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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

おなじ 山の ハチドリでも、よるに からだを ひやす ふかさが ちがうのは どうして?

同じ山の同じ夜、体温を8℃前後に保つ種と気温に従う種 ── 休眠の深さは何で変わるのか

休眠の深さを決めるのは何か ── ハチドリの「守る体温」、系統、体の大きさ、そして休眠の長さ

分野:生きもの

ペルーの 高い 山の 夜に、ハチドリを しらべた 研究が あります。おなじ 山、おなじ 夜なのに、体の おんどを 8℃ぐらいで とめる ハチドリと、まわりの きおんに あわせて どんどん さがる ハチドリが いました[1]。

さらに ふしぎな ことが あります。高い 山と あたたかい ところでは、体の おんどが 20℃ぐらい ちがうのに、ひとばんで へる 体の おもさは にていました[1]。ふかく ひやす ほうが とくなのでは ないのでしょうか。この きじを よむと、ひやす ふかさを きめる ものと、せつやくの ほんとうの かぎが 長さに あるらしい ことが わかります。

ペルーのアンデス、標高およそ3,800mの夜。同じ山で調べた6種のハチドリのうち、体温を8℃前後で止めているようにみえる種と、気温にそのまま従って5℃ほどまで下がる種がいました[1]。

さらに、高地と低地では、休眠中の体温も気温も約20℃ちがうのに、一晩で節約できるエネルギーは似た大きさでした(著者らの比較です)[1]。深く冷やしたほうが得なはずなのに、なぜでしょうか。この記事を読むと、休眠の深さを左右するもの(体温の守り方、種と系統、体の大きさと気温)と、一晩の節約には深さより休眠の長さが関係するようだということが分かります。

2020年のペルー・アンデス(標高約3,800 m)の測定では、同じ夜に体温を約8℃で守るようにみえる種と、気温に追随して下がる種が並んで見つかった。さらに、同じ論文は、ブラジルの低地の鳥と比べて、休眠中の体温も気温も約20℃ちがうのに、一晩のエネルギー節約が似ていたと述べる[1]。

寒いほど深く冷やして得をするなら、なぜ節約が同じになるのか。深さのちがいは、気温だけで決まるのか、種や系統が決めるのか。この記事を読むと、複数の研究の数字から、深さを左右する4つの要因と、「深さより長さ」という見方の根拠、そして今の資料では断定できない部分が分かる。

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1. おなじ 山の おなじ 夜に、ちがう ふかさが ある?

1. 同じ山の同じ夜に、ちがう冷やし方が並んでいた

1. 同じ夜の同じ山で、体温の「止め方」がちがう種がいた

ペルーの 標高ひょうこう 3,800メートルの 山で、研究する 人たちが 6しゅるいの ハチドリを しらべました。夜の きおんは 2.4℃から 5.9℃ぐらい。とても さむい 夜です[1]。

しらべると、しゅるいに よって、ひやし かたが ちがいました。ある しゅるいは、きおんが さがっても、体の おんどを 8℃ぐらいで とめて いる ように みえました。べつの しゅるいは、きおんに あわせて、ずっと さがり つづけました。まわりと 体の おんどの ちがいは、へいきんで 1℃も ありません[1]。

たとえば、へやの だんぼうを 思いうかべて ください。「ここまでは さげない」と おんどを きめて ある へやは、そとが さむく なっても、ほぼ 同じ おんどに なります。だんぼうを きって ある へやは、そとの さむさに ついて いきます。ただし ほんとうは、鳥の 体に ボタンが ある わけでは ありません。「8℃で とめて いる ように みえる」という、研究する 人の 見かたです。

では、あたたかい ところの ハチドリは、どうでしょう。つぎの しょうで みて みます。

ペルーのアンデス、標高およそ3,800mで、研究者たちは6種26羽のハチドリの夜の体温を測りました。夜の気温は2.4〜5.9℃でした。調べた6種はすべて、深い休眠(トーパー)に入りました[1]。ところが、その深さの「決まり方」は種によってちがいました。

Colibri coruscans という種は、気温が下がっても、約8℃の体温を守っているようにみえました。一方、Metallura phoebe(クロテリオハチドリ)は、調べた気温の全範囲で気温に合わせて下がり、体温と気温の差は平均0.87℃しかありませんでした。体温を守る設定値がない、とみられる唯一の種です。平均の最低体温は5.13℃でした[1]。

部屋の暖房にたとえると、前者は「設定温度つき」、後者は「暖房を切った部屋」です。設定温度つきの部屋は、外が寒くなっても室温がある温度で止まります。切った部屋は、外気に引きずられて下がります。ただし本当は、鳥の体にスイッチがあるわけではありません。「appeared to(〜のようにみえる)」という、著者らの控えめな推定です。

同じ山の同じ夜なのに、なぜ止め方がちがうのでしょうか。まず、気温の高い低地ではどうなっているのかを見てみます。

Wolf らは、ペルー・アンデスの標高約3,800 mで、6種26羽の夜間体温を測った。夜の気温は2.4〜5.9℃で、全種が深い休眠を使った。注目すべきは、同じ山で同じ夜に、体温の「止め方」が種ごとにちがったことだ[1]。

Colibri coruscans は、約8℃の設定値を守っているようにみえた。それに対し Metallura phoebe(クロテリオハチドリ)は、気温の全範囲で体温が気温に従って下がり(体温−気温の差は平均0.87℃)、守る設定値の兆候がない唯一の種だった。平均の最低体温は5.13℃である[1]。

ここで注意が要る。C. coruscans の「守る」は appeared to という推定にとどまり、断定ではない。しかも、いちばん低い3.26℃は M. phoebe の1羽の最低値で、26羽の全個体が下がったわけではない[1]。それでも、同じ気温の夜に「止める鳥」と「従う鳥」が並ぶなら、深さは気温だけでは決まらない。

では、気温が高い低地では、体温の止め方はどうなっているのか。次に、ブラジルの測定を見る。

2. あたたかい ところの ハチドリは、どこで とめるの?

2. 低地のハチドリは12〜20℃で止め、さらに冷えると熱を作る

2. 低地では12〜20℃で止める ── 冷えすぎれば熱を作って守る

ブラジルの 南東の、標高ひょうこう 700メートルぐらいの ところで、ハチドリが しらべられました。ねったいの ハチドリは、夜の 休眠きゅうみん中に、体の おんどを 12℃から 20℃の あいだで まもる ことが あります[2]。アンデスの 5℃より、ずっと あたたかい ままです。

もっと ふしぎな ことが あります。きおんが さらに さがると、ハチドリは 体を ふるわせて、ねつを つくり、その おんどを まもりました[2]。ねて いる のに、ひやしすぎない ように、がんばって いる のです。

これは ブラジルの 研究で わかった ことです。あたたかい ところの ハチドリ ぜんぶが 12℃から 20℃で とまる わけでは ありません。

さむい 山の ハチドリと、あたたかい ところの ハチドリでは、「とめる おんど」が ちがう ようです。それは 山が さむいから だけ なのでしょうか。つぎに、ハチドリの しゅるいの ちがいを みます。

ブラジル南東部(エスピリトサント州、標高約700m)では、8種のハチドリが調べられました。総説によると、これらの種は夜の休眠中、12〜20℃の体温を「守って」いました。気温がそれより下がると、体は熱を作って、その体温を保ちます[2]。

体を守る熱の出し方も、ふしぎです。休眠に入るときの代謝の下がり方は、体温が下がることで受け身に起こる低下で説明でき、少なくとも調べた種では、代謝を能動的に抑える必要はない、と考えられています[2]。つまり、冷えるのは「下げる」というより「熱を作るのをやめる」結果で、守る体温に近づくと、今度は熱を作って止めます。

これは、標高約700mで調べた8種の結果です。熱帯の低地のハチドリがすべて12〜20℃で止まる、という意味ではありません。パナマの低地では、6種37羽がすべて休眠を使い、気温28℃以上でも休眠に入った、という別の研究もあります[3]。

同じ「守る体温」でも、アンデスの約8℃と、ブラジルの12〜20℃では差があります。これは標高のちがいだけなのでしょうか。それとも、ハチドリの種のちがいもあるのでしょうか。

低地ではどうか。Bech らの総説は、ブラジル南東部(エスピリトサント州、標高約700 m)の8種が、夜の休眠で12〜20℃の体温を「守る」と述べる。さらに気温がそれより下がると、体は熱を作り、守る体温を維持する[2]。つまり、休眠の最中にも体温調節は働いている。

休眠への入り方にも特徴がある。休眠に入るときの代謝の低下は、体温が下がることによる受け身の効果(Q10効果)で説明でき、調べた種では能動的な代謝の抑制は必要ないと考えられている[2]。冷えるのは、熱を作るのをやめた結果で、守る体温に近づくと、今度は熱を作って止める。それなら、止める位置こそが深さを決める。

ただし、この12〜20℃は標高約700 mの8種の結果で、熱帯の低地のすべてのハチドリに当てはまるわけではない。パナマの低地では、6種37羽がすべて休眠を使い、気温28℃以上でも入った[3]。暖かい場所でも休眠は広く使われているが、深さの数字は要旨だけでは分からない。

アンデスの約8℃(推定)とブラジルの12〜20℃を、標高のちがいだけの結果と考えてよいのか。種や系統のちがいは、どう効いているのか。次に、同じ山の種どうしの比較に戻る。

3. ちがいを きめて いるのは、山? それとも 鳥の しゅるい?

3. 山のちがいか、種のちがいか ── 親戚が似ているという手がかり

3. 場所か系統か ── 最低体温に系統の影響がみられる

おなじ 山の おなじ 夜でも、ハチドリの しゅるいに よって、ひえかたが ちがいました。もし 山の さむさだけが きめて いるなら、ぜんぶ おなじ ように ひえる はずです[1]。

研究した 人たちは、「しんかで うけつがれた、しゅるいごとの ちがいが きいて いる」と かんがえました。しんかで うけつがれた とは、むかしの 親せきから、ひきついだ という ことです[1]。

とくに、コケットと よばれる なかまの ハチドリは、体の おんどが ひくく、ねむりが 長い ことが 多かった ようです[1]。

ただし、おなじ しゅるいの ハチドリを、高い 山と ひくい ところで くらべた じっけんでは ありません。「山だけ」「しゅるいだけ」と いいきる ことは できません。

もし山の寒さだけが体温を決めているなら、同じ山の同じ夜に、種のちがいは出ないはずです。ところが、最低体温は種によってちがいました。Wolf らは、この種のちがいに、進化でたどる系統(親戚関係)の影響が有意にあるとみました。最低体温の Pagel's λ(系統の影響の強さを表す値)は0.620です[1]。

とくに、コケット(coquette)と呼ばれる系統の3種(Oreotrochilus melanogaster、Polyonymus caroli、Metallura phoebe)は、体温が低く、休眠が長い傾向がありました[1]。著者らの結論は「深い休眠はアンデスの高地のハチドリでふつうに使われるが、進化で受けつがれた種のちがいが、その深さに効く」というものです。

ほかの記録もあります。Oreotrochilus estella では、約6.5℃(1羽は5.0℃)が以前から報告されていました。O. melanogaster と M. phoebe は、ハチドリでこれまでの最低とされます。鳥の休眠中の体温は、ふつう寒い夜の気温に近づきます[1]。

注意点は、これが同じ種を高地と低地で比べた実験ではないことです。標高の効果と系統の効果を、きれいに切りはなすことはできません。「標高だけで決まる」とも「進化だけで決まる」とも言えません。

では、同じ種の中で、体の大きさや気温の影響はどうなのでしょう。次の章で見てみます。

標高だけが原因なら、同じ山の同じ夜に、種ごとの差は出ないはずだ。ところが最低体温は種でちがい、系統の影響が有意だった(最低体温の Pagel's λ = 0.620)。λは0〜1の値で、1に近いほど、親戚どうしが似る傾向が強い[1]。

具体的には、coquette 系統(Oreotrochilus melanogaster、Polyonymus caroli、Metallura phoebe)で体温が低く、休眠が長い傾向があった。著者らは、深い休眠はアンデス高地のハチドリでふつうだが、進化で受けつがれた種のちがいが深さに効く、と結論した[1]。以前の記録にも一致する。Oreotrochilus estella では、約6.5℃(1羽は5.0℃)が報告されていた[1]。

とはいえ、λが示すのは「種のちがいに系統の影響がある」ことで、「系統が全部を決める」ことではない。しかも、同じ種を高地と低地で比べた実験ではないので、標高の効果と系統の効果を切り分けることはできない。「標高だけ」「進化だけ」と書けないのは、そのためだ。

ここまでで、深さには「守る体温(設定値)」「系統」が効くことが見えた。残るのは、体の大きさと気温の条件だ。

4. 体が 小さい ほど、ふかく ひやすの?

4. 体が小さい鳥ほど、寒いときに長く、深く冷やす

4. 体の大きさと気温 ── 条件がそろったときだけ効く

パナマの あたたかい 場所で、6しゅるい 37わの ハチドリを しらべた 研究が あります。ぜんぶの ハチドリが、トーパーに 入りました。きおんが 28℃より 高くても 入った ことが ありました[3]。

体の おもさが かるい ハチドリほど、ふかく、長く ひやす ようでした。1円玉が 1グラムです[3]。

もう 1つ、コロンビアの 山で 29しゅるい 249わを しらべた 研究が あります。小さい 鳥は トーパーを つかいやすい けれど、それは きおんが ひくい ときだけでした。そのとき、ねむりも 長く なりました[4]。

つまり、小さければ いつも ふかく ひやす わけでは ありません。体の 大きさと さむさが 合わさった ときに、ひやす 時間が 長く なる ようです。

パナマの低地で、6種37羽が調べられました。すべての種が休眠を使い、気温28℃以上でも休眠に入りました。体重は深さと長さの最良の予測因子で、小さい個体ほど深く、長く休眠しました[3]。

ただし、小ささだけでは決まりません。コロンビア西アンデスの、標高差1,920mにわたる29種249羽の調査では、小さい鳥は大きい鳥より休眠を使いやすいものの、それは気温が低いときだけで、そのとき休眠が長くなりました[4]。使い方は、体の状態と系統でも変わるという結論です。

体重の小さい鳥ほど、同じ気温でも体温を保つ出費が大きくなりやすいので、休眠で得する量も大きくなるのでしょう。ただし、この因果は資料が直接述べるものではなく、私たちの推測です。

体の大きさ、気温、系統。これらがからみあうと、休眠の深さを1つの原因で説明するのはむずかしくなります。それでも、冷やす深さの背景にある「ねらい」が見えてきます。節約の本当の主役は、深さなのでしょうか。

パナマの低地では、6種37羽がすべて休眠を使い、気温28℃以上でも入った。体重は深さと長さの最良の予測因子で、小さい個体ほど深く、長く休眠した[3]。体が小さいほど、体温を保つ出費が相対的に大きいので、休眠による節約の価値も大きいと考えられる(資料が直接述べるのではなく、この記事の推測である)。

ところが、小ささがいつでも効くわけではない。コロンビア西アンデスの標高差1,920 mに沿った29種249羽の調査では、小さな鳥は大きな鳥より休眠を使いやすかったが、それは低い気温のときだけで、そのとき休眠は長くなった。休眠の深さと使い方は、体の状態と系統でも変わる、というのが著者らの結論だ[4]。体の大きさは、条件つきの要因である。

これまでに、守る体温の位置、系統、体の大きさと気温が、深さを左右することが分かった。では、深く冷やしたほうが得ではないのか。その疑問に、最初の問題が戻ってくる。

5. ふかく ひやす ほうが、とくでは ないの?

5. 体温が約20℃ちがっても、節約は似ていた ── 深さより長さ

5. 深さより長さ ── 20℃のちがいで節約が似る理由

ペルーの 高い 山の ハチドリと、ブラジルの ハチドリを くらべると、休眠きゅうみん中の 体の おんども、きおんも、20℃ぐらい ちがいました。それなのに、ひとばんの 体の おもさの へりかたは、にて いました[1]。

体の おもさの へりは、エネルギーを どれだけ つかったかを かんがえる めやすです。ふかく ひやして いるのに、ほとんど 同じだけ しか せつやく できて いない ようです。

研究する 人は、さむい ところでは、あさ 体を あたため なおす ときの エネルギーが 大きいからでは、と かんがえて います[1]。あさの あたため なおしは、1ぷんに 1℃から 1.5℃ぐらいの はやさです[1]。0℃近くから 30℃ぶん あげるなら、いちばん はやくても 20ぷんから 30ぷん かかります(この きじの けいさんです)。

ひとばんの 休眠きゅうみんの 長さは、しゅるいの へいきんで 5.7じかんから 10.6じかん。1わごとでは 2.3じかんから 12.9じかんまで ばらつきました。長く ねむった ほど、体の おもさは へりにくい ようでした[1]。

だから、せつやくを きめる 大きな ものは、「どれだけ ひやすか」より「どれだけ 長く ひやすか」らしい のです。

最初の問いに戻ります。深く冷やすほど得なら、体温が約20℃ちがう高地と低地で、節約が同じ大きさになるのは不思議です。Wolf らは、両方のハチドリ群で、一晩の体重の減り(エネルギー節約の目安)が似ていたと報告しています。寒いほど、朝に体を温め直すコストが大きいためだろう、と著者らは推測しています[1]。

数字で見ましょう。再加温の速さは、最速で毎分約1〜1.5℃でした。体温を30℃分上げるなら、最速のペースが続いたとして、30÷1.5=20分から30÷1=30分かかります(この記事の計算で、実際の速さは変わります)[1]。

一晩の節約には、深さより休眠の長さが関係するようです。一晩の体重の減りは、体温30℃未満の休眠の長さと負に相関しました。休眠時間は、種の平均で5.7〜10.6時間、個体では2.3〜12.9時間とばらつきました[1]。長く冷えた個体ほど、減りは小さくなります。

パナマの低地では、一晩の体重の減りが約8〜10%でした。著者は、高地の研究では約4%と報告されていたと比べ、それより大きいと述べています。夜が暖かいと、休眠の利益は限られるのかもしれない、と著者は述べています[3]。比べた研究は別なので、数字は目安です。

だから、深さを決める要因が複数あっても、節約に効く主役は「どれだけ長く続けるか」に近いのです。

ここで最初の疑問に戻る。体温も気温も約20℃ちがうのに、高地(ペルー)と低地(ブラジル)で、一晩の体重の減り(エネルギー節約の目安)が似ていた。Wolf らは、寒い環境では再加温のコストが大きいためだろう、と推測している[1]。同一条件の実験ではなく、著者らの比較である点に注意したい。

再加温の最速値は毎分約1〜1.5℃だった(P. gigas で約1℃、A. cupripennis で約1.5℃)[1]。体温を30℃分上げるなら、30÷1.5=20分から30÷1=30分以上かかる計算になる(この記事の概算)。深く冷えるほど温め直しにかかる時間と熱が増え、深さで得た分の一部が相殺される。

節約を決める鍵は、むしろ長さにあった。一晩の体重の減りは、体温30℃未満の休眠の長さと負の相関を示し、休眠時間は種平均で5.7〜10.6時間、個体で2.3〜12.9時間だった[1]。長く続けた個体ほど、体重の減りは小さい傾向があった。

低地の測定にも手がかりがある。パナマの6種では、一晩の体重の減りが約8〜10%で、高地の研究では約4%と報告されており、それより大きかった。著者は、夜が暖かいと休眠の利益が限られるかもしれないと述べるが、研究ごとに条件が異なり、推測の域を出ない[3]。

以上から、深さを左右する要因は、守る体温の位置、系統、体の大きさと気温の組み合わせで、節約を決めるのは、そのうえでどれだけ長く続けるかに近い。ただし、標高と系統の効果を同一種で比べた実験はなく、4つの要因の寄与の大きさは、今の資料では決められない。

6. おなじ ハチドリで くらべたら どうなるの?

6. 「同じ種を高さで比べたら」という問いが残っている

6. 論文の「図」を読み比べる ── 標高と系統を切り分ける問い

この きじでは、「ふかさは なにで きまるの」に、1つの こたえは だせませんでした。そもそも、おなじ ハチドリを 高い 山と ひくい ところで くらべた 研究では ありません。それが あれば、もっと はっきり するはずです。

ペルーの 研究は、だれでも ただで よめます。おとなと いっしょに ひらいて、「8℃」と「5.13℃」という すうじが どこに でて くるか、さがして みませんか。しゅるいごとに、グラフが ちがう ところも みられます。

この記事では、深さを左右するものとして、守る体温の位置、系統、体の大きさと気温を見てきました。ただ、同じ種を高地と低地で比べたデータがないので、どれがどれだけ効いているかは決められません。

Wolf らの論文[1]は、大学のリポジトリで本文を読むことができます。種ごとに、体温と気温の関係がどんな形の図になっているかを見て、Colibri coruscans と Metallura phoebe のちがいを、自分の目で確かめてみてください。ブラジルの総説[2]の12〜20℃と見くらべると、「止め方」の話がいっそう具体的になります。

この記事の最大の限界は、同じ種を高地と低地で比べたデータがないことだ。標高の効果と系統の効果は、今の資料では切り分けられない。Wolf らも、系統の影響を示唆するにとどまり、断定していない[1]。

読み比べの手がかりは2つある。Wolf らの論文[1]は、種ごとに体温と気温の関係を図で示しているので、C. coruscans と M. phoebe のちがいを自分の目で確かめられる。Bech らの総説[2]と、アンデスの約8℃を並べると、「守る体温」の位置が場所と種でどう変わるかを、自分で整理できる。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

出典について:アンデスの野外測定、ブラジルの総説、パナマの低地の研究、コロンビアの標高傾度の研究を使った。数字は、何に使ったかを各項目に書いた。パナマとコロンビアの2研究は要旨による。

  1. Wolf BO, et al. "Extreme and variable torpor among high-elevation Andean hummingbird species", Biology Letters 16:20200428 (2020). https://repository.up.ac.za/handle/2263/82850 (アンデスの6種の体温、種ごとの守り方のちがい、系統の影響、再加温の速さ、休眠の長さと体重の減りについて)
  2. Bech C, et al. "Metabolic aspects of torpor in hummingbirds", Acta Zoologica Sinica 52 (Suppl):397-400 (2006). https://clabec.folk.ntnu.no/pdf/publ/Bech%20et%20al%202006%20AZS%20Metabolic%20aspects%20of%20torpor%20in%20hummingbirds.pdf (ブラジルの標高約700mの8種の体温12〜20℃、休眠に入るときの代謝について)
  3. Pollock HS, et al. "Widespread torpor use in hummingbirds from the thermally stable lowland tropics", Physiological and Biochemical Zoology (2023). https://umimpact.umt.edu/en/publications/widespread-torpor-use-in-hummingbirds-from-the-thermally-stable-l/ (パナマの低地の6種37羽、体重と休眠の深さ・長さ、体重の減りについて。要旨による)
  4. Revelo Hernández AF, et al. Proceedings of the Royal Society B (2023). https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rspb.2022.2099 (コロンビアの標高差1,920mの29種249羽で、小さい鳥の休眠が低い気温のときに長くなることについて。要旨による)

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