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メキシコの ごはんに ならぶ サルサって、どんな ものが あるの?

メキシコのサルサは、赤はトマト、緑はトマティーヨ。材料や作り方でどう変わる?

メキシコのサルサの種類:「ソース」という一語を、色・火の通し方・道具・土地は何で分けるのか

分野:歴史・文化

メキシコの テーブルには、赤や 緑の ソースが ならびます。これが サルサです。じつは サルサは、スペインごで ただの 「ソース」と いう いみの ことばです。

ただの ソースなのに、どうして いろいろな ものが あるのでしょう。この ページを 読むと、サルサが とうがらしを まん中に して、色や つくり方で わかれて いくことが わかります。

メキシコ料理の店で出てくる赤や緑のソースを、私たちは「サルサ」と呼びます。ところがスペイン語のsalsaは、ただの「ソース」を意味する言葉で、料理の名前としてはとても大ざっぱです[1]。

それなのに、メキシコのサルサは色も食感もちがう何種類もの仲間に分かれています。たとえば赤いサルサはトマト、緑のサルサはトマティーヨという別の実でできています。材料や作り方でどう変わるのでしょうか。この記事を読むと、唐辛子を土台に、色、生か火を通すか、すりつぶし方、油、土地の五つで分かれていく様子が分かります。

スペイン語のsalsaは、特定の料理名ではなく、ソース全般を指す一般名詞である[1]。ところが英語圏では、とくにメキシコ系のテーブルソースを指す語として定着している。名前がこれほど大ざっぱなのに、メキシコのサルサは、赤はトマト、緑はトマティーヨという別の実を使うなど、実際には作り方と材料によってはっきり型が分かれる。

では、何が型を分けているのか。この記事を読むと、唐辛子という土台の上で、色(赤か緑か)、生か加熱か、石の道具か否か、油を使うか、土地の材料は何かの五つの軸が働いていること、そして主な材料が昔のメキシコの市場にすでにあったことが分かる。

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1. サルサは、なんの ことなの?

1. 「ソース」という名前の中心にあるのは、唐辛子

1. 一般名詞としてのsalsaと、メキシコの食の中心にある唐辛子

メキシコの おみせで、小さな 皿に 赤や 緑の ソースが のって いたら、それが サルサです。サルサは スペインごで 「ソース」を ぜんぶ まとめた ことばです。ことばの もとは ラテンごの 「しおで あじを つけた」という いみだと されて います。

では、メキシコの サルサは なにで できて いるのでしょう。まん中に あるのは、とうがらしです。とれたての なまの とうがらし、ほした とうがらし、けむりで いぶした とうがらし。どれを つかうかで、あじが ずいぶん かわります。そこへ トマトや くだものや ハーブを くみ合わせます。

つかい方でも、大きく 2つに わかれます。にこむ りょうりの あじつけに つかう サルサと、のせたり つけたりして たべる サルサです。

おんがくの サルサとは べつの はなしです。

スペイン語のsalsaは、ラテン語で「塩で味つけした」を意味するsalsusに由来する言葉だと説明されています[2]。もともとは、ソースの種類を問わない広い呼び名でした。

メキシコのサルサを分ける最初の手がかりは、材料の中心にある唐辛子(チレ)です。メキシコの食文化は唐辛子を軸に回っているといわれ、サルサも生の唐辛子、乾燥させたもの、燻製にしたものを使い分け、そこにハーブや果物などを組み合わせて作ります[2]。

ユネスコが2010年に無形文化遺産に登録した「伝統的なメキシコ料理」も、トウモロコシ、豆、唐辛子を土台に成り立っていると説明されています[3]。サルサは、この土台の上にある食べ物の一つです。

使い方でも、大きく二つに分けられます。煮込みや味つけに使うものと、食卓に出して添えるものです[7]。ここから先は、添えるほうの代表である、赤・緑・生の三つの型から見ていきましょう。音楽やダンスのサルサとは別の話です。

salsaという語は、ラテン語の形容詞salsus(塩で味つけされた)に由来するとされる[2]。意味の範囲はソース全般で、特定の料理を指すわけではない。メキシコの料理で、その広い名前の中身が具体的に決まるのは、材料が選ばれるときである。

その材料の軸が唐辛子だ。スペイン語の資料は、メキシコの食文化が唐辛子を中心に組み立てられており、サルサの基本要素もチレであって、生・乾燥・燻製の唐辛子に、ハーブや果物などを合わせると説明している[2]。ユネスコも2010年、「伝統的なメキシコ料理」の無形文化遺産への登録にあたり、体系の基盤をトウモロコシ・豆・唐辛子と述べ、石臼や石のすり鉢などの道具を特色に挙げた[3]。ただしユネスコの文面は、サルサという料理自体を名指ししてはいない。

分類のしかたにも幅がある。スペイン語の資料は、煮込みや味つけに使う「料理用」と、卓上に添える「添えもの」に大別し、ナワトル語由来のモーレもサルサの一系統に含める[7]。ただし、この区別の数や基準が資料のあいだで一定しているわけではなく、本記事では添えものの型を中心に扱い、モーレの細部には立ち入らない。

では、同じ唐辛子から、どうやって赤い型と緑の型が分かれるのか。次の章で、色の正体を見る。音楽やダンスのsalsaは別の話題である。

2. 赤い サルサと 緑の サルサは、なにが ちがうの?

2. 緑のサルサは、トマトではなく別の実でできている

2. 赤・緑・生:材料と火の通し方による三つの型

赤い サルサは、トマトと とうがらしと たまねぎと ニンニクと パクチーが もとです。トマトなどに 火を とおして つくる ことが 多いと いわれます。

緑の サルサは、トマトでは ありません。トマティーヨと いう、ほおずきに にた 緑の 実を つかいます。うすい かわに つつまれて いる 実で、火を とおして つくります。緑の いろと、すっぱさは、この 実から 来ます。トマティーヨは、ヨーロッパの ひとが 来る まえから メキシコで そだてられて いました。

火を とおさない 「なま」の サルサも あります。ピコ・デ・ガイヨは、きざんだ トマト、たまねぎ、セラーノと いう とうがらしに、しお、ライムの しる、パクチーを まぜた なまの サルサです。赤、白、緑が こっきに にて いるので、「サルサ・バンデラ(はたの サルサ)」とも よばれます。

ただし 作り方は 家や 土地で ちがいます。「かならず こう」とは いえません。

赤いサルサ(サルサ・ロハ)は、火を通したトマト、唐辛子、タマネギ、ニンニク、パクチーが基本とされます。緑のサルサ(サルサ・ベルデ)は、火を通したトマティーヨが主役です[1]。緑は、青いトマトを使っているのではありません。

トマティーヨは、うすい皮に包まれたホオズキのような緑の実です。ヨーロッパ人が来る前にメキシコで栽培化されており、マヤやアステカの文化で重要な役割を持ちました。緑の色と酸味をサルサに与えます[4]。

火を通さずに作るのが、生のサルサ(サルサ・クルーダ、またはフレスカ)です[1]。その代表がピコ・デ・ガイヨで、刻んだトマト、タマネギ、セラーノ唐辛子に、塩、ライムの汁、パクチーを合わせて作ります。メキシコでは、ふつうサルサ・メキシカーナと呼ばれます。赤・白・緑が国旗の色に似ているので、「サルサ・バンデラ」(旗のサルサ)という呼び名もあります[5]。

ピコ・デ・ガイヨは直訳すると「雄鶏のくちばし」ですが、名前の由来には諸説あり、定まっていません[5]。作り方も家や地域でちがうので、「必ずこう作る」とは言えません[1]。

では、同じ材料でも、道具が変わると何が変わるのでしょうか。

赤・緑・生の三つの型は、いずれも色の差に見えるが、実際には材料と加熱の有無の組み合わせで決まる。赤いサルサ(salsa roja)は、火を通したトマト、唐辛子、タマネギ、ニンニク、新鮮なパクチーが基本とされる。緑のサルサ(salsa verde)は、トマトの代わりに、火を通したトマティーヨを使う。生のサルサは salsa cruda、または fresca と呼ばれる[1]。

緑の正体はトマティーヨ(ほおずきに似て、うすい皮に包まれた緑の実)である。ヨーロッパ人が来る前にメキシコで栽培化され、マヤとアステカの文化で重要な役割を持ったとされる。サルサ・ベルデに緑の色と酸味が出るのは、この実による[4]。つまり赤と緑は、同じ材料の熟し方の差ではなく、別の植物の実を使い分けている。

生の型の代表がピコ・デ・ガイヨである。伝統的には刻んだトマト、タマネギ、セラーノ唐辛子に、塩、ライム果汁、パクチーを合わせる。直訳は「雄鶏のくちばし」だが、名の由来は複数の説があり未確定である。メキシコでは一般にsalsa mexicanaと呼ばれ、赤・白・緑が国旗に似ていることから、salsa banderaとも呼ばれる[5]。ここで「色が国旗に似る」ことが名前の理由として定着しているとまでは言えず、あくまで別名の背景である。

これらの型はいずれも、家や地域によって手順が異なり、「必ず」と書ける定義ではない[1]。型の境目はあいまいだ。それでも、色、加熱の有無、主役の実という三つを見るだけで、店の卓上のサルサをかなり読み分けられる。

では、型が決まったあと、食感はどこで決まるのか。次の章で道具を見る。

3. 石の すりばちで つくると、どうなるの?

3. 石のすり鉢でつぶすサルサは、ミキサーのものとどうちがうのか

3. モルカヘテで作るサルサ:道具が食感と風味を分ける

モルカヘテと いう、石の すりばちが あります。かざんの いわで できて いて、大きな 石を ひとかたまり ほって つくります。ぼうの ような 石の どうぐで、トマトや とうがらしを すりつぶします。

この どうぐは、むかしの メキシコの ひとたちの じだいから、サルサ作りに つかわれて きたと いわれます。ことばも、昔の メキシコの ことば(ナワトルご)から 来ています。

石の すりばちで すりつぶして つくる サルサは、「マルタハダ」(つぶした もの)と よばれます。ミキサーで なめらかに する サルサとは、食べた ときの かんじと 風味が 少し ちがうと いわれて います。

新しい モルカヘテは、はじめに 生の 米を すって、石の こなを とります。石には 小さな あなが たくさん あって、あらい きれません。つかうほどに あじが なじむと いわれて います。

モルカヘテは、火山岩(あなの多い玄武岩)をひと塊から彫って作る石のすり鉢です。棒状の道具「テホロテ」でトマトや唐辛子をすりつぶします。名前はナワトル語のmolcaxitlに由来し、先史時代のメソアメリカでも使われていたとされます[6]。スペイン語の資料も、先住民の時代からサルサ作りに使われてきた道具として紹介しています[7]。

この道具で粗くつぶして作るサルサは、「マルタハダ」と呼ばれます。martajarは、メキシコのスペイン語で「つぶす」の意味です[7]。ミキサーでなめらかにしたものとは、食感と風味が少しちがうとされます[6]。

新品のモルカヘテは、最初に生の米をすって石の粉を落としてから使い始めると紹介されています。石には小さな気孔が多くて、洗いきれません。使い込むうちに風味がなじむといわれます[6]。長く使う道具ほど、料理に「その家の味」が入っていくわけです。

ユネスコの2010年の登録でも、メキシコ料理の特色として石臼や石のすり鉢などの道具が挙げられています。ただし、ここでサルサやモルカヘテが名指しされているわけではありません[3]。

では、すりつぶさず、油で仕立てるサルサはあるのでしょうか。

食感を決めるもう一つの要因は、道具である。モルカヘテは、多孔質の玄武岩を一塊から彫り出した石のすり鉢で、棒状のテホロテで材料をつぶす。語源はナワトル語のmolcaxitlとされ、先史時代のメソアメリカでも使われた[6]。スペイン語の資料も、先住民の時代からサルサ作りに使われてきた道具と述べる[7]。

石で粗くつぶして作るサルサがマルタハダ(martajada)で、martajarはメキシコのスペイン語で「つぶす」を意味する[7]。ミキサーで作るものとは食感・風味が少しちがうとされる。この差は、刃で細かく切るのと、石で押しつぶして繊維や汁を出すのとの作用のちがいで説明できそうだが、資料が理由まで述べているわけではない[6]。

石の性質は、使い始めの手順にも表れる。新品は生米をすって石の粉を落としてから使うと紹介されている。気孔が多いため洗いきれず、使い込むほど風味がなじむと説明される[6]。使い込んだ道具の状態が、味に影響するという見方である。

ユネスコの登録文は、メキシコ料理を特徴づける道具として石臼や石のすり鉢を挙げるが、サルサやモルカヘテの語は出てこない。石の道具が土台の文化として評価されていることと、モルカヘテで作るサルサが無形文化遺産に含まれることは別である[3]。

道具で食感が変わるなら、油は何を変えるのか。土地の個性を見よう。

4. あぶらで つくる サルサや、「犬の はな」って、なに?

4. 油で仕立てるサルサ・マチャと、「犬の鼻」という名のサルサ

4. 油ベースのサルサ・マチャと、ユカタン半島のシュニペク

あぶらで つくる サルサも あります。サルサ・マチャは、ほした とうがらしと、ピーナッツや かぼちゃの たね、ごまを、あぶらで しあげた サルサです。ベラクルスの 山の ほうで 生まれたと いわれます。名前の いわれは、はっきり していません。

ユカタン半島では、シュニペクと いう サルサが 知られて います。ハバネロと いう からい とうがらしと、むらさきの たまねぎ、すっぱい オレンジの しる、しおで つくります。名前は、マヤの ことばで 「犬の はな」と いう いみだと いわれます。

赤や 緑の サルサとは、まるで ちがう すがたです。土地ごとに とれる ものが ちがうので、サルサに つかう ざいりょうも かわります。

メキシコの東の海沿い、ベラクルス州の高地アルタス・モンターニャス(山地)で生まれたとされるのが、サルサ・マチャです。乾燥させた唐辛子(チレ・デ・アルボルやグアヒーリョなど)と、ピーナッツ、かぼちゃの種、ごまなどの種を、油で仕立てた油ベースのサルサです[9]。新聞Excélsiorの記事によると、メキシコの国立人類学歴史研究所(INAH)の説明では、ベラクルスのシエラ・デ・ソンゴリカのナワ系の人びとに根があるとされます[9]。ベラクルスの先住民に、チレ・デ・アルボルとピーナッツの炒めサルサがあり、これが前身ではないかという料理人の見方も紹介されています[10]。ただしこれは一人の見方です。

名前の由来は、macho(男らしい)の口語形とする説や、machacar(つぶす)に由来するという説があり、はっきりしていません[9]。

もう一つ、ユカタン半島のシュニペク(xnipec)を見てみましょう。ハバネロ唐辛子、紫タマネギ、サワーオレンジの汁、塩が基本の、赤でも緑でもない生のサルサです。マヤ語で「犬の鼻」を意味するとされ、つづりは複数あります[8]。

赤、緑、生、石、油、そして土地。分かれ方は一つの軸ではなく、いくつも重なっています。

では、これらの材料は、いつごろからメキシコにあったのでしょうか。

火を通すか通さないか、石かミキサーかの軸の外に、油と地方という軸もある。サルサ・マチャは、乾燥唐辛子(チレ・デ・アルボル、グアヒーリョなど)と、ピーナッツ、かぼちゃの種、ごまなどの種を、油で仕立てた油ベースのサルサである。ベラクルス州の高地アルタス・モンターニャスで生まれたとされ、新聞Excélsiorが紹介するINAHの説明ではシエラ・デ・ソンゴリカのナワ系の人びとに根がある[9]。別の資料は、ベラクルスの先住民にチレ・デ・アルボルとピーナッツの炒めサルサがあり、これが前身ではないかという料理人の見方を紹介する[10]。

注意したいのは、油がいつ加わったのか、どこまでが先住民の料理でどこからが後の工夫かが、資料によって一致していない点である。名前の由来も、macho(男らしい)の口語形説とmachacar(つぶす)説があり、未確定のままだ[9]。

別の方角にあるのが、ユカタン半島のシュニペク(xnipec、つづりは複数ある)である。ハバネロ、紫タマネギ、サワーオレンジの汁、塩が基本の生のサルサで、マヤ語で「犬の鼻」を意味するとされる[8]。名の理由として「辛くて鼻が出るから」という説明を見かけるが、料理紹介の説明であり、由来として定まった話ではない。

赤・緑・生の三つの型、石とミキサー、油と生。軸は一つではなく、重なって種類になる。とはいえ、この型の数は資料で一定せず、本記事では総数や正式な分類を示さない。軸の重なりとして読むのが、現実に近い。

では、これらの材料はいつからメキシコにあったのか。

5. むかしの 市場にも、とうがらしや トマトは あったの?

5. アステカの市場にも、唐辛子とトマトは並んでいた

5. 材料はいつからあったのか:栽培化、写本、辞典から見る

とうがらしは、メキシコで そだてられはじめたと 考えられて います。ずっと 昔の ことです。どこで はじまったかは、けんきゅうで 「このあたりだろう」と わかって きた はんいです。

むかしの 本にも 出て きます。アステカの 市場の ようすを 書いた 1500年代の 本には、からい 緑の とうがらし、けむりで いぶした とうがらし、とがった 赤い とうがらしなどが 売られて いたと あります。また、トマトを 売る ひとが、大きいのや 小さいのを いろいろ 売って いたとも あります。

だから サルサの ざいりょうは、サルサと いう 名前よりも ずっと 昔から、メキシコの 市場に あったのです。ただし この 本に 「サルサ」と いう ことばが 出ると いう わけでは ありません。

唐辛子は、メキシコで栽培化されたと考えられています。栽培トウガラシ(Capsicum annuum)の起源の地域は、研究では、中東部メキシコ(プエブラ南部〜オアハカ北部〜ベラクルス南東部)などの可能性が高い範囲とされます[11]。ただし起源地は、研究上の「可能性が高い」範囲で、断定はできません。

16世紀のサアグン『フィレンツェ写本』には、アステカの市場で売られていた唐辛子として、辛い緑のもの、燻製のもの、水の唐辛子、木の唐辛子、虫の唐辛子、とがった赤いものなどが記されています(唐辛子の本が引用した内容にもとづきます)[12]。唐辛子のソースをかけた料理に触れる箇所もあるといいます。

トマトもありました。1571年のナワトル語辞典(モリーナ)は、tomatlを「煮込みやソースに酸味を加える果実」と説明しています。写本には、大きいもの、小さいもの、甘いものなど、多くの種類を売るトマト売りが出てきます[13]。ただしtomatlだけだと、主にホオズキ系の緑のトマティーヨを指すとする研究もあります。

こう見ると、サルサの材料である唐辛子とトマト類は、ヨーロッパ人が来る前から、メキシコの市場にあったことが分かります。ただし、これらの資料に「サルサ」という語が出てくるわけではないので、昔のソースの作り方までは分かりません。

材料の古さは、三種類の資料で追える。第一に、栽培化の研究である。Kraftらは、栽培トウガラシの栽培化がメキシコの二つの地域のいずれか、または両方で起こった可能性を示し、中東部メキシコが有力な範囲とされる[11]。起源地は研究上の可能性が高い範囲で、断定ではない。

第二に、16世紀の記録である。サアグンの『フィレンツェ写本』は、アステカの市場の唐辛子として、辛い緑のもの、燻製、水、木、虫、とがった赤いものなどを記し、小さな唐辛子のソースをかけた料理にも触れるとされる[12]。ただしこの引用は二次資料であり、「サルサ」という語がアステカ期に使われたとは、ここからは言えない。

第三に、1571年のモリーナのナワトル語辞典である。tomatlを「煮込みやソースに酸味を加える果実」と説明する。写本にはトマト売りが大小や甘いものなど多くの種類を売ったとある[13]。ただしtomatl単独は、主に緑のホオズキ系のトマティーヨを指すという研究者の見方がある。この点は、先に見た緑のサルサの主役と対応する[4]。

以上から言えるのは、サルサの主な材料が、ヨーロッパ人の到来前からメキシコにあり、市場で売り買いされていたということまでである。昔のサルサの手順や、名称の連続性は、これらの資料からは導けない。

では、現代の食卓で、この型の違いを自分で確かめるには、どうすればよいか。

6. おうちで サルサの ちがいを たしかめよう

6. 食べ比べとラベルでサルサの違いを確かめる

6. 手とラベルで確かめ、名前の由来を調べる

つぶし方を くらべる

ミニトマトを 4つ、ポリぶくろに 入れて、手で やさしく つぶしてみましょう。べつの ミニトマトは、おとなに きって もらいます。2つを 皿に のせて、しおを 少し ふり、レモンの しるを 数てき かけます。食べた ときの かんじを くらべます。つぶした ほうは しるが 出て、きった ほうは ぷちぷち します。石の すりばちは、この つぶす ほうに ちかい つくり方です。

ラベルを 読む

スーパーで ビンに 入った サルサを 見つけたら、おとなと いっしょに ラベルの 「げんざいりょう」を 読みます。トマト、とうがらし、たまねぎが 入って いるか、さがします。とうがらしは からいので、味見は 少しだけにします。

刻むとつぶすを比べる

ミニトマトを数個、ポリ袋に入れて手でつぶし、別の数個は大人に刻んでもらいます。それぞれに塩をひとつまみ、レモン汁を数滴かけて食べ比べてください。つぶしたほうは汁が出てしっとりし、刻んだほうは粒の食感が残ります。モルカヘテとミキサーの差を、完全に再現するものではありませんが、道具が食感を変えるという感覚はつかめます。刃物を使うときは大人といっしょに行います。

ビン入りのサルサの表示を読む

日本のスーパーで売っているビン入りのサルサや、タコス用のソースの原材料表示を見ると、トマト、唐辛子、タマネギなどの並びが読み取れます。赤が多いか緑が多いか、油が入っているか、というポイントを探すと、型の話とつながります。辛いものがあるので、味見は少しずつにしてください。

名前の由来はまだ分かっていない

ピコ・デ・ガイヨもサルサ・マチャも、名前の由来には諸説あります[5][9]。調べる人によって答えがちがう話題が、サルサの中にはまだ残っています。

手で確かめる

ミニトマトを袋の中でつぶしたものと、大人に刻んでもらったものに、同量の塩とレモン汁を足して食べ比べる。つぶしたほうは汁が出て、刻んだほうは粒が残る。モルカヘテとミキサーの差の完全な再現ではないが、「つぶす」と「切る」で食感が変わるという前提を、体で確認できる。刃物は大人といっしょに使う。

ラベルで確かめる

ビン入りのサルサの原材料表示で、トマト、トマティーヨ、油、種子類があるかを見て、この記事の材料と比べる。ただし市販品の作り方は、本場の家庭の作り方と同じとは限らない。辛いものがあるので、味見は少しにとどめる。

食卓の赤と緑を比べる

赤いサルサと緑のサルサが手に入ったら、原材料表示を並べて読み、トマトとトマティーヨのどちらが使われているか、油や種子類はあるかを見比べる。どちらも家で確かめられる観察である。

ピコ・デ・ガイヨとサルサ・マチャは、名前の由来が複数説あり、どれが正しいかは未確定である。さらに調べたい人にとっては、答えのまだ定まっていない余地が広い。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文で使った資料です。

  1. Wikipedia: Salsa (sauce). https://en.wikipedia.org/wiki/Salsa_(sauce) (salsaの意味と、赤・緑・生の型)
  2. Wikipedia(es): Salsa (gastronomía). https://es.wikipedia.org/wiki/Salsa_(gastronomía) (語源と、唐辛子を軸にした材料)
  3. UNESCO ICH: Traditional Mexican cuisine. https://ich.unesco.org/en/RL/traditional-mexican-cuisine-ancestral-ongoing-community-culture-the-michihuahuan-pyramid-00400 (2010年の登録と土台の食材・道具)
  4. Wikipedia: Tomatillo. https://en.wikipedia.org/wiki/Tomatillo (緑のサルサの実)
  5. Wikipedia: Pico de gallo. https://en.wikipedia.org/wiki/Pico_de_gallo (生のサルサと名前の由来の諸説)
  6. Wikipedia: Molcajete. https://en.wikipedia.org/wiki/Molcajete (石のすり鉢の作りと使い始め)
  7. Wikipedia(es): Salsas en la gastronomía mexicana. https://es.wikipedia.org/wiki/Salsas_en_la_gastronomía_mexicana (分類と、つぶして作るサルサ)
  8. Wikipedia: Xnipec. https://en.wikipedia.org/wiki/Xnipec (ユカタン半島のサルサ)
  9. Excélsior: Qué es la salsa macha. https://www.excelsior.com.mx/recetas/que-es-la-salsa-macha-origen-receta-clasica-y-consejos-para-conservarla-correctamente (サルサ・マチャの材料と由来)
  10. America's Test Kitchen: Salsa Macha. https://www.americastestkitchen.com/taste_tests/2686-salsa-macha (油ベースの説明と前身の見方)
  11. Kraft et al. 2014 PNAS. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4035960/ (唐辛子の栽培化の地域)
  12. Fiery Foods Central: The Soul of the Mexicans, Part 2. https://www.fieryfoodscentral.com/2010/04/23/the-soul-of-the-mexicans-part-2/ (サアグンの記述の引用)
  13. Online Nahuatl Dictionary: tomatl. https://nahuatl.wired-humanities.org/node/176797 (トマトを表す語の古い定義)

なおした ところ

更新履歴

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