確かめられることを考えます。
測った水深は、港の水深を維持する工事に使われる。四国地方整備局の備讃瀬戸北航路(計画水深19m)の浚渫工事では、埋没して浅くなった海底を掘り、水深を確保する。事前にマルチビーム測深機で3次元測量し、そのデータで浚渫位置と土量を計算し、工事後に再度マルチビームで検査する。2017年3月の発表では、四国初のICT浚渫とされた[7]。19mは計画水深であって、測量結果の水深ではない。
測量の側にも変化が続いている。第5章のCUBE処理のほか、海上保安庁は楕円体基準水深測量を研究している。GNSSで船の高さを測り、最低水面モデルと組み合わせれば、現場での験潮作業なしに水深を求められる手法だ。後処理キネマティックで、従来の潮高処理による水深と差のない水深が得られたという報告もある[6]。ただし研究・導入を目指す段階で、実用化が済んだとは書かれていない。
この手法が実用になれば、第4章で見た基準面の問題が、潮位観測から衛星測位とモデルへ置きかわる。だが基準面の考え方そのものは、音の往復時間を水深に直す仕事と同様に残るだろう。出典がそこまで述べているわけではないので、推測として記しておく。
7. おとが もどる じかんを けいさんして みよう
7. 水深を、自分で割り算してみる
7. 数字の出どころを確かめる ── 計算と一次資料
でんたくと 紙を 用意します。「ふかさ × 2 ÷ 1500」で、音が もどる 時間が わかります。
ふかさを 1メートル、10メートル、100メートルに して、3つ 計算して みましょう。100メートルの ふかさでも、音は 1びょうより ずっと はやく もどって くる ことが わかります。
もっと しりたい ときは、海上保安庁の 本を さがして みて ください。この 本の 後ろに 名前が のって います。
家にある電卓で、音が戻る時間を計算できます。「水深(m)×2÷1,500」で、答えは秒になります。水深を1m、10m、100mにして、3つの答えを比べてみてください。深くなるほど時間は長くなりますが、100mでも約0.13秒です。
次に、音の速さを1%小さくした「1,485」で割って、どれだけ水深の数字が変わるかも計算できます。第3章で書いた「10mで約10cm」が、自分の電卓でも出るかどうか確かめてみましょう。
もとの資料は、この記事の下の出典欄にあります。音響測深機の式と「ストップウォッチ」という表現は海上保安庁の水路部研究報告、最低水面の説明は同じ海上保安庁の水路図誌報告にあります。どちらも、それぞれの冒頭の数ページが、式や言葉の定義を知るのに向いています。
この記事の数字のうち、自分で確かめられるのは次の二つだ。一つは「水深×2÷1,500」で、往復時間は水深1mで約0.0013秒、10mで約0.013秒、100mで約0.13秒になる。もう一つは、音速を仮定値より1%小さい1,485m/sにしたときの水深の差で、10mでは約10cmの差になる。いずれも電卓があれば足りる。
一次資料は、音響測深の原理と「時間差測定機」の表現が海上保安庁水路部研究報告「小型音速度計の研究開発」、最低水面の定義と限界が同庁の水路図誌報告の基準面の項、マルチビームの普及率とCUBE処理、楕円体基準水深測量が同庁海洋情報部の研究発表資料(2022年度)にある。港湾側の運用は、大阪市港湾局の共通仕様書で、バーチェックや未測深幅の具体的な数字を確認できる。ただし後者は大阪市の仕様で、全国一律ではない点に気をつけたい。
基本水準面と最低水面の高さの違いは、国土交通省の港湾関係の基準で調べられる。この二つの基準面が実際の港でどれだけ違うのかを、読んで比べてみる価値がある。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文で使った資料です。数字や式は、各資料の元の文章でも確かめてください。
- 海洋辞典「測鉛(Lead line sounding)」。https://oceandictionary.jp/scapes1/scape_by_randam/randam7/select721.html (おもりと縄で水深を測る方法について。英文の項目)
- 海上保安庁 海洋情報部 研究発表(森)2023。https://www1.kaiho.mlit.go.jp/kenkyu/happyo/2022/3_Mori_20230126.pdf (日本の水深測量の移り変わりと、マルチビーム導入について)
- 海上保安庁 水路部研究報告「小型音速度計の研究開発」。https://www1.kaiho.mlit.go.jp/kenkyu/report/tbh01/tbh01-25.pdf (音響測深の式と、音速の正確さについて)
- 大阪市港湾局「港湾測量・調査等業務委託共通仕様書(深浅測量)」。https://www.city.osaka.lg.jp/port/cmsfiles/contents/0000624/624818/B13-sokuryougyoumu.pdf (バーチェック、基準面、未測深幅について。大阪市の業務の仕様)
- 日野・海上保安庁 水路図誌報告「基準面」。https://www1.kaiho.mlit.go.jp/kenkyu/report/rhr62/rhr62_08_t_04.pdf (最低水面の考え方について)
- 海上保安庁 海洋情報部 研究発表(住吉)2023。https://www1.kaiho.mlit.go.jp/kenkyu/happyo/2022/4_Sumiyoshi_20230126.pdf (マルチビームの普及、CUBE処理、研究中の手法について)
- 国土交通省 四国地方整備局 報道発表(2017年3月)。https://www.skr.mlit.go.jp/pres/h28backnum/kouwan/170316/170316-1.pdf (浚渫工事でマルチビームを使う例について)
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