1. 黒い ひじきは、海では なに色?
1. 売り場では黒いひじきは、海では何色をしているのか
1. 売り場では黒いひじきは、海では何色をしているのか
ひじきは、海に はえている 海そう(海の 草のような もの)です[1]。海に いる ときの 色は、茶色です[2]。
とった あとに、ほして、あらって、むして、かわかすと、まっ黒に なります[2]。ごはんの ときに 見る 黒い すがたは、そのあとの すがたです。
では、茶色い ひじきは、海の どんな ところに はえて いるのでしょう。
2. 春の 海べの 岩に、ひじきは いる
2. 波の強い岩場に、ひじきの林がある
2. 波当たりの強い岩礁の低潮線付近に生える
ひじきは、波が 強めの 岩の ところに はえます。海の水が いちばん ひく ところの ちかくです[1]。
北海道の 南から 九州の 南の はしまで、ひろい はんいの 岩場に います[2]。とくしまけんの 海べでは、ひじきが むれに なって はえて いて、春に とって、しごとにして います[3]。
とる ころの ひじきは、1メートルほどに そだちます[1]。ところで、いちど かった ひじきは、もう はえて こないのでしょうか。
いつも水につかっている場所の、すぐ上
ひじきが生えるのは、波当たりが比較的強い岩礁の、低潮線付近です[1]。低潮線とは、潮がもっとも引いたときの海面の高さのことで、そのあたりはふだんは海の中、引き潮のときだけ空気にふれる場所です。
北海道南部から九州南端までの広い範囲の岩場に分布し、旬は3〜5月とされます[2]。徳島県の海部郡沿岸では、潮間帯にひじきの群落ができ、春に浜ごとに採取と加工が行われています[3]。
採るのは春の大潮の干潮
採取は、春の大潮の干潮のときに、1mほどに育った藻体を採ることが多いとされます[1]。潮が大きく引く日は、ふだん海の中にある場所まで歩いて近づけるからだと考えられます。では、採ったひじきは、そのあと生えてこないのでしょうか。
ひじきが生えるのは、波当たりの比較的強い岩礁の低潮線付近である[1]。低潮線は潮が最も引いたときの海面の高さを指し、その付近は、ふだんは海中にあり、干潮のときだけ空気にふれる帯にあたる。分布は北海道南部から九州南端までと広く、旬は3〜5月とされる[2]。徳島県の海部郡沿岸では、潮間帯に群落ができていて、春には浜ごとに採取と加工が営まれている[3]。
採取は、春の大潮の干潮時に、1mほどに生長した藻体を採ることが多い[1]。大潮の干潮は一年のなかでも潮が大きく引く時期で、ふだん海中にある低い場所へ歩いて近づけるためだと考えられる。
ここで気になるのは、採ったあとの岩場である。藻体を刈り取ってしまえば、翌年は生えてこないのではないか。それなのに、同じ場所で毎年のように採れているのはなぜか。
3. 小さな めは、冬の あいだ なにを して いるの?
3. 夏に生まれた芽は、秋と冬をどう過ごすのか
3. 夏に出た芽は、秋と冬をどう過ごすのか
ひじきの めは、夏に 出ます。そして 秋から のびはじめて、春に いちばん 大きく なると されて います[4]。
ところが、和歌山県の しらべでは、ふしぎな むれが ありました。秋から 冬の はじめまで、ほとんど のびずに、岩に ぺたっと はりついて すごして いたのです[4]。
のびかたは、場所と 時期で ちがいました。1日に 1ミリ より 小さい ところも あれば、4ミリ いじょうのびた ところも あります[4]。
すべての むれが ぺたっと する わけでは ありません。秋にも のびる むれが ある、と いわれます。
夏に出て、春に最大になる
ひじきの一生は、一般に、夏に出た新芽が秋から伸び始め、春に最大の長さになって成熟する、と説明されます[4]。
秋から初冬は、伸びずに岩にはりつく
ところが和歌山県沿岸の調査(2011年9月〜2012年4月)では、秋から初冬にかけてほとんど伸びず、平たく岩にはりつく「ロゼット型」の幼い芽で過ごす群落が見つかりました[4]。ロゼットとは、タンポポの葉のように、地面にぴったり広がった姿のことです。ただし、すべての群落がこうなるわけではなく、秋に伸びる群落もあります。
主枝の1日あたりの伸びは、場所と季節で、1mm未満から4mm以上までと差がありました[4]。もし1日4mmのペースが30日続けば約12cm、1mmなら約3cmです。上限どうしを比べた計算ですが、同じ芽でも育ち方に幅があることは分かります。
冬に伸びが遅いとして、春に一気に最大になるのでしょうか。別の海の調査を見てみましょう。
ひじきの生活史は、一般に、夏に萌出した新芽が秋から伸び始め、春に最大長に達して成熟に至るとされる[4]。だが、和歌山県沿岸の調査(2011年9月〜2012年4月)では、秋から初冬にかけて藻体をほとんど伸ばさず、平伏した姿勢で岩面に貼り付く「ロゼット型」の幼芽で過ごす群落が認められた[4]。ロゼットは、タンポポの葉のように、地面に平たく広がった姿を指す。一方で、すべての群落がこの型とは限らず、秋に伸びる群落もある。
主枝の1日あたりの伸びは、場所と季節によって1mm未満から4mm以上まで差があった[4]。かりに4mmが30日続けば約12cm、1mmなら約3cmである。この計算は上限どうし、下限どうしを比べたもので、実際の芽がそのペースで伸び続けると言っているわけではない。同じ岩場でも、芽の育ち方には幅があるということである。
では、冬のあいだ遅い伸びが、どの時点で春の最大長につながるのか。成長を一年通して追った別の海の調査を見ると、冬の成長についての見方が少し変わる。
瀬戸内海の周防大島の調査では、ひじきの藻体は冬のあいだも成長を続け、群落全体の重さは春に最大になった。平均の長さは6月に最大の57.4cmに達した[5]。この数字は調べた群落の平均値であり、1mほどに伸びた株を採るという宮崎県などの記述とは測る対象が違う。海によって、また平均か大きい株かによって、数字はずれる。
そこで気になるのが、この藻が一度刈られたあとの根元である。
4. かった あとの 根もとから、また 生えるの?
4. 刈り取ったあとの根元から、また芽が出るのか
4. 根元の付着器は何年生きるのか:資料の食いちがい
ひじきを とる ときは、また 生えて くるように、根を のこして かります[2]。
すおうおおしまの しらべでは、あたらしい めは、根のような ぶぶんの ふちから、春の おわりから 夏に 出ました[5]。この ぶぶんは「ふちゃくき」と いいます。
九州などの けんきゅうでは、ふちゃくきは、夏の あつさや、えいようの 少ない 海水に、たねのような ものより 強いと いわれます。1ミリ ほどの かけらが のこっても、あたらしい めを 出せるそうです[6]。
ただ、この 根もとが 何年 生きるかは、しりょうで かきかたが わかれて います。
根を残して刈る
ひじきは、再び生えてくるよう、根を残して刈り取ります[2]。根のように見える部分は、岩にくっつく「付着器」です。
新しい芽は、付着器のふちから出る
周防大島の調査では、新しい芽の多くは、付着器のふちから、春の終わり〜夏に出ました[5]。種のような繁殖体からではなく、付着器から増えるやり方で、ひじきの群落は主に保たれているとされます[5]。九州などの研究では、付着器は夏の高温や栄養の少ない条件に、受精卵からできた幼体より強く、1mmほどの断片が残っても新しい芽を出せると報告されています[6]。
付着器は何年生きるのか
ここで資料が食いちがいます。周防大島の研究は、その場所の付着器も年ごとに枯れる一年生だと報告しました[5]。一方、採取の現場では、根を残せば再び生える、と説明されます[2]。どちらの書き方も、「新芽は付着器から出る」という点では一致しています。何年生きるかは、調べた場所や見方で違う可能性があります。
付着器から増やす方法がこれほど強いのなら、人の手で、種のようなものから苗を育てるのは簡単に思えます。実際はどうだったのでしょうか。
刈り取りでは、再生させるために根を残す[2]。この根に当たるのが、岩に固着する付着器である。周防大島の調査では、新しい個体は主に付着器のふちからの栄養繁殖で加わり、春の終わりに現れて夏に最も多くなった[5]。つまり群落は、受精卵由来の幼体の加入よりも、付着器からの再生で保たれているとされる。
付着器の夏への強さについて、九州などの研究は次のように報告している。付着器は、夏の高温と貧栄養の条件に、繁殖体(受精卵由来の幼体)より高い耐性をもつ。1mm程度の小さな断片が残っても、新しい芽を出すことができる[6]。夏は海藻にとって厳しい季節であり、その季節を乗り切る面では、付着器のほうが分がよいということになる。
ただし、付着器が何年生きるかについては、資料の書き方が一致しない。周防大島の研究は、その場所の付着器も年ごとに枯れる一年生だと報告している[5]。国内の採取に関する資料は、根を残せば再び生えると説明する[2]。両者が矛盾するかは、調査した場所と見方の違いで説明できる可能性もあるため、本稿では「根を残して刈ると再び生えることがある」までを書く。
付着器からの再生がこれほど強いのなら、人が種苗を用意する必要はないようにも思える。ところが、各地では人工の苗づくりが試みられてきた。そこでは、何が起きているのか。
5. 11万3千この もとから、なえは いくつ できた?
5. 11万3千個の受精卵から、苗は何株できたのか
5. 約113,000個の幼胚から、苗は何株できたのか
かがわけんの 海の しけんじょうでは、人の 手で ひじきの なえを つくる ためしを しました[7]。6月に、おやの ひじきから、小さな 小さな もとを やく11万3千こ とりました。大きさは 0.2ミリ ぐらいです。
1しゅうかん たつと、ほとんどが めに なりました。1か月ごには、1.5〜2ミリに そだちました[7]。ここまでは じゅんちょうでした。
ところが 夏から 秋の はじめに、ほかの 海そうが ふえて、ひじきが 光を うけにくく なった ことが 大きいと 考えられて います。1年ほど そだてて、なえに なったのは 35かぶだけでした[7]。
11万3千こに 対して 35。わりざんすると、やく3200こに 1つの わりあいです。
なぜ、そこまでして なえを つくろうと するのでしょう。
最初は順調だった
香川県水産試験場の試験では、6月に母藻から約113,000個の受精卵(幼胚、約200マイクロメートル=0.2mm)を得ました[7]。1週間後にはほとんどが発芽体(約0.35〜0.4mm)になり、約1か月後には1.5〜2mmの初期葉まで育ちました[7]。
夏から初秋に、ほかの藻が増えた
ところが夏から初秋にかけて、珪藻などほかの藻類が増え、ひじきの光合成が妨げられたことが主な原因と考えられています。約1年の培養で苗になったのは35株だけでした[7]。
35を113,000で割ると約0.03%、およそ3,200個に1つです。ただしこれは1つの試験の結果で、人工の苗づくりが不可能という意味ではありません。他県では量産に成功した例もあると、同じ報告は述べています[7]。
それでも苗を作る理由
天然の種苗は、付着器ごと採られることが多く、天然の資源への影響が心配されています。そのため、安定して苗を確保しようと、人工の種苗づくりに取り組む自治体が増えています[7]。
では、これまでの話を、家の台所でどう確かめられるでしょうか。
香川県水産試験場の試験では、6月に母藻から約113,000個の幼胚(体長約200マイクロメートル=0.2mm)を得た。1週間後にはほとんどが発芽体(約350〜400マイクロメートル)に育ち、約1か月後には第一次初期葉(1.5〜2mm)までに成長した[7]。ここまでは順調だった。
転機は夏から初秋である。珪藻などほかの藻類が増え、ひじきの光合成を妨げたことが主な原因と考えられ、約1年の培養で苗として得られたのは35株だった[7]。35を113,000で割ると約0.031%、およそ3,200個に1つである。ただしこれは1つの試験の結果であり、人工採苗が不可能という意味ではない。同じ報告は、他県で量産に成功した例があることも述べている[7]。
それでも各地が取り組むのは、天然の種苗が付着器ごと採取されるケースが多く、天然資源への影響が懸念されるからである。そのため、養殖用種苗の安定確保をめざして、人工種苗の生産試験に取り組む自治体が増えている[7]。ここで重要なのは、前の章の付着器の強さと、この章の難しさが同じ問題の表裏だという点だ。夏を越える力が強い付着器が、天然では群落を支えている一方、受精卵から育てる苗は、夏にほかの藻類が増えて光合成を妨げたことが主な原因と考えられるかたちで、思うように育たなかった。
ここまでの話は、海に行かなくても、手もとのひじきで確かめられる部分がある。
6. 台所の ひじきで、海の すがたを さがそう
6. 乾燥ひじきの袋から、海での姿を探す
6. 乾燥ひじきを手がかりに、海での姿をたどり直す
おうちに ひじきの ふくろが あったら、見て みましょう。「長ひじき」や「めひじき」と 書いて ありませんか。
長ひじきは、くきのような ぶぶんです。めひじきは、葉や、ういている ぶくろのような ぶぶん(きほう)を 使った ものを いいます[1]。ただし、よびかたは 地いきで ちがう こともあります。
水に つけて もどすと、どんな かたちに なるでしょう。くきのような ところや、葉のような ところを、さがして みましょう。水は かならず 大人と いっしょに あつかってください。
長ひじきと芽ひじき
売り場では、ひじきの茎(主枝)の部分を「長ひじき」、葉や気胞(浮き袋のような部分)を使ったものを「芽ひじき」と分けることが多いとされます[1]。宮崎県の資料のように、早春の若い藻体を「めひじき」と呼ぶ説明もあり、呼び方は地域で違います。
水でもどして、海の姿を想像する
乾燥ひじきを水でもどして、茎のようなところ、葉のようなところ、小さな丸いふくらみを探してみてください。それが海ではどんな向きで水の中にあったのか、想像してみるのも一つの調べ方です。水を使うときは、大人といっしょに行いましょう。
出典欄の宮崎県・香川県・和歌山県の資料は、県のサイトで読めます。海のどこで、いつ、どう育つかを、さらに詳しく知りたいときの入り口になります。
家にある乾燥ひじきの袋は、海での姿をたどり直す手がかりになる。製品では、主枝(茎のような部分)を「長ひじき」、葉や気胞(浮き袋のような部分)を「芽ひじき」として分けることが多い[1]。ただし、宮崎県の資料のように、早春の若い藻体を「めひじき」と呼ぶ説明もあり、呼び方は地域で違う。袋の表示を読み、水でもどして、茎・葉・丸いふくらみのどれが多いかを見てみるとよい。水を使うときは、大人といっしょに行うこと。
国内の流通の面では、国内のひじきの生産量は、1997〜2006年に生重量でおよそ6,000〜8,000tであり、国内で流通するもののうち国産は3割に満たないとされる[7]。これは2006年までの数字で、今の割合ではない。袋の産地の表示は、今の状況を知る手がかりになる。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文は、ここにある資料の内容を、自分の言葉で言いかえたものです。数字や呼び方は、調べた場所や年によって変わります。
- 宮崎県 水産物紹介(ひじき) https://hinatamafin.pref.miyazaki.lg.jp/material/files/group/13/000085061.pdf (生える場所、採取の時期、長ひじき・芽ひじき)
- nippon.com にっぽん食べ物図鑑(ひじき) https://www.nippon.com/ja/japan-topics/c15307/ (分布、旬、色の変化、根を残す刈り取り。二次資料)
- 徳島県 農林水産総合技術支援センター 研究報告(ヒジキ加工食品の衛生検査) https://www.pref.tokushima.lg.jp/file/attachment/179913.pdf (海部郡沿岸の群落と春の採取)
- 和歌山県水産試験場 成果情報「和歌山県沿岸におけるヒジキの生長特性」(平成24年度) https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/070100/070109/kanko/h24joho_d/fil/h24seikajoho_24.pdf (生活史、ロゼット型、伸びの幅)
- Seasonal population dynamics of Sargassum fusiforme, Suo-Oshima Is. (PMC) https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5346146/ (周防大島の成長と新芽。要旨での確認)
- Vegetative Reproduction Is More Advantageous Than Sexual Reproduction in a Canopy-Forming Clonal Macroalga (PMC) https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8400385/ (付着器の夏への強さ。要旨での確認)
- 香川県水産試験場研究報告 第22号(2023)本田「ヒジキの人工種苗生産試験」 https://www.pref.kagawa.lg.jp/documents/43752/3hiziki.pdf (人工の苗づくり、分布、生産量)
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