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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

うまの 胃いは ちいさいのに、くさを どうやって こなすの?

ウマの胃は小さい。草をこなすのは、体の後ろの大きな部屋

ウマの後腸発酵 ── 盲腸・大結腸の微生物、通過速度という作戦、子ウマの糞食

分野:生きもの

うまは、おおきな からだで、くさを たくさん たべます。ところが、胃いは、おなかの なかの ほんの すこししか ありません。

ちいさな 胃いで、どうして くさを こなせるのでしょう。こたえは、からだの うしろの ほうに ある、おおきな へやに ありました。ちからの もとの 70パーセントぐらいを、そこから えるという しりょうも あります(たべもので かわります)。うしとは ちがう やりかたも わかります。

ウマは大きな体で草をたくさん食べます。ところが、食べ物を受けとる胃は、消化管全体の1割に満たないとされています[3]。

胃が小さいのに、どうして草を栄養にできるのでしょうか。カギは、消化管の後ろ側にある大きな部屋と、そこにすむ微生物にあります。エネルギーの約70%を、そこから得るとする資料もあるほどです。ウシとはちがう作戦を取っていることと、子ウマがその微生物をどうやって手に入れるのかが分かります。

ウマの胃は、消化管全体の容積の10%未満とされる[3]。一方、盲腸と大結腸を合わせると約60%を占める[2]。草食動物なのに、胃が小さく、腸の後ろ側が大きいのである。しかも、エネルギーの約70%をこの後ろ側の発酵から得るとする資料もある[3]。

なぜ、この配分で草を栄養にできるのか。ウシのような前胃発酵とは何がちがうのか。子ウマは、草を分解する微生物をどこから受けとるのか。大学・学会の資料から、後腸発酵の強みと限界、ウマがとる「量で補う」作戦が分かる。

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1. くさを たべる どうぶつなのに、胃いが ちいさいの?

1. 草を食べる動物なのに、胃が小さい

1. ウマの胃は小さい ── 容量と、食べ物の送り方

うまは、ながい あいだ、くさを もぐもぐ たべて います。だから、胃いも おおきいと おもいませんか。

じつは、うまの 胃いに はいるのは、8〜15リットルぐらい。バケツに 1リットルずつ いれて、8ばい〜15はいです[1]。おおきな からだの わりに、ちいさな 胃いです。

はいった たべものは、はやめに さきへ おくられます。では、さきの ほうでは、なにが おきて いるのでしょう。

ウマの胃に一度に入る食べ物は、約2〜4ガロンとされます[1]。1ガロンを約3.8リットルとして計算すると、約8〜15リットルです。1リットルのペットボトルで言えば、8〜15本ぶんにあたります。

大きな体のわりに、小さな胃です。しかも、入った食べ物は、速やかに小腸へと送られていきます。ちなみに、ウマは食べ物を吐きもどせません。胃の入口の筋肉が強い一方通行の弁になっていて、食道の筋肉も逆向きには動かないためと説明されています[1]。

食べ物は、前へ前へと進む一方です。では、その先で、草はどう扱われるのでしょうか。

ウマの胃は成馬で消化管容量の10%未満とされ[3]、一度に入る内容物は約2〜4ガロン、米国ガロン(約3.8L)で換算すると約8〜15Lである[1]。体の大きさに比べて小さく、内容物は速やかに小腸へ送られる。

吐きもどしができないことも、この設計と関係がある。胃の入口の噴門括約筋が強い一方通行の弁として働き、食道の筋肉も逆向きには動かないため、と説明される[1]。食べ物は、戻ることなく先へ進む。

では、胃が小さくて、繊維の多い草をどうこなすのか。答えは、胃の先の消化管の配分にある。

2. たべた くさは、どこで わけられるの?

2. 食べた草の成分は、どこで消化されるのか

2. 小腸と後腸の役割分担 ── 繊維はどこで扱われるか

くさの なかには、すぐに からだの ちからに なる ぶぶんと、なかなか こなれない ぶぶんが あります。この ふたつは、べつの ばしょで あつかわれます。

すぐに こなれる あぶらや たんぱくしつ、あまい ものは、ちいさな ちょうの なかで すいとられます[1]。

かたくて こなれにくい 繊維せんいは、そのまま おくへ すすみます。その さきに、うまの ひみつの へやが あります。

草には、すぐに消化できる部分と、なかなか消化できない部分が混ざっています。ウマの体は、この二つを別々の場所で扱います。

脂質、たんぱく質、単糖、ビタミン、ミネラルの大部分は、小腸で消化されて吸収されます[1]。ここまでは、人の体の仕組みとよく似た流れです。

ところが、草の硬い繊維は小腸では消化できません。繊維を受けもつのは、その先にある盲腸と大結腸で、ここがウマの消化管の大部分を占めています。

ウマの消化管は、二段に役割が分かれる。脂質・たんぱく質・単糖・ビタミン・ミネラルの大部分は、胃と小腸で消化吸収される[1]。ここまでは、ヒトなどと共通する酵素による消化である。

ところが、繊維は小腸では処理されず、盲腸と大結腸に送られて微生物に扱われる。この2つを合わせた容積は、消化管全体(約210L)の60%以上とされる[2]。別資料も約60%としており[3]、おおよその値は資料間で近い。ただし、資料によって約50〜65%と幅があるため、60%は目安として読むのがよい。

胃より後ろにこれだけの容積があるのは、何のためか。そこにすむ微生物が、繊維を分解するからである。

では、その部屋では、微生物は実際に何をしているのか。

3. うしろの へやに すむ、みえない なかまたちは なにを しているの?

3. 大きな部屋にすむ、見えない住人の仕事

3. 盲腸・大結腸の微生物 ── 揮発性脂肪酸と、えさの与え方

うまの うしろの おおきな へやには、微生物びせいぶつが たくさん すんで います。ばいきんの なかまや、こうぼの なかまなど、いろいろです[1]。

この 微生物びせいぶつが、かたい 繊維せんいを こなして、あぶらの なかまの えきたいを つくります。うまは、それを すいとって、ちからの もとに します[3]。

ちからの もとの 70パーセントぐらいを、ここから えるという しりょうも あります。ただし、たべものの しゅるいで かわります。

この なかまたちは、うまが くさを たべないでいると、へって しまいます。8じかん いじょう たべないと、だいぶ へるそうです[1]。

盲腸と大結腸には、細菌、酵母、原生動物などの微生物が、高い密度ですんでいます[1]。ウマは、この微生物に繊維の分解を任せているのです。

微生物は酸素のない環境で繊維を発酵させ、揮発性脂肪酸という物質を作ります。ウマはこれを腸から吸収して、エネルギーにします。エネルギーの約70%をここから得るとする資料があります[3]。ただし、この値は食事の内容で変わり、他の資料では「30%以上」という書き方もあります。

この微生物は、ウマが食べ続けることで支えられています。粗飼料を8時間以上与えないと、数が大きく減りうると説明されています[1]。ウマがこまめに草を食べ続ける姿には、住人を守るという意味もありそうです。

盲腸と大結腸には、細菌・酵母(真菌)・原生動物が高密度にすむ[1]。彼らは酸素のない環境で繊維を発酵させ、揮発性脂肪酸(VFA)を作る。ウマはこれを吸収してエネルギー源にし、エネルギーの約70%をVFAから得るとする資料がある[3]。この値は飼料の内容により変わる(他資料では30%以上とする記述もある)。

この微生物群は、食べ物が途切れると維持できなくなる。粗飼料を8時間以上与えない場合、数が大きく減りうるとされる[1]。ただし、減る量は固定値ではない。

小さな胃と、大きな後ろの部屋という組み合わせは、同じく草を食べるウシと何がちがうのか。

4. うしと、なにが ちがうの? じかんか、りょうか

4. ウシとのちがい ── 時間をかけるか、量で補うか

4. 前胃発酵との比較 ── 通過速度と摂食量の戦略

うしも くさを たべますが、やりかたは ちがいます。うしは、いちばん おおきな 胃いが、からだの なかの 80パーセントぐらいを しめて います[2]。微生物びせいぶつの へやが、まえの ほうに あるのです。

うしは、くさを ゆっくり ときを かけて こなします。そのかわり、いちどに たべられる りょうが、かぎられます。

うまは、ぎゃくです。くさを はやく たくさん とおして、こなれやすい ところだけを すくい とります[4]。とる ちからは すこし すくなく なりますが、たくさん たべて おぎないます。

どちらが えらい、ではありません。くらしかたに あった、ちがう さくせんです。

ウシは、胃の最初の部屋(第一胃)が消化管全体の約80%(約360リットルのうち)を占めます[2]。発酵する部屋が、食べ物の通り道の前側にあるのです。ウマの盲腸と大結腸は、通り道の後ろ側です。

この位置のちがいが、作戦のちがいになります。ウシは、食べ物を胃の中にとどめて時間をかけ、じっくり発酵させます。その代わり、1日に食べられる量に限りが出ます。

ウマは、食べ物を速く大量に通し、質の悪い粗飼料でも分解しやすい部分をすくいとる方式です[4]。同じ量の草から取り出せるエネルギーの効率は、ウシより低くなりますが、食べる量でおぎなえます。「ウマの消化はウシより劣る」とは単純には言えず、違う方向の作戦と考えるほうが近いようです。

ウマの方式には、ほかにも限界があります。後ろの部屋では、微生物が作った菌体のたんぱく質やビタミンの利益を十分には受けとれないとされます[2]。ウシは、第一胃の後ろの消化管で、微生物そのものを消化できます。

ウシは第一胃が全容量(約360L)の約80%を占める前胃発酵動物で、発酵の場が消化管の前側にある[2]。通過速度を抑えて時間をかけて発酵させるが、その分、1日に食べられる量が制限される。

ウマなどの後腸発酵動物は、逆に高い通過速度で内容物を流し、質の悪い粗飼料の中でも分解されやすい部分をすくいとる(cream off)戦略をとる[4]。エネルギーを取り出す効率はウシより低くなるが、量で補う設計である。「ウマの消化はウシより劣る」と単純化するのは適切でなく、ちがう条件に適応した別の解と読むべきである。

限界もある。ウマは後腸で微生物が作る菌体たんぱく質やビタミンの利益を十分には受けられないとされ、ウシは第一胃の後ろの消化管で菌体そのものを消化できる[2]。ここでは「全く利用できない」ではなく「十分には」という資料の書き方に合わせる。

では、こんなに微生物に頼る動物は、生まれたばかりのとき、その微生物をどこで手に入れるのか。

5. あかちゃんの うまは、なかまを どこで もらうの?

5. 子ウマは、微生物をどこで手に入れるのか

5. 子ウマの糞食 ── 腸内の微生物はどう立ち上がるか

あかちゃんの うまは、おなかの なかに、くさを こなす なかまが、まだ いないはずです。では、どう するのでしょう。

うまれて 5にちぐらいから 2かげつの あいだ、こうまが おかあさんの ふんを たべる ことが あります[5]。ふつうの こと だそうです。

おかあさんの ふんには、くさを こなす なかまが まじって います。それを たべて、おなかに うけとって いるのでは、と かんがえられて います。

ただし、たいせつな りゆうが これだけ なのかは、まだ はっきり していません。

生まれたばかりの子ウマの腸には、草を分解する微生物がまだそろっていません。その微生物は、どこから来るのでしょうか。

生後約5日〜2か月の子ウマが、ふんを食べることは、正常な行動とされています[5]。これは、母ウマのふんを食べて、腸に菌を入れるためではないかと推測されています。栄養をとるためとは、特定されていません。

ケンタッキー大学の解説記事は、子ウマがふんを食べることと、繊維を分解する菌が腸に定着することの間に、強い相関が見つかった研究を紹介しています[6]。相関は、ふんを食べたから菌が定着したという因果の証明ではありませんが、腸内の生態系を立ち上げる方法の一つと考えられています。

子ウマがふんを食べることと、繊維を分解する菌の定着には、関係があるようです。

子ウマは、生後約5日〜2か月の間に糞を食べる。これは正常な行動とされ、母ウマの糞を食べて腸に菌を取り込むためと推測されている。栄養目的は特定されていない[5]。

ケンタッキー大学の解説記事は、子ウマの糞食と、消化管での繊維分解菌の定着に強い相関が見つかった研究を紹介している[6]。ただし、相関は因果の証明ではない。研究の細かい条件は、この解説記事には書かれていない。

胃が小さく、後ろの大きな部屋の微生物に繊維を任せる設計は、その微生物を受けつぐ行動とセットで見ると、ウマの暮らしの全体像に近づく。ただし、糞食が「必須」とまでは、資料は述べていない。

6. じぶんでも しらべて みたく なったら

6. 自分でも調べてみたくなったら

6. 自分でも調べてみたくなったら

きょう できること:うまの 胃いに いちどに はいる たべものは 8〜15リットルぐらい。1リットルの ぎゅうにゅうパックか ペットボトルを 8〜15ほん ならべて、その りょうを 見て みましょう。からだの おおきさと くらべて、ちいさいかな、と かんがえて みます。

でかけて できること:ぼくじょうや どうぶつえんで、うまが くさを たべる ようすを 見て みましょう。たべる あいだ、ながく もぐもぐ して いるか、ゆっくり 見て みます。うまには ちかづきすぎず、かかりの ひとの いう ことを まもります。

しらべて みよう:うまの しごとぶりを、ぼくじょうの ひとに きいて みるのも いいですね。

今日できること:ウマの胃に一度に入る食べ物の量(約8〜15リットル)を、1リットルの牛乳パックやペットボトルを8〜15本並べて見てみましょう。その大きさと、ウマの体を比べて、どう感じるか考えてみます。

出かけてできること:牧場や動物園でウマが草を食べているところを見て、どれくらい食べ続けているのかを観察してみましょう。ウマには近づきすぎず、係の人の指示を守ります。

調べるなら:図書館や日本語のウマの解説で、胃と腸の大きさの比べ方を探してみましょう。後腸発酵の数値は資料によって幅があるので、数字を見かけたら、何を根拠にした数字かを確かめてみると、さらに深められます。

今日できること:ウマの胃に一度に入る食べ物の量(約8〜15L)を、1Lのペットボトルや牛乳パックを8〜15本並べて実感してみる。消化管全体の約60%を占める盲腸・大結腸は、同じ比率で計算すると約126L以上(約210Lの60%)になる。

出かけてできること:牧場や動物園で、ウマの採食行動(食べる頻度・一度に食べる時間)を観察する。記録をとれば、資料の「粗飼料を8時間以上与えない」という前提と比べられる。近づきすぎない、係員の指示に従う。

資料を読むなら:まずは日本語で、JRA(日本中央競馬会)や畜産系大学の解説を探すとよい。二次資料の数値(胃の10%未満、約70%)は、一次資料に当たると確かめられる。日本語の解説で数値を比べ、資料ごとの幅を自分で確かめてみよう。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

数値(容積の割合、エネルギーの割合)は、資料によって幅があります。ここでは、資料ごとに書かれた値を目安として紹介しました。

  1. University of Maryland Extension, Teaching Basic Equine Nutrition Part II: Equine digestive anatomy and physiology. https://www.extension.umd.edu/resource/teaching-basic-equine-nutrition-part-ii-equine-digestive-anatomy-and-physiology (胃の容量、小腸の役割、微生物、吐けないしくみ)
  2. University of Wisconsin, Dairy Nutrient Management: Strategies of Digestion. https://kb.wisc.edu/dairynutrient/414RN/page.php?id=55809 (ウマとウシの消化管の容積、菌体たんぱく質の利用)
  3. MadBarn, Hindgut fermentation in horses. https://madbarn.com/hindgut-fermentation-in-horses/ (二次資料。容積の割合、揮発性脂肪酸からのエネルギーの割合)
  4. McLean et al., Voluntary intake, digestibility and rate of passage of a hay and a silage fed to horses and to cattle, Proceedings of the British Society of Animal Science, 1995. Cambridge Core (ウマの通過速度という作戦)
  5. TheHorse.com, Unusual Eating Behaviors in Horses Explained. https://thehorse.com/116279/unusual-eating-behaviors-in-horses-explained/ (二次資料。子ウマの糞食の時期)
  6. University of Kentucky Equine Programs, Coprophagy and gut microbiome of foals. https://equine.mgcafe.uky.edu/essential-ecosystem-within-unraveling-coprophagy-and-gut-microbiome-foals (糞食と繊維分解菌の定着の相関)

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