1. どれも おなじ 「トルティーヤ」なら、なにが ちがうの?
1. 三つとも同じトルティーヤなら、何がちがうのか
1. 材料ではなく、包み方と焼き方が見分ける手がかりになる
三つとも、トルティーヤという うすい 生地を つかいます。ちがいの めやすは、生地の つかい方です。
タコスは、手の ひらに のる 小さな トルティーヤに 具を のせて、二つに おって、手で 食べます。ブリトーは、大きめの 生地で 具を くるくると まいて、つつみます。ケサディーヤは、生地に チーズなどを はさんで、鉄板で やきます。
とうもろこしの 生地か 小麦の 生地かでは、名前は 決まりません。ただし、これは めやすです。お店や 土地で、名前の つかい方が かわる ことが あります。つぎは、ブリトーの ふしぎな 名前を 見て みましょう。
三つの料理は、どれもトルティーヤという薄い生地を使います。見分ける手がかりは、生地の種類より、具の入れ方や焼き方です。
タコスは、手のひらほどの小さなトルティーヤに具をのせ、折って手で食べる料理です[2]。日本のレシピ解説でも、タコスは二つ折りにして具を包み、ブリトーは具を巻いて包むものとして説明されています[1]。ケサディーヤは、折った1枚、または2枚のトルティーヤにチーズなどをはさみ、鉄板などで焼いた料理です[4]。
つまり、折る、巻く、はさんで焼く、という動きが目印になります。生地が小麦かとうもろこしかでは、呼び名は決まりません[1]。ただし、これは入口のめやすで、店や土地によって例外があります。次の章では、いちばん意外な名前の話から見ていきます。
三つの料理は、いずれもトルティーヤを使うので、材料での区別はできない。手がかりになるのは、具を入れる動作と、焼くかどうかである。
タコスは、手のひら大の、とうもろこしまたは小麦のトルティーヤに具をのせ、折って手で食べる料理と定義される[2]。日本のレシピ解説も、タコスは二つ折りにして具を包み、ブリトーは巻いて包む、と区別している[1]。ブリトーは現代では、小麦粉のトルティーヤで具を包み、両端を閉じた筒状にしたものを指す[3]。ケサディーヤは、折った1枚、または2枚のトルティーヤにチーズなどをはさみ、鉄板などで焼く[4]。
したがって、折る・巻く・はさんで焼くという動作が目印になり、生地の材料(とうもろこしか小麦か)だけで呼び名は決まらない[1]。ただし、これは日本の解説と英語圏の辞典的な説明を合わせた「入口の区別」である。実際の名前は、土地や時代でずれる。その例が、次の章のブリトーである。
2. ブリトーって、「小さな ロバ」の こと?
2. 「小さなロバ」という名前のブリトーは、もとは何を指したのか
2. burrito は「小さなロバ」:もとはタコスの別名だった地方がある
ブリトーは、スペインごで「小さな ロバ」と いう いみです。どうして ロバの 名前が、食べものに なったのでしょう。
むかしの メキシコの 一部の 地方では、ほかの 地方で タコスと よぶ ものを、ブリトーと よんで いました。1895年の じしょにも、「まいた トルティーヤに、肉などを 入れた もの」と 書かれて います。
名前の わけは、はっきり しません。荷物を せおう ロバに にて いるから、と いう はなしが あります。ロバで 食べものを はこんだ人が はじめた、と いう お話も ありますが、たしかな あかしは ないと されて います。
ブリトー(burrito)は、スペイン語で「小さなロバ」を意味する言葉です[3]。なぜロバの名前が食べ物についたのでしょうか。
手がかりの一つが、1895年の辞書『メヒコ語辞典(Diccionario de Mejicanismos)』です。そこには、巻いたトルティーヤに肉などを入れたもの、という説明があります。さらに、メキシコの一部の地方では、ほかの地域でタコスと呼ぶものを、ブリトーと呼んでいたそうです[3]。つまり、ブリトーとタコスの境目は、昔は今ほどはっきりしていませんでした。
では、名前の由来はどうでしょうか。荷物を背負うロバの姿に似ているから、という説などが並んでいます。有名な話に、ロバで食べ物を運んだフアン・メンデスという人が始めた、というものがありますが、裏づけのない民話とされています[3]。
現代のブリトーの代表的な形は、小麦粉のトルティーヤで具を包み、筒状に閉じたものです。メキシコ北部のチワワ州シウダー・フアレスと結びつけて語られることがあります[3]。
burrito は、スペイン語で burro(ロバ)に縮小の語尾がついた語で、「小さなロバ」を意味する[3]。この名前が食べ物に使われた経緯は、よく分かっていない。
確認できる古い記録の一つが、1895年の辞書 Diccionario de Mejicanismos で、「巻いたトルティーヤ。肉などを中に入れたもの」と説明している。しかも、メキシコの一部の地方では、他の地域でタコスと呼ぶものを burrito と呼んでいたとされる[3]。つまり、前の章の「折る=タコス、巻く=ブリトー」という区別は、昔から固定していたわけではなさそうだ。
名前の理由も、荷を背負うロバに似ているから、など複数の説が並び、決着していない。ロバで食べ物を運んだフアン・メンデスが始めたという起源話は、裏づけのない民話とされる[3]。現代のブリトーの代表的な形は、小麦粉のトルティーヤで具を包み、筒状に閉じたもので、メキシコ北部チワワ州のシウダー・フアレスと結びつけて語られる[3]。この「現代の姿」は、小麦粉の生地が北部で広まった歴史(第4章)ともつながる。
3. ケサディーヤに、チーズが 入らない ことが あるの?
3. ケサディーヤなのに、チーズが入らないことがあるのはなぜか
3. 「チーズなしのケサディーヤ」はなぜ成り立つのか
ケサディーヤの 「ケサ」は、スペインごで チーズの ことです。ですから、チーズが 入って いるのが ふつうだと 思いますよね。
ところが、メキシコシティの あたりでは、たのまないと チーズが 入らない ことが あります。おみせでは、「チーズ、ありますか?なしですか?」と きかれる そうです。ほかの 地方では、チーズが 入るのが ふつうです。
ハムと チーズを 小麦の 生地二まいで はさんだ ものは、「シンクロニサダ」と いう べつの 名前で よばれる ことも あります。具や 土地で、名前は かわるのです。
ケサディーヤ(quesadilla)という名前は、スペイン語のqueso(チーズ)に、小さいことを表す語尾がついたものです。もとは、チーズ入りのスペインのお菓子「ケサダ(quesada)」に由来するとされ、語尾は「トルティーヤ」から来たものではありません[5]。
名前にチーズが入っているのに、メキシコシティ周辺では、頼まないとチーズが入らないことがあります。店で「チーズあり?なし?」と聞かれることもあるそうです。国のほかの地域では、チーズが入るのがふつうです[4]。「メキシコ全体でチーズなしが当たり前」ではなく、あくまでメキシコシティ周辺の話です。
具によって名前が変わる例もあります。ハムとチーズを小麦の2枚のトルティーヤではさんだものは、ケサディーヤではなく「シンクロニサダ」と呼ばれることがあります。肉入りは「グリンガ」など別の名前もあります[5]。呼び名は、地域と具の両方で変わるのです。
quesadilla は、queso(チーズ)に縮小の語尾 -illa がついた語で、スペインのチーズ入りの菓子 quesada に由来するとされる。語尾は tortilla から来たものではない[5]。
ところが、メキシコシティ周辺では、ケサディーヤは注文しないとチーズが入らないことがある。店で「チーズあり?なし?」と聞かれる場面が、その例である。国のほかの地域では、チーズが入るのがふつうとされる[4]。ここで注意したいのは、これがメキシコ全体の話ではなく、メキシコシティ周辺の話だという点である。語の成り立ちが「チーズ」でも、実際の料理の定義は地域の習慣に引っ張られる。
具による呼び分けもある。ハムとチーズを小麦の2枚ではさんだものは、メキシコでは quesadilla ではなく sincronizada(シンクロニサダ)と呼ばれることがある。肉入りは gringa(グリンガ)など別名もあり、呼び名は地域や具で変わる[5]。
ここまでで、三つの料理の区別は「包み方が目印だが、名前は地域と具で動く」とまとまる。では、生地の違い(小麦かとうもろこしか)は、名前にどう関わるのか。
4. 小麦の 生地と、とうもろこしの 生地で、名前は かわるの?
4. 名前は、小麦かとうもろこしかで分かれるのか
4. 小麦ととうもろこし:生地の違いは、名前の違いではない
小麦か とうもろこしかだけでは、食べものの 名前は きまりません。ケサディーヤは、メキシコの 北の ほうでは 小麦の 生地、まんなかや 南の ほうでは むかしから とうもろこしの 生地が つかわれて います。
小麦は、スペインの 人が 1523年ごろに、メキシコシティの まわりに もちこんだ と いわれます。それより まえから、とうもろこしが メキシコの りょうりの もとでした。メキシコの むかしからの 食文化は、2010年に ユネスコの 「せかいの たいせつな 文化」に えらばれて います。
「北は 小麦、南は とうもろこし」と、かんたんに わけられる わけでも ありません。北でも、むかしは とうもろこしの トルティーヤが 主食でした。
それなら、小麦の生地かとうもろこしの生地かで、名前は変わるのでしょうか。答えは、変わりません。ケサディーヤは、北部では小麦のトルティーヤ、中南部では伝統的にとうもろこしのトルティーヤを使います[4]。タコスも、とうもろこし製と小麦製の両方があります[2]。
小麦の歴史を見ると、スペイン人が1523年ごろ、メキシコシティ周辺に小麦を持ちこんだとされます。北部でも19世紀の主食はとうもろこしのトルティーヤでした。小麦粉のトルティーヤが北で広まった背景には、安い小麦粉と、日持ちして運びやすいという利点があったとされます[6]。「北は小麦、南はとうもろこし」という単純な説明は、民話的なものとして退けられています[6]。
とうもろこしは、豆や唐辛子とともに、メキシコの伝統料理の土台です。トルティーヤやタマレ(とうもろこしの生地で具を包んで蒸したもの)は、ふだんの食事と行事の両方に欠かせません。この食文化は、2010年にユネスコの無形文化遺産に登録されました[7]。
ちなみに、カリッとした「ハードシェル」のタコスは、アメリカで広まった形です。レシピや器具の特許は1940年代のものです[2]。同じ「タコス」でも、折った形や固さは一つではありません。
生地の材料は、名前を決めない。ケサディーヤには、北部で小麦、中南部で伝統的にとうもろこしのトルティーヤが使われ[4]、タコスにも、とうもろこし製と小麦製の両方がある[2]。
では、なぜ地域差が生まれたのか。小麦はスペイン人が1523年ごろ、メキシコシティ周辺に持ちこんだとされ、中央部で多く育てられた。ところが、北部でも19世紀の主食はとうもろこしのトルティーヤだった。小麦粉のトルティーヤが北で広まったのは、安い小麦粉が手に入ったことと、日持ちして運びやすいことが背景にあるとされる[6]。この資料は「北は小麦、南はとうもろこし」という単純な説明を、民話的で正確でないとして退けている。第2章で見たブリトーの現代の姿が小麦粉の生地であることは、この歴史と矛盾しない。
とうもろこしは、メキシコの食文化の土台である。ユネスコの無形文化遺産(2010年登録)の説明では、体系の基礎は、とうもろこし・豆・唐辛子にあり、トルティーヤやタマレは日常と行事の両方で欠かせないとされる[7]。説明には、とうもろこしを石灰水で煮る処理(nixtamalization、ニシュタマリゼーション)も出てくる。
なお、カリッとした「ハードシェル」のタコスは、アメリカで広まった形で、レシピや器具の特許は1940年代にある[2]。「折って手で食べる」点は同じでも、形や固さは複数ある。
5. おみせの メニューで たしかめて みよう
5. メニューと紙で、折る・巻く・はさむを見分ける
5. 呼び名の幅を確かめ、タコスの語源を読む
きょう できる こと
コピー用紙を 1まい、二つに おって みましょう。これが タコスの ようすです。つぎに、くるくると まいて みます。これは ブリトーです。さいごに、2まいを かさねて、まんなかに 小さな 紙を はさんで みます。ケサディーヤの はさみ方です。
おでかけの ときに
メキシコりょうりの おみせや、メニューを 見る ときは、おとなの 人と いっしょに、名前と 絵を 見くらべて みましょう。同じ ブリトーでも、お店で 少し ちがう ことが あります。
もう ひとつの ふしぎ
タコスという 名前の わけは、はっきり して いません。こうざんで、ばくやくを つめる 「つめもの」を タコと よび、かたちが にて いたから、と いう はなしが あります。
紙で動きを試す
コピー用紙を1枚、二つ折りにするとタコス、くるくる巻くとブリトー、2枚で小さな紙をはさむとケサディーヤの形です。料理ではなく紙で、動きの違いだけを確かめます。食べ物で遊ぶ必要はありません。
メニューで探す
メキシコ料理の店のメニューを見るときは、名前と写真を見比べてください。同じ「ブリトー」でも、店ごとに少しちがう形や具のものがあります。それが、土地や店で名前がゆれる、という話の実物です。
タコスの名前をたどる
タコスという名前の由来は、はっきりしていません。銀鉱山で、発破の「詰め物(栓)」をtacoと呼び、その形が似ているからという説があります。ただし有力な説の一つで、決まったわけではありません[2]。
メニューで幅を確かめる
メキシコ料理の店のメニューで、同じ名前の料理を比べる。ブリトーの具や大きさ、ケサディーヤの焼き方に、店ごとの違いがあるか比べてみる。第2・3章で見たとおり、名前は動作の目印であって、厳密な定義ではない。紙1枚を折る、巻く、2枚ではさむ、と動かせば、三つの動作の違いが手で確かめられる。
語源と資料
タコスの語源は、はっきりしていない。銀鉱山で発破の「詰め物(栓)」を taco と呼び、形が似たためという説は、有力な説の一つにとどまる。食べ物の taco の古い記録は19世紀とされ、最古の記録の年は資料によって食い違う[2]。ブリトーの1895年の辞書の記述と、ケサディーヤの quesada 由来[5]は、英語の資料である。日本語では、トルティーヤの折り方の解説[1]から入るとよい。小麦の伝来[6]とユネスコの説明[7]を読むと、名前の話が、とうもろこしの食文化へと広がる。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文で使った資料です。
- DELISH KITCHEN(タコス・ブリトーなどの解説). https://delishkitchen.tv/articles/588 (折る・巻くの区別)
- Wikipedia: Taco. https://en.wikipedia.org/wiki/Taco (タコスの定義・語源の説・ハードシェル)
- Wikipedia: Burrito. https://en.wikipedia.org/wiki/Burrito (ブリトーの定義・語源・起源話)
- Wikipedia: Quesadilla. https://en.wikipedia.org/wiki/Quesadilla (ケサディーヤの定義・地域差)
- Mexico News Daily: What's in a quesadilla? https://mexiconewsdaily.com/lifestyle/food/to-cheese-or-not-to-cheese-whats-in-a-quesadilla/ (ケサディーヤの語源・別名)
- Wikipedia: Flour tortilla. https://en.wikipedia.org/wiki/Flour_tortilla (小麦粉トルティーヤの歴史)
- UNESCO 無形文化遺産: Traditional Mexican cuisine. https://ich.unesco.org/en/RL/traditional-mexican-cuisine-ancestral-ongoing-community-culture-the-michoacan-paradigm-00400 (メキシコ伝統料理の土台)
なおした ところ
更新履歴
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