1. あじさいの 花びらに 見える ところは、なに?
1. 花びらに見える部分は、虫を呼ぶための「看板」
1. 花房を飾る部分は花弁ではなく萼 ── 装飾花の役割
あじさいの 花の かたまりを、じっくり 見て みましょう。まわりに ある 大きな ところは、花びらに 見えます。
けれども これは 花びらでは なく、萼という つぼみを まもる ぶぶんが 大きく かわった ものです[1]。「装飾花」と よばれます。
やくわりは、虫を よぶ めじるしです。道に 出ている 大きな 看板のように、「ここに 花が あるよ」と 虫に しらせて います[1]。ただし 本当は、看板が 花に ばけて いる わけでは ありません。
それなら、虫が さがして いる 本当の 花は、どこに あるのでしょう。
2. ほんとうの 花は、まんなかの つぶ
2. 本物の花は中心の小さな粒で、看板は種を残さない
2. 真花は房の中央に密集し、装飾花は雄しべ・雌しべが退化している
ほんとうの 花は、花の かたまりの まんなかに あります。ぎゅっと あつまった 小さな 粒が、それです[2]。
この 粒を「真花」と いいます。ここには おしべも めしべも 花びらも そろって いて、種を つくる 役を して います[2]。
いっぽう 看板の ほうの 花は、ふつう 種が できません[2]。
見た目の 大きさと、種を つくる 力は、べつの もの なのですね。
では、あじさいは 来年の 花を、いつ じゅんびして いるのでしょう。
本物の花(真花)は、花房の中央にぎゅっと集まった小さな粒です。両性花で、萼、雄しべ、雌しべ、花弁がそろっています[2]。
一方、装飾花は萼が大きくなったものなので、雄しべや雌しべが退化していて、通常は種が育ちません[2]。種をつなぐ役は真花、人目を引く役は装飾花、という分担です。
気象庁がアジサイの開花を発表するときの基準も、標本木の真花が2〜3輪咲いた状態だと紹介されています[2]。目立つ装飾花ではなく、小さな真花のほうが「咲いた」の目安になるのは、少し意外です。
ところで、アジサイの花は来年の分がもう秋にできる、といわれます。それは本当でしょうか。
真花は花房の中央に密集する小さな粒で、両性花であり、萼・雄しべ・雌しべ・花弁がそろう[2]。装飾花では雄しべ・雌しべが退化しており、通常は種が育たないとされる[2]。
この分担を整理すると、虫を呼ぶ仕事を装飾花が引き受け、種を残す仕事を真花が担う形になる。見た目の大きさと種をつくる力は、別の働きなのである。
気象庁の開花日の基準も、標本木の真花が2〜3輪咲いた状態とする紹介がある[2](気象庁の原文では未照合のため、二次資料の記述として扱う)。見かけの派手さではなく、真花の開花を基準にするという点は、花の正体を踏まえた決め方といえる。
では、この真花は、いつ、どこで用意されるのか。ここで話は、今年の秋と来年の初夏に結びつく。
3. 来年の 花は、秋に もう できて いるの?
3. 来年の花は、今年の秋にはもう枝の先にある
3. 花芽は10月頃までに枝先につくられ、花は翌年に咲く
あじさいは、秋に なると、えだの さきに 来年の 花の もとを つくります。これを「花芽」と いいます[5]。
花芽が できる じきは、10月ごろと いわれます[5]。花そだての 本では、気おんが 18度いかに 下がると 花芽が つくられる、と 書かれて います[6]。どちらも 目やすで、そだてる 場所や 品種で ずれます。
花は、秋に つくられて、つぎの 年に さきます[5]。つまり、来年 さく 花の もとは、秋までに できて いる ことが 多いのです。
アジサイの花芽(来年咲く花のもと)は、10月頃、今年伸びた枝の先にできるとされています[5]。花は秋に準備されて、翌年に咲くという順番です。
きっかけは気温だという説明もあります。気温が18℃以下に下がると花芽が作られるといわれ[6]、秋に準備が進むのは、気温と関わりがあるのかもしれません。
ただし、花芽ができる時期は品種や地域で幅があります。ここで挙げた10月頃や18℃は、あくまで目安です。枝の先にできるのか、葉の付け根にできるのかも、資料によって書き方が少し違います[5][6]。
それでも、花芽が秋にできているという点は共通しています。では、これを知らずに枝を切ると、何が起きるのでしょうか。
アジサイの花芽は、10月頃、今年伸びた枝の先端部につくられるとされる[5]。つまり、来年の花房は今年の秋のうちに用意され、翌年に咲く。
花芽が作られる条件について、ある園芸資料は「気温が18℃以下に下がると花芽が作られるといわれる」と説明する[6]。つまり、暑い間は葉が茂り、気温が下がる秋に花芽づくりが始まる、という筋書きが想定されている。ただしこれは園芸の解説に見られる説明であり、品種によって条件は異なる。
花芽ができる位置は、ある資料では「今年伸びた枝の先端」、別の資料では「昨年伸びた枝の葉の付け根」と書かれており[5][6]、ここでは「枝の先のほう」と書く。時期や位置は品種や地域で幅があるため、「10月頃」「9月中旬以降」などの数字は目安として読む。
共通するのは、花芽が秋にできて冬を越すという流れである。では、この事実を知らずに枝を切ると、何が起きるのか。
4. えだを きる 時期で、来年の 花が かわるの?
4. 秋に枝を切ると、来年の花も一緒に落としてしまう
4. 9月中旬以降の強い剪定は、翌年の花ごと枝を落とすことになる
ふつうの あじさいの 花芽は、えだの さきに できます。もし 秋に えだを ばっさり きって しまうと、来年の 花の もとも いっしょに きって しまいます[5][6]。
「剪定」という 言葉が あります。えだを きって 形を ととのえる ことです。
大きく なりすぎた あじさいを、秋に 小さく したい。そう 思って きって しまうと、来年の 花は さきにくく なります。
花が さく 前の 年に、もう 花の もとが できて いる。だから 秋の ハサミは、来年の 花に ひびくのです。ただし アナベルなど 品種に よっては、切る 時期が ちがう ものも あります。
花芽が枝の先にあるなら、切る時期が大事になります。一般的なアジサイについて、園芸の資料には、アジサイは10月頃に花芽ができるので、強く剪定すると翌年の花はあきらめなくてはならない、という説明があります[5]。
別の資料も、9月中旬以降にばっさり切り戻すと、翌年の花ごと枝を切り落とすことになる、と注意しています[6]。
花が終わったからと夏の終わりから秋に大きく切ると、翌年の花を落とすことになるわけです。「葉も茂っているし、形を整えたい」という気持ちはよく分かりますが、花芽の時期を知らないと、来年の花を自分で切り落としてしまいます。
もっとも、切る時期の目安は品種や地域でも変わり得ます。アナベルなどのアメリカアジサイのように、品種によって切る時期がちがうものもあります。迷ったら、育てている品種の説明を確認するのが近道です。
切ってしまう話ばかりでは、少しさみしいですね。次は、アジサイが「増える」ほうの話をしましょう。
花芽が枝先にある以上、剪定の時期が翌年の花を左右する。園芸資料は、10月頃に花芽ができるため強い剪定をすれば翌年の花はあきらめなければならない、と述べる[5]。別の資料も、9月中旬以降にばっさり切り戻すと翌年の花ごと枝を切り落とすことになる、と注意している[6]。
これは花芽の時期の目安が、そのまま「いつまでに切るか」の目安になっているということだ。ただし、花芽の分化時期は品種や地域で幅があり、同じ「9月中旬」でも寒冷地と暖地では前後する。資料の数字は一律の締切ではなく、考え方の出発点として読むほうが安全である。また、ここで述べたのは一般的なアジサイの話で、アナベルなどのアメリカアジサイのように、品種によって剪定の時期が異なるものもある。
切ることは、必ずしも悪いことではない。樹形を整えるときも、花芽ができる前に行うか、花芽の位置を理解して行えば、翌年の花を残したまま調整できる。問題は、「いつ、どこを切ると何を落とすか」を知らずに切ることにある。
では、切った枝は捨てるしかないのか。実は、枝は新しい株の材料になる。
5. きった えだから、あたらしい あじさいが できるの?
5. 梅雨に枝を挿すと、新しい株ができる
5. 挿し木の適期は梅雨 ── 花の付いていない枝先を使う
あじさいは、えだを 土に さして ふやす ことが できます。これを「挿し木」と いいます[6]。
よい 時期は、6月の はじめごろ。雨の 多い 梅雨の ころだと いわれます[6]。
花の ついて いない えだの さきを、15cmくらいに きって、すなを 入れた 鉢に さします。1か月ほどで、根が 出る と いう 資料が あります[6]。
水が たりないと、あじさいは すぐ げんきが なくなります。日あたりの よい ところか、はんぶん 日かげで そだてると よく そだちます。西日が つよく あたる ところは さけます[6]。
つかうのは、花の ついて いない えだの さきです。
梅雨のしっとりした時期は、アジサイを増やす季節でもあります。園芸の解説では、挿し木の適期は6月上旬頃で、花の付いていない枝先を15cmほどに切り、砂を入れた鉢などに挿すとされています[6]。
1か月ほどで根が出るという紹介があり、葉は4枚ほど残して下の葉を取り、上の葉は半分に切るというやり方も紹介されています[6]。
育て方の面では、アジサイは水を好む植物で、乾燥すると生育が目に見えて悪くなります。日当たりから半日陰でよく育ち、西日が強い場所では乾燥して葉が傷みます[6]。
水を好むアジサイにとって、雨の多い梅雨は、挿し木に向いた時期だといえそうです。
さて、こうして日本の庭で増えてきたアジサイですが、もとは日本の野山にあった植物です。その歩みが、意外な形で海を渡っていました。
挿し木の適期は、梅雨にあたる6月上旬頃とされる。花の付いていない枝先を15cmほどに切り、砂を入れた鉢などに挿すと、1か月ほどで根が出るという紹介がある[6]。葉は4枚ほど残して下葉を取り、上の葉を半分に切る方法も記されている(数値は自治体の園芸資料の記述)[6]。
育成の条件としては、アジサイは水を好み、乾燥すると生育がてきめんに悪くなる。日当たりから半日陰でよく育ち、西日が強いと乾燥して葉が傷む[6]。梅雨という、湿度が高く土が乾きにくい時期が適期とされるのは、この性質と合っている。
こうして挿し木で増えるアジサイだが、日本の庭に定着するまでの経緯には、海を渡って戻ってきた話が含まれている。
6. あじさいは、むかし 海を わたって 帰って きたの?
6. 日本の野山から世界へ、そして里帰りしたアジサイ
6. 自生種からシーボルトの持ち帰り、西洋アジサイの逆輸入まで
あじさいは、もともと 日本の 野山に はえて いた 花です。日本には 15しゅるいほどの あじさいが 自生して いると いわれ、万葉集にも あじさいを よんだ 歌が 2首 あります[4]。
むかしの 日本の 人も、梅雨の 野山で この 花を 見て いたのでしょう。
江戸時代の おわりごろ、長崎の 出島に いた お医者さんの シーボルトが、あじさいを 10しゅるいほど ヨーロッパに もちかえった と いわれます[4]。ヨーロッパでは「東洋の バラ」と よばれて 大切に されました。
その後、ヨーロッパや アメリカで 品種が かいりょうされ、明治の ころ 日本へ もどって きました[4]。もどって きた あじさいは「西洋あじさい」と よばれます。
アジサイは日本原産で、日本の野山には古くから自生しています。代表的なのは、ガクアジサイとヤマアジサイです[3]。ガクアジサイは関東や中部、伊豆諸島、小笠原諸島などに分布し、ヤマアジサイは福島県から四国・九州にかけて、沢沿いに多いと紹介されています[3]。
日本に自生するアジサイは15種類とされ、万葉集にはアジサイを詠んだ歌が2首あります[4]。
江戸後期、長崎の出島の医師シーボルトが、帰国のときに野山のアジサイを10種ほど持ち帰り、ヨーロッパでは「東洋のバラ」として珍重されました[4]。その後、ヨーロッパやアメリカで改良され、明治時代に日本へ逆輸入されて「西洋アジサイ」と呼ばれるようになりました[4]。
ここで最初の話に戻ります。野山のアジサイを見分けるときも、周りの装飾花と、中央の真花の組み合わせが手がかりになります。
花の色は、土の酸性度と関係するといわれます。酸性の土壌では青く、アルカリ性では赤くなるとされ、青い細胞と赤い細胞では液胞のpHが約4.1と約3.3で違うという報告があります[7]。色の仕組みは、土の成分とアルミニウムも関わるため、別の記事で詳しく扱っています。
アジサイは日本原産で、自生の代表はガクアジサイとヤマアジサイである。ガクアジサイは関東・中部・伊豆諸島・小笠原諸島などに分布し、開花は6月中旬から7月頃、ヤマアジサイは福島県から四国・九州にかけて沢沿いに多い[3]。日本に自生するアジサイは15種類とされ、万葉集にも2首が詠まれている[4]。
江戸後期、長崎の出島の医師シーボルトが帰国時に、野山のアジサイを10種ほど持ち帰った。ヨーロッパでは「東洋のバラ」と呼ばれて珍重され、のちにヨーロッパやアメリカで改良されたものが、明治に日本へ逆輸入されて「西洋アジサイ」と呼ばれた[4]。「10種ほど」という数は、二次資料の記述である。
野山で自生する種も、海を渡って改良されたものも、花房の中の「看板」と「本体」の役割分担という点では、第1章・第2章で見た話の延長にある。そして、この記事で見た花芽の時期と挿し木の適期は、どちらの系統でも庭で育てるうえで知っておきたい目安である。
花の色については、酸性土壌で青く、アルカリ性で赤くなるといわれ、青い細胞の液胞pHは約4.1、赤い細胞は約3.3と報告されている[7]。pHが直接色を決めるのではなく、酸性土壌で溶けやすいアルミニウムが萼に運ばれ、アントシアニンと錯体をつくると考えられている[7]。この色の仕組みは別の記事で扱っているため、ここでは触れるにとどめる。
7. あじさいを 見かけたら、まず 見て みよう
7. 近くのアジサイで、「花」はどこかを数えてみる
7. 身近な株で、装飾花と真花を見分けてみる
あじさいを 見かけたら、まん中の 小さな 粒を さがして みましょう。まわりの 大きな ところと くらべて、ちがいを 絵に かいても いいですね。
まわりの 大きな ところが 何まい あるか、まん中の 粒が 何こ ぐらい あるか、見える ところだけ かぞえて みると おもしろいです。
えだを きる ときは、おうちの 人と いっしょに。ハサミは、気を つけて つかいましょう。
近くにアジサイがあれば、花房のまわりに装飾花が何枚あるか、中央に小さな粒(真花)がどのくらいあるかを、見える範囲で数えてみてください。種類によって、見た目が違うかもしれません。
切る時期や挿し木の時期を知りたいときは、自治体や植物園、園芸店などの案内で、育てている品種の説明を確認すると安心です。ハサミを使うときは、周りに人がいないか、足元は安定しているかを確かめましょう。
身近なアジサイの花房で、装飾花の枚数と、中央の真花の数を、見える範囲で数えてみるとよい。品種によって装飾花と真花の割合が違うことに気づくだろう。
育てている場合は、品種名を確かめたうえで、花芽の時期と剪定・挿し木の適期を、自治体や植物園の案内、種苗会社の資料で照合する。本記事で使った数値(10月頃、18℃以下、9月中旬以降、6月上旬)は、一般的な目安である。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
公的機関の資料と、園芸・気象の解説記事を並べて使った。数値は目安で、品種と地域によって幅がある。
- 環境省 新宿御苑「ガクアジサイ」 https://www.env.go.jp/garden/kokyogaien/news/2014/05/274.html (装飾花の説明)
- ウェザーニュース「紫陽花 ”花”はどこにある?」 https://weathernews.jp/news/202506/020226/ (真花と装飾花)
- ウェザーニュース「ガクアジサイとヤマアジサイの見分け方」 https://weathernews.jp/news/202606/070231/ (自生種と分布)
- nippon.com「雨の季節を鮮やかに彩るアジサイ」 https://www.nippon.com/ja/guide-to-japan/g02605/ (原産と渡来の歴史)
- GardenStory「アジサイの剪定」 https://gardenstory.jp/gardening/33394 (花芽の時期と剪定)
- ヤサシイエンゲイ「アジサイの育て方」 https://www.yasashi.info/a_00010g.htm (花芽の温度、挿し木、育て方)
- 日本植物生理学会 Plant Cell Physiol. 2003 PCP Gallery https://jspp.org/pcp/photo_gallery/back_number/year/detail.html?id=83 (花の色と液胞pH)
なおした ところ
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